母神様の云うことにゃ。 作:ふま
「ゲンマったら・・・イツの間にアアなったのよ。」
門前でまだ来てないアノ二人を待ってた、午前2時。
テンゾウさんが後ろで荷物の最終チェックをしてるのを横目に彼の隣に着く。
背伸びをしながら軽く左右に傾くと、彼はチラりとだけ視線を遣してきた。
「アアってなんだ;それに二人して”見てない”って云ってなかったっけー・・・?」
「”守備範囲を広げやがって”って、ライドウが肩を落としながら任務に向ったわよ。」
「何でアイツが落ち込でんだ;・・・別に付き合ってる訳じゃねェんだから。」
”まぁ、いろいろあっての事さ”、と彼は付け足した。
自分の事は多くは語らない。付き合いは長いがいつも、そう___
否定はしないのね、こりゃ本気なのかもしれない。
「___影のある、キレイなコよね。笑えばもっとカワイイんだろうなぁ・・・。」
「_____。」
「ん・・・?」
ゲンマの顔が心なしか険しくなった様な気がした。
「アイツは笑えなくたって・・・十分綺麗だ。」
ギクリとした・・・、一応の資料は読んできたつもりだ。”笑えない”とは一行も・・・。
しまった・・・、”感絞め”のせい___!?
「あ・・・、そんな・・・!?」
「・・・少なくとも、俺達のガキの頃みてぇな時間の過ごし方はしていない。仲良くすれば相手を
殺され、12になるまで、ずっと独りで戦いに明け暮れてた。若いが、悪い意味で育ちが違う。」
ちょっとした嫉妬を見透かされた気がした。”イツの間にアアなった”と問うた自分を恥じる。
彼は護衛任務に着いてからずっと八香の事を気に掛け、見てきたのだ。
それを私は昨日来たばかりで彼女の事をそんな風に見て、云ってしまうなんて
さぞかしゲンマは私に失望したかもしれない。「所詮はただの女」だと・・・。
「ごめん__私・・・。」
「やー、おはよー。」
謝ろうとしたタイミングでカカシさんの緩い声がした。手を軽く挙げたゲンマの顔が少し和らぐ。
その先を見ようと振り向けば、八香がペコリと頭を下げていた所だった。
「遅くなってすみません。お早うございます。」
「まだまだ許せる範囲ですよ、ネ、カカシ先輩。じゃ、行きましょうか。」
「シズネ殿、お待たせしました。」
「あ、いえいえ!大丈夫ですよ!」
そう云って丁寧に腰を折り頭を下げた___私は慌てて自分の中の毒気を追い出そうとする。
『アイツは笑えなくたって・・・十分綺麗だ』
ゲンマに恥かしげもなくアア言わせるだけあって、女の私にも彼女は溜息を着かせた。
アイボリーのショールで頭を覆い、サンドベージュの涼しげでスラリとしたアオザイ姿。
口元を隠す様は、崇高な・・・、まるで異邦人の様な気品さえ感じられる。
地味な筈の色使いなのに、彼女は自分に何が良く似合うか知っている様に思えた。
「よう、お早う。良く眠れたか・・・て、顔じゃねぇな、ソレは。」
「寝ないでも大丈夫だ、若いから。」
そう云ってグイと意地悪気な顔を近づける彼にも動揺は見せない___シレっと答えてる。
武家の養女であり、降りるとは云え向こうにいる限り先代・巫女として扱われる筈。
今時どうかとも思うが、案外真面目なゲンマの事だ。
身分の違う恋になる前に、三代目に亡命を提案したのはもしや、彼では・・・?
いや・・・それこそ下衆の勘繰りか___
「お前ねぇ・・・何気にお兄さん達を傷つけて楽しいかー?この口が悪いんだよなぁ?(ギュ」
「八香が悪いんじゃないよねェ・・・きっと、このクチがイケナイんだよねェ・・・?(ギュ」
「・・・ソコ!もっと緊張感持って!あと、一応要人ですよ、その子!?イジメない!」
一応、カカシさんもゲンマもちゃんと年の差を気にしている様で安心した;
両者は取って付けた様な笑顔で彼女を挟んでは、ビローンと口元を伸ばしに掛かってたのを
私達の中じゃ一番年下で、”無傷”なテンゾウさんが、ビシ!とそれを注意したのだ。
と云うか八香さん___無言でされるがままか!そこは少し抵抗しようよ・・・。
「私が一体何をしたと云うんだ・・・。」
「八香さん・・・!若いとか、年寄りとか、オイボレとか禁句ですよ・・・!(ボソ」
紅くなった頬も触らず気にせず、そうボヤいてた彼女に耳打ちしてやった。
無表情に一文字に結んだ口で小刻みにコク、コク!頷く様が妙に可愛い。
「取りあえずは中間地点まで行きましょうか。その先にちゃんと宿をこさえてあるんで。」
「流石だねー、俺は先輩としてホント鼻が高いよ・・・!」
「え?いやぁ、そんな・・・。ちゃんと、囲炉裏だってお布団だって、
お風呂だって用意してありますから!」
「 「 「 おー・・・。 」 」 」
ドヤ顔でソウ云うテンゾウさんの言葉に、八香さん以外が思わず感歎の声をあげた。
緊張感とは一体____
「でもトイレが無いとかと云うオチは無、モガッ」
「八香がいるから、気を使ってくれたんでしょ?その男前な心使い、俺も見習わなきゃねー。」
カカシさんが彼女の口をバフッと手で塞いではニコニコしてる___なんかコワイ。
いあ・・・、テンゾウさんをそんなにヨイショしてどうするツモリですかカカシさん;
「ところで___お風呂って誰が炊くの?」
「僕に任せて下さい____意外と得意ですし!」
「テンゾウさん、騙さ・・・、モガ!」
もう片方の手でカカシさんは私の口まで塞いだ。
誉めちぎられて、ノセられ過ぎてんのに暗部のホープはやたらとキラキラ眩しい。
隣を見ればゲンマも細ーい目で千本を上向け、無言で乾いた笑みを浮かべてた。
_____もう放っとこ;
取りあえず・・・門を出るまで、緊張感ゼロであったのは確かだ___
_____僕は何故か八香に嫌われてしまっている。
嫌われたままでは護衛なんか出来ない。何より・・・余計な御世話かもしれないけど
あの実験体が現れた日からずっと、何か力になってあげられたら・・・って思ってはいたんだ。
基本、誰かの機嫌を取るようなタイプではない僕だけど、打ち解ける切っ掛けになればね。
「休憩だな」
夜が明ける間近、先輩の合図で全員木の下へと降りたった。
4時間ほどペースを上げて移動しぱなしだった。彼女には堪えたんじゃないか?
チラと木の根っこに腰掛けた八香を見遣る___息こそ上がってはないが何故か目が虚ろだな。
「大丈夫___?」
「____!」
僕の差し出した手が視界に入って一瞬ピクリと体を動かしてた。考え事か・・・。
その手で兵糧丸を手渡そうとしたが彼女は首を横に振ってしまった。
「兵糧丸ならある___薬草調合は得意だ・・・。」
「薬草で?何だか苦そうだな・・・。」
「いや、甘酸っぱくて疲れが取れる__試しにいかがか。」
「へぇ___じゃぁ、お言葉に甘えようかな。」
背中の小さな目のリュックから巾着を取り出し、一粒を手の平に落としてくれた。
イイカンジじゃないか・・・! 一歩前進という所か。
そして僕が安心できる様にと材料とレシピを簡潔に教えてくれた。
リコリスなどのハーブにハチミツ、そしてニンニクを無臭化したものだ。
自の国でしか作れない彼女オリジナルの、曰く”裏方の衆”のスタミナ源らしい。
(成程・・・それは期待できるかも)
パクと口に放り込む・・・うん、最初に甘さが来て後から控えめな酸っぱさがじんわり来る。
作る人によって兵糧丸は効きも味も違う。いつも僕はずっと決まった店で買い求めて来た。
「きっと料理、美味いんでしょうね。味のセンスが良い・・・。」
「そりゃー美味しいよ?毎朝、朝ご飯が楽しみでしょうがない位だからねぇー・・・?」
「!?」
うわ!びっくりした!いつのまに耳元で囁いてんですか先輩!!しかもニヤニヤと?
「いやぁ~、テンゾウが女性を褒めるなんてねー・・・初めて聞いちゃった。」
「ぼ、僕だってその位の事しますよ・・・!」
「てか、カカシさん___まだ彼女にメシ作らせてんですか・・・!?」
「待て待て・・・、朝は私の方が早いからいいんだ、ゲンマ。」
「あーそぅ云えば、カカシさん家に預かりでしたっけー。いいなー、新婚さんみたい。」
(____緊張感とは一体・・・・;)
まさか僕が悪いのか?本心から褒めただけじゃないか・・・う!?
「・・・・テンゾウ殿?」
「・・・・・・・・・・!」
は・・・、初めて彼女にそう呼ばれた。嬉しい。だが、それよりも___
おかしい、体が・・・熱い? 下半身が特に・・・!?
「顔が赤い・・・、まさか兵糧丸がキツかったのか?」
「わ・・・・、ダメだッ・・・・!!!」
「 「 「 !? 」 」 」
八香が心配して僕のオデコに手を当てた途端・・・僕は何故か・・・あろう事か・・・。
タッてしまったのだ_____
「あ!?」 「木遁___・・・!」
「おい・・・どうした!?」
不味い状況になったので、離れてから素早く印を結び暫く木の殻に閉じ篭る事にした。
「て・・・テンゾウ?冗談だよ?そんな怒るなよ~。」
「しばらく、放っておいて下さい!」
コンコン!と木の壁をノックするカカシ先輩にはどうやら気付かれていないらしい。
これではまるで反抗期の少年の様だが致し方ない・・・・。
この恥ずかしい事実を知られるよりは随分マシである__と云うか・・・オイ、治ってくれ;
僕の意に反して、体は益々アツクなる。そしてチャクラの異常な噴出も感じ取っていた。
(恐ろしい・・・自の国の兵糧丸・・・!)