母神様の云うことにゃ。 作:ふま
ナースステーションでこっそり地図を手に入れた__
明日などと、悠長なことは言っていられない。戻らなくては。
病室に干してあったアオザイに袖を通し、窓から脱する。
あの里を離れるわけには行かない。
私を守って、そして慕ってくれる人達のためにも。
その想いが私を足早にさせる。里の大手門を飛び出した。
(自の里を離れて一年・・・水無はあの里を焼き払うチャンスを伺っている)
森の木々を駆け抜けながら、欠落した記憶を手繰り寄せようとしていた。
あの男の云った、シノビと言う言葉がいやに引っかかる。
おかしい、コトバのイミまで想い出せないでいるのだ。__一体、何をされたんだ?
自分を召喚したと云ったメガネ、きっとアイツのせいなのだろう。
油断したせいで、暫くは大ヤケドで動けぬ筈だが。
「・・・・・・・・・!」
ビュ・・・!!!
(来たか・・・。)
四方八方から飛んでくるクナイ、上に飛び移ることで難なく避けられた。
なるほど、それを使う辺り自国の者ではない。雇われ者か。
(舐められたモノだ___まさか、この程度で刺客と云うまいよな・・・?)
てっ辺に近い樹の上で目を瞑り、音を聞く・・・全部で8体。
生憎、武器という武器は持ち合わせていない。
涼しげな、湿気を少し含んだかの風が、一瞬通り抜ける。
この辺り、さっきまで雨が降っていたのか水溜りが所々にある様だ。
月の位置を確認すると地面に一点集中した___力を借りる為に。
「_____あそこだ!仕留めろ!」
ザク!!!
地に立つ私の額にクナイが刺さる・・・そして倒れた。
全員が、その場に集結した。
あまりのあっけなさに皆が薄ら笑いと、残念そうな顔をした者が近づいてくる。
「ダレだ!!こんな簡単に殺っちまいやがって!!」
「たしかに・・・惜しいカワイコちゃんだったな・・・。」
「フヘヘ、どれ、まだ暖かいんじゃないか?」
上手く纏まってくれたか・・・これで排除し易い____全くおぞましい限りだ。
両手を開き、掌に風を集め出す。二つを片手に合わせ更に大きく育てる__
「天罰を__ 」 そう呟き、木の上から風の渦を煽り投げた。
一気に上から強風を叩きつけ、火を呼ぶ。蜃気楼の自分が空気に溶けて消えた。
「う、あぁあああああ!!!」
火の竜巻で枯葉が舞い踊り、全員を包み込む。
見届ける事もないだろう、先へと進むことにした。
(・・・! 居たのか・・・だがこれで関わりも切れようというもの。)
飛び立つ鳥の羽音を聞き分ければ誰かが背後にいることを知れる。
着けられていたか・・・あなどれぬな、今まで気づかせないとは。
だが言い合うヒマはない、勝手にするが良いだろう。
(急がねば・・・・・・!)
夜も白々と明け始めた頃、鼻先で嫌な匂いを嗅ぎ取った。
これは_____
パチ・・・・パチ・・パチ・・・!!
「!」
悲鳴など一切聞こえない、不安を煽る静けさ・・・
樹が泣いて燃える音、そして風の音が鳴り響いてるだけだ。
ゾクリとなる・・・
まるで、あの夜のような悪夢を私は今見ている・・・。
(ばか・・・! 動け!!)
硬直する体に叱咤し、炎で燃え盛る村に一歩踏み込こもうとした。
「ダメだ! よせ・・・・!!」
まだいたのか・・・怒鳴って腕を掴んだのは、あのハタケ・カカシだ。
___止めてくれ、意識が飛ぶ前に行かせてくれ・・・!
「頼む・・・・!」
「・・・俺も同伴だ・・・!いいな?」
彼は自分のスカーフを私の顔に巻き付け、手を引いた。
周りは・・・顔を見知る者の屍ばかりで言葉を失う・・・
____あんまりだろう。
そこら中に倒れる村人に・・・息のあるものは見つからない。
「キスケ殿・・・・!!! しっかりなさいませ!」
知り合い・・・今日診る予定であった爺やを見つけた。
投げ出された体、首元がザックリ斬られてとうに虫の息だった。
ただの村人だぞ・・・なぜ、ここまで斬り付ける必要があった・・・!
私は爺の喉を手で押さえ懇願する・・・返事をしてくれと。
「・・・・ヤコウさん、逃げておくれ。。。ここはあぶな。。い。。。」
「キスケ殿・・・!」
「わしら・・・喜んでたんだ・・・
こんな年寄りばかりのところに、あんたが来てくれて・・・な。」
「・・・・・!」
「さ・・・逃げるんじゃ・・・はよ・・・ぅ・・・」
カクンと腕の中、キスケは息途絶えた。
泣きたいが泣けぬ。そっと爺を置いてスクと立ち上がる。
______風よ、輩はまだ残っているか
目を瞑る、手遅れか・・・もう撤退した後だ。
ガラガラガラ!!!!
建物が崩れ落ちる音を聞く。いかん・・・蘇る、記憶が・・・!
「左門・・・さ・・ま・・・」
「おい・・・! ヤコウ・・・!?」
熱く、燃え盛る中_幾多の屍を越え、私は・・・貴方様を救えず・・・。
亡骸を抱え、池のほとりまでお連れしましたな・・・。
私には・・・誰も救えない、寧ろ・・・火種でしかない・・・。
揺らされるのに、だんだんと遠のく意識。
フッと体の力が抜けた・・・。