母神様の云うことにゃ。   作:ふま

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2、悪い、夢

ナースステーションでこっそり地図を手に入れた__

 

明日などと、悠長なことは言っていられない。戻らなくては。

病室に干してあったアオザイに袖を通し、窓から脱する。

 

あの里を離れるわけには行かない。

私を守って、そして慕ってくれる人達のためにも。

その想いが私を足早にさせる。里の大手門を飛び出した。

 

(自の里を離れて一年・・・水無はあの里を焼き払うチャンスを伺っている)

 

森の木々を駆け抜けながら、欠落した記憶を手繰り寄せようとしていた。

あの男の云った、シノビと言う言葉がいやに引っかかる。

おかしい、コトバのイミまで想い出せないでいるのだ。__一体、何をされたんだ?

自分を召喚したと云ったメガネ、きっとアイツのせいなのだろう。

油断したせいで、暫くは大ヤケドで動けぬ筈だが。

 

「・・・・・・・・・!」

 

ビュ・・・!!!

 

(来たか・・・。)

 

四方八方から飛んでくるクナイ、上に飛び移ることで難なく避けられた。

なるほど、それを使う辺り自国の者ではない。雇われ者か。

 

(舐められたモノだ___まさか、この程度で刺客と云うまいよな・・・?)

 

てっ辺に近い樹の上で目を瞑り、音を聞く・・・全部で8体。

生憎、武器という武器は持ち合わせていない。

涼しげな、湿気を少し含んだかの風が、一瞬通り抜ける。

この辺り、さっきまで雨が降っていたのか水溜りが所々にある様だ。

月の位置を確認すると地面に一点集中した___力を借りる為に。

 

 

「_____あそこだ!仕留めろ!」

 

ザク!!!

地に立つ私の額にクナイが刺さる・・・そして倒れた。

全員が、その場に集結した。

あまりのあっけなさに皆が薄ら笑いと、残念そうな顔をした者が近づいてくる。

 

「ダレだ!!こんな簡単に殺っちまいやがって!!」

「たしかに・・・惜しいカワイコちゃんだったな・・・。」

「フヘヘ、どれ、まだ暖かいんじゃないか?」

 

上手く纏まってくれたか・・・これで排除し易い____全くおぞましい限りだ。

 

両手を開き、掌に風を集め出す。二つを片手に合わせ更に大きく育てる__

「天罰を__ 」 そう呟き、木の上から風の渦を煽り投げた。

一気に上から強風を叩きつけ、火を呼ぶ。蜃気楼の自分が空気に溶けて消えた。

 

「う、あぁあああああ!!!」

 

火の竜巻で枯葉が舞い踊り、全員を包み込む。

見届ける事もないだろう、先へと進むことにした。

 

(・・・! 居たのか・・・だがこれで関わりも切れようというもの。)

 

飛び立つ鳥の羽音を聞き分ければ誰かが背後にいることを知れる。

着けられていたか・・・あなどれぬな、今まで気づかせないとは。

だが言い合うヒマはない、勝手にするが良いだろう。

 

(急がねば・・・・・・!)

 

夜も白々と明け始めた頃、鼻先で嫌な匂いを嗅ぎ取った。

これは_____

 

パチ・・・・パチ・・パチ・・・!!

 

「!」

 

悲鳴など一切聞こえない、不安を煽る静けさ・・・

樹が泣いて燃える音、そして風の音が鳴り響いてるだけだ。

 

ゾクリとなる・・・

まるで、あの夜のような悪夢を私は今見ている・・・。

 

(ばか・・・! 動け!!)

 

硬直する体に叱咤し、炎で燃え盛る村に一歩踏み込こもうとした。

 

「ダメだ! よせ・・・・!!」

 

まだいたのか・・・怒鳴って腕を掴んだのは、あのハタケ・カカシだ。 

 

___止めてくれ、意識が飛ぶ前に行かせてくれ・・・!

 

「頼む・・・・!」

「・・・俺も同伴だ・・・!いいな?」

 

彼は自分のスカーフを私の顔に巻き付け、手を引いた。

周りは・・・顔を見知る者の屍ばかりで言葉を失う・・・

 

____あんまりだろう。

そこら中に倒れる村人に・・・息のあるものは見つからない。

 

「キスケ殿・・・・!!! しっかりなさいませ!」

 

知り合い・・・今日診る予定であった爺やを見つけた。

投げ出された体、首元がザックリ斬られてとうに虫の息だった。

ただの村人だぞ・・・なぜ、ここまで斬り付ける必要があった・・・!

私は爺の喉を手で押さえ懇願する・・・返事をしてくれと。

 

「・・・・ヤコウさん、逃げておくれ。。。ここはあぶな。。い。。。」

「キスケ殿・・・!」

「わしら・・・喜んでたんだ・・・

こんな年寄りばかりのところに、あんたが来てくれて・・・な。」

 

「・・・・・!」

「さ・・・逃げるんじゃ・・・はよ・・・ぅ・・・」

 

カクンと腕の中、キスケは息途絶えた。

泣きたいが泣けぬ。そっと爺を置いてスクと立ち上がる。

 

______風よ、輩はまだ残っているか

目を瞑る、手遅れか・・・もう撤退した後だ。

 

ガラガラガラ!!!!

 

建物が崩れ落ちる音を聞く。いかん・・・蘇る、記憶が・・・!

 

「左門・・・さ・・ま・・・」

「おい・・・! ヤコウ・・・!?」

 

熱く、燃え盛る中_幾多の屍を越え、私は・・・貴方様を救えず・・・。

亡骸を抱え、池のほとりまでお連れしましたな・・・。

 

私には・・・誰も救えない、寧ろ・・・火種でしかない・・・。

 

揺らされるのに、だんだんと遠のく意識。

フッと体の力が抜けた・・・。

 

 

 

 

 

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