母神様の云うことにゃ。   作:ふま

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23、知らぬ彼女を知る男

 

(時代遅れの国にしちゃ・・・やる事が大胆だ。)

 

薄茶色のマント、フードを目深に被る男は記念館の中・・・まさかの巫女のビキニの写真の前で

そう思う。彼女の事を知る者なら、この写真を見て直ぐに気が着く事があった。

 

(誰かに愛されているとお前は気付くべきだ__今度がお前の最後の任務になる事を祈る・・・。)

 

男はこの中のどれにもない、彼女の表情を思い出していた。その愛らしさ故に触れる者を霜の様な凍て付きで追い払う、あの異様な妖気。

 

(全く、俺も酔狂が過ぎる・・・。見届けたいと願うなんてな___)

 

記念館を後にすると、人々が目を輝かせながら足早に神社の方へと向っている。

ギャァ!と、鴉の鳴き声に彼は木の上を見遣った。見知らぬ土地を、同じ方向へと歩き出す。

 

 

 

 

 

 

 

「____懐かしいな」

 

笛や太鼓の、練習をする音が聞こえる賑やかな境内____思い出す。

寺の生活から一変した私は此処の神主を伴い、巫女として滝で禊を受けた事を・・・。

 

「姉様、急ぎませんと___」

「あぁ・・・、では、後で。シズネ殿も御一緒に。」

「がんばってね。お客さんは皆、テンゾウだと思えば緊張しないから。」

「それ・・・、逆にやりづれーんじゃ・・・;」

「僕を芋やカボチャ扱いとは酷いな・・・、まぁ、頑張って下さい。守りは万全ですしね。」

 

励まされて頷くと、皐月に急かされカカシ殿ら男性陣と分かれて控え室へと向かう。

 

 

 

 

 

 

「左右に分かれよう」

 

僕らは会場に着いてから先輩に配置を支持された。シズネさん__大丈夫かな?心が心配だ。

どうやら___ファースト・キスだったらしいから;

僕自身、まだナイ話だけど__ソレ以上の経験は飛び級でしちゃってる。

唇って・・・僕が思うに、特別だよね。人の話じゃ、商売女でも断る事もあるって聞くし・・・。

まぁ、彼女もそこまで引きずる人じゃない。あくまで冷静に、任務を優先させるタイプだ。

 

「式で事を起こす程バカじゃないだろうが、気を抜くな。」

「「「  了解  」」」

 

イヤホン越しの先輩の声に全員がそう答えた。

時刻が迫ると、舞台前に人が集まり出す__僕は事前に渡された右京の写真を睨みつける。

190cmある身長、色黒、ギラついた眼、クセ毛のポニーテイル。

この粗野な風体であればすぐに解る筈・・・。

 

「刀を置けと申すか!?」

「・・・!?」

 

早速か・・・? 受付の辺り、僕に近い方でモメてる声がした。

 

「先輩___ちょっと持ち場を離れます。」

「了解」

 

行って見れば、人相のよろしくない侍が何やら入り口にてまくし立てているではないか。

最悪の場合、僕が木遁でヤカラを封じ込める役目を持っている。その為のこの配置だ。

受付係りが、刀を預ける事は御館様のお決めになった事と説明しているのにも係わらず

納得しないばかりか剣幕だけで押し切ろうとしてる。面倒だな・・・。

 

「・・・?」

 

後の他の客がボディチェックを済ませ、モメる客を追い越して入って行く。

また1人、1人と次から次へと入場してく。それに慌てたのか?

まるで皐月の様なフードの男が通過した時、やっと男はその場で勢いを無くした。

 

「俺が悪かった・・・刀を預ける・・・・。」

「!?」

 

えらく素直に従い始めた? ま、、、まぁ、それならいいか。

持ち場に一旦戻ったが直ぐ後___その二本差しを追うかに右京らしき人物はやってきた。

 

「右京に間違いないかと___」

「目を離すなよ」

「了解」

 

入った順番通りの席なので、先ほどのフードの男が近くに座っているのが確認された。

奇妙なのは、この時間なのに前方の席が殆ど・・・ハチマキ巻いた若者で埋め尽されている;

場にそぐわないばかりか、彼らの会話がちょっと理解できない。これは何かの専門用語なのか。

取りあえず、先輩のヘアスタイルだけが屋根の上から見ても浮いているのだけは確かだ___

 

____会場が神妙な笙の音で静けさを取り戻す。時間か。

 

プログラム上、八香が最初に炎祈の舞を披露する、僕は舞台に現れた彼女に息を呑む。

巫女の姿で紅をさした八香・・・が出て来た途端、一斉にフラッシュがたかれる。

おい・・・!神聖な舞台だぞ・・・、と思った途端、関係者が慌てて注意しに来てた。

オタク達は追い出されるよりマシと思ったか瞬時に大人しくなる。

一方、舞台の八香の方は我関知せず、あの時の様に柳葉刀を凛々しく振り翳して舞い踊っていた。

数分の演舞の後、拍手する音が直ぐに鳴り止む。反対側から皐月が踊り込んで来たからだ。

降魔の面を着けた、紫の衣装___その頃にはいない、八香の姿。

歌舞伎を思わせる動きで舞台狭しと踊り、柳葉刀を振るう。

 

太鼓の音が鳴る___紅い衣装、疫病神の面を被った八香が身軽く彼女の前に現れ出た。

 

(早変わりか・・・おい___、演舞じゃなかったのか・・・!?)

 

柳葉刀を手にした二人は・・・観衆をざわつかせるほどの殺陣を披露し始めたのだ。

否、もはや演技ではない。殺気に似た気を放ち、鬼気迫るぶつかり合いで音が生々しい。

あの格好で良くあんなに立ち回れるものだ、感心さえする。太鼓の音が会場の興奮を煽り出すと

つい、ハラハラして見入る・・・いや、余りの激しさに周りでさえ息を飲んでいた。

これは皐月に対する洗礼か。あのカブトにでさえ、八香はここまで打ち込んではいない。

 

「_____!」

 

おかしい間を感じた。そこで降魔役である皐月が彼女の刀を弾き飛ばしたのだ。

切っ先を疫病神にやっと突きつけ、とうとう八香が退散する___シナリオ通りの幕閉じとなった。

 

「まだ及ばないな___」

「精進せよ、ってトコですかね」

 

イヤホン越しの感想が聞こえる。彼らも感じたか、八香の本気度はせいぜい70%と云う所だ。

あまりの迫力にオタクや、奴等までもが呆然と黙り込んでしまってる位だものな。

 

そしてまた笙の音が鳴り、笛が重なる___

今度は面を取った二人が現れ、先に八香、その後ろに皐月が控え出した。

いよいよ、式の終盤の雨乞いに入る様だ・・・。お祈りと舞だけで雨が降れば世話はない___

ぶっちゃけ僕は馬鹿馬鹿しいとさえ思って様子を見ている。そんな非科学的な事。

 

(そうだなぁ、これでもし少しでも雨が降ったら僕は君を、”様”づけで呼んでもいいよ?

ただし、僕らが滞在中までに降らなかったら”巫女っぽい人”に格下げだからね・・・!ニヤニヤ)

 

僕の意地悪な想いをヨソに、神代に向い座ると頭を下げ、その間は3秒ほど。

シャンシャンと鈴の音がリズム良く、聞こえて暫く、八香が、皐月が両手を大きく空へ広げた。

先にざわついたのは前列の者達だ。気が着けば、いつの間にか太陽は雲に隠れてしまってる。

 

「え・・・・!」

 

足元の瓦にピチャ!と大粒の雨が・・・本当に降って来た・・・!

 

(八香”様”ァアア________!?)

 

最初は静かに・・・、そして次第に大きく打つ雨音に変わる・・・舞台の二人はまだ動かない。

村人からは歓声が上がった。それぞれに「巫女様!」「大巫女様・・・!」と云い拝みながら。

ハチマキ連中などは、感極まって立ち上がり万歳三唱した後、大げさに男泣きし合ってる。

右京は腕を組んだまま目を瞑っていたが、その内立ち上がり仲間と会場を後にした。

 

手を降ろした八香はまだ空を見上げている__紅の着いた唇が僅かに動いた。

雨に顔を濡らしているせいか・・・? 行事は成功したと云うのに・・・君はまだ何を願う?

 

 

 

 

 

「大儀であった・・・、二人共・・・! 今ままでにない、最高の舞台であったぞ・・・!」

 

拍手が鳴り止まぬ中、御館様は舞台そで戻った濡れた彼女らを激励し、両腕にしかと抱いた。

皐月さんはフードの中、涙を拭い___八香さんはただ、目を閉じた。

 

「役目を果たしましたな__後は皐月に託すのみ・・・。」

「姉様・・・。もう行かれるのですか・・・・?」

「また会える___気を落とすな。さぁ、着替えないと風邪をひく。」

 

皐月さんの雨で濡れた肩を軽く叩くと二人は控え室に歩いて行った。

取り残された、私と御館様。

 

「シズネ殿___あやつ、誰か良い男でもおるのかな。」

「は___? いえそれはナイと思いますが・・・;」

 

真っ先にゲンマの顔が浮かんだが頭の中から直ぐ消去した、絶対ナイナイと。

八香はいつもあんな調子のポーカーフェイスなもので実際、本心は掴みかねるが・・・。

カカシさんにも仰々しいし、テンゾウさんにはやや刺々しい。

唯一、”ゲンマ”と呼び捨てをする彼にもソレ以外、慣れなれしい態度を取る事もない。

 

「そうか__、わしは八香に甘え過ぎた。その代償は払わねばならん・・・これからもな。」

「御館様・・・?」

「それはそうと___良いのか?此処に居て。」

「あ_____、そうでした。失礼致します・・・!」

 

護衛なんだから、控え室に行かないと___。

右京らは会場を大人しく去っていった、が。テンゾウさんが暫く動向を探ってる。

何かあれば知らせるとの事____だけど油断は禁物である。

 

ドアをノックする、シャワーを浴びた後か無防備な皐月がタオルを軽くかぶったまま招き入れた。

鳶色の左目を跨ぐ、ツタ模様___あれ、どこか八香に似ている・・・?

 

「姉様ならもう直ぐ___」

「そうで____はぅあ!!」

 

物音に目をやる・・・バーン!とシャワーから出て来た八香に慌てたのだ。一糸纏わぬその裸体に。

クッ・・・!詳しく説明する気は断じて無い! ただ・・・思わず、下まで目撃して驚いた___

え、なにそれ、薄っす!それ、産毛レベルじゃ!?

 

(エロい____! なんて云うか・・・ロリ・エロいィイィ!!)

 

「シズネ殿・・・?」

「ぁッ。。。いえ、ナンテ事ないです・・・からッ・・・!」

 

ぐるぐる回る___この子、絶対この世の生き物じゃない・・・・!

きっとアレ・・・クローン技術駆使して出来たコだと思いたいィィイー!!

 

「そうか____ならばいいのだが・・・。急いで支度するのでお待ちを。」

 

バサリと長い髪を降ろし、そのまんまでドライヤーを当てに行こうとする。

ああ・・・もうナニ!? 若さのヒケラカシ!? その後ろ姿、プリンプリンなんだけど!?

 

「姉様___;急ぐとは云え、せめてバスローブを。」

「あぁ、すまぬ」

 

呆れた皐月がそれを着せ、やっと私の胸のバクバクも収まってきた。

 

「申し訳ありませぬな、姉様は”恥ずかしい”とはあまり感じておらぬので;」

 

感絞めのせい___他の感情も薄いのか・・・。

しかし、コレじゃカカシさんも苦労しているのでは___と思う。

いや待て・・・R18の小説を恥ずかしげも無く人前で読む彼である__。

案外、こんなハプニングを楽しんでいるのでは・・・ないか!?

 

「___シズネ?八香はどう?」

 

その時、丁度そのカカシからイヤホンで声が飛んで来た。

 

「ええ、今控え室です。カカシさん・・・、鉄分多めに摂取しましょうね。レバーとか。」

「へ・・・?」

「支度でき次第戻ります___じゃ。」

 

カカシさん___天才忍者で多忙な筈の貴方が・・・微妙なリア充だったんですね___

リアル・イチャパラとか・・・エロイ事が詰まった、その頭から爆発すればいいんじゃぁぁあ!

 

 

 

 

 

「お疲れさん___いい舞台だった・・・。」

 

この雨の中、御館様と皐月が彼女を送ってきた。里の門前で俺は八香に労いの言葉を掛ける。

揃いのマントを八香に手渡すと傘の下でそれを纏う___フードの中の、冴えない表情。

そして何だろう。まるでゲンマの子供時代の様なスレた目をしたシズネ・・・何があった;

 

「では___御館様、皐月さん、これよりは火の国、木の葉の里にて彼女を保護致します。」

 

俺はそう云い、一礼をした。三代目の代わりとなったツモリで頭を下げた。

裏方の衆は一兎をはじめ、石の国の領域まで着いて来るツモリで影に控えてる。

 

「姉様___どうか、御元気で・・・!」

「八香、何かあったら越後屋で文をよこすのだぞ・・・!」

 

頭を上げると彼女は少し首を傾け、目を細めた。

 

「私は大丈夫____二人共、お達者で。」

 

笑おうとする彼女なりの笑顔が、俺にはとても悲しく映る。

「行こう」と振り切る辺り、やはり辛いのだ。

 

「では、我々はこれにて___」

 

そう云ったゲンマもソレを感じ取っていた。チラリを視線だけを下に向けている。

別れを言い合った後、俺達は後に残したテンゾウを気にしながらも帰路を辿る。

俺は御館様の言葉を思い出してる___流石に良く解っていると。

 

「しかし_____本当に空の機嫌を取るとはね・・・。」

「式はパフォーマンスに過ぎませぬよ。」

 

アッサリと云う彼女・・・このコの力が底知れぬ気がした。

俺はふと不安になった__三代目はまさか、八香に忍の道を勧めるのではないかと。

 

(それには・・・断固、反対だな。)

 

彼女には穏やかな時間が必要だ・・・。幼少時代から今に至るまで無かった時間である。

八香は既にウチで云う所の中忍のレベルを超えている。流石に上忍には届かないだろうが。

だが・・・俺はもう彼女を、戦いの場に引き出したくはない・・・。

 

「先輩____!」

 

ハ! ・・・テンゾウの声に足を止める。何を慌てたか、分身を飛ばして遣したらしい。

 

「この先の天神尾ノ滝という所で、奴等待ち伏せて___八香様を、奪うと___」

「・・・・・奪う、ね・・・。」

「____人数は?」

「抜け忍合わせて20から30程かと。但し本人は不在と云う事です。」

 

俺はゲンマと目を合わす___ふふ。”奪う”とか云われたんだ、彼もヤル気だねェ。

 

「お頭様___」

 

八香が右手を挙げた___ばッばッと、裏方に指のサインをいくつか送ってる。

ジャキ!ジャラッ・・・! 所々で、何らかの武器を用意する音で返事が返ってきた。

 

「・・・心して掛かれ、弔い合戦と思うてな・・・!」

 

 

 

 

 

 

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