母神様の云うことにゃ。 作:ふま
午前2時を過ぎ様としていた________
俺は今、気を失ってる門番の前を通り過ぎて里を飛び出す。
何故だ・・・また死に急ぐツモリか?
腹立たしくも思う___しかし、それは彼女にとっては押し付けられた感情。
俺達の気持ちなど・・・到底届かないのかも知れない。
ついさっき、交代しようと病室に戻ってみれば___テンゾウが彼女と格闘していて。
『八香さん___!? ちょっと待った!!落ち着いて!!』
『フーッッ!!』
『・・・・・・・・・・・。』
『イダダダ!!パンチはナシで!!』
『シャー!!』
想像もつかない彼女の振る舞いに目を丸くして思わず突っ立った。
飛びついて彼に襲い掛かり、バリバリバリ!!と顔に縦横ナナメ引っ掻きでトドメを刺すとか。
俺は首と肩をガックリしながら、その”お転婆過ぎる”八香の脇腹からヒトガタを毟り取ってる。
『暗部のエースが何やってんの・・・;コレが彼女なワケないでしょ・・・!』
『ね・・・ネコ!????』
『どんだけ居眠りしてたんだ・・・お前はすぐ火影様に報告ね・・・!』
摘まみ上げた興奮してまだ暴れてるポッチャリ系を突き出す。間違っても八香ではない。
てな訳で___八香は茶トラの猫に代役をさせ、門を突破___この里を後にしていた。
しかし、ただ死ぬのならば何も逃げなくて良い。これは彼女に何らかの事情が出来たのか。
(もしや、何か思い出したか・・・? それとも呼び寄せ・・・兎に角、探さなくては。)
「口寄せの術・・・!」
「____またアノ小娘か・・・相当振り回されておるな・・・!」
「そう云うな、頼むよ・・・!」
パックンを説き伏せ、俺は少しでも希望を捨てまいと彼女を追った。
あの体ではそう遠くに移動できぬ筈。ソウした張本人のカンである・・・。
(すまぬ_____紫紺よ)
空いた病室で寝入っていた彼の髪と雲水衣装を失敬して来た。
移動中、私は木の枝の上で満月を見上げる。元より・・・居座るツモリは無かったが___
(記憶がひとつ戻った。忘れていた自分の姿を見た___私の中の、鬼の所業を・・・。)
何が巫女だ・・・我を失えばアアやって人の頭をスイカの様に弾き割る、まるで悪魔。
こんな者が里に居て良い訳がない・・・否、居れなくなる理由を見つけたかったのかもしれない。
愛してしまいそうな人達を___いつか悲しませ、不幸にするからだ。
(カカシ殿___自分が何者か知ったからには・・・もう戻れませぬ・・・。)
思い出せば疼く体・・・何処かがキュとなる。
酷い倦怠感でもう四肢はバラバラになりそうであった。限界が近い。
暫く走れば街灯りが見えて来た、取りあえず人に紛れる事にして少し休まなければ。
(湯の町が近い____風に硫黄の匂い)
飛び出して来たは良いが死ぬタイミングを逃した後、私の気持ちは途方に暮れている。
こんな私にも、火影様の言葉が沁みているのかもしれない。
直に火の国の国境を超えるだろう、遠くに見えて来た街灯りに近づいて行く・・・。
「また来て頂戴よぉ~!」
「あー、またな・・・!」
里に帰る前の命の洗濯はもはや恒例のキマリゴトで。カウベルの音を背中で聞く。
女の香水にも、酒にも飽きて外風を頬に受ける。もうひとっ風呂と行きたいトコだ。
(さぁて、その後は部屋に戻って可愛いアンマ屋ちゃんでも呼ぶとするかのぉ・・・ん。)
珍しい・・・こんな夜中の歓楽街に雲水? 随分と早めに歩くもんだ・・・。
足早とまで見せない所が絶妙で、そしての脚運びの仕方も坊主よりは忍に近い。
今、すれ違う___網代笠の下の顔は整った顔の、まだ少年の様だったが・・・。
「・・・・!」
「オイ・・・!何処見てんだ、テメェ!この坊主!」
フラ付いておるのか? 通りで体が当たった酔っ払いに肩を掴まれ掛かっておる。
ワシが足を向けようとした瞬間、確かに風の流れが変わった。そして何かが空を切る。
「うわッ」
「!?」
拄杖を右手に左手は頭の笠を軽く押さえたまま、顔を傾けもしなかったと言うのに・・・!
枯葉が勢い良く渦を巻き__掴もうとした手を阻んだ!? その肩に触れさせなかったのだ。
何が起こったか解らずにいた酔っ払いはサッサと先を歩いて行った坊主を唖然と見てる。
(忍ではない、か___面白い・・・・!)
すっかり酔いが覚めたワシは雲水の後をこっそり着けて見た。
確かに・・・寺に入って行きおったが・・・通夜堂か?
早い話、雨凌ぎ出来る場所で野宿をするらしい。柱に凭れ片足は立てたまま眠ろうとする。
冷えた口調がお堂に響けば更に身を引き締め、気を消し去る___。
「____念者になるツモリか・・・悪いが相手にはならんぞ。」
「無礼者ォオオ!!!! ワシは100%女好きよ・・・!! ・・・あッ。」
「・・・・・ならば何用じゃ。」
バレておっては仕方がない。ワシはヤツから少し離れた位置に姿を現し、ドカリと座る。
美少年である事を自覚しておるらしく、ワシをまさかの男色と疑うとは。
網代笠を取り去る少年は此方を見もしない___肝が据わりすぎておる様だ・・・。
「誰かに追われておる様じゃの____?」
「_____かも知れぬ」
「実はの___ワシはこう見えて物書きでな。興味のある事が多い。
貴殿さえ良ければだが・・・ワシの宿で匿う事も出来なくもないぞ__?」
図星であったか・・・、少年は鼻をクンと鳴らす__
「ならば__すまぬが、手を貸してくれまいか・・・立つのもやっとだ・・・。」
「そんなに弱っておったとは___どれ。」
手を出すと力強くワシの手を握りおった・・・。
チャクラ残量も僅か、あの技を使う以前から相当弱っていた様だ。
「これはいかん」とワシは思わず云ってヤツを抱き上げた。抵抗もできぬ有様だった。
「名は聞かないで貰いたい___嘘はつきたくないのでな」
「構わんさ__だがワシだけは名乗るとしよう。自来也だ・・・宜しくな。」
コヤツ・・・なかなか面白い。嘘と云うものは簡単につくものだ。
しかし、一体誰に追われておるのか・・・ワシには極悪人にも見えないがのぅ・・・?
「ほれ、少し休め・・・。」
宿の窓から侵入した。彼を、ワシの為に用意してあった布団に寝かせる。
気のせいか___だんだん弱って来ておる・・・。
「御主は何の心配もせんでいい__追加料金も払っておくからの・・・。」
朝餉の用意もさせんとな__そう云って安心させたが、呼吸が荒い。
もう少し楽にさせ様と、まずは手巾から外し、雁字搦めの雲水衣装を少し緩めた。
(____一晩眠れば・・・何とかなるレベルだろうが・・・・。)
一抹の不安を覚えながら、少年を見守り・・・寝息を聞くまでに至った。
ちょっとした刺激を受け、ワシは彼の傍で筆を執っていた最中_____
「災いになる___このまま・・・お見逃しを・・・・・」
夢を見ておるのか・・・。眉間に皺を寄せ布団を握り締めていた。
一体誰に____そう云っておるのやら・・・。
魘されている少年に思わず筆を置き、跳ねる体を宥め様とした。
ん_____? これは何だ?
寝返りを打った少年の首根後ろに・・・貼りもの・・・?
剥がれ掛けていたソレをジャマに思い、何の気無く剥がした・・・途端!
「ハァ!?」
目の前の少年は____輝くばかりの美少女に姿を変えたのである___!?
「お・・・・おぉ・・・!」
どう云う事だコレは・・・。 美しい__モノノケとしか思えん・・・!
忍術ではなく、この姿を現したと云うのなら・・・これは神の悪戯か、ワシへの贈り物か。
雲水衣装は男サイズであった為か、ごっそり隙間が開き、胸辺りだけがムッチリしてる。
艶やかな甘栗色の髪、色白の、血管が透けるような美肌、くるりと反った、長い睫。
そして小さめの可愛らしいぽってりとした唇が堪らなく、思わずポッとなってしまう。
「ムハー!!! 素晴らしき光景かな・・・!!!!」
コウフンしてつい云ってしまったが、余程疲れ落ちているのか反応はない。
緩めた雲水衣装・・・その左肩に、噂に聞いた事のあるツタの痣が見えてはっとなる。
(確か不治の病だった筈___まさか生き残りが居たとは・・・・!)
予感した。それを生き抜いた、彼女の特殊な生い立ちを____
「ん____? 熱か・・・・どうりで・・・。」
彼女が熱を帯び出してる事に気が着く。この時間に医者も開いていまい。
腰をあげ、24時間営業の薬屋へと急いだ。
「自来也様____!?」
宿から出て来た俺に声を掛けたのは忍犬を連れたカカシである。
嫌な予感がした___いや、まさかな・・・。
「おお、奇遇だのぅ。どうした、こんな所で。」
「ええ___実は、人を探して此処まで来たのですが・・・。」
「女・・・少女ではあるまいよな?」
「・・・・・何かご存知で?」
やはりか___ワシは「歩きながら話そう」と、薬屋に向う。
大体の事情と、彼女の正体をカカシから聞いた。
「あの娘___このまま連れ帰ってもまた同じ事をするだろうな。」
「・・・・・・・・かもしれませんね。」
「不幸中の幸いでアヤツはまだ動けん。その間だけ少しワシに預けてくれんか。
お前は極限までに気配を消し、彼女とワシを見張ればいいだろう・・・どうだ?」
「説得でもなさるおつもりですか・・・?」
「まぁ、見ていろ。カカシよ__力づくではどうにもならん。良いか、どんな場合でも
女を安心させてやるのは、男の仕事だと云う事だ。例えそれが、あんな少女だとしてもな・・・。」
「・・・・・・では、お手並み拝見と行きましょう。」
諦めたかカカシは目を瞑りヒトツ頷くと、忍犬を帰らせ宿の屋根に飛び移って行った。
(名は八香か___妖しげだが、美しい名前だのぅ・・・。)
"女を安心させてやるのは、男の仕事"か____
思えば俺は、彼女を拾ってから何1つ彼女を安心させてやれなかった。耳の痛い言葉だ・・・。
天井裏で今、八香に薬を飲ませている自来也様を覗き見ている。
此処からでも解るほど彼女の顔は火照っていて、目が虚ろになっている。
恐らく、里に戻る移動中に風邪をひかせたのだろう。
あの長い髪も生乾きのままだったし、何より抵抗力が落ちていた筈だろうし・・・。
三代目はどうあっても此処で彼女を保護すると云い___俺も連れ戻す意向ではある。
だがもう解らなくなっていた。何が、一番彼女に取って良い事なのか___
「自来也殿__________」
傍でうつらうつらしていた彼は、か細い声に八香を慌てて除き込んでいる。
偶然では無さそうだ・・・数人の気配がこの部屋を取り囲んでいた。
(暗部___いや、違う・・・・!)
「どうした・・・?」
「邪の念が渦巻いておりまする___今の内に・・・”御世話になり申した”・・・。」
「何を・・・、!?」
ガシャン!と窓を割って入って来た手榴弾。ハっとなったさすがの彼も煙幕に腕で口を塞ぐ。
待て・・・! 八香の呼吸音が・・・・消えた・・・・!?
(嘘だろ_________?)