母神様の云うことにゃ。 作:ふま
「三代目、奴らは尾獣に対抗しうる者を探しているようですね。」
俺は火影室へ報告に来ていた。
報告書を読み終えて煙管をふかしてた三代目はイスをくるり此方に向ける。
「村を襲う化け物の話というのは確かによく聞く。だが、そういうケースは珍しい。」
釈迦によって隠された末子を半狂乱で探したと言われる、荒れた7日間。
全身にツタ模様の周った、泣く赤子をみて何を思ったのだろう。
「ともかく・・・奴らの実験台になり、また新たな脅威になられては困る。」
「ええ・・・・。」
「ところで・・・イイコか?」
ニヤリと三代目が笑う。俺にはまだ解らない。
ただ、武家の育ちか品は良い。
笑わない、泣かない辺りは年頃の娘らしくはないが。
「実は昨日、初めて肉を食べたようでして・・・。」
「ほう・・・・?」
___肉とは美味しいものなのだな
店を出た後、そう云われて俺は少し慌てた。
巫女だった時の習慣でもあり、肉は食した事がなかったというのだ。
それはすまなかったと詫びたのだのだが、彼女は目を細めた。
笑った様に見えた。それも悲しく。
___いらぬ事で謝らせてしまった。申し訳ない。
そう逆に謝られてしまったのだ。なぜだか心が痛むのを覚えた。
「今まで俗世と関われなかったのだろうな。巫女様と云うだけで勝手に神聖化される。
まぁ・・・そうじゃな、気晴らしでもさせるがよかろう。お目付け役兼、護衛着きで申し訳ないが、里を散策してみるのも良いだろう。」
「しかしもう既に暗部が・・・。」
「向こうではあまり良くは思ってない様じゃ、監視対象でしかない様だぞ。」
そう報告したのはテンゾウか。事情を知らずにああ関わってくる奴じゃない。
一応命じてはいるが、個人的に彼女を”火種”扱いしている者もいるらしい。
この前の様子から見てもテンゾウとて例外ではなかった。
「というと・・・上忍ですか・・。」
これから関わって来るであろうという可能性も含め、三代目はAランクとして扱うと云った。
「うむ・・・ワシも迷ったんだが、今いる者の中で腕もたち、
冷静沈着で機転が利き、尚且つ・・・。」
「尚且つ・・・?」
そう溜めて眉間に皺をより一層深める三代目に俺はぐぐぃとニジミ寄る。
目を閉じたまま何を思っていたのか、鼻がちょっとプクリと膨らんだのは見逃さない。
「なんというか・・・、あの___
少女からオトナに成りつつある、何とも云えない色香に惑わされない者だ。」
「・・・・・。」
ちょっと拍子抜けした後、一瞬だけ俺のガッカリ感が視線に表れてしまったのか
エロじ・・・いや、三代目は大きな咳払いで少し赤らんだ顔を下に向けている。
「正直に言えば___、美しかった。お前はそう思わなんだか・・・?」
言わんとしているのは彼女の、痣の着いた体の事だ。
どちらかと云えば、俺はそれを封印して思い出さない様にしていたんだが。
そう打ち明けられて思わず思い出す。
引き締まった腕とは裏腹の、柔らかく透明感のある白い肌に__ハッとなる様な紅い模様。
芸術だと___思えるほど美しかった・・・。
「ええ、確かに・・・。」
「故に、ゲンマが適任かと思う。」
「不知火ゲンマですか_____成程、良いかもしれませんね。」
俺はそう云いながら笑って見せた。だが、どこかで不安も感じていた____
要人と云うにはまだ幼い方だ。彼女の名は小田原八香。人手不足に付け加え
彼には教員としての仕事もある為、今回は俺がこの任務を引き受ける事となった訳だが。
「彼女にはちゃんと云ってあるから。じゃーヨロシク。」
ドアの前、出勤前のカカシと立ち止まらず軽く手を挙げて入れ替わろうと___
ザワリした。耳元で気色悪い息が吹き掛かる。
「ちゃんと挨拶してよ?握手には必ず応じてあげてねー。」
「りょ、了解____」
近い・・・!思わず千本をギリと噛む。俺をイクツだと思ってんだ全く・・・。
今度こそ奴の後ろ姿を横目で確認してからドアをノックする。
ドアのすぐ傍に立っていた彼女に思わず言葉を失う、同時にカカシを後で殴ろうと決意。
(真っ白な・・・割烹着だと・・・!?)
レース仕立ての襟元に、クシュクシュと纏めた髪の残りが垂れ落ちている。
タオルで手を拭きながら、まだ愕然としてる俺を見上げている彼女にハッとなった。
「ゲンマ殿ですね、おはようございます。」
「____、お早うございます。」
気付かれない様、一呼吸入れてから軽く頭を下げ挨拶をした。おぉ、と声がして
思わず顔を上げれば____ち、近い!!
「これ、本当に千本なのですね___私はあまり使いませぬが・・・。」
頭を下げた事をこれほどシマッタと後悔した覚えは嘗てなかった。
俺の口元に注目、そして直ぐに目を見てきた。瞳の、淡い薄紫の部分が広い。
そこまで解る位である。
思わず目を閉じて姿勢を元に戻した。そう云えば巫女から鍼医者に転職したと書いてあったな。
成程、それで興味を持ったワケだ。
「申し訳ない、失礼な事を。少しお掛けになってお待ち下さい、直ぐに支度を。」
「いえ・・・、___? 」
「今朝の朝食です、多めに作っておきましたゆえ」
どうぞ、とテーブルに着くのを促され俺は逆らえずイスに座る。
恐らくカカシが何か云ったのか。朝食を食べて来ない俺の事を。
「実はお隣の奥様がかぼちゃを分けて下さり___ 」
彼女が目の前の布を取るとサンドイッチとコーヒーが現れたのだ。
いつの間にかそう言っている声も遠くに聞こえ、俺は違和感を覚える。
移動していく際の、絹擦れの音どころか足音も立ててはいなかった。
(忍ではない?カカシが気付かない訳はない、何か決定打があって判断したのか・・・?)
「なので、召し上がれ」
「!」
カボチャサンドを見つめながら考えていた俺の、すぐ横に立っていた。ビク!ともなる;
いやいや、今のは俺の油断に過ぎない。具の中に見える小さなベーコンが気になってた。
「_____、では遠慮なく・・・。」
手を合わせてから一切れ手に取る。今日の任務・・・無事に終る気がしないな。
パクリと何気に齧り付く・・・よく噛めば噛むほど、だんだんカカシに腹が立ってきた。
「美味い・・・・・・。」
____ 後で殴る? いいや、ボコる・・・・!