母神様の云うことにゃ。 作:ふま
____ くそ・・・! 云ってくれるじゃないか。
僕ら暗部は火影様より、彼女を守れと仰せつかってはいる。
要人なのは解っているさ、だが他国とのイザコザ成り得る火種には相違ない。
しかし、今は彼女の云う通り___良くも悪くもだ。
轟く熊の足音に気付いた村人が悲鳴をあげ逃げ始めている。
「他は避難誘導を行え___!」
「承知」
脇にいた二人が返事と同時に散って行った。
「木遁___! ・・・!?」
保護対象である彼女の前に柵を作らねば___と思い印を結んでいる最中。
殺気を感じて後ろを振り向いた。まさに今、2Mは越えるクマが荒い鼻息で立ちはだかっていた。
(_____不味い・・・!! エ・・・!?)
真上に上がった太陽に、両手足を縮めて飛び上がった影が映る。
クルクル、キラと光るものが熊の首根っこに絡まった___
木の枝にぐぐぃ!!と人形の様に引っ張られて行く。
咄嗟に後退いでいた僕はハッと重石となっていた彼女を見た。
一瞬で糸の様な細いチェーンを両手に取り戻している__指輪の暗器!?
後ろじゃ熊の首がズレていたが血は噴出してはいない。
_______なかなかやるな。
スクと立ち上がると肩を動かし、首をぐるりと回して解しながら僕の前に立った。
まるで___熊殺しが手慣らしであるかの様に思わせる。
「此処の”裏方”は___自然の脅威に弱いらしい」
面の下で肌がカァッとなるのが解った___すごく憎たらしい。
「・・・・増援のようだ、此処は任せる___ゲンマ殿・・・!」
「ったく・・・ハイハイ・・・!」
冷ややかに一瞥を投げたかと思うと飛び出し、ゲンマと共に子供達の行った方向に走っていった。
此処は任せるだって・・・? 表に出て辺りを見回してから呆れの溜息をつくしかなかった。
「後片付けって事か・・・? ホント、云うねェ・・・!」
気のせいか・・・? あのコ、先輩に似てる気がしてきた。
喉元や、両足首を切り取られた熊と、
ゲンマによるクナイと術でやられた熊とがピクピク僅かに動いてるだけだ。その数、ざっと30。
僕が、どちらを優先させるか迷ってる間にコレか____
先輩の報告書にあった様な爆炎を使った形跡は勿論無い。
(キラキラしたものを守る為か・・・___ )
(俺がガキの頃だって一度もこんな事はなかった・・・それにしても、あの娘の移動が速すぎる___さっきもそうだ。まるでバネみてェだった・・・。)
俺と同等の速度___あれ、これって俺が歳くったって事か?
「____悲鳴が・・・!先行します」
「頼む___」
オイオイ____まさか俺に合わせてただけ!?
軽いショックを隠しつつ、彼女に遅れを取らない様に後に着く。
聴力がずば抜けてるらしいな、さっきの事といい、俺には何も聞こえないし気配もない。
どれだけ無謀なんだと思わせたのは___貴方ソレ、丸腰じゃね?って事だよ・・・。
まさか、両中指と人差し指のリングが暗器だったとはね・・・シズネが目を輝かせそうだ。
だがアレは、彼女のあのスピードがあってこそ使いこなせるモノだ。
低い姿勢で2、3匹のクマを囲うように走ったかと思うと一瞬で足首を掻っ切った。
白兵戦では恐ろしい戦力になるだろうな___忍び相手なら印を結ぶ隙さえ与えないだろう。
クマ退治の最中、背中合わせの彼女が云ったんだ。
「ふふ___懐かしい。」
「え?」
「幼少の頃、猟師達から嫌われておりました」
「___何故だい」
「ほぼ同業だったのですよ___ついたあだ名は”マタギ姫”」
田舎育ちなもので、と彼女は笑わずに俺に目を細めた。
自の国の”裏方の衆”か___彼女が頭と云うならとても興味深い。
「近い・・・・!」
彼女の声、怯える子供達の様子、そして___イルカの声だ。
森に入って直ぐだ、やっと俺にも聞こえる範囲に入ってきた。
「いかんな___臭う」
八香がそう云った____誰か怪我をしてるらしい。
「絶対そこから出るなよ!固まって真ん中にいるんだ!」
急遽、結界を張った中に子供たちを集めた所だ。
イルカもクナイ片手に必死で応戦している___上からなら余裕で狙えるな。
「じっとしてな・・・!任せろ___」
ヒュヒュ!!____ドッ! ドッッ!ド、ドド!!
「ゲンマさん_________!!」
熊どもの脳天をクナイで貫き、地に降り立つ。
早々に八香はイルカの腕のカスリ傷にハンカチを巻いてやっていたが、
子供達の方をチラリと横目に見ながら云った。
「____数が足りないようだ」
「ええ、木ノ葉丸と__あと2人、はぐれてしまいました。」
「・・・八香さん、解るか__?」
「声は捕らえております__急ぎませんと・・・」
「イルカ先生、子供達を頼む___」
ヨリによって木ノ葉丸か____
西斜め方向に移動してしばらく、池に近い辺りで彼らを発見した。
特別デカい熊だ・・・!しかし、ここからではさっきの様には行かない。
木に背をあて、腰を抜かしてるあいつ等からヤツを引き離さないと。
あの肉厚さだ、後ろからクナイで仕留められるか___
後頭部を狙いを定め、クナイを何本か投げ放ってみた。
雄叫びを上げ、此方を振り向くのにも驚いたが・・・何よりその容姿である。
「ヒト・・・・!?」
「____!」
顔半分だけが・・・人の顔なのだ。しかも___彼女の方を見てニヤリと笑った。
ヒュッ・・・・!! ドドドッ!
刺さったクナイを物ともしない、そのまま猛進していくではないか。
「ちッ・・・火遁______ッ・・・!」
あれでは八香の暗器だけで対抗はできない・・・・!
印を結びながら、怪物の背後に迫る。そして、飛んだ。
俺が、記憶する彼女の姿___右手の平をヤツに向けて目を見開いてる。
「彼の地の風よ_______いざ・・・!」
ぶわッッッ!!!!
「_________!!!」
俺の放った火遁術と、彼女の送り込んだ風が合わさったらしい。
八香を抱きかかえ、子供らの傍へと飛び逃げる背後に激しい明るさと熱を感じた。
彼女は業火に焼かれる獣の姿を俺の腕の中でしっかり瞳に焼き付けている。
気付かなければいいと思っていたんだが___。
「・・・ゲンマ殿、私もヒトゴトではありませぬな・・・。」
八香は思い出したのだ___恐らく、実験される前の事を。
彼女がこんな化け物に姿を変える___?冗談じゃない・・・。
「俺がさせませんよ・・・約束します、貴方を渡したりはしない・・・!」
(____彼女の体に指一本触れさせるものか・・・・・!)