それは一瞬の出来事だった。ロウ先生が不敵に笑い、残っている俺たちが武器を構えた瞬間。
ロウ先生の首が落ちた。なんの前触れもなく、いきなりだ。このフィールドに残っている者、そしてこの戦いを見ている者も反応出来なかっただろう。俺もその一人だった。
首が地面に落ちて間もなくして、首がないロウ先生の体が人形のように倒れた。その代わりに女子生徒、ロウ先生の首を狩ったであろう本人がただ1人立っている。
俺はその女子生徒が誰だか認識すると、思わずその者の名前を叫んでしまった。
「リア!」
「分かってる!」
俺が叫ぶと同時にその女子生徒、リア・ルノアは後ろに振り向きながら自分の剣を振りぬいた。その瞬間、鉄と鉄がぶつかり合う甲高い音が鳴り響く。
「まずい……」
俺はすぐに隠し持っていたナイフを戦っている二人の間に投げ、リアが逃げる隙を一瞬だがつくった。リアは俺の考えを察したのか俺がつくった隙をうまく使い戦闘から離脱をして俺の隣まで後退してくる。
「ルノア、お前の能力は知っていたが流石に今のは驚いたよ。」
首と胴体がつながっているロウ先生がリアに話しかける。その声はさっきまでの余裕があるようなものではなく、敵を前にしたような真剣な声だった。
「手ごたえはあったはずなんですけど……流石は『不死』といったところですか?」
「やめてくれ、それはもう3年前の呼び名だ。もうそのように呼ばれるような実力はもうないよ」
『不死』、それはロウ先生がまだ現役だったの頃の二つ名だ。ソロア・ロウの能力は『自分が受けたダメージを自分と瓜二つの何かに肩代わりさせる』という能力。この能力のおかげで彼女は何をされても死ぬことはなく、そして数々の功績を上げたことでつけられたのがこの二つ名だ。
「だが、この能力にも弱点はある。1つ目が自分と瓜二つのなにかを創れるのは半年に1個。2つ目はそれを貯められる個数には上限があること。3つ目は無意識に貯めているものにダメージを肩代わりさせることができないこと」
リアは3つ目の弱点を狙い、ロウ先生が能力を発動させる暇を与えずに倒そうとした。だけど……
「それは読まれてたってことか……」
「教師なのでね、生徒の能力はすべて書類で見たよ。ルノア、お前の能力は私の能力の弱点を正確に突くことができるからな。警戒はしていた」
リアは少し悔しそうな顔をしたが、すぐに顔を引き締めた。すぐに気持ちを入れ替え、次に自分が何をするべきか考えられる、リアの強みの1つだ。
「さて、少し話しすぎたな。次は私から動くとしよう」
そう言った瞬間、ロウ先生は俺たちに向かって走って来る。俺たちも応戦できるよう神経をとがらせた。そして俺の大剣が届く範囲に入ると、彼女の姿がいきなり消えた。
「上よ!!」
消えたのではなく、ロウ先生は俺たちの上を飛び越えていた。
「くそ!早すぎて目で追えなかった」
俺が大剣を振るうよりも早く、ロウ先生は着地をして俺達とは別の生徒へと接近して行った。まだうまく状況が呑み込めていない生徒へと。
「え……」
男子生徒が思わず声を出すと、その瞬間彼の姿は消えた。これで終わりではなく、次々と生徒がこのフィールドから消えていく。
そして、彼女のナイフがゴリとソラを切り裂こうとした瞬間……
「ぐっ……」
俺の大剣の刀身と彼女のナイフが触れ合った。
「ほう、大剣を持っているのにそのスピード、流石だな」
「そりゃどうも!」
俺はナイフを先生ごと力で押し、体勢が崩れたところで蹴りをいれた。ロウ先生はそれを後方にジャンプすることでうまくいなし、俺と距離をとる。
「ちょっと、何が起こったの!?」
「どうやら、リョウが俺たちを助けてくれなかったら今頃俺たちは観客席送りにされていたらしい」
だんだん状況が把握できて来た2人に俺は動くなと声をかけると、ロウ先生の方へ向かう。
もうすでにリアと戦っていたところに俺は隙を突いて攻撃するが、先生はナイフで大剣をいなしてうまくよけ、逆に俺の心臓を狙いナイフを振るう。体をそらしてそれをギリギリで避けると俺は大剣を薙ぎ払うように横に振った。先生がジャンプして避けたところを、リアが着地点を狙って攻撃しようとするが、先生が空中から投げたナイフで阻まれてしまった。
「やっぱりキッツイね」
「攻撃を止めるな、もう一回行くぞ!」
俺たちはもう一回攻撃を仕掛けようと足を一歩前に出す……な!?
「う、動かない」
「な、なんで!?」
体が金縛りにあったように動かない。指はかろうじて動かすことができるがそれ以外がまったく動かせない!
「短期決戦を仕掛けようとしたのは良かったが、攻撃することに気を取られすぎたな」
ロウ先生がこっちに向かって歩いて近づいて来るが何もすることができない。俺たちが今動けない理由は多分……
「糸だね……」
「ああ、更に『永遠のエネルギー』を使った特注品みたいだな」
「敵につかまっているのに冷静にそこまで考えられるとはな。流石、先輩の弟子たちというところかな」
ロウ先生は俺たちの前まで来るとナイフを取り出す。
「悪いが、これで終わりだな」
そう呟くと、俺たちの首めがけてナイフを容赦なく振るってくる。このナイフは間違いなく俺たちをこのフィールドから退場させることができる一撃だろう。
うまく当たれば、の話だが。
「私達を!」
「忘れてもらっちゃ困るぜ!」
ナイフが俺たちの首まで届く直前、ロウ先生は後ろに下がった。その後、俺たちを守るように2人の生徒が前に立つ。
「助かったよ、2人とも」
「ごめんなさいね、遅れて」
「これでさっきの借りは返したぜ、リョウ」
2人の生徒、ゴリとソラがそれぞれの武器、ガントレットとレイピアを構えていた。そのすぐ後に無数の矢が俺たちを縛っている糸を切った。
「リアちゃん大丈夫!?」
「大丈夫!ありがとうモエちゃん!」
モエと呼ばれる女子生徒がリアの方に走って来る。弓を持っていることから彼女が糸を切ってくれたのだろう。お礼を言いたいがそんな場合ではない。
「それでリョウ、これからどうする?ロウ先生がさっきからこっちに殺気飛ばしてくるんだけど」
ソラが俺に聞いてくる。俺の後ろに隠れていなかったら、少しかっこよかったのに。いや、そんなことは今はどうでもいい。
「とりあえず、俺とリアがまたさっきみたいに突っ込むから、そのサポートを他のみんなはしてくれ」
詳しく作戦を話す時間はないのですごくザックリとした説明になってしまったが、みんなは納得してくれたようで頷いてくれる。
が、やっぱり例外はいるようで、
「ふざけるな!なんで僕たちが貴様の命令に従わなければいかないんだ!」
俺に反論してきたのは金髪の青年だった。後ろに嫌そうな顔をしている2人の男子生徒もいる。この3人は確か俺と同じクラスだったか。
「はぁ?何言ってんだ、この状況では今のがベストだろ」
「ベストではない!僕たちが先行して攻撃をするのがベストだ!何故なら、僕たちはこいつよりも強いからなぁ」
ソラの言葉に青年は俺に指をさしながらドヤ顔で言ってくる。
「あなた、さっきまで何も出来なかったくせによくそんなことが言えるものね」
「動けなかったのではない、動かなかったのだ!」
「なにわけの分からないことをほざいているのか」
ヤバい、ソラとゴリが男子生徒たちと喧嘩し始めた。そこにリアのクラスメイトの女子生徒もソラとゴリに加勢をしてヒートアップしていく。
それにしてもなぜ、こいつらは今になって目立とうとしているのか。
俺は考えているとリアに肩をつつかれる。リアの方に向くと、本人は観客席の方に向かって指を刺していた。俺はそっちに目線をずらすと、いつからいたのか分からないが見知った女性が1人、ニヤニヤしながら座っていた。
その瞬間、彼らの行動のすべてを理解する。まったく、アピールはもっと他の分野ですれば良いものを……
「貴様ら!戦いの最中になにをくだらない事で言い争っている!」
いつの間に俺たちの近くまで来ていたロウ先生の一喝でみんなが一気に口を閉じた。
「ありゃ、もう戦いはいいんですか?」
「タイムアップだ」
ロウ先生は呆れ顔でリアに答える。そんなこんなで、急に始まったロウ先生との戦いは、なんとも後味の悪いまま終了してしまった。
こんにちは、だゆつーと申します。
第10話を最後までお読みいただきありがとうございます。
そして、お気に入り登録をして下さった1名様、本当にありがとうございます!
これからも頑張っていきたいと思いますのでよろしくお願いします。
誤字脱字があれば教えていただけると幸いです。
また、感想とアドバイスがあればぜひお聞かせください。
最後に、次回の話もお読みしていただければ幸いです。
FGOの巴御前が可愛い……