「早く編成を組んでダンジョンへ向かえ!」
「緊急事態だ!回復できる武器を持っている者を多く編成しろ!」
「手遅れになる前に早く!!」
外が騒がしくなってきた、どうやらあいつらを助ける為に救助隊を向かわせるらしい。まだ高校生の子供をダンジョン探索に参加させ、その上死なせたとなれば大問題になるだろう。そのせいか救助隊の人数が多い。ていうか多すぎないか?待機組のほとんどを向かわせる気か。
私はついついため息をつくとあいつらの通信の方に気を向ける。そうすると、どうやらリョウが能力を発動させたらしい。この程度の相手に能力を発動させるとはあいつらもまだまだ実力不足だな。今度はもっと強い魔物と戦わせるか、そうだな、それがいい!
「エレナさん、少しよろしいでしょうか?」
これからの予定を考えながらコーヒーを飲んでいると、後ろから若い男性の声が聞こえてきた。
「どうしたラント、何か用か?」
私はその声の主、ラント・ローウルフの方を向かずに、背中を向けながら応対する。
「いえ、少し聞きたいことがありまして」
「なんだ?」
「あなたは彼らの通信を聞いてましたよね?」
「ああ」
「なら、なんで罠にかかった時点で僕たちに知らせてくれなかったんですか!?」
「知らせる必要はないと私が判断したまでだ。あいつらならこのくらい自分たちで乗り越えられる」
熱くなっているラントに私は冷静に言い返す。やっぱりこいつ……
「それでも今彼らは死にそうなんだ!あなたが早く報告してくれればもっと早く救助隊を向かわせることができた!!」
あぁ、やはりそうか。私はそのセリフを聞いた瞬間に、この男の興味をなくした。押し寄せてくるのはこの男に対する失望と、自分の見る目のなさによる怒り。背後の男が何か私に言ってきているがもう私の耳の届くことはない。
私が適当に返事をしていると静かにいらだちを見せながらどこかへ行った。
「あいつは『はずれ』か」
才能があり、若くしてダンジョン探索の隊長に任命されたから『あたり』かもしれないと思い接触したが、
「実力があっても、他人の実力を測れないんだったら意味がない」
あいつはこのことに気が付いていない。気が付いていないということは自分で弱点を克服することができない。一番の弱点を克服できないようじゃこれから先、実力が上がったとしてもそれで終わりだ。それ以上の進化は望めない。これから気が付くもしれないが、肝心なのはあくまでも自分一人の力で弱点を克服していくこと。人に言われて気が付くことはあるかもしれないが、自分で気が付くことは絶対にないだろう。
「進化を望めないやつに興味はない」
そう呟くと、手元が熱い気が付く。どうやらイライラして無意識に手で持っていたコーヒーが入った紙コップを握り潰してしまったらしい。そばに置いてある手をハンカチで拭くと気分転換にあいつらの通信に耳を向ける。
「……ほう」
そろそろあの男が率いる救助隊がダンジョンに入るころか。まぁあれだ、これから進化が止まる者と死ぬまで進化が止まらない者、その差を自分の目で見てくるといいさ。
▼▼▼▼
剣を構えると俺はレッドドラゴンに向かって全力で走り始める。レッドドラゴンはそんな俺に向かって炎の弾を吐いてくる。さっきの炎より威力は弱いが、それでも当たったらただではすまないだろう……さっきまでの俺だったらな。
俺はそれにひるむことなく走り続けた。当然炎の弾は正面からくらうが、
「全然効かないね」
俺にダメージはない。レッドドラゴンは炎の弾に当たっても走っている俺に連続で炎の弾を吐くが、俺はそれらに当たっても気にせず走る。そしてそのまま目に向かってジャンプをした。助走は十分、余裕で届く!
空中で俺を叩き落とそうするレッドドラゴンだが、他の三人の腕への集中攻撃により一瞬動きを止める。その一瞬の差でレッドドラゴンが俺を叩き落とすよりも早く俺は目にたどり着く。瞬間、俺は剣を思いっきり目へと突き立てる。が、まぶたでガードされてしまった。いくら剣を押しても貫通しない。だがここまでは想定内。
「『EVOLUTION』」
俺がそう呟くとまぶたに突き刺さっている俺の剣が輝き始め、普通の剣から大剣へと姿を変えた。伸びた刀身の勢いでまぶたを貫通し、レッドドラゴンの目から血しぶきが上がる。
「よし!」
その後、痛みで暴れまわるレッドドラゴンに振り落とされてしまったが目的は果たした。
「ちょっと、その剣また強くなってない?」
俺は態勢を立て直し、近くに落ちている大剣を拾っているとリアが駆け寄って来る。
「最近は筋力を鍛えていたからな、こんな姿になったんだろ。さて、目は片方潰したがまだ油断はするなよ」
「もう終わったも同然だよ」
リアと話しているとレッドドラゴンの叫びが聞こえてくる。そっちの方を見るとレッドドラゴンのもう片方の目が潰されていた。どうやらコウタとシズがやったらしい。レッドドラゴンが痛みのせいで危険察知が鈍ってるおかげか、遠距離からの攻撃が防御されなかったのだろう。
両方の目を潰されたレッドドラゴンはその痛みと、視界が見えないことへのパニックで正気を失っていた。確かにこれではもう終わったも同然だろう。
「最後のとどめも油断しないように」
シズからの通信の後、俺たちはとどめを刺すべくレッドドラゴンへ一斉攻撃を始めた。
▼▼▼▼
「終わったか」
私は通信機を外し机に置くと、長時間座っていたせいで硬くなっている体をほぐすために立ち上がる。思いっきり背中をそらすと背骨からが恐ろしいほどの音が鳴った。
「そうやって体をそらしてるのを見て確信した。やっぱりでけぇな、お前の」
さっきの若い男の声とは正反対のおじさんの声が背後から聞こえてきた。
「そのセリフはセクハラとして受け取ってもいいですか?」
「セクハラじゃない、事実を言っただけさ」
今度はしっかりと後ろを向くと40代中盤くらいの無精ひげを生やしたおじさんが立っていた。
「それをセクハラと言うんですが……それは置いといて、聖都ルドリアの王が仕事をさぼって何の用ですか?」
「いやな、お前さんの気に入っている弟子が初ダンジョン調査と聞いてな、少し様子を見に来たってことよ。で、どうだった?」
「今、ちょうどレッドドラゴンを倒したところです」
「ほお!あの年でレッドドラゴンを倒したのか!いやぁ大したもんだ」
がっはっはっと笑うおじさん、もといルドリアの王。
しばらくして笑い終えるとルドリアの王が私にある手紙を渡してきた。
「これはついでだ、暇があったら見てくれ。それじゃ、俺はもう行こう。もうそろそろルリアがここに来そうだからな。」
「本当に何しに来たんですか……」
「さっき言ったろう、あんたの弟子を様子を見に来ただけだ。将来、あんたに届く可能性がある子供達をな」
「……………それはどっちの私に?」
「さあな」
軽く手を私に振り、ルドリアの王はワープ装置の方に向かって行った。
姿が見えなくなったところで渡された手紙を開き目を通す。
「何が暇があったら見てくれだあのジジイ」
私は手をライターで手紙を燃やすとコーヒーを飲むために新しいコップを取りに行った。
ちなみに手紙の第1文目が「マル秘」と書かれていたことだけはここで伝えておく。
こんにちは、だゆつーと申します。
第6話を最後までお読みいただきありがとうございます。
投稿が遅くなってしまい申し訳ありません。まだ忙しいため投稿スピードはまだ戻すことができませんが、どうにか時間を作り書いていくつもりなので、これからもよろしくお願いします。
誤字脱字があれば教えていただけると幸いです。
また、感想とアドバイスがあればぜひお聞かせください。
最後に、次回の話もお読みしていただければ幸いです。