ハイスクールD×Dの一誠に憑依しちゃったんで取り敢えず体を鍛えた 作:筋肉
日曜、俺は駅前で待ち合わせをしていた。
言うまでもなく先日の告白してきた子、天野夕麻ちゃんだ。
一目惚れ、と言っていたがどこにそんな要素が… 罰ゲームか何かか?
「どうぞ。」
「あっ、ども。」
何やらコスプレをしたお姉さんからチラシを渡された。
怪し気な魔法陣に、あなたの願い叶えます! ねぇ… 怪しい新興宗教かな?
「ごめん、待った?」
「待ってないよ。 行こうか?」
と、夕麻ちゃんが来たのでチラシをしまって歩き出す。
デートには満足してくれるだろうか。
---♠︎---
夕暮れ時、デートを終えた俺は夕麻ちゃんと共に公園にいた。
人気のない公園で、橙に照らされる彼女の影は美しいものだった。
「今日は楽しかったね。」
「そうかい? それなら良かった。」
初デートということも踏まえて、テンプレを踏みながらも少しの意外性を持たせてみた。 一応年季は長いんでね。
「じゃあ、最後に一つお願いしても良いかな?」
「何だ?」
噴水をバックに、彼女が微笑みながら言う。
「死んでくれないかな?」
先ほどまでの可愛い声とは違い、冷たさを感じさせる声。
彼女はその右手に光の槍をもっていた。
「…一応聞いとくけど、ジョークじゃないよな?」
「残念だけど、違うの。 本当に悲しいんだけど、私のために… 死んで? 楽しかったわ、あなた、デートが上手で。」
彼女の手から光の槍が放たれる。
咄嗟にそれを腕をクロスさせてガードした。
-シュゥゥ…-
槍を受け止めた腕の表面は傷を負っている。
おい、大丈夫か俺の前腕部の筋肉。
『問題ねえぜ、旦那! 好きなように振るってくんな!』
とのことだ、頼もしいぜ、俺の筋肉は。
「…そ、そんな、あり得ない!
…その自身の持ちようから相当な威力の物だったようだ。
しかし、勝ったのは俺の筋肉か…
「鍛え上げられた筋肉は、光すら超えるようだ。 頼む、見逃してくれないか? 俺はまだ死にたくないし君を殴りたくはない。」
「…そうしたいわよ。 でも、上があなたを脅威と認めたから… やらなければ…!」
「…そうか。」
ファイティングポーズをとる。
腕の筋肉が邪魔で脇は閉められないが、問題なかろう。
その瞬間、地面に紅の紋章が浮き出た。
何だあれは? 魔法陣か?
「これは… グレモリーの!」
現れたのは、俺の両腕から滴る血よりも紅い長髪の少女。
リアス・グレモリー先輩、駒王学園の二大お姉様に数えられる人だ。
「あなたかしら? 私を呼んだのは。」
「呼んではないですが… 一応そうでしょう。」
「まさか、グレモリーの者が現れるなんて!」
ジリ、と一歩退く夕麻ちゃん。 それ程までに彼女は有名なのか? それともただのドッキリかなんか?
いや、それだと黒い翼を生やして飛んでいる夕麻ちゃんの説明がつかない、上に何かあるわけでもないし…
「グレモリー、覚えておきなさい!」
黒い翼をはためかせ、どこかへ飛んでいく夕麻ちゃん。
何者なんだよ、本当に。
そしてグレモリー先輩は振り返りながら言う。
「あなた、怪我は大丈夫かしら? 兵藤一誠君よね?」
「怪我は大丈夫です。 しかし状況に整理がつかなくて…」
「ゆっくり話してあげるわ、その怪我を治してからね。」
---♢---
「あー、プロテインしかねえなぁ… あ、紅茶あんじゃん。」
「あ、お構いなく。」
あの後、グレモリー先輩を家に招いた俺は怪我の治療をして、取り敢えず飲み物を出すために棚を漁っていたが、見事にプロテインしか見つからない。
誰だ、こんなに買ったのは! 俺だ!
取り敢えず紅茶を入れて、彼女の前に出す。
ふふ、前世では紅茶を入れるのも趣味の一つだったので味にはそれなりの自信がある。
あ、因みに今は親は両方外出中だ。
「ありがとう。 …あら、おいしいわね。」
「趣味でして。 それで、先程の状況について話して頂きたいのですが。」
持っていたカップを置き、一息ついてから彼女は口を開く。
「彼女は堕天使、神に背いた天使よ。 見たでしょう? あの黒い翼を。 そして私は悪魔よ。 堕天使とは敵対関係にあるわ。」
「堕天使、ですか… しかし何故俺が狙われるんですか? セイクリッド何ちゃら言ってましたが。」
「
排除、か。 そりゃあ怖い。
「でも、あの光の槍。 悪魔に対してとてつもない攻撃力を持つのだけれど、人間にもかなりの脅威のはずよ。 それを手で受け止めるなんて…」
「まあ、鍛えてますから。」
彼女は俺の体をまじまじと見つめる。
「確かに、洗練された体ね。 それにあなた、学校の中で有名なのよ? 2年に凄い筋肉の子が居るって。」
「へえ、それは恥ずかしい…」
有名か、そうか…
そして彼女は、一口紅茶を飲んだ後、思いついたように微笑から表情を明るくさせ、立ち上がる。
「そうよ! あなた私の眷属にならない?」
「眷属って言いますと、悪魔に?」
「ええ、この駒を体の中に取り込めば、転生悪魔になれるわ。 力も上がるわよ?」
彼女が懐から取り出したのは、何やら紅のチェスの駒だ。
力も上がる、か… 良いお誘いだが…
「断らせて頂きます。」
「へえ、何故かしら?」
「種族の基本のスペックに頼る気はないんです。 俺は一生の中で、自分の力で肉体を磨き上げたい!」
「そう… 因みに、悪魔は人間よりもかなりの寿命が長いから… 当然人間よりも長い時間トレーニングができるわよ?」
「喜んで眷属にならせていただきます。」
寿命が延びるたら話は別だ! 長い時間で筋トレに打ち込んでやる!
「噂通り、面白い子ね。 じゃあこれを胸に… ってあれ、一つじゃ足りないわね? じゃあ二つ… あれ、これでも足りない。」
彼女はチェスの駒を俺の胸に押し当ててくる。
俺の胸に押し当てられた駒は、溶けるように俺の体の中に沈んでいくが、彼女は何処か合点がいっていないようだ。
そしていくつも駒を使って試しているが、一向に納得はしない。
そして8個目の駒を取り出し、俺の胸に沈めたとき。
「まさか8個も使うだなんて… あなた、どんな
「
「…聞いた事のない能力ね… 調べておかないと。」
グレモリー先輩は顎に手をやり、何か悩んでいるご様子だ。
「取り敢えず、ようこそグレモリー眷属へ! 歓迎するわ!」
「あ、どうぞよろしくお願いします。」
---♦︎---
「と、いうわけで。 新たに眷属に加わった兵藤一誠です。 よろしくお願いします。」
パチパチパチ、旧校舎にあるオカルト研究部部室は少人数の拍手に包まれた。
オカ研の部員は全員グレモリー眷属の悪魔だそうだ。 何故オカ研なのかと聞いたら、グレモリー先輩の趣味だと答えられた。
「いやぁ、イッセー君、で良いかな? 君が悪魔になるとは思わなかったよ。」
爽やかな笑顔で言うのは、イケメンに定評のある木場祐斗だ。
同学年で、女子からの人気が高いやつ。
「俺もお前が悪魔とは思わなかった。 よろしくな。」
差し出された手を取り、握手を交わす。
他のメンバーも豪華だな。
二大お姉様のもう一人、姫島朱乃先輩。 駒王学園のマスコットこと、一年の塔城。
ここに俺が加わって良いのか… いや、俺には筋肉がある!
「と、いうわけで。
取り仕切るのは眷属の
因みに、眷属には悪魔にするのに使った駒の特性が引き継がれるらしい。 他の生物を悪魔にし、眷属とする
え? 最弱だって? 馬鹿言っちゃいけねえ、
これは実際のチェスに基づいた能力で、敵地の最奥部では他の駒の特性を使うとができる、と言うものだ。
「では、イッセーにはこのチラシを配ってもらうわ。 あなたが私を呼び出すのに使ったものと同じね。 これを強い願いを持つ人間に配ってきてちょうだい。」
「わかりました。」
---♦︎---
-ドドドドドドドッ!-
夜の街を一つの筋肉が走り抜ける。
時折民家のポストにビラを入れて走るのは俺、兵藤一誠だ。
手元に持つセンサーの反応を見て、ビラを配っていく。 どんな仕組みなんだこれ。
「…貴様、悪魔か? 主がいないようだな。 はぐれか?」
爆走する俺に話しかけてきたのは、灰色のコートに帽子をかぶった男だった。 背中に黒い翼を生やし、空から俺を見下ろしている。
「堕天使か。 俺ははぐれじゃねえぞ、グレモリー眷属のもんだ。」
取り敢えず名乗ったけど大丈夫かな?
ヤク○みたいに簡単に組の名前名乗っちゃダメとかだったらヤバイな。
「ほう、グレモリーの… しかし、悪魔になって日は浅いようだ。 一つ、遊んでやろう。」
堕天使の右手に光が集まり、光の槍が作り出される。
夕麻ちゃんと同じか。
「喰らえ!」
飛んできた槍を左手で叩く。
次の瞬間、光の槍が霧散した。
「…は?」
呆気にとられる堕天使。 そしてもう一度光の槍を構え、投げる。
また左手で叩いて防ぐ。
「…な、なぜ悪魔が、それも未熟な悪魔が光の槍を!?」
「答えは簡単… 筋肉の力だ!」
叫ぶと同時に堕天使の方に走り出す。 そして、全力の跳躍。
筋肉と悪魔の力により俺は空高く飛び上がり、堕天使の足をつかんだ。
「なっ!?」
「ドォォルゥァァァァ!!」
気合の声とともに堕天使を地面に叩きつける。
アスファルトが割れ、轟音が響く。 堕天使が立ち上がる様子はない。
「…取り敢えず持って帰って、グレモリー先輩に報告だな。」
血塗れになって完全に伸びている堕天使を担ぎ、駒王学園へ足を向けた。