半妖先生ぬらりひょん   作:半分

1 / 3
プロローグ 過去の記憶と十三階段

ぬらりひょん。

かつて民衆から信仰を集めた上位の神。

しかし、科学技術の進歩と時代の流れによって誰もが忘れた神のなれの果て。

 

無銭飲食を繰り返す妖怪として知られつつも、一説においては妖怪の総大将として君臨していると言う。

 

※妖怪百科事典より抜粋

 

 

プロローグ 過去の記憶と十三階段

 

坂本(さかもと)恭也(きょうや)

 

僕は幼いころに人間以外が、この世界で生活していることを知った。

彼らは人々の恐怖や畏れ…善意などの思いで誕生し、大昔から存在している異形の者たち。

 

人々は彼らを妖怪(ようかい)(あやかし)化け物(ばけもの)と呼び、恐れて来た。

しかし、時代の流れと科学の進歩によって、彼らを知る人間達はごくわずかな霊能力者たちだけとなる。

 

そして、僕もまた他の人間同様に、妖怪を信じる事はなかった。

 

そう、妖怪が見えるようになってしまったあの頃までは……。

 

当時、小学校低学年だった僕は、友人たちと野球で遊んでいた。

学校のグラウンドを駆け回り、ボールを追いかけていた。

 

皆で日が暮れるまで遊んだ帰り道。

皆と別れて一人で歩いていた僕の目の前に白い布を頭から被った怪しい人物が立っていた。

 

不審者が現れたと思った僕は、その場を回れ右して逃げ出した。

そして、逃げ出した僕の背後からはヒタヒタと言う音が迫って来た。

 

不審者が追ってくる。

恐怖を増長させた僕は、必死で足を動かし、不審者を混乱させるために小道を右へ左へ縦横無人に駆け回った。

 

しかし、僕の努力を嘲笑(あざわら)うように不審者の足音らしき音は消えてくれない。

体力も無くなり、失速した所で背後から肩を掴まれた僕。

 

反射的に背後を振り向くと……。

白く濁った瞳を見開き、鋭い牙のような歯を生やした大きな口を開けた人の様で人ではない怪物が鉄臭いにおいを漂わせながら立っていた。

 

「ッ~~~~~~~!?」

 

見た事のない異形の怪物をみた僕は、声にならない叫びを上げた瞬間。

怪物に首を噛みつかれた。

 

激しい痛みと暖かい何かが首から零れ落ち、それが上着を濡らしていく感覚。

小学生にして、死を悟った僕。

 

体から力が抜けて指一本動かせなくなった時。

彼は現れた。

 

何もない場所から突如として現れ、怪物の首に刀を差す人物

彼の姿は、僕と同じくらいの身長で長い頭が特徴的な着物姿のおじいさんだった。

 

 

消えゆく意識の中、最後に見たのは霧のように消える怪物を気にした素振りを見せず、自分の手に刀を突きさしてこちらにやって来るおじいさんの姿だった。

 

 

そして、あり得るはずがないと思っていた目覚めを経験した僕が居た場所は…病院のベッドだった。

家族と警察の話によると外傷もなく、血まみれで倒れていた僕を巡回中の警察官が僕を発見。

そのまま、救急車を手配して病院に搬送されたらしい。

 

その後は、ドラマでしか見た事のない事情聴取を経験したが、僕の話を誰も信じる事はなく、不審者にであったショックによる記憶の混乱と判断され、付近の学校に不審者警戒の知らせが送られた。

 

僕の話を信じない周りの反応を見た僕は、怪物の話をする事を辞めていつもの日常へと帰った。

 

 

そして、事件が起こる前の生活に戻った僕の元に、あのおじいさんが現れた。

得体のしれない謎のおじいさん。

僕は彼に問いを投げた。

 

「おじいさんは誰?」

 

僕に投げられた問を聞いたおじいさんは、ニヤリと笑ってこう言った

 

「魑魅魍魎の主……ぬらりひょん」

 

小学校低学年のこの日。

命の恩人である妖怪ぬらりひょんと友達となり、僕は妖怪世界と自身が命を助けられた事で、普通の人間ではなくなった事を知った。

 

それから18年後の現在。

 

ぬらりひょんを始めとした妖怪達との出会いと別れを繰り返し。

僕は今、小学校の先生になっていた。

 

 

―童守小学校―

 

 

教職に就いた僕は生徒たちと日々、それなりに平和な日常を過ごして居る。

そんなある日、僕は学校の廊下で見てしまった。

 

ぬ~べ~クラスと呼ばれる三組の木村くんが半妖怪化した霊と共に廊下を走っていく姿を……。

霊が半妖怪化するのは、それだけの悪事を重ねて人々に恐れられ、恐怖の念を集めたからだ。

それが殺しなのか、神隠しなのかは知らない。

 

だが…このまま助けなければ、木村君の命が危険だ。

 

彼を助けなければならない。

叶うなら、かつて僕を救ってくれたぬらりひょんの様に……。

 

木村君を助けると決めた僕の体が決意に呼応するように血が熱くなるのを感じながら、()は彼らの後を追った。

 

 

 

彼らの後姿を追って、たどり着いたのは童守小学校の七不思議の一つ。

 

『魔の十三階段』

 

今、()の目の前で彼らが昇っている階段は旧校舎の屋上に続く階段で、昼間は12段なのだが夜になると13段となり13段目を踏んだ生徒は二度と帰って来れない。

神隠しの類の噂話。

 

「なるほど……妖力で作った異空間に自分とよく似た子供を引きずり込む。

まるで蟻地獄(ありじごく)みたいじゃねぇか」

 

「だ、誰だ!?」

 

「え!?だ、誰かいるのか!?

居るんだったら助けてくれぇーー!!」

 

二人は階段の途中でこちらを振り向き、数歩先の()を探している。

そう、彼らは()という存在を認識する事が出来ないのだ。

 

いや、()と言う存在が強大過ぎて、魂と本能が認識することを拒否しているのだ。

 

「悪いが、この小僧をくれてやる事は出来ないぞ。悪ガキ」

 

木村の肩を後ろから掴んだ後、階段を上らせようと押し上げる悪ガキの腕を切り落とし、木村をこちら側に引き寄せる。

 

「な!?え!?」

 

「へ?お前誰だよ?俺の手は?ち、力も抜けていく………な、なにしたんだよお前!?」

 

突然現れた男の腕に抱えられ、驚く木村と肘から先が消滅した腕を見ながら狼狽する悪ガキ。

丁度あの男もやって来たし、木村は奴に任せてとどめを指すか……。

 

「ほら、大事な生徒だぜ」

 

「克也ーーっ!!」

 

「ひぃーーー!!?」

 

特殊な霊力を持った、木村の担任教師である鵺野の存在を感知した()は鵺野に向けて腕に抱えていた、木村を放り投げる。

それに反応した鵺野は持ち前の運動神経を駆使して空中に放り投げられた木村の体を傷つける事無くキャッチ。

()はその姿を見届けた後、正面の悪ガキを見据える。

さて、これで目の前の悪ガキに集中できるぜ。

 

「俺の部屋が…俺の仲間が……俺の力が……」

 

()の特別な刀に斬られた事により妖力を失った悪ガキは自身の能力である異空間を制御する事が出来なくなった。

そのせいで、部屋は13段目の階段と共に消滅し、囚われていたガキの魂も外へと解放される。

 

「これで終わりだ」

 

「ひぃ!?」

 

上段に構えた刀を悪ガキに躊躇する事なく振り下ろす。

()の刀に斬られた悪ガキは、刀の力によって霧のように現世から退場した。

恐らく今頃は天で自分が犯した罪の裁定が下されているはずだ。

 

「おい…お前は一体()なんだ?

妖怪の様だが……何故ここに居る?」

 

声のする方を振り向くと生徒を守るようにして前に出ている鵺野と後ろに隠れてこちらを伺う木村…そして、廊下と職員室などの限られた場所であるが顔を合わせた事のある子供らが階段の踊り場にてこちらを伺っている。

そう、彼らは()を5年4組の担任教師である坂本 恭也と認識できていないのだ。

 

もちろん、先ほど使った能力を使っているわけではない。

単純に俺の外見が大幅に変化しているからだ。

 

「そう警戒するなよ、ダダの気まぐれだ。

夜の学校は風情があるからと立ち寄っただけだ」

 

「ま、待て!!」

 

「き、消えた!?」

 

「さっきまで目の前に居たのに………」

 

「妖怪だったけど、カクレンジャーみたいでちょっとカッコよかったのだ……」

 

()を認識できなくなった鵺野と生徒たちの脇をすり抜け、教職員用のトイレに入り、鏡を見る。

 

「まあ、確かにこの姿で現れたら、昼間の姿と今の()が同じ人物であるなんて気づく事は出来ないだろうな」

 

鏡に映った今の()は白い髪を後ろに伸ばし、血のように紅く鋭い瞳をしている。

さらに服装はいつものスーツではなく、着物で腰には白鞘の刀を差していた。

そう、()はあの時、ぬらりひょんに与えられた()によって助けられた。

 

あの日から……俺は…。

 

「さて、久々に変化したんだ。

たまにはこの姿で夜の街に出てみるか」

 

半分だけ、ぬらりひょんになってしまったのだ。

 

 




※思いつきなので、連載するかは不明です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。