彼女との1年   作:チバ

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中学生の頃とか1番話したくない。そんな闇を抱えたチバチョーです。


11月

 中学二年生の校外学習を修学旅行と呼ぶか宿泊学習と呼ぶか、それは俺にとってどうでもいい問題だった。実際、数分後には忘れていた。

 教師に促され、それぞれ列を組み、歩き慣れない道を進む。

 

 11月ーーー宿泊学習。一泊二日の、お泊まり会だ。

 そのことにテンションが上がってるらしく、教師からの注意を聞かずに騒ぎまくる。

 

 あー、うるさい。

 そう思いながら景色を見る。

 あの神社の景色に比べたら、なんとも思えないな、などとつまらない感想を抱く。

 

 修学旅行に比べてやることもなく、宿に着き、各々部屋に入って荷物を置いた。

 

 晩御飯を食べ終え、風呂にも入り(覗きとかはしていない)、部屋で就寝の時間となった。

 

 さて、ここからだ。

 今日の宿泊学習は誰もが面白くないと直感していたためか、教師にバレないように部屋から出て、適当に散歩やら、付き合ってたらイチャイチャしようという計画を立てていたらしい。

 

 見回りはどうするのか、と言う疑問は俺も抱いた。そしたら、ジャンケンで負けた奴が残って身代わりになるという薄情な行為でやり過ごすという。

 

 そんな話を聞いた俺は、ジャンケンをせずに自ら身代わり役を買って出た。 別に好きでやってるわけではない。ただ、見つかった時のリスクを考えると、参加せずに、いざという時は奴らを裏切ればいい話だ。

 

 そういうことを考えて、俺は部屋に残った。

 教師が扉を開けて顔だけ覗かせるが、見た所異常はなかったのだろう。すぐに顔を引っ込めて扉を閉めた。

 

 もうこのまま寝てしまってもいいと思ったが、イマイチ寝れなかった。

 

 仕方なく、俺は散歩をすることにした。たとえ教師と鉢合わせをしても、トイレに行きたかってが迷ってしまった、と嘘吹けばどうにかなるだろう。最悪は出ていったあいつらを売って、俺の罪を帳消しにしよう。

 

 教師に会わないか、という緊張感に少し心躍りながら歩いていると、十字の廊下で、美竹蘭と遭遇した。

 

「……」

「……」

 

 お互いに硬直する。

 それから後を追うように鼓動が脈打ち始める。

 

「……ん」

「……」

「……なんか言ってよ」

 

 美竹の一声で麻痺から解かれる。

 

「あ、ああ」

「どうかしたの。風邪でも引いてる?」

「いや、違うな。ただ…まあ、あれだ」

 

 つまり何だ?というように眉を上げる竹。

 その空気感に耐えれなくなった俺は話題を変えることにした。

 

「それより、お前は何してるんだ?他の奴らと脱走してないのか?」

「リスク高いし、やるわけないじゃん。それに、巴たちも残るらしいし」

「ともえ…?」

「私の友達」

 

 以前に美竹は幼馴染がいると言っていたが、その()()()というのも多分その類なのだろう。

 

「大槻は?」

「お前と同じだ。リスク背負って冒険するなら、安全地帯から眺めて、いざという時は置き去りにして逃げるさ」

「薄情」

「計算高いと言え」

 

 まあ、友達を売るという行為なのだから、薄情と言われても仕方がないのだが。

 

「そうして今は暇つぶしという名の館内散歩ってわけだ」

「へえ…」

「お前はアレとかしないのか?俗にいう恋バナとか」

 

 ギクリ、というように体を震わせる。

 

「…しないんだな」

「しない…わけじゃない。する友達は2人ぐらいいるけど」

 

 いるのかよ、と心の中でツッコミをする。

 

「大槻はいたりするの?」

「何が?」

「その…好きな、人とか」

 

 美竹らしからぬ問いに、少し考えるが、揶揄わずに素直に答えることにした。

 

「いない…かもしれないか」

「かも?」

「断定できないからな。断定できない分、それを恋愛感情と決めつけるのもよくはないだろ」

 

 そのよくわからない感情を抱いているのが、目の前にいるとは、口が裂けても言えないが。

 

「それより、お前はいるのか?」

 

 話題を変えたかったから美竹に聞くことにした。

 

「私は…あんたと同じ」

「なんだ、つまらん」

「つまらなくて結構」

 

 と、その手の話題は美竹の一言で遮断された。

 

 しかし、そんな中でも俺は心の奥底で、美竹が「いる」と答えた時の反応をシミュレーションしていた。

 何故自分はそんなことを考えている?わからない。

 

「…まあ、いいか」

 

 そう言いながら窓を開けて、縁に腰をかけた。

 11月の風は少し冷たかった。

 

「もう11月か。お前と初めて話してから、もう半年が経つ」

「本当。そう思うと、時が経つのは早いもの」

 

 美竹はさりげなく俺の横についた。少し心がむず痒くなった俺は、少しだけ距離をとった。そのことに気がついた美竹は俺のことを訝しげに見たが、諦めたように目を離した。

 

「来月は、もう12月…一年が終わる」

「ああ、まったくだ。一年が終わる」

 

 頭の中でカレンダーを作るが、にしても時が経つのは圧倒的に早かった。

 

「…まあ、その前にテストだがな」

「ああ、そういえば」

 

 興味なさげにサラリと吐き捨てる。

 

「あとは、クリスマス」

「……」

「日本ってこう、なんで他の国の宗教の祭りを入れるんだろうな。紛らわしいというか、忙しいというか」

 

 などと俺のどうでもいい母国への感想なんかどうでもよかったのだろう、美竹は何か悩んでいるような表情をしていた。

 

「…どうかしたか?」

「……なんでも、ない」

 

 やや間を挟んで言う。

 すると、ずっと悩んだ顔をしていた美竹が、意を決したような顔に変えて言った。

 

「あのさ、クリスマス、予定ある?」

「……は?」

 

 突然の言葉に俺は人が豆鉄砲を食らったような顔をする。

 

「別に変な意味じゃなくて……そ、その、お礼ってやつ」

「お礼?」

「体育祭。まだあの時の借りを返してない」

「あー…」

 

 そんなこともあったな、と声をあげて思い出した。

 

「別にいいよ。気にしてない。というか、今の今まで忘れてた」

「…私が気にしているから」

「はあ」

 

 なんともまあ、自分勝手なやつだな、と俺は思った。

 

「空いてはいるけど…噂になっても知らないぞ?」

「それ、半年前に聞いた気がする」

「そうか?」

 

 俗にいうデジャブを感じたらしい。

 

「別にいらないんだがな…」

「私がしたいだけだから、空いてるなら暇しないでいいでしょ」

「ま、そうなんだけどな」

 

 美竹の言ってることも一理ある。

 

「わかったよ、行くよ」

「…!…ありがと」

「なんでお前が礼を言うんだ…?」

「なんでもない」

 

 疑問の声をあげると、美竹は背を向けて歩き出した。

 

「おやすみ」

「あ、ああ。おやすみ」

 

 その声には少しばかり怒りも込められていたような気がしたが…それもどこか、本気ではない雰囲気がある。

 そんな美竹を見送った俺も歩きだし、足を動かしながら考えた。

 

「……けど、なんなんだろうな、これ」

 

 俺の胸の中で、何かが動いていた。

 美竹の顔を見ると、少しだけ鼓動が早くなる。激しくなる。

 彼女の動向が、気になってしまう。

 

「わからねぇな…」

 

 天を仰ぎ息を吐く。

 そんなドラマみたいな事をしても、何も閃かなかったし、何も変わらなかった。

 




これは、転換点の前座。
だからこそ、文字数が少ないのだ(いつものこと)
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