※作者は二次創作でしかヒロアカを知りません。
※※多分期待されているのとは違う可能性。
結局人生なんてものは、人が全知全能で無い限りその選択に後悔がついてくる。
『貴女は手違いにより死にました』
気付けば真顔でそんなことを宣うナニカを知覚していた。
……どうやら、死んだらしい。
そして、巷で云われるところの神様転生であるらしかった。
何時死んだのかは定かではないが、本当にこういうことって有るんだなぁ、と────過ぎてしまったから言えることだが、ああ神転ねというさらっとした理解で浮かれてしまったことは否定出来ない。
ただ、少なくともどんな世界観なのか聞く位はしても良かったんじゃないかなって。
本当に今更なんだけれども、今は凄く後悔している。
『来世へ行くにあたり、貴女には特典と呼ばれるものを一つだけ得る権利があります』
『…………特典はそれで宜しいですね?』
『要望は受諾されました』
『では、貴女の来世に幸多からんことを』
──……
───………
────…………
結論から言うと、全然宜しくなかった。
現在四歳。幼女は普通に幸せな人生を謳歌していた…………前世という奴の存在と、その価値観を再び思い出す前までは。
転生時の要望は至極単純に、「お金に困らない生活をすること」である。確かに叶っていたし、多分こういう願いが一番健全で、普通だろうと思う。
だって一般庶民だもの。最強になりたいとかは考えたこともなかったです。
……でも、案外皆(というか他に神様転生をしている人が居るのかも定かではないのだが)物語的展開、無双に憧れて無茶ぶりを要求するのかもしれない。今そう思った。
あの神だか天使だかよく分からない存在が確認のように「要望はそれで宜しいですね?」なんて言っていたが、その言葉に含まれていた「えっそんなのでいいの」的不安に少々でも憐れみを感じなかったといえば嘘になる。でもだからと言って、その結果が
お金に困らなければ十分だったのである。
こんな大層な出自やり過ぎだし、普通の要望しか出してない筈。細かく条件を指定しないのが悪かったのだと言われるかもしれないが、生憎そんな事情を知る人が私以外に居る筈もなく。
思いっきり棚に上げた状態で、どうしてこんなことになってるんですかねぇ……なんて四歳児のするべきじゃないため息を漏らしながら、ちょこんと座り込んだ椅子の上で足をぶらつかせた。
つい先日、
────ほう、矢張り
娘である私の目から見ても胡散臭いような笑みでそう言う──念のためにいっておくが、彼は決して悪い父親ではないのだ──父の顔を思い出して、「ほんと、何でこうなったかなぁ」とぼやく。
勿論周りに使用人、護衛がいないことは確認してから口にしている。個性が発覚した途端にこんな風になる四歳児が居たら怖いだろう。
…………まさか、本当に思いもよらなかったのである。
この世界が単に前過ごしていたような所と同じであると考えていた特典選択時、さらっと軽く流した自分を殴りたい。最も、魂だけの状態で殴れる訳がないのだけれど。
……事の始まりは中国軽慶市だという。
発光する赤子が生まれたというニュースだった。
それ以降、各地で『超常』は発見され、原因も判然としないまま時は流れる。
『超常』は『日常』に、『
変わりゆく社会は、何時しか世界人口の約八割が何らかの特異体質を持つ超人社会となった。
私が生きているのは、そんな世界である。
個性の発生にともない、個性を使った犯罪者、ヴィランと称される者共が増加し治安が悪化していった。
そして、そんな混乱渦巻く世の中で誰もが一度は空想し憧れた一つの職業が、脚光を浴びている。
────ヒーロー。
多分、前世の自分なら鼻で笑っている。そんなものが、職業として成立していた。
そして、こんな世界観を展開していた或る漫画の存在を、記憶を思い出したからこそ私は知っていた…………残念なことに。本当残念なことにそんな程度の概要しか分からないのがつらい。
こんなことなら一通りでも読んでおけば良かったと思っても、最早後の祭りである。
…………『僕のヒーローアカデミア』。
知識が言う答えに少々愕然としながらも、とりあえず今日を生きている
前世由来の価値観でいざ見詰めてみると、親には申し訳ないが珍妙で成金臭しかしない名前だった。その癖既にこの名前にわずかながら愛着が湧いてしまっている自分が恐ろしい。
多分、この世界の住人としての感覚に心が引きずられているのだろう。
そして、この名前から察することが出来るように、言わずもがなだが…………この私を構成する個性も大体漢字から想像出来る。
と、いうか。これこそが問題である。
個性が発覚してから復活した一般人庶民的記憶がこんなの耐えられるかと喚いているような気がする。
……確かに、お金に困らないように願った。
そして、そんな環境だからこそ十全に扱えるのだろう力が私に発現している。これこそが、個性が発現してから我が家に脈々と受け継がれていて、悲しいかな私が持っている個性であった。
個人的には母の個性を受け継ぎたかったものだ────父の手前、まさかそんな家族の間に亀裂を入れることが出来よう筈もないが。
紐を通して首から下げれるようにしたリングを弄りつつ、つらつらとそんなことを考えていた。
赤みの鮮やかな宝石の嵌まっているそれは、私の個性の現れと同時に両親から贈られたもので──母の祖国であるイタリアの古い風習によるものも兼ねての、私の護身用の道具だ。
個性、なんて不確定ともいえる代物が世を席巻するよりも遥か昔から、中世を通して今もなお現地では続いているだろう、子供の為の厄除けの意味合いを持つ。
いざという時には、それを使用しろと言われていた。
…………若干四歳の子供が、中身が十分に大人である私でなければ到底把握しきれない現実であると思うのだが、ともあれそんなことを言ったとして何かが変わる訳でもない。
この世界には、ヒーローが居る。
光のある所には陰があり──まあ実際は陰が現れたからこそ光も現れざるを得ず、どちらが先であったか何て言うまでもない。その陰、悪と認知される集団……もちろんのこと、ヴィランという存在だって居た。
まさか、というのもあるのだけれど、今世の我が家はかなり規模の大きい貿易会社である。その弱みとなる可能性が大いにある故に、私に護衛がついていたとしても、最悪の状況下ともなれば私は自分の身を守る必要があった。
個性が現れて、実際にその力の確認をする時。
同じ個性である父が立ち会い、その誘導に従って初めてそれを使用した時に思ったのは嬉しさでも、到底有り得ない力を発揮した我が身に対する恐ろしさでも無い────ただ場違いのように、これって課金みたいだなぁ、とそんなことを思ったのだった。リンゴを握り潰しながら。
現実逃避、ともいう。
父が何故リンゴを選んだのかは定かではないが、対価と自身の耐久さえあればこんな幼女でもこんなことが出来るあたり、やはりこの世界って異常なのだなぁ、と思う。
残念なことに私もこの世界の一住人であるのだが。
……課金、である。
ゲームやアプリ等でしばしば誤用の方で使われている、あれだ。
私、
恐らく増強型、とやらに属する奴だろうことだかは確かなのだけれども。
ここまで来たら分かるだろうが、私のその身体強化に必要とする対価は ──小銭や紙幣、或いは身に付けた宝飾品などである。
少し悲しかったりもするが、けれどもまあ使う場面なぞやって来たらそれこそなりふり構わずだろうし、悲しがったところで何かが変わる訳でもないのだ。
多分気にするようなことでもない。……気にしない方が懸命である。
これでヒーローなんぞになった暁には『課金英雄』爆誕である。
想像しただけで恐ろしくて、勝手に体が身震いした。
…………。
まあ、改めて此処まで考えてはみたけれど、幼子である自分が何を出来るかも分からない──父と同じ個性で以て、とりあえずは今を生きることにしよう、そう思う。
続かない。
イタリア人とのハーフとか至極どうでもいい設定とかは気にせず流して下さい。
リング(珊瑚)……石言葉:威厳、成長、成就。一部地域では子供の首にネックレスのようにかけてお守りとしているらしいです。
因みに男主人公だったら将来背広の裏地が全部万札というまごうことなきネタキャラになってた。
ついでに言うなら、当初の予定では男主人公だったけどあまりにもキャラが濃すぎた為にボツにした癖に題名とか粗筋を変えない暴挙に出ているので、少し期待されているのとは違ったかもしれない。
※発端……相澤先生に個性消されて「私の諭吉返せよ!」とぶちギレる主人公が見たかっただけ。