電「?
翔さん、何を言ってるのです??」
翔「いや、何でもない。...コンブは国立大学を目指すらしいぞ?」
電「それも九州大学...何気難関校目指しているのです。」
翔「まあ、私と比べたら足元にも及ばないがな。
────んじゃあ、」
翔・電『本編へ、どうぞ!』
「加賀さん?」
「...!
失礼しました。一応論文は出来ましたが────」
「もうそろそろ寝るべきだ。こんな夜遅くまでよく頑張ってくれた。」
壁掛け時計は〇一三〇を指し、日をまたいでだいぶ経ってしまったようだ。
電はソファーでよこになって...
...
「加賀、大丈夫か?」
「...!
失礼しました。一応論文は出来ましたが────」
「それはもうさっき聞いたぞ?
ここで寝た方がいいだろう。」
と言って提督は布団を出すが、一つしかない。
いつも提督は電と寝ていると聞いたが、小柄な電なら一つの布団でも一緒に寝られるだろう。
「...じゃあ私は畳で寝るから、布団を使うといい。」
「い、いえ...提督が畳で寝るのに私だけふとんをつかうといふのは...」
部下である私が提督を畳で寝かせるなど言語道断。
かと言って私は布団でないと寝られない。
半分機能していない頭でどうにか考えを絞り出す。
...なんだ、簡単なことだ。
「わたしとていとくで...ふとんにはいればいいじゃないですか...」
────狭い。
加賀が自室に戻ればいい話だが、半分機能していない頭ではそんな面倒な考えは浮かばなかった。
(それにしても、寒いですね...)
第六鎮守府からかなり北にある第七鎮守府は、春先とはいえかなり寒い。
それも日本海側に位置しているため、きっと冬本番はとんでもない量の雪が降るだろう。
(...もう、寝ていますよね?)
あまり音を立てないようにもぞもぞと移動して、提督の背中に抱きついて目を閉じる。
あぁ、暖かい。これならゆっくりと寝られそうだ。
しばらくして遠くへ意識が飛んでいこうとしていると、このタイミングを見計らったかのように提督がこちらを向いて抱き寄せてきた。
(て、提督?!!)
ゆっくりと頭を撫でてくる。背中に回された腕は優しく、でもどこか力強くて。
私の身体が暖かい提督に蕩けるように、意識は夢へと沈んでいく...
∽
────どうしてこうなった。
何度目になるか分からない自問自答を繰り返し、目を閉じてうろ覚えの般若心経を頭の中で唱える。
加賀を寝せようとすると、加賀から一緒に寝ようという誘いを受けた。私がコンマ二秒でいいだろう、と返事をしてしまったのが原因かしれないが、私も一人の男だ。
こんなにも美人で大人の魅力にあふれたお姉さんから一緒に寝ようと言われて、どうして断れるだろうか────いや、断れない。
一応端っこに身を寄せてはいるものの、当然なかなか眠れない。
加賀はいつもこちらを窺っている、警戒心の強い艦娘だ。
実際、医務室でも私の独り言に答えるほどよく私のことを見ているのだ。
おそらく(もぞもぞ)私が提督として相応しいかを試し
────ぎゅむ。
...良くやった鞍馬翔。さっきのタイミングで声を出さなかったのは称賛に値する。
どうやら背中に腕を回されてホールドされたようだ。生憎私は端で寝ているためこれ以上引くことは出来ない。
細い腕には少し力が込められ、身体はやわらかくて暖かい。女性特有のほんのり甘い香りやら二つの核弾頭やらが、私の理性を削りにくる...
────ん?ちょっと待て。
加賀はまだ私を提督として認めていないはずだ。
一緒に寝たのも今背中に抱きついたのも全て私の器量をはかっているのではないか?
────いい度胸じゃないか。
私の心に火がついた。
ここまで挑発的な態度を取られては、日本男児として受けて立つしかない。こんな所で襲って憲兵さんのお世話になって一生残る傷を負うわけにはいかないのだ。
反撃に出ようと試みた私は、身体を反転させて加賀の身体を正面から受け止める。
どうだ加賀よ、お前の企みなど真正面から受け止め────
「...てぇ......と...ぅ.........?」
ぐはあ────ッ!
寝ぼけ眼をうっすら開けて上目遣い。いつもの心まで見透かされそうなあの鋭い目とは真反対の、庇護欲をくすぐるか弱い少女の目に私の脳は多大なダメージを受けるが、とても私を試そうとしているとは思えないことがわかった。
────いや、騙されるな鞍馬翔ッ!これは演技、私を籠絡しようという罠なのだ。
理性を保つ為にそっと頭を撫でて顔を下に向け、しばらく待つ。
程なくして、規則正しい寝息が聞こえてきた。
「────電、来てもいいぞ?」
「バレてたのです...」
むくりと電がソファーから身体を起こす。
加賀を襲う前についていた最大のタガ、それは電が起きていたことだ。
電は翔が居なければ寝られない。
翔もまた、電が居なければ寝られない。
「よいしょっと...」
電がソファーから這い出て、手探りで翔の背中にしがみつく。声を頼りに這い寄ってきたようだ。
「次は、怒るのですよ。」
「後にも先にも、これが最後さ。」
...おやすみ、電。」
「...おやすみなのです、翔さん。」
∽
毛布と枕を両手に抱えて、ぺたぺたと廊下を歩く。
ホテルのように洒落ている壁のライトは省電力設定で、暖色の光を優しく放っている。
「...もう、一人は怖いよ。」
漂流している間、いつ深海棲艦に襲われてもおかしくない中燃料は尽き、防水性に優れた艦砲弾薬ですら、身体が半分沈んでいる状態が続いていたからか濡れて撃てなくなっていた。...まあ、濡れていなくても数発分しか残っていなかったが。
「...一人は辛いよ。」
ずっと、一つも武器も通信も無くただ海面を漂う日々。ノイズしか聞こえない無線機に声を吹き込んでいたが、それももう疲れて出来なくなった。
「...一人は冷えるよ。」
“寝る”。これが、彼女の至った境地だった。艤装展開時は体温がいくら下がっても死ぬ事は無い。ひたすら寝る。寝ることによって体力の消費を抑える効果もあったが、...もし、深海棲艦に見つかっても気付かぬうちに楽に死ねると思っていたのだ。
「...一人は、寂しいよ。」
それでも、今まで仲間と暮らしていた響にとって一人ぼっちというのが、どんなに寝てもごまかせない最大の苦痛であった。
∽
「......」
薄暗い廊下に点々と灯された光。
窓の外は真っ暗、遠くに街の光がうっすら見える。
行きは尿意に思考を支配されていたが、用を済ませて落ち着くとどこからか不安やら恐怖やら色んな感情が噴き出してきて、足がすくみ帰れなくなってしまった。
...だからといって、怖くてトイレに一晩中こもっていたなんてことが見つかればみんなから笑われるし、何よりレディとして相応しくない。
「...よし。」
私は長女であり、淑女なのだ。こんな所で止まっているわけにはいかない。
曲がり角に差し掛かった瞬間、
「...暁かい?」
声をかけられた。
∽
『ぴゃぁぁあああぁあぁああぁあ!!!!』
「ひっ?!」
どこからか聞こえた叫び声を聞いて心臓が跳ね上がる。
村雨お姉ちゃんと寝ているとトイレに行きたくなって、目が覚めてしまったのだ。
「おおおお姉ちゃん...!」
「...んぁ?どーしたの春雨ぇ」
無理やり起こしたからか、声がふにゃふにゃしている。
「おばっ、お化けが!」
「ぁによ、お化けなんている訳ないじゃない...」
「じ、じゃあ...トイレに付いてきてほしいです...はい。」
「一人じゃ怖いのぉ?仕方ないわね...」
お姉ちゃんが居るだけで、深夜特有のあの不思議な心強さが無限に湧き出てくる。
叫び声の正体も突き止めてやろうと、意気込んで部屋を出る春雨であった。
∽
「あら〜?」
「んあ?」
「さっきのは?」
「叫び声...に、聞こえましたが。」
「おいおい、まさかバレちまったとか?」
「だぁいじょ〜ぶだって。ほらほら摩耶ちゃん、も一杯!」
アタシたち巡洋艦は、親睦会という名義で飲み会を開いていた。
酒は北上と龍田が勝手に持ってきた。まぁ安い酒だからそこまで怒られはしないはずだし、親睦会だと言えば押し切れるだろう。
...ん?アタシたちの中に二人、戦艦が混じってるって?
榛名は高速戦艦だけど、一応巡洋戦艦って括りなんだぜ?
山城は...コイツも連れないと『やっぱり仲間はずれなのね...不幸だわ...』ってうるさいんだよ。
まあ、暗そうなヤツだけど意外といい飲みっぷり見せてくれるし、いいじゃないか!うむ!
「酔いも回って火照ってきたし〜、...冷やしに行かない?」
「まさか...さっきの叫び声の正体を?」
────面白い。
榛名は苦手そうだが、アタシは幽霊の存在は断固認めない派で、お化け屋敷やら心霊スポットは楽に行けるタイプだ。非オカルト派のアタシが聞いてしまっては、確かめずには居られない。
「面白そうじゃねーか!アタシも乗った!」
「確かに、少し歩くのもいいかもしれないですね。」
「えー、めんどくさいよぅ〜。」
「じゃあそのお酒あげるから、北上ちゃん1人でお留守番よろしくね?」
「やったーい!」
酒を独り占めさせるだって?
「...(龍田、あんなこと言っていいのか?)」
「...(まあまあ、見てらっしゃい。)」
グラスに少し残った焼酎を飲み干して、龍田が立ち上がる。
「それじゃあ、行きましょうか。」
ぞろぞろと五人で出ていく。
「やったーい、お酒ひっとりっじめ〜ぃ♪
......置いていかないでよぉぉぉ!謝るからぁぁあ!」
「ほら、言ったでしょう?」
ふふっ、と。
龍田が悪戯っぽい笑みを浮かべた。
∽
翌朝
「...さて、一人ずつ言い訳を聞こうか。」
昨日は加賀と電の三人で寝ていたはずだが、朝起きると艦娘全員が執務室の畳で寝ていたのだ。
「私と電は言うまでもなく。加賀が一緒に寝ていたのは、遅くまで仕事を手伝ってもらって部屋に戻れそうに無かったからだ。」
「司令官さんの言葉は本当ですし...や、やましいことは何も起こってないから大丈夫なのです!」
「起こる起こらないの問題じゃないわ...」
加賀は翔と抱き合った姿勢で目を覚ましてからずっと、火照って戻らない顔を両手で隠している。クールな印象が台無しのその仕草はとても...なんというか、ギャップがあってかわいい。
「────で、響。医務室を勝手に抜け出しちゃあダメじゃないか。」
海岸で超低体温状態で見つかった響は、安定するまで病室に寝るように言っておいたはずだ。
「そんなこと言われても...寂しかったんだよ。
もう、一人は嫌なんだ...」
帽子を握りしめて、目をうるうるさせながら申し訳なさそうに言う。周りの目線も相まって、翔の人生において最大級の罪悪感に苛まれる。
「わ、わかった。今晩からは駆逐艦部屋で寝ような?」
よしよしと帽子の上から頭を撫でてやる。女...それも子どもを泣かせるなど、日本男児として風上にも置けぬ失態だ。
「で、暁と雷。君たちは?」
「あたしは...トイレに行ってて、帰り道で雷に脅されてから響や春雨たちと会ったのよ。」
「暁ったら私が後ろから声をかけたら────」
「あーーーーー!わーーーーー!!」
...何やら恥ずかしいことがあったようだ。あまり詮索は
「────あの時の叫び声は暁ちゃんだったのね!」
「『ぴゃぁぁあああぁあぁああぁあ!!!!』」
「あはははは、北上ちゃん似ってる〜!」
可哀想に...暁も加賀と同じように顔を両手で隠してぷるぷるしている。
「春雨と村雨はなんで出ていたんだ?」
「私も、トイレに行きたくて...お姉ちゃんを連れて...はい。」
「そうかそうか、失礼なことを聞いてしまった。」
ふむふむ。ここまでは納得できる。
「問題はお前らだ。酒臭いぞ。」
「鈴谷たちには風当たり強いぞーロリコン提督!」
「高い酒ばかり開けたヤツの態度か...!」
「まあまあ、私たちも暁ちゃんの声を聞いて執務室に行ったら、みんな仲良く寝てたからご一緒させてもらっただけよ。」
山城が弁解する。まあ、どうせ風に当たろうと歩いていた途中で気分が悪くなって近くにあった執務室で寝た、といったところだろう。
「とりあえず、ある程度の酒や食糧なら買ってきてやるから、勝手に飲み食いしないよう頼むぞ。」
『はーい』
「じゃあ、今日はこの表を参考に遠征・訓練をしてくれ。訓練内容は君たちに任せる。加賀はこの地図の場所を参考に弓道場を借りて練習してくれ。
...じゃあ、解散!」
────護送任務まであと九日。
後書き・龍田
「ここまで読んでくれた読者の皆さん、ありがとうございます。
今回のお話はどうだったかしら〜?
次回の投稿はかなり遅くなってしまうみたいだけど、気長に待っててくれると嬉しいわ♪」
...ん? ま て な い の?
───そう、私の聞き間違いだったみたいね。
次回、サブタイトル予想は秘密♡
コンブさんの話だと、近々私が出るんだとか...
お楽しみにね〜♪」