あなたが手を引いてくれるなら。   作:コンブ伯爵

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電「前書きと後書きの尺をもらったのです!」

翔「うむ。作者がこういう台本形式の前・後書きに憧れてたらしいからな。」

電「...というわけで、作者さんからの言伝をひとつ。今回のお話を読む前に、一旦1話の冒頭を見返すことをおすすめする、とのことなのです。」

翔「鈍筆な作者の投稿ペースのせいで内容を忘れた読者さんもいるだろうからな。」

電「どうか、見捨てないで付き合ってやって欲しいのです...」





3話 もぬけの殻

 

 

 

 

 ────そして時は現在に戻る。

 

 

 

 

 

 二〇〇〇、太陽は沈み辺りは暗い。

 

 

 ぎいぃぃ〜っと軋む扉を開き、いよいよ第七鎮守府......本館へと一歩足を踏み入れる。

 

 ロウソクタイプの手持ち懐中灯に火をつけ、壁のスイッチを探す。

 

 ────あった。

 

 パチン、と押してみるが...

 

「まっくら、なのです?」

 

 ......蛍光灯がつかない。電気が通ってないのだろうか。

 

 とりあえず執務室に向かおうと思ったが、改めて周りを照らしてみる。

 

 (なんだこれは......?)

 

 廊下が所々抜けているが、床木は腐っていない。つまりは何かによって破壊されたということだ。

 

かつーん、こつーん、かつーん、こつーん。

 

翔と電の二つの靴音が暗闇に響く。

 

 今は四月......春かもしれないが、ここは北の地。

 ひんやりとした夜の潮風が、割れた窓から廊下に吹き込んでくる。

 

 深夜の学校のような、いつ何が出てもおかしくないと思わせる不気味な雰囲気が、暗い廊下に満ちている。

 

 もし一人だったなら、流石の私も歩くのを躊躇うだろう。

 

 手を繋いでいた電をおんぶして階段を上り、二階......執務室に着いたは良いものの。

 

「この鎮守府から、人の気配が全くしないのです。」

 

「本当になんなんだ?この鎮守府は......」

 

 家具どころか机と椅子もない、殺風景な執務室。

 

いや、空き部屋と言っても過言ではないだろう。

 

 そしてこの部屋は、特に荒らされていた。

 

 この鎮守府の外観こそそ綺麗だが、中が化物でも暴れたかのようにボロボロだ。

 

 ────何かがおかしい。

 

「工廠へ行くか...」

 

 鎮守府から出て、隣にある工廠に入ろうとするが、鍵が掛かっている。

 

「電」

 

「はい!」

 

 懐から出した鍵束を受け取る、と。

 

「静かにするのです...」

 

「む?」

 

 突然袖を引き、強ばる電。何かを感じ取ったようだ。

 

 「誰かが、この中に居るのです。」

 

 ようやくこの鎮守府の人間と会える、と思うと嬉しさがある反面、正門前の憲兵の言葉を思い出す。

 ...非道な扱いを受けた艦娘が待ち伏せでもしているのではないか、と良からぬ気もする。

 

「電、離れていろ。」

 

 意味は無いかもしれないが懐中灯を持たせ、下がらせる。

 

 ふっ、と息を短く吐き、警戒する。

 

 ゆっくりと鍵を回し、ドアノブをゆっくりと引く。

 

 ぎいぃぃぃぃ...と軋みをあげて開く扉。

 

 

 

 

 

 ...?

 

 

 

 

 

 

「誰か居ないの────」

 

 か、と言おうとした瞬間。

 

 

 

 ────ひょおん

 

 

 

 何かの風きり音がした。

 

「────くっ!」

 

 ガツン、と地面に散った火花が、人影を一瞬映し出す。

 警戒していなければ確実にやられていただろう。

 

 一旦距離を置き、暗闇の中で『なにか』と対峙する。

 

 

 

 

 ────ザリっ.........ダッ!

 

 『なにか』が走ってくる音。

 先ほどの火花からおそらく鉄パイプのような鈍器を持っているのだろう。

 

 軍学校を思い出せ...

 

 翔は走ってくる『なにか』に対して身体を沈ませ、大きく一歩踏み出した。

 

 得物を振り上げていたのだろう、『なにか』のがら空きの胴体に体をぶつける。一般には体当たり......当て身、と言われる技だ。

 

 運動が苦手だったとはいえ、翔も一人の軍人。護身術程度は叩き込まれている。

 

 「────っ?!」

 

 思わぬ反撃に怯む『なにか』。

 

 その隙に手探りで腕を捻って武器を落とし、組み伏せる。

 

 ...思ったより細く、柔らかい。女性...艦娘だろうか?

 

「手荒な真似をすまない、私はこの鎮守府に今日から提督として着任した鞍馬だ。...お前は何者だ?」

 

「提督、だと?

 

 ────今更何しに来やがったぁ!」

 

 叫び声とともにぐぐぐ、と押し返される。

 

 技術こそあれど、翔は単純な力勝負にめっぽう弱い。

 たとえ組み伏せている圧倒的優位な立場だったとしても、艦娘という人外の力では──

 

「......くっ!」

 

 固めるのを諦めてもう一度距離を取る。しかし、

 

「クソが...こんな、とこで......」

 

 ばたり、と生々しい音。

 ────力尽きたのだろうか。

 

「し、司令官さん...大丈夫ですかぁ?」

 

 電が入り口から声を上げる。怖かったのだろう。

 ...いや、司令官と呼んでいるあたりある程度の範囲で落ち着いているはずだ。

 公私の切り替えをハッキリできる優秀な子である。

 

「うむ。襲われたが、大丈夫だ。」

 

「襲われた時点でいろいろ大丈夫じゃない気がするのです...」

 

 気にするなと返しながら入り口へ行き、電の手を取ってから倒れた女を照らしてみる。

 

 よく見ると服はボロボロで肌も煤けていて、まともな状態ではなかった。

 

「...とりあえず、運んでやるか。」

 

 よいしょ、と女を背中に担ぐ。

 傷に触れないよう、揺らさないよう慎重に...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────むにゅん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「司令官さん、なにか(よこしま)なことを考えているのです?」

 

 冷ややかな声が刺さる。

 

 

「────いや、何でもない。」

 

 

...私の声は、震えていなかっただろうか。

 




後書き・電

「ここまで読んでくださった読者の皆様、ありがとうなのです。次回は新たに4人の艦娘さんが登場予定です!
いきなり翔さんは襲撃を受けたそうですが、上手くやっていけるのでしょうか。
次回、“夜の闇に紛れて”。」

作者「小説には手をつけたいけど、ゲームもしたいって...おかしいですか?」

電「おかしいのです!さっさと執筆に戻るのです!!ていうか私のMVPセリフを真似しないで下さい!!!!」

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