あなたが手を引いてくれるなら。   作:コンブ伯爵

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翔「コンブの住んでる地域はそこまで雪は降らないのだが、最近積もることがあるらしいな。」

電「九州で積もることはなかなか無いのです。」

翔「日本海側の東日本が、メートルを超える積雪らしいな...」

電「一日でも早い復興を、お祈りするのです。
それでは────」

翔・電『────本編へ、どうぞ!』


30話 最高で最悪な夏休み

 

 

 

「「「海だぁぁぁぁぁ!!」」」

 

 あっ...暁が砂浜に足を取られて転んだ。

 

 この鎮守府に来て五日目、瑞鶴と加賀も仲直りして第八鎮守府の艦娘たちとも打ち解けてきたところで、海に出ようという話になった。

 誰が言い出したかは分からないが、もう流れに任せて私も海に出た。

 背中の傷も火傷の跡がいくつか残っているが、まあこの程度なら上着を羽織れば問題ない。

 

 最初に第六駆逐隊と鈴谷が走って海に突っ込む。

 

「しれーかーん!泳がないのー?」

 

 海面から顔を出して雷が私を呼ぶ。

 

「まさか...泳げない??」

 

 ぷぷぷ、と鈴谷がこっちを見て口に手をあてる。

 

 ものすっごく腹立つ笑顔だったが、どうにか耐えた。

 

「私は貧血体質だから、電とここで君たちを見守るよ。」

 

「ちぇーっ。」

 

 つまんなそうに沖へと泳いでいく鈴谷。

 

 次に戦艦組と春雨村雨姉妹が出てくる。

 お姉ちゃん置いてかないで〜、と沖へと走っていく春雨。

 

 あっ...砂浜に足を取られて転んだ。

 

 

 

「赤城さん...」

 

「加賀さん...」

 

「「勝負で────」」

 

「「いや二人とも(てめぇら)何やってんだ!」」

 

 秀吉と言葉が重なる。無理もない、更衣室から出てきた一航戦の二人はぴっちりスウェットスーツを着込んで、フィン(潜水する時に付けるあの足ヒレ)やシュノーケルゴーグル、更にはウキの付いた編みかごを赤城が、一本針のモリを加賀が手に持っていた。

 

「海女さんにでもなったのか...?」

 

「はい、今から漁に行ってきます。」

 

「......流されんじゃねぇぞ?」

 

「もちろん、気をつけます!」

 

 他の艦娘たちが水着で遊んでいる中、ぺったぺったとスウェットスーツで海に駆け込む二人はかなりシュールだった。

 

 

 

「提督さん、ちょっと...日焼け止め塗ってもらえないかしら?」

 

 巨大パラソル(絶対領域)で砂のお城を作ろうとしていた私の元に、龍田が寄ってきた。

 

「あぁ、横になっ────」

 

「────私がやるのです。」

 

「「え?」」

 

 ぱしっと龍田の手から日焼け止めをひったくり、無理やりべしゃっと押し倒し...ものすごく卑猥な手つきで塗ったくる。

 

 ぬるぬる、つーっ、ぐりぐり

 

「ひゃ...ちょ、電ちゃん激し...あっ...!」

 

「......」

 

 ぷにぷに、ぬるぬる、むにむに

 

「ちょっとぉ...前は、頼んでな────ひぃん!」

 

「......」

 

 季節外れの白百合を背中に、ザクザクとスコップで砂山を積む私であった。

 

 

 

 

 ∽∽

 

 

 

 

 『『『海だぁぁぁぁぁ!!』』』

 

 第七鎮守府の艦娘たちが何人か走っていく。

 

 あっ...ちびっ子が一人転びやがった。

 

「......望月ィ、お前も泳いできたらどうだ?」

 

「えー、めんどいし暑いし...」

 

 ぺたぺたと砂山を積んでいる俺の隣で、ブルーシートを敷いて本なんか読んでやがる。

 ...こんな孤島に着任させてしまって、仲間はたった数人。他の鎮守府の艦娘とも滅多に会えねぇってのに、折角の友達を作るチャンスを潰そうとしていやがる。

 

「......ええいッ、ガキはガキらしく遊んどきゃ良いんだよォ!」

 

「うわっ、司令官?!」

 

「うおおおおおおお!!」

 

 望月を肩に担いだ俺は海へ猛ダッシュ。

 勢いのまま思いっきり望月をぶん投げる。

 

「おらあああああああ!!」

 

「うわぁぁあぁあああ?!」

 

 ────ドッボーン!!

 

「あ!望月ちゃん!一緒に遊ぼ?」

 

「えっ...あ......っ、うん!」

 

 

 

 

 

 ぽーん、コロコロ...

 

「Hey!ショーグン!

 ボール取って...って、何を作ってるんデスかー?!」

 

「......あぁ?

 シャチホコだよ。」

 

「そんな淡々と言われてもreactionに困るネー...」

 

 確かにこの反り具合を砂で作るのはかなり苦労した。

 

「......そういうお前らは...ビーチバレーか?」

 

 見た感じ金剛、瑞鶴、根暗不幸チームと榛名、輪っかの薙刀、だるそうなおさげチームで分かれているようだ。

 

 なかなか大きな流木(艤装を展開して剛力で砂浜にぶっ刺したのだろう)に漁船のボロ網を引っ掛けて、これがまたなかなか様になっている。

 

「提督もやるぅ??」

 

「......いや、ここで見守ったらァ。」

 

「じゃあ、ワタシの活躍見ててくださいネー!」

 

 

 

 ぽーん、ぽーん、ぱしん!

 

 おっ、なかなか強い榛名のアタック。

 ぽよん、と胸が揺れる。

 これは取れな────

 

 ────ずしゃぁぁあっ!

 

 瑞鶴のレシーブがギリギリで刺さる。

 飛び込んでも“地面に擦れるもの”が無いぶん、他の艦娘より動けるんだろう。

 

 ぽーん、ぱしん!

 

 お返しと言わんばかりに金剛がアタック。

 ぷるん、と胸が揺れる。

 

 しかし、おさげ女子がまるでそこに球が飛んでくるのが分かっていたかのように、ぐっと踏ん張って受け止める。

 ...いい尻だ。

 

 ぽーん、ぽーん、ぱしん!

 

 輪っか薙刀がアタック。ふよん、と胸────

 

 

 

 ────ジャキン。

 

 目の前に薙刀が現れた。

 

 

 

「あなた、さっきからどこを見ているんですか?」

 

 

 

「すみませんでしたァァァァァ!!」

 

 ジャンピング土下座。つい目がいっても男の(サガ)っていうか仕方が無い気もするが、ここで少しでも反論しようものならあの薙刀で...

 

 その先を想像すると、下腹部が“ひゅん...”っと妙な浮遊感に包まれる。

 

「...まぁ、私たちもこんな格好ですから、見るとしてもガン見はやめてくださいね?」

 

「申し訳ございませんでしたァァァァァ!!」

 

 

 

 赤城のヤツが海女さんみてぇな格好で海に繰り出したり色々あったが、大した問題もなくみんな思い思いに楽しんでいる。

 

 ...そろそろ、“アレ”を準備するか。

 

 

 

 

 

 

 

 ∽

 

 

 

 

 

 

 

 ────?!

 

 俺はあの幼女を医務室に運び込んでから、椅子に座ってそのまま寝てしまっていたようだ。

 

 白髪の幼女は、まだ目覚めていない。

 

 「......」

 

 ぷにぷにとほっぺたをつついてみる。

 その肌はすべすべだが、人とは思えないほどに冷たい。

 

 「んぅ......?!」

 

 体を捩ったかと思えば、突然がばっ、と起きる。

 

「あっ」

 

「ギっ...!」

 

 ここまで傷だらけのボロボロなのに体を動かしたから、激痛が走ったのだろう。

 

「オマエ...にンげん?」

 

「あぁ。まだ傷だらけだから、しばらく寝て────」

 

 いや、艦娘の傷は寝ただけでは癒えない。

 

「────いや、風呂に入ってもらおうか。」

 

「フロ...?」

 

 まさか、この体格から恐らく艦種は駆逐艦、風呂を知らないということは...

 

 俺の脳裏に『弾除け』という単語が浮かぶ。

 

 何も知らない駆逐艦をわざと過酷な海域に連れていき、文字通り弾除けに使うというあまりにも非人道的な戦法だ。

 ここの前任がやろうとしたところで逮捕になり、なんとか犠牲者は出なかったのだが...

 

 (クソっ、もう他の鎮守府では行われているのか?!)

 

 背負って風呂場まで連れていき、当然抵抗されたが服を脱がせて浴場に運ぶ。

 ...なんだか昔風呂嫌いだったうちの娘に似ている。

 怪我が痛いのか、まだおとなしかったので湯船に入れることができた。

 

 「ふぁ...」

 

 どうやらお気に召してもらえたようだ。

 

 ぱらららら...

 

 湯船に入れるとタイマーが起動し、どれくらいで修復が終わるか示してくれる。

 まぁ駆逐艦だから長くても4〜50分────

 

 ぱらららら...

 

 

 

 

 ────チーン『07:32:59』

 

 「はぁ?!」

 

 約7時間半である。こんなにも時間がかかるのは、こっぴどくやられた加賀か特に運が悪い日の山城ぐらいだろう。

 

 流石にここまでは待ってられない。一旦風呂場を出よう...

 

「置いテく、の...?」

 

 うるうるとした目で、こちらを見ている。

 

 ...仕方ない、こちらも話し相手が欲しかったのだ。

 

 からからと木の椅子を引っ張り出して座り、幼女に尋ねる。

 

「んじゃあ...まず、名前は?」

 

「ほっぽ...」

 

「ほっぽちゃんね?

 じゃあ、ほっぽちゃんはどこから来たの?」

 

「ソこ...」

 

 と言って、半開きの磨りガラスから覗く海を指さす。

 やはりどこかから流れ着いたのだろう。

 

「ここに来る前に、覚えてることは何かない?」

 

「カンムスに、やラれた......」

 

 しゅん、とうつ向く。やはり弾除けにされたのだろう。こんな小さな子を盾にするなど、どんなに酷い人間でもそうそうできることではない。

 

「じゃあ、この辺のことをまだ知らないんだね?

 ちょいと長くなるけど、聞いてくれるか?」

 

 「うん...!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ∽

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ふう...こんなものか。」

 

 巨大な砂山をカリカリとヘラやら爪楊枝で削っていき、60cmくらいの姫路城を作り終えた所で一息つく。

 

「流石は翔さんなのです!」

 

 艤装展開...剣を取り出して視力を上げた電が、私の大作を褒めてくれる。

 

「......お前らァ!スイカを切ったぞ!

 あっ馬鹿野郎取りすぎだ...ってか赤城てめぇいつ帰ってきた!!」

 

「スイカを切った、と聞いて上がってきました。」

 

 加賀も両手にスイカ...と、立てかけてあるモリの先に極彩色の魚が刺さっている。

 

「......お前らァ!早く来ねぇと無くなんぞ!!」

 

 

 

 ∽

 

 

 

「────とコロで...」

 

「ん?」

 

 ほっぽと何時間か話し込んで少し区切りができた時に、ほっぽの方から話しかけてきた。

 

「ドウして、私ヲ助けテくれたノ?

 

 

 

 私タチ、ニンゲンの敵ナのに...」

 

 

 

 「えっ?」

 

 

 

 ∽

 

 

 

 我先にとみんなスイカに集まる。

 

 なんとか私も二切れぶん確保し、電に渡す。

 

 あっ、暁が種を噛んで『うぇー、ぷっぷっ』ってしている。可愛いやつめ。

 

 ...と思って見ていると、島風も同じように『うぇー、ぷっぷっ』と砕かれた種を吹き捨てていた。食べるのにも速さを求めているのか...

 

 

 

「端の方で小さい...嗚呼、不幸だわ...」

 

「山城さん、ひと口いる?」

 

「えっ、あっ......ありがとう。」

 

 村雨の優しさを無下にするのは失礼と感じたのか、ひと口かじる山城。

 

 

 

 ∽

 

 

 

 ────全てが繋がった。

 

 最初の会話...どこから来たのか、という質問に海を指さして『そこ』と、答えた。

 あれは海を指しているのではなく“(そこ)”...海底だとしたら。

 

 ここに来るまでに覚えてることについて聞いたら『艦娘にやられた』と、言っていた。

 

 あれが盾にされたのではなく、深海棲艦として正面から戦って傷付いたのだとしたら。

 

 そして名前...『ほっぽ』と、言っていたが、それが『北方棲姫(ほっぽうせいき)』だとしたら。

 

 これが全て正しいと仮定すると、この響と似た見た目や入渠に7時間半も掛かること、艦娘は体温が人間のように高いはずなのに、妙に身体が冷たいことも辻褄が合う...っ!

 

 

 

 ∽

 

 

 

 私も、自分のスイカをひと口かじる。

 

 日陰に居たとはいえ、火照った身体に甘みが広がる。

 

 「翔さん、とっても甘くて美味しいのです!」

 

 もぐもぐ...うん、美味しい。

 

 

 

 ∽

 

 

 

 通報した所で、『目の前に北方棲姫がいる』なんて話、誰が信じるのか。

 

 それに下手に刺激すれば、ここら一帯爆撃で吹き飛ぶ。

 

「あレ...?聞イてル...?」

 

 ...逃れられない。

 

 

 

 ∽

 

 

 

 南の島でこんなにも可愛い艦娘(女の子)たちに囲まれて、思いきりスイカを食べることができるなんて。

 

 

 

 ∽

 

 

 

 提督も艦娘も誰一人居ないこの鎮守府で、援軍も呼ぶことが出来ずに姫級深海棲艦を相手にするなんて。

 

 

 

 ∽∽

 

 

 

 ────私は今、天国にいるのか。

 ────俺は今、地獄にいるのか。




後書き・電
「ここまで読んでくれた読者の皆さん、ありがとうございます!電なのです。

お話の方は、なにやら雲行きが怪しくなってきたのです...
翔さんや私たちのバカンスと、人の身一つで深海棲艦に挑む憲兵さんの運命...“お楽しみに”、なのです!

それと、瑞鶴さんと加賀さんの仲直りのお話は近日更新予定の短編集にて載せる、とのことなのです。

次回・サブタイトル予想『“非”日常への渦潮』。

う、渦潮に巻き込まれるのは勘弁、なのです...

それでは、また次回お会いしましょう!」
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