あなたが手を引いてくれるなら。   作:コンブ伯爵

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前書き
電「前回は確か...ロシア艦隊のみんなが助けに来てくれたところで終わっていたのです。」

翔「前回と今回しかオリジナル艦娘は出てこないんだが、タグは付けておくべきなのだろうか...?」

電「レトヴィザンさんは怒ると怖くて、エンゲルスさんはなんていうか...お調子者なのです!」

翔「ちなみにだがエンゲルス...彼女が『艦船』として生きていた頃の姿を見て、コンブはししおどしを...いや、なんでもない。」

電「???
  そ、それでは────」

翔・電『────本編へ、どうぞ!』




43話 白き出会いと別れ

 

 

『────敵艦隊撃破、海域の制圧を確認しました。

 助けてくれたロシア艦隊のみんなにはお礼を言うわ!』

 

 旗艦である暁の通信を聞いて、みんなは息をつく。

 

 今回の航路確保作戦は長い航海の末に厳しい戦いを強いられたが、思わぬ助けもあって何とか乗り切れたのだ。

 

『日本の艦娘達、そして指揮官よ...我々も手を焼いていたこの海域を鎮圧するとは見事だ...ありがとう。』

 

『いや、私たちもあなたがたの助けが無ければ撤退していただろう。改めて感謝する。』

 

 通信機からおじさん...ロシアの提督と翔の声。二人ともロシア語だったので電たちは理解できなかったが、なにやらお礼を言いあってそうだった。

 

「『ふっ、この海域を制したのも我々のおかげだな!』」

 

「『仲間を沈めかけたお前が偉そうに言うな』」

 

 なにやら拳骨を落とされているが、電は見なかったことにした。

 

「────電ちゃーーん!!」

 

 遠くから龍田の声...第七鎮守府の艦隊が合流しに来たのだ。

 

『とりあえず、電を拾ったら帰投するんだ。

 早く報告書をまとめなければな...』

 

 ...合流次第早く帰ってこいと翔は言っているが、少しくらい話してからでも許してくれるだろう。

 

「響、久しぶりね...元気にしてた?」

 

「響お姉ちゃん...!」

 

「暁、私は上手くやってるよ。

 電は...今は視えるんだったね。元気そうで何よりだ。」

 

 二人をぎゅっと抱きしめる響。電も目を細めて身体を預け、頬ずりする。

 

『響。』

 

「『なんだい、提督?』」

 

 ロシアの司令官が通信機から、響に語りかける。

 

『もし君が望むなら、この子たちと共に日本の鎮守府に移籍したらどうだ?』

 

「『な、なんだって?!』」

 

 突然の移籍の話にざわつく響やロシア艦隊。

 

『どうやら、響を私たち第七鎮守府に移籍しようとしているらしいぞ...なんてこった。』

 

 理解できず置いていかれていた電たちに、翔が日本語で説明する。

 

「ひ、響ちゃんがうちに...?!」

 

「べついーんじゃねーのか?部屋なんて要らないくらいに空いてんだろ。」

 

 と、龍田や摩耶のように素直に喜ぶ艦娘もいれば、

 

「ふむ、戦力の増強は嬉しいですが...手続き等はどうするのですか?」

 

「仮に来ることになっても、荷物はどうするの?

 制圧したとはいえ、ここを航路にするにはまず提督会議とかで報告しなくちゃ...」

 

 加賀や山城のように乗り気ではない艦娘もいる。

 

『ロシアの提督よ、確かにその気持ちは嬉しいが、流石にまずいんじゃないか?』

 

 流石の翔も突然の移籍はまずいと判断したのだろう。電たちはやはり内容を理解できなかったが、声音と話し方が“丁重に断る時”のものだった。

 しかし、

 

『む?別に問題は無いだろう。

 私の艦が本当の家族と再会したんだ。響にとって一番の選択は、君たちと歩ませることではないのか?

 そして艦娘たちを最善に導くことこそ、私たち提督の仕事だろう?

 

 ...響、君が決めるんだ。君はどうしたいんだ?』

 

 あくまで決断は響に委ねるロシアの提督。

 

「『私は...私は...』」

 

 目を閉じ、俯く響。

 

「私は...」

 

 目を開き、電たちを見据えて口を開く。

 

「────私は、ロシアで生きていくよ。」

 

「「「!!」」」

 

 全員がぴくりと驚く。

 

「確かに電や雷、暁は私の姉妹だけど...でも、私の仲間や司令官を置いていくことはできない。

 それに、航路が繋がればいつでも会えるさ。いや、会いに行くよ。」

 

 日本語で話し、にこっと微笑む響。

 普通の人間に置き換えれば、自分は生まれた時から養子だが、高校生から血の繋がった本当の家族と生きていけるかもしれない...しかし引き取ってくれた養母や周りの人たちが大好きで、そう簡単に別れたくない...という感じだろうか。

 響自身も相当悩んだはずだ。

 

『響...』

 

「『提督、これからもよろしく頼むよ。でも遠征先は第七鎮守府にしてくれると嬉しいな。』」

 

 どこかしんみりしたような、微妙な雰囲気を紛らわすように冗談めかして響が言うと、

 

『はっはっはっ...日本はここ数年あらゆる国交が断絶していたんだ。嫌というほど往復することになるぞ!』

 

 あははと笑うロシア艦隊の艦娘たち。

 電たちはもちろん理解できなかったが、ロシアの提督も響の選択を受け入れるっぽい流れになったらしい。

 

「それと...」

 

 万事が済んだと思いきや、再度響が第七鎮守府艦隊...の後ろに目線を向け、

 

「私は日本には行かないけど、みんなには新しい仲間が加わるらしいからね。」

 

「...え?」

 

 指差す方を見ると、白髪の駆逐艦が海面に浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

 ∽

 

 

 

 

 

 

「艦娘さん...なのです?」

 

 近接戦闘に優れた私が刀を手に近づき、そっと様子を窺う。

 胸が動いているが...息は浅く、呼びかけても全く応じない。

 ドロップ艦が気を失っていることはよくあるが、呼びかけても反応が無いほどに深く眠っているのは今まで聞いた事ない。

 

 改めてその艦を見て、不自然な点がひとつ。

 

 この駆逐艦...と思われる艦は、見た目が非常に深海棲艦に近いのだ。

 

 真っ白な髪、血の気がない肌、漆黒に染まった簡易偽装...どこを見ても深海棲艦としか思えないのだが、艦娘が察知できる“深海棲艦特有の違和感”が神経の鋭い電でさえ全く感じられないのだ。

 

 ────艦娘は本能的に深海棲艦を敵と理解しているが、その本能的作用の一つとして“深海棲艦を察知できる”能力がある。

 その深海棲艦の強さも関わってくるが、遠距離...戦艦の射程距離ほど離れていると『背中がぞわっとする』程度しか感じ取れない。

 しかし、大体近距離...駆逐艦の短い射程距離くらいの近さなら、目視しなくても方向がわかるほどに察知できるのだ。

 ちなみにだがこの察知能力は水中に対しほとんど効果を発揮しないので、敵潜水艦はソナーでしっかり探知しなければならない。

 

 感覚が一般の艦娘より鋭い電が、目の前の艦を間違えて捉えるはずがないのだ。

 

『響のことについてはカタが着いたな?

 その艦娘を連れて帰投準備に入るんだ。

 ...ロシア艦隊のみんな、本当に助かった。我々の鎮守府で良ければいつでも歓迎しよう。』

 

 手早く場を締める翔さん。今回の作戦成功に少し気が早くなっているらしい。

 

「司令官も言ってますし、帰投準備に入りましょう。

 その子は私と...摩耶さんが交代で曳航します。」

 

「ごめんなさいね...私が不幸なばかりに...」

 

 中破している山城さんを気遣って、手早く分担を決める加賀さん。

 しかし、意外な艦娘がゆらりと寄る。

 

「その〜...私が曳航してもいいかしら〜...?」

 

「ダメということはないですが...しかし、駆逐艦とはいえ軽巡の龍田さんが曳くと効率が...」

 

「どうしても、お願いなの...」

 

 恥ずかしそうにしているが、引かない龍田さん。彼女がここまで意志をあらわにするのはかなり珍しい。

 

「...わかりました。制圧は済んでいるので敵艦襲撃はまず無いですし、お任せします。」

 

 敢えて詮索することなく身を引く加賀さん。オトナな判断である。

 

「それじゃあこの辺にして...響ちゃん、ロシア艦隊のみなさん、また会いましょうね。」

 

 山城さんが少し手を振ると、

 

「『じゃーなー!我輩たちも歓迎してやるから遊びに来いよー!!』」

 

「『お前ってヤツは...っ』」

 

 ぶんぶんと手を振って見送ってくれるロシア艦隊にみんな手を振り返していたのだが...

 

「(.....あれ?)」

 

 ふと振り向くと、龍田さんがお姫様抱っこした駆逐艦を神妙な面持ちで見ていた。




後書き
「ここまで読んでくださった読者の皆様、ありがとうございます。お久しぶりです、コンブです。
 今回もまた大きく投稿期間が空いてしまったこと、深く反省しております。
 というのも私のリアル(バイトなど)が忙しかったのもありますが、お話をどういう展開に持っていくかの考案にかなりの時間を費やしました。
 響ちゃんを第七鎮守府の仲間に入れるのか、オリジナル艦娘の出番を如何に少なく削るか、そしてドロップ艦の有無、またそれに続く展開など、今回のお話は何かと大きな変わり目でした。
 かなり悩んだ結果おおよその筋道は完成させたので、きっと、次回こそ早めに投稿できる...かもしれません。
 何度も繰り返していますが、少なくともこのお話は完結させるまで決して読者様を見捨てるようなことは致しません。

 次回も気長に待っていただけると嬉しいです。」
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