メルヘン♥シンデレラウォーズ2
第一話『気付かれず気にされず』
どうも、永遠の十七歳、ウサミン星からやってきたウサミンこと安部菜々ですっ、キャハッ☆ とテンションを上げていきたいのですがそうは行きません。もう心は大荒れです。
「うわあああああんっ! こんなはずではあああああっ!」
スマホを開くのが怖いです。
「どうしたんですか菜々さん」
「た、橘ちゃん。実はですね、今朝作った出汁巻き卵がよくできたのでツイッターに載せたら大変なことに。うわあああんっ」
「タブレットで確認してみます。んぷっ」
「あああああっ、また変なリプライきてますっ!」
写真を乗せた直後から現在に至るまでずっと『俺の母さんになって!』『お袋っ』『きっと母の味』とか送られてきます。菜々はピチピチのじぇーけーなんですよっ! 似たようなのが300件くらいとか洒落になりません。
「ま、まぁ分からなくもないです」
「橘ちゃああああんっ!」
とりあえず今日の目標は名誉挽回です。何かじぇーけーらしい写真を投稿してみせますっ。手始めに制服姿を、ってキツくないですからねっ!
「おーい、今いる人は集まってくれ」
ピピッ、プロデューサーさんから集合電波を受信しましたっ。
「それでは菜々さん行きましょう、ふっ」
「いつまで笑ってるんですかぁ!」
♥
おや、プロデューサーさんの近くに見慣れない子がいますね。もしかして新入りさんですかね。
「集まったな。紹介する、今日から101プロダクションに所属することになった『佐久間まゆ』さんだ」
「佐久間まゆですよぉ。みなさんよろしくお願いしますねぇ」
焦げ茶色の髪に緑色の瞳、服はピンク色の系統ですね。左手首に赤いリボンが巻かれていてついつい目が行ってしまいます。
「よろしくだにぃ☆」
「よろしくお願いします!」
「あ、佐久間さんってあの佐久間さんですよね」
みくちゃんの言葉を聞いてはっとしました。見覚えあると思ってたんですよ実は。彼女、読者モデルの方です。でも何故アイドルに転向したのでしょうか。
「そうですよぉ。でもこれからはアイドルとして生きていくので、分からないことだらけなんです。皆さん色々教えてくださると助かります」
なんというか菜々の身をぎゅっと引き締めるような感覚を覚えます。このオーラ、明らかに只者ではありません。存在しているだけで圧倒されます。
「みんなレッスン終わったら歓迎会するからそのつもりで。今回はしっかり時間とってあるからな。まとめ役はのあさんに任せます」
「ウサミンマジックの出番ですねっ! キャハッ☆」
「あ、あぁ」
「何でプロデューサーさん生返事なんですかっ!」
勢いでそう言ってしまいましたが、少し時間を置いて考えると納得できます。菜々は『七変化』という何にでも姿を変えられる超能力を持っています。変えられるのは形状・色彩だけで物質自体は変化しません。代償は体力の過剰消耗です。そして今の菜々の姿は『七変化』を使用している状態です。つまり今菜々は体にかなりの負担をかけています。その上でウサミンマジックである変身芸をするとなれば更に負担が大きくなります。そのことをプロデューサーさんは知っているから明るい返事ができないのだと思います。心配かけてすいません、機会があればそう伝えたいです。
「まぁそれは置いておいて」
「置いて!?」
「橘さんと佐久間さんには二ヶ月後に控えた大きなライブに出てもらうからまだ入って間もないだろうけどよろしく頼む。佐久間さん今日は見学で明日から本格的にレッスンに入るから」
「分かりましたよぉ」
「分かりました」
大きなライブと聞いて体が硬直します。小さなライブはこれまで数え切れないほどやってきました。お客さんがいる時もいない時も。それが現在では中規模のライブをさせてもらえるほどに。それでも大きなライブをするのは初めてなので、未知の領域だったりします。『PROJECT・X@NADU』、絶対に成功させてみせます。
「連絡は以上だから持ち場についてくれ。外回り行ってくる」
そう言ってそそくさと退出していきました。菜々はこれからオーディションに行きます。念願だった声優のオーディションです。
「あ、菜々さん」
「何ですかプロデューサーさん」
「オーディション合格おめでとう。まだ早いけど」
「え」
「誰よりも早く祝いたかったから。それじゃ」
まだ受けてはいませんが、プロデューサーさんは勝利を確信してくれています。今回受けるオーディションは特に思い入れが強いといいますか、菜々が影響受けたアニメの続編なんです。そして相応しい声を出すべく帰ってからアフレコしたり、プロデューサーさんに音声を何度も送ったりして日々研究していたんです。声優専門のトレーナーさんがこの事務所にはいないので基本自主練習なんですよね。そんなわけで二人三脚でやってきた成果を発揮してきます。
「それではオーディション、行ってきます!」
♥
かなり人気のあるアニメの続編だけあって応募者が大勢います。前作『銀河魔法少女』から十数年、今年ついに新作が出る予定なのですが、菜々は主人公の妹役を狙っています。
「十七番安部菜々さん、そろそろ準備の方お願いします~」
「はいっ!」
アフレコスタジオの雰囲気に圧倒されます。目の前にはマイクがあって、ガラスの向こう側に審査員の方がいます。正直審査員の表情が分かってしまうのはプレッシャーです。ちなみに前作の主人公と似た感じを出しつつ妹の個性を表現できるかが鍵となっています。
それではウサミンいっきまーすっ!
台詞を二つと、キャラ声での短い歌で審査されます。台詞はあっという間に終わり、すぐ歌です。その歌も一瞬です。思った以上にスピーディーにいったので、達成感に浸るより、もう終わり? といった感覚があります。
「OKです」
「ありがとうございました、失礼します。キャハッ」
♥
恒例の歓迎会は無事に終了しました。それから一週間が経ち、オーディションの結果が送られてきました。菜々が影響を受けたアニメなので落ちてたらこれまでのどのオーディションの落選より落ち込みます。
「菜々さん、結果お渡ししますね」
「あ、ちひろさん」
101プロダクションの事務を担当している方です。プロデューサーさんは例の如く忙しいので、こういった書類はちひろさんから受け取ります。
「はい、どうぞ」
恐る恐る封を切ります。
「!?」
確かにそこには、そこには妹役『合格』とあります。
「おめでとうございます」
「う、う、うわああああああああああんっ。ぷりょりゅーしゃーしゃああああああん」
嬉しさがこみ上げてくると同時に、これまで落ちてきたオーディションのことも思い出します。あの時の辛さがようやく報われました。
「菜々さん祝福するわ」
「あ、のあさん。うぅ、ついに、ついに堂々と歌って踊れる声優アイドルと名乗れます。うわああああああああんっ」
なかなか余韻が抜けませんが、端末でプロデューサーさんに連絡してすぐにレッスンへ向かいます。
吉報がある一方で、心配なこともあります。佐久間さんが事務所に慣れてきた頃だと思っていたのですが、事はそう簡単に行きません。レッスンの合間にふと見かけると元気がないんです。レッスンの間だけなら身体的な疲れの可能性の方が大きいのですが、それ以外の時間もずっと元気がありません。今ちょうどレッスンが終わったので、話を訊いてみます。
「佐久間さん、突然すいません。菜々、浮かない表情が気になったので何かあったのかと。無理に話さなくていいんですよ、でも菜々は力になりたいです」
佐久間さんは少し考えてから口を開きます。
「あのぉ。プロデューサーさんってほとんどアイドルと顔を合わせないのですけど、それが普通なんですかぁ」
「はい、プロデューサーさんは一人で二十数名の世話や営業をしているのでかなり忙しいですよ。大事な連絡の時は顔を出しますけど、基本は端末でのやり取りですね」
菜々は可能な限り丁寧に質問に答えたつもりですが、依然として佐久間さんの険しい表情は変わりません。
「プロデューサーさんはそれで大丈夫なんですかぁ?」
なんとか上手く回している、そういう風に見えるのですが上手く回せているからと言って、大丈夫かどうかは分かりません。痩せ我慢をしているのかもしれないのです。つまり菜々は質問に満足な回答を出せません。
「今のところそれは分かりません。お力になれずすいません」
「いえ、大丈夫ですよぉ。あのですね、菜々さんに質問があります」
「佐久間さん何ですか?」
神妙な面持ちで切り出します。
「一人で二十数名の世話、営業は普通のことだと思いますかぁ?」
普通か否か、菜々は他の事務所がどうなっているのか知らないので本当の判断は難しいです。ただ、とてつもなく大変なことをしているのは確かです。そして他の事務所がそうなら、とっくに問題になっているはずです。
「いえ、異常だと思います」
佐久間さんの質問ではっとしました。言い訳になるかもしれないですが、プロデューサーさんが顔を見せる時少しも疲弊した表情ではありませんでした。恐らくそれが理由で無意識のうちにできるものだと思い込んでいた可能性があります。きっとそうなのでしょう。
「どうにかしたい、そう思いませんかぁ?」
「もちろん思います」
ただでさえ大変なのに菜々は心配かけてしまったり、声優オーディションの手助けをしてもらったりしました。それでもプロデューサーさんは嫌な顔一つ見せません。
「協力、お願いしますねぇ」
「よろしくお願いします」
どうにかできる問題なのか、それはやってみないと分かりません。
♥
それからは休憩時間全てを使って、その日にプロデューサーさんと一緒にいたアイドルに聞き込みをします。それで一日の労働時間を概算します。さすがに自宅に仕事を持ち込んでいたらそこはカウントできないのであくまで目安です。
「菜々さん、今日はこれだけ聞き込みできましたよぉ」
「佐久間さんお疲れ様です。これで一週間分の記録が貯まりましたね」
「はい、早速集計してみましょう」
日曜日。朝六時出勤。午前中はきらりちゃん、杏ちゃんを仕事場
へ送り、そのまま営業。午後からのあさんのソロ曲の打ち合わせ。その後お得意様への挨拶回り。きらりちゃんと杏ちゃんを迎えに行き、事務所に送った後みくちゃんを仕事場に送る。その後また営業、巴ちゃんの写真集の売り込みだそうです。その後また事務所に戻り、トレーナーさんと打ち合わせ。と同時にアイドルの体調を把握。そして深夜三時過ぎまでファンからの贈り物を仕分け。月曜日以降も内容は違えど、平均して朝六時から深夜三時まで働いています。はっきり言って無茶苦茶です。
「トレーナーさんとの打ち合わせとか直接アイドルとの接点がない情報の元はどこからですかぁ?」
「菜々は鷺沢さんから訊きました。把握がまだできていない時間帯を示してプロデューサーさんは何をしているのか知っていますかって質問したんです。まさかここまでの情報を知っているとは、ほんと驚きました」
「そういうことだったんですねぇ。お陰で具体的な労働時間が分かりました。問題はこの次ですねぇ」
「一応仮説とか立ててみますか?」
「そうしましょう。と言っても一つしか思い浮かばないですが」
プロダクションがブラック企業。ただしアイドル達は普通に働いています。
「プロデューサーさんだけそうなっている理由がよく分かりません。更なる調査が必要ですね」
「そうですねぇ」
「このこと、他の人に相談するべきでしょうか。余計な混乱は起こしたくないです。でも、事務所自体の問題であれば個人がどこまで介入できるかどうか」
事務所を敵に回すとなれば菜々のアイドル生命は当然危ういです。だからといってこんな形でプロデュースなんかされたくありません。もし辞めないといけなくなったら潔く辞めて、また地下アイドルとして活動します。いつでも這い上がりますから菜々は。
「そこなんですよねぇ。労基に通報するにしても客観的な証拠が必要になってきます。それを集められるかどうかですね」
客観的となると機械に記録が残らなければ難しいです。今回は聞き取りなので証拠とは言えません。
「少し人増やしますか? 巻き込むのは申し訳ないですが、重大な問題ですし」
「まゆはまだ事務所に来てまもなくて繋がりが乏しいのでお願いできますかぁ?」
「お任せ下さいっ」
というわけでここから本格的に調査を始めます。問題が問題だけに慎重を期します。
♥
菜々と良く関わりがあって、能力的に有効な二人を誘いました。
「菜々さん助太刀に来たにゃ」
「みくちゃんありがとう!」
猫とコミュニケーションを取れる能力『
「菜々さんの頼みなら断れないんですけど」
「乃々ちゃんありがとう!」
姿を消す能力
「みく達は具体的には何をすればいいの?」
「基本的にはプロデューサーさんの尾行です。みくちゃんは猫に尾行を頼んで下さい。菜々と乃々ちゃんは透明になって尾行します。各自の日程を鑑みてシフトを作りましょうか」
「はいにゃ!」
「はいぃ~」
実はこの尾行には調査の他にもう一つ目的があります。上手くいくかどうかは分かりませんが。
のあさんにも相談します。もしかしたら止められるかもしれませんけど。一応菜々が変身して尾行していることは伏せておきます。心配掛けたくないですから。
「皆さん、くれぐれも無理はしないで下さいね。大きなライブ控えていますかね!」
仕事に影響が出てしまったらプロデューサーさんを裏切ることになります。それは本末転倒です。
「緊張してきたにゃ~。ついに『✽』が大舞台に、感慨深いにゃ」
みくちゃんと李依菜ちゃんのユニットはこの事務所で最もよく話題に上るユニットです。数々の解散芸は事務所のHP『101ダイアリー』(プロダクションでの日常を綴った日記で、編集者は千川ちひろさん)に度々載っています。
「この間『✽』のドキュメンタリー特集が放送されたので注目度高いと思いますよ」
「あの密着取材で大分やらかしてしまって恥ずかしい」
「あっ」
「取材中は絶対喧嘩しないって約束したのに」
いつも通りすぐに仲直りしたんですけどね!
「無謀な約束でしたね」
「や、やればできるよ、いつかは」
菜々もソロとしてはもちろんユニットを完成させなければいけません。曲、誌は既に完成しているそうなのであとはダンスです。
「乃々ちゃんのユニットは順調ですか?」
「ヒッ。話を振られるなんで予想外だったんですけど。きらりさん、拓海さんは森久保を引っ張ってくれるので」
三人で『
「それは何よりです!」
「その代わりデコられて恥ずかしいぃ、恥ず久保ですけど」
こ、これはキュートですね。間違いありません。
「これは期待できますね、当日が楽しみです」
「ぷ、プレッシャーはほどほどにぃ」
♥
二人のシフトが決まるまでは菜々が単独で尾行をします。客観的証拠が具体的に何なのか、それは分かりませんがその場で閃くかもしれません。
そんなわけでまずは更衣室へ向かいます。残念ながら『
「メルヘンチェーーンジッ」
菜々の体は一瞬白く発光し、見えなくなりました。これで準備は万全です。
事務所内を歩いていると運良くプロデューサーさんを見つけました。ここからが正念場です。一時間後に打ち合わせがあるので長くはできませんけど。
あ、前方から誰かこっちの方向に来ますね。ありすちゃんですね! 今話しかけたら軽くホラーになってしまうので自重です自重。
ありすちゃんは菜々に気づかずに通り過ぎます。菜々も何事もないかのように歩きます。
「あれ、菜々さん!?」
あ、ちょ、そんな大きな声で叫んだらマズいですよ! プロデューサーさんにバレてしましますっ。
完全に菜々のことが見えてます! 急いで口を塞ぎに行きます!
「叫んだらまずいです」
「んぐぐっ」
一旦落ち着く場所に連れて行きます。更衣室に寄って服を来てから101カフェに。
「…………」
「………」
何というか気まずい状況になりました。
「お、驚かせてすいません」
「あ、い、いえ、その」
きっとありすちゃんは能力が認識できなくなる能力『
「何か頼みますか?」
「こ、紅茶頼みます」
スティックシュガーを入れる手が震えています。菜々が背徳感を味わう為に裸で事務所を歩いているとありすちゃんが誤解していたら。そんな心配をよそに、紅茶を飲んだら少し落ち着いたようです。
「驚かせてすいません、決してふざけていたわけではないんです」
「本当、ですか?」
「はい、もちろんです」
どうしましょうか、ここまで来たらもう言うしかないですよね。
「実はプロデューサーさん働きすぎなんです。だからその証拠をプロデューサーさんにバレずに集めているんです」
「どうしてバレたらいけないんですか?」
「もしバレたらプロデューサーさんはきっとアイドルに要らぬ心配をかけてしまったと悔いるはずです。それを感じてほしくないんです」
それに、アイドルとしての仕事に力が入っていないって思われたらいけませんから。
「事情は分かりました、協力します」
「菜々、嬉しいですよ! それにしてもなんで菜々に気づいたんですか? 能力は普段からオフにしているものだと思ってました」
「確かに普段はオフにしています。さっきは菜々さんの気配と香りがしたのでもしやと思ってオンにしてみました」
「そういう事だったんですね」
姿を消せてもそれ以外は消せない、今後に活かしたい教訓ですね。
「それで、プロデューサーの事に気づいている人は何人いるんですか?」
「菜々の知る範囲では佐久間さん、みくちゃん、乃々ちゃんですね。橘ちゃん入れて五人ですよ」
「まだ確実な証拠がない段階では妥当な人数だと思います。下手に知れ渡ったら混乱が起こるかもしれません」
「そうですね、一応のあさんにも相談しますけど菜々の尾行は内緒ですよ!」
「は、はい」
ありすちゃんには何を任せるべきでしょうか。小学生が取り組むにはまだ早い問題かもしれません、教育上良くないという意見もあるでしょう。でも菜々は問題について考え、解決するのに年齢は関係ないと思っています。考えられる力があるのなら、考えようとする意思があるのなら携わっても大丈夫です。
「それでは菜々は打ち合わせがあるのでお暇します、この件についての連絡はまたしますね!」
「分かりました」
思わぬ助っ人が増えました。意思があればこの件に携わっていいとは思うものの、やはり小さい子を巻き込んでしまった罪悪感は消せません。そんなこと本人に言ったら怒りそうですけどね。私を一人前に扱って下さいって。
♥
アニメの打ち合わせが終わりました。脚本家の方とお会いできたのがとても感動的でした。
そんな嬉しいことがありつつも、やはりプロデューサーさんのことが心配です。レッスン終了後したのでのあさんについに打ち明けます。もし名案があればそれを適用したいと思ってます。
「のあさん、ユニット完成度日に日に高くなってきましたね!」
「えぇ。複製が本物になる日は近いわ」
「それでですね、ユニットというか事務所全体に関わることなんですけど」
「何かしら」
「佐久間さんに気づかされたんですけどね、プロデューサーさんって度を超えて働きすぎなんです。なのでどうにかしたいと思っています。もし事務所が強制的にさせているとしたら、それが本当なら何かすべきことがあると思います」
のあさんは一見ポーカーフェイスですけど菜々には分かります、おや? って感じになった後まずいって表情になりました。何というか言葉でどうしてそう読み取れるのかは説明できないですけど、何故か分かるんです。
「行き着く先が冷酷な真実でも耐えられるのなら手を貸すわ」
「ありがとうございます。これでのあさん含めてメンバーは六人になりました!」
「四人は誰かしら」
「佐久間さん、みくちゃん、乃々ちゃん、ありすちゃんです」
「承知したわ」
「今できることは証拠集めくらいですけど、他にできることがあったら提案してください」
のあさんは静かに頷きます。
「確認するわ。鷺沢さんはメンバーの何かしらに関わってはいないのね」
「今のところそうですけど」
「そう」
のあさんから発せられる険しい雰囲気は依然として続いています。
「もし調査の過程で辛くなったら鷺沢さんの所に行くのよ。菜々さんだけでなく一緒に活動するアイドルも」
「え」
何故鷺沢さんなのかとても気になります。
「後そのメンバー今集められるかしら。全員で確認する必要がある事項があるわ」
運良く三十分で集まりました。
「皆さん忙しい中ありがとうございますっ」
「感謝するわ。集合したのはプロデューサーの件についてよ。まず現在実行を予定しているのはプロデューサーの尾行で間違いないわね」
「はい、そうです。菜々は早めにしていますけど」
「その行為は決して正当とは言えない。たとえ目的がプロデューサーの為だとしても。皆は悪性を背負う事実をどう思うのかしら」
「み、みくはもう覚悟しています。嫌われても、事務所を去ることになってでも」
「もりくぼは怖いですけど、やると決めました……」
「菜々も批判を受ける覚悟はしています。真っ当ではない手段、真っ当ではなく超能力の使い方。もう後戻りできませんししません」
のあさんの厳しい質問に内心たじろぎましたが、もう決めた事です。
「そう。あなた達もついに踏み入れるのね」
「もって何ですか?」
「私も悪性を背負っているのよ。超能力を把握する超能力、それは私的領域の侵害ね。でも私はアイドルの安全の為にすると決めたわ。もちろんプロデューサーに相談しての決断だけど」
「そんな背景が……」
「だから私には批判する権利なんて無いわ。それでも指摘したのはあなた達に後悔して欲しくないから」
「のあさん……」
「菜々さんは『七変化』を使い過ぎないように。透明の変身は体力消耗が激しい方だから」
「は、はい~」
使用履歴までバレてしまうんですね……。