第二話『運命の赫い糸』
菜々、乃々ちゃん、みくちゃんとプロデューサーさんの尾行を続けてはいるものの、これといった証拠は掴めません。乃々ちゃんは
あまり夜遅くまでいられないので主に昼間担当、夜は菜々やみくちゃんの猫達が担当しています。ほとんどの人は最近よく猫が来るなぁくらいにしか思ってないそうです。ですが事情を知らない方が猫と接していると何だかヒヤヒヤします。
「皆さん揃いましたね」
プロデューサーさんの事情を知っているメンバーで一旦話し合いをすることになりました。もしかしたら方針を転換しないかもしれないので。
「まずは調査組の報告からお願いするわ」
「のあさん分かりました。プロデューサーさんは確かに過労です。しかしそれを示す客観的証拠は掴めませんでした。その原因としては記録がそもそも残らないことが挙げられます」
タイムカードありませんし、仕事が事務所ではない場所の時も多々ありました。
「分かったわ。そこで今後の方針をここで検討します」
「場合によっては別のアプローチを模索ですね」
菜々、のあさん、佐久間さん、乃々ちゃん、みくちゃんありすちゃんで考えます。何か案があればいいのですが、なかなか出ません。ただ時間だけが過ぎていきます。
「みなさん少しいいですか?」
「橘さん何かしら」
「少なくとも過労が疑惑から確信になったと思います。そして公的機関に渡せる証拠はありません。ならばせめて事務所のアイドル達
にも協力を仰いで解決への手段を増やすことも考えるべきだと思います」
「詳しく聞きましょうか」
「この事務所には私以外にも超能力を持つ人間がいます。その能力をもしかしたら活用できるのではないかと。直接的か間接的かは分かりませんが。私はまだ数人しか超能力者を知りませんけど、この事務所に限って言えば他にいるかもしれません」
ありすちゃんはプロデューサーさんが超能力者を見つけてスカウトしていることをまだ知らないみたいですね。
「プロデューサーさんは超能力を持つ人を中心にスカウトしているんですよ、橘ちゃんもその一人です」
「え、そうなんですか」
ここでありすちゃんは何か考えこみます。
「確かに能力的手段を使う可能性も考えるべきね。他のアイドルを集めましょう。だけどその手段に問題があれば慎重に検討するわ」
「分かりました、グループラインで呼びかけてみます」
「他に何かあるかしら」
「尾行は続けますかぁ? それとも中止しますかぁ?」
「これ以上続けても目標達成は難しい故、中止を選択するわ。ただし別の目標があれば続行で大丈夫よ」
「あ、それについてなんですけどね、もう一つの目標が達成できているか分からないので続行しようかなと。菜々や乃々ちゃんが尾行
しているのはプロデューサーさん気づいているはずです。『異能捜し』で。そして何故尾行されているのか考えるはずです。そしたら何らかのアクションがあると思ったのですが」
「まだ何も無いようね。あと菜々さんは引き続き無理はしないように。ただでさえ負担が大きいのだから。それで今後の予定はアイドル全員で集まるということで頼むわ」
会議後、数時間経ちましたがそもそも既読が全員ついていません。既に返事をもらったアイドルの日程だけを鑑みても予定が合いません。本格的に合同レッスンも始まったので尚更です。のあさんの個人LINEで相談です。
「皆さんなかなか予定が。どうしたらいいですか?」
「一番多く集まれる日にしましょう。その日集まれなかったアイド
ルには後日話し合いの結果を伝え、意見を貰うことにするわ」
「では明々後日が集まる日ですね」
「えぇ」
♥
そんなわけで集まりました。場所は櫻井邸です。
「桃華ちゃんこの度はありがとうございます!」
「場所を貸すくらいどうってことありませんわ。それより事態は深刻でなくって?」
「そうです。LINEで皆さんに伝えた通りプロデューサーさんのことについて意見を頂きたくこうして集まってもらいました」
空気が重いのか誰も口を開きません。表情も硬いです。それだけ真剣に向き合っているということです。
「アイドルの活動が忙しい中、水を差すようなことをしてすいません。ですが、もしプロデューサーさんが倒れたりしたら私達の活動にも支障が出ます。そうでなくても、人道的に問題です。どっちかと言えば理由は後者の方が大きいです」
「そうなんですよぉ」
「そして皆さんの知恵だけでなく、力もお借りしたいんです。もしかしたら持っているかもしれない超能力を」
のあさんは確かに全員の能力を把握しています。しかしそれは秘密裏に行われていたことです。実は把握していましたなんて言ったらのあさんは警戒されるかもしれません。だから自分で申告してもらいます。
「で、でも大丈夫なんですか? プロデューサーに言わずにコソコソするって悪いことをしている気分になるような」
「新田さん」
「それなら大丈夫ですよぉ」
佐久間さんは乃々ちゃんの首に赤いリボンをチョーカーみたいにして巻きつけます。
「ま、まゆさんこれは」
「まゆが乃々ちゃんを人質にして、他の人は仕方なくコソコソしないといけなくなった。そういうことにすればいいんです。この『
「おぬしはええんかそれで。他に方法があるじゃろきっと」
誰よりも先に巴ちゃんが口を開きました。
「他にあったとして、それを探る時間はありませんよぉ。これからライブに向けて更に忙しくなります。それまでに決着を付けるべきではありませんかぁ?」
「そ、それでもあぬしがやる意味はないはずじゃ。せめてそういう役割はわしにやらせてくれんか」
「これはまゆにしかできませんよぉ。他にいつでも誰かを死の危険に晒せられる方がいるなら話は別ですけど」
「く、組の者に」
「それでもいつも、とはいきませんよねぇ」
「」
「まゆならいつでも乃々ちゃんの首を絞められますよぉ。それに切ってもすぐに繊維同士が結びつくので持続性もあります」
「ヒッ」
こんな事があって良いはずがありません、誰かが犠牲になるなんて。でも時間が残されていないのも事実。そして隠れて動くことへ
の罪の意識。その全てを良い方向へ満たすのは難しいです。
「何を優先させるのか、それは口にするまでもありませんよねぇ」
それは、それは分かっているのですが。ですが。佐久間さんは続けます。
「超能力を使うにしろ、使わないにしろ、公的機関に頼らない以上真っ当な手段でない可能性は高いでしょう。そしてそれが私達以外に知られた時、責任は誰かがとらないといけません。まゆならまだ入ったばかりなので辞めるにしても傷は浅いはずです。先程述べた通り能力的にも可能です」
もうここまで来たら誰も何も言えません。本人の意志は堅いようです。まゆさんに押される形で菜々達の行動の口実が決まってしましました。
♥
その後、超能力リストを作り、どう活用できるか頻繁に話し合いが行われました。もちろん力に頼らない方法も模索しています。それでも効果的な案は未だにでず、無力さだけを痛感します。やはり自分達は何もできないのか、そんな思いが積まれていきます。
そんな時です。
「あ」
事務所の休憩室にその人は現れました。
「遠井社長じゃのお。もう直接訊くしかないじゃろ」
「やあやあアイドルの諸君、事務所設立以来最大規模のライブは順調かね」
「」
誰も答えられません。
「そ、それに関係することなんじゃが少しええか」
「ほう」
「この事務所、こんなにアイドルがいるのにプロデューサーが一人じゃろ。プロデューサーを他に数人雇わないのはなんでじゃ」
社長はやれやれといった感じでソファーに腰を掛けます。
「そうか、それで最近空気がピリピリしてたんだね。信じてもらえないかもしれないけど聞いて欲しい。まず根良君は自分の意志でそうしている。私は何回か他に雇おうか言ってみたのだけど断られてね」
「そ、そうだとしてもじゃ、社長の権限でどうにかならんかったんか」
「そう、そこなんだよ。確かに権限自体はある。だけどこちらとしては根良君に合わせた環境を用意したい。そしてその環境が現在の状況らしいんだよ」
「本当にプロデューサーが望んでいるんじゃな?」
「そうだよ。私にできるのは精々栄養ドリンクを支給して健康にいてもらうくらいだ」
「わしにはどうも解せないんじゃが」
「私もだよ。でも望んでいるのを象徴するかのように彼は次々と新人をスカウトする。そして忙しさに拍車を掛けている。スカウト自体は悪いことではないけどね。ただ一つ言えるのは、彼は何らかの意図を持って自分を多忙に追い込んでいる。それが何かは私にも分からないがね」
社長は悲しそうな顔をして部屋を去って行きました。残された菜々達は目が点という感じです。
「一歩前進したのかしてないのか分からんな。これで事務所を敵に回さなくて良くなったと考えると前進じゃがな」
「も、もし敵に回す事態になってたら巴ちゃんは」
「組がみんな守ってやるけぇ安心せぇ」
頼もしいといえば頼もしいのですが争いが起こらないに越したことはないですね。
「これは困りましたねぇ」
「自ら望んでいるってことはうちらが介入することが難しいと思うけえのぉ」
「私もそう思いますわ。かと言って今が良いとは」
これは困りました。これでプロデューサーさんが頑張れるのなら菜々達がしようとしていることは完全にエゴです。ただ普通の感覚だと望んでしているというのがどうしても分かりません。
「のあさんどうしましょうか。もう菜々にはどうにも」
「一旦過労そのものについての調査は中止にしましょう。その代わり彼の行動の理由を探ります。全てが破綻する前に」
これからの方針はプロデューサーさんが過労する理由を探る、尾行の続行で決まりました。
♥
方針が決まったとはいえ何か煮え切らない気持ちがあります。きっと菜々だけではありません。
「あの、ちょっといいですか?」
「どうしたんですか橘ちゃん」
毎回思うんですけどありすちゃんの方が呼びやすいですね。呼んだら怒られそうなのでしませんけど。
「やっぱりおかしいと思います。その、プロデューサーさんの行動のメリットが見当たりません。理由をこれから探すにしても見当くらいは付けておきたいです。少し考えてみませんか」
「分かりました」
二人で歩きながら考えます。
「まず給料が増える場合です」
「着眼点が小学生ではありませんね。まぁ可能性はあります、この事務所の給与システムがどうなっているのかわかりませんけど」
アイドルかそうでないかでシステムは違っているんです。
「そうですね。これは保留です。次にアイドルと関われる場合です。これは可能性が低いと思います。あまり面と向かって接する機会ありませんよね」
「そうですね、普通連絡はSNSですし。大事な連絡の時だけ顔を出しますね。それ以外だと送り迎えだったり方向性を決めたりするときです」
「やはり私だけではありませんね。この線は消せます。他に可能性ってありますか?」
「メリットというメリットは特に見当たりませんね。既婚者でお嫁さんが鬼嫁だったら逃げる口実で働いているかもしれないですけど。確かプロデューサーさん独身だった気がします」
「となると消去法で保留にしていた給料でしょうか。でも何か違和感を覚えます」
「う~ん」
「菜々さんはアイドルとしての生活が長いようですが、何かこの違和感分かりますか? 芸能界特有の事情が絡んでいたり」
「う~ん。あっ、違和感の正体は分かりませんけれど事務所のシステムに詳しそうな人思い出しました! 給料説に白黒つけられるかもしれません」
「誰ですか?」
「事務員の千川ちひろさんです」
二人で事務室に行ってみます。善は急げですっ。
「すいませーん。ちひろさんいますかー?」
「はーい」
勢いで行ってしまいましたがどう聞けばいいのか考えていませんでした。給料どうなっているんですかとかはあまりに無粋です。菜々がどうしましょうという顔をしているとありすちゃんが仕方ありませんねぇという感じで切り出します。いや~ありがたい。
「あの、私、アイドル辞めたらこの事務所のプロデューサーになり
たいのですが給料は歩合制ですか? 時給制ですか?」
これはこれで事情分かってる身としては分かりやすいくらいあからさまな気もしますが。
「橘さんしっかりしていますね。プロデューサーは基本給プラス歩合ですよ」
「そうなんですね。分かりました、ありがとうございます」
「いえいえ~。これでこのプロダクションの将来は明るいですね!」
時給ではない、となると変ですね。
「これで何かわかりましたか?」
「分かったと言えば分かったんですけど」
ありすちゃんの前では言いにくいといいますか。
「言いづらいんですか?」
「ええっとぉ。本当かどうか分からないんで聞き流していただいて良いんですけど」
「はい」
もしかしたらありすちゃんが嫌な思いをしていまうかもしれません。
「歩合制の場合、新人育成より主力にどんどん仕事させた方が給料上がりやすいんですよ。やるならスカウトより営業です。あくまで効率よく給料を上げたいならの話ですけど」
しかしプロデューサーさんはひっきりなしにスカウトをしています。だからといってこの事務所の主力アイドルを蔑ろにしているわけではありませんが。
「なるほど。給料説は怪しくなってきましたね」
「かと言って他に可能性見当たりませんし」
「そう言えば菜々さんはいつごろから事務所にいるんですか?」
「一年くらい前からですね」
「確かプロダクション設立から二年後ですね。ちなみにその時所属していたアイドルの人数覚えていますか?」
「ええっと、20人弱だったと記憶しています」
そう言えばその時からプロデューサーさんは一人だった気が。
「分かりました。今の状況は少なくとも一年前から続いていたとみていいようですね」
ありすちゃんはスッキリしたという感じはなく、むしろより一層考え込みます。
「はい、そうです」
「では最後の質問をします。なぜ今の今まで誰も問題視しなかったのでしょうか」
氷を首筋にいきなり当てられたような感覚が走ります。
「な、何ででしょう」
「これは思ったより根が深いですね。心して向き合うしかありません」
♥
「次は我孫子~、我孫子~」
「はっ! ここはウサミン星じゃない!?」
寝過ごしてしまいました。最近よくやってしまいます。ただでさえ酷使している体にさらに負担を掛けているので当然です。ふとLINEを開くと着信が結構来ていますね。今のうちに把握しておきます。
「プロデューサーさんの件ですが私達は具体的に何をしたら」
これは美波ちゃんのですね。
「当初はPチャンが自ら過労する理由を探すでしたけど、それでは取り付く島がありません。そこでプロデューサーさんの事についてなら何でもとなりました」
これは前川さんですね。
「プロデューサーさんについて内容を問わずに調べるってことですね」
「そうです。のあさんと個人的に話している時この件の話題になって、そういえば私達Pちゃんについて何も知らないってなったんです」
「そうよ。そして調査の過程では多様な手段を用いるわ」
話題が話題だけに顔文字とかが見られません。それほど真剣なんですね。
「わしは超能力とかそういうの無いけぇ役立たずかもしれんが聞きにくいことあったらわしが聞くけぇのお」
「村上さんとても心強いですよぉ。事務所が強制してないと判明したのも村上さんが社長に問いただしたお陰ですしぃ」
「そうですよ」
こんな具合でグループの会話が菜々の睡眠中におこなわれていました。いつの間にか方針に若干の変更があったみたいです。そして
「私達はPチャンについて何も知らない」
その言葉が何故か重く感じます。それと違和感も。逆に何故菜々達はプロデューサーさんについて知らないのか。その答えは簡単です。菜々達は仕事上必要最低限の範囲でしかプロデューサーさんと接していないからです。ここまでは分かるのですが、その先がなかなか考えられません。何か思いつきそうな、でも届かないこの歯がゆさ。最近この件について考える度に似たような感情が湧いてきます。
グループの方に気を取られていましたがのあさんから個人でメッセージが来ています。
「明日『preplica』のレッスン後に話し合えないかしら。それと別の件で話があるわ」
「分かりました。何でしょう」
「件の件が影響しているのか今日の合同レッスンでは全体的にミスが目立ったわ」
「トレーナーさんかなり怒ってましたね。というか菜々も怒られました」
心がここに無いのが伝わるぞ、そんなのでステージに立てるかって。
「活動に影響を出さないよう釘は刺したつもりですが無意識にというのもあるでしょうね。何か集中させられる方法ないかしら」
「そうですねぇ。一番はあの件の解決でしょうけど。それ以外となると逆にモチベーションにさせると言いますか、今の練習状況だとプロデューサーさんの心配事を増やすだけなので、それを減らすために頑張りましょうって」
恐らく最近の練習状況はプロデューサーさんの耳に入っています。これでは本末転倒です。
「採用するわ」
「そもそも何を以て解決かはイマイチはっきりしていないですけど」
「そうね。強いて言うなら私達が納得する、かしら。現時点でプロデューサー自らしていることと判明している以上、その先の追求はエゴね」
最初はプロデューサーさんの為のつもりがいつしか自分達の為になってしまいました。のあさんの言葉でそれに気づかされました。
「大丈夫なんでしょうか、既に事務所のアイドルみんな巻き込んでしましました」
「具体的な部分は不明にしろ、違和感があるのは事実。たとえエゴでも調べるしかないわ。巻き込んでしまった責任は私が取るつもりよ」
責任をどう取るのか、そこは怖くて聞けませんでした。そしてふと菜々達について振り返ると何か踏み入れてはいけない領域に入りかけている気がします。
♥
次の日。ついにアニメのアフレコです。少し前まで自分が立てるとは思えなかった場所です。もちろん立ちたかった念願の場所ですけど、目指していた頃はかなり遠くに感じていたんです。事務所に入ってから初めてしたライブを思い出します。規模はそんなに大きくなかったんですけど、101プロダクションの看板を背負う重みや、それまでより多い人の目、それまで感じたことのない緊張を体験しました。このアフレコもまた新たな緊張を菜々に感じさせます。
「早速通し練習お願いしマース」
「分かりました!」
長く愛されている作品だけあってベテランの声優さんも結構います。収録前の挨拶回りとか滅茶苦茶ヒヤヒヤしました。
収録は所々力み過ぎと指摘され、その都度修正しました。そういった失敗があったものの、全体的には上手く進んだ気がします。いい意味であの件を忘れられた感じですかね。ただ収録が終わった途端現実に戻されたかのようにあの件を思い出したり、他のアイドルが上手くできているか心配になって怖くなりました。急いで事務所に戻ります。
「只今戻りましたぁ!」
「菜々さん待ってたわ、至急こちらに」
「え」
通されたのは普段あまり使われないような小さい部屋です。中にはダンボール箱が積んであります。
「まずいことになったわ」
「マズい、ですか」
「えぇ。菜々さんのように仕事がある人以外は合同レッスンしてたのだけど、練習に身が入っていないのをトレーナーに見透かされて怒られたわ。その後トレーナーは予定より大分早くレッスンを切り上げたわ」
「そ、そんな」
「それだけではないわ。残されたアイドル達の雰囲気は当然だけど険悪に。橘さんは責任を感じているわ。もはやプロデューサーのプライベートに立ち入る以前の問題よ」
超能力を含め、事務所のアイドル達の力を借りることを提案したのはありすちゃんですが、そのまで自分を追い込まなくても。
「これ、収拾が付くのでしょうか」
「前にも言ったようにこれは今のところ私達が納得するかしないかの問題。私が明白にさせるしかないわ」
「どう、するんですか?」
「能力に問題のあるアイドルがいると伝えておびき寄せ、これまでの経緯やアイドル達の現状を示し、白状させます。無論、真実を知る保障はないわ」
逆にこの状況だから使える手と言えなくもありません。アイドル達が上手くいっていればはぐらかされる可能性もあります。だけどそれは積極的に使いたい選択ではないはずです。
「かなり辛い手段に思えますが」
「致し方ないわ」
「そんなぁ。他の子は今どこに」
「レッスン場に残ったり、事務所で休憩したり、気分転換しに外へ出たりしているわ」
みんなバラバラになってしまいました。
「菜々みたいに仕事から帰ってきたアイドルは凹みますよねこの状況」
「それを予測して私は玄関で待機し、状況を何人かに説明したわ」
「なるほど。でもどうして菜々の提案したメッセージは効果無かったんですか?」
「恐らくあの件の衝撃が直接的だったからでしょう。私や菜々さんは疑惑から確信に、段階を踏んでいたから飲み込みが早かった。一方他のアイドルは突然知らされたから、まだ受け止めきれない人もいると思われるわ。メッセージは確かに受け取ったけど、そもそも気持ちの整理が追いつかなかったのね」
「そうだったんですね……」
ついに起こってしまった負の連鎖。弊害に次ぐ弊害。絶対に断ち切らないといけません。
「事態は急を要するわ。でも一時間前にプロデューサーにLINE送ったけど返ってこない。次の行動は何が最適解かしら」