全く…今の気分は最悪で早く拠点に戻って寝たほどに機嫌は最低だった。
白面も私が不機嫌な事が分かっているのか何も言わなかった。
拠点に戻った時にエアが出迎えてくれたけど、やはり相当不機嫌だった事が分かっていたみたいで顔を見ただけで徐々に顔が青ざめていて、私が「数日間部屋に閉じ籠るから食事は部屋の前に置く事…それと部屋に入ったら侵入者とみなして殺しちゃうかもしれないから絶対に部屋に入らないで」と普通に言っただけだったけど、エア達は冷や汗かきながら必死に私の事を接してくれた。
布団に潜り込むように寝ようとしてザンクに見せられた大切な人の事を思い出して…
「…大事な人か。まさか、貴方がそんなに大事な存在になっていたなんて思ってなかったわ…夕斗」
あの時、ザンクの幻影で見た人物は、私の生涯で最も尊敬し敬愛した前世での双子の実の兄だった。
私の前世は最低の家庭環境だと言えるようなものだった…
格式の高い家柄で幼い頃から英才教育をされ、親に甘える事は恥とされ弱音を言った時には暴力なんて当たり前にあったほどだ。
そんな家で味方なんて誰一人もいない事で、その時の私ははっきり言ってクズだった。
使用人に一生消えない怪我もさせた事もあるし、大体の事は金と暴力で解決させていたほどの最低のクズ野郎だった私を矯正したのは兄に暴力を振るった時の事だった。
兄は病弱で寝たきりだった事もあったので本来は家系を継ぐのは長男である夕斗だったけど双子で生まれた為に私が長男として家督を継ぐ事が決定した事で夕斗は私の予備扱いとして育てられることに決定した…
その事を私は恨んでいた…
毎日が苦痛なのに夕斗が笑って暮らしている事で殺意を憶える程に憎むほどになっていた頃に、学校のテストで凡ミスを両親に説教されその後に、拷問ともいえるような勉強をされたと事で誰もいない筈の自室で泣いていた所を夕斗に見られ心配さえた事で私は…暴力を振るった。
「役立たずに何が分かる!!」とか「無能者が俺に同情するな!!」や今まで溜めていた物を全て吐き出すように殴っていたが…夕斗は抵抗もせずに殴られ続けていた。
何でやり返さないのかと聞いた時に、夕斗の言葉に私は自分がどれだけクズだったのかが分かったからだ。
「僕はこれぐらいしか出来ないから…本当は僕がやらなくちゃいけないのを全部押し付けちゃった無能者だから、僕はこんな事しか出来ない…でも、辛い事があったら僕に言ってよ。
解決は出来ないかもしれないけど悩みを聞いてあげる事で少しは負担にならないようにしたいから…
こんな頼りない僕だけど、辛いときはどうしてもいいから一人で泣かないで」
始めの内は信じられず暴力の対象としていた時期があったけど、夕斗は私と比べて遥かに頭が良かった事や、人当たりも良く、その後、その能力だけは認められ、私の世話役となった。
でも、両親からも親族からも認めない意味での世話役として採用とした事を知った私は、せめて私と二人っきりになれる時は自由に話せたり自分のやりたい事をしてもらおうと努力した事もあり、夕斗を守れたことは本当に運が良かったと思っている。
この頃から、私は当主に相応しいのは夕斗だったと確信していたけど、両親を含めた親族はそれを認めようとせず只、家畜の様な扱いを受けていた事と、権力争いの道具にされ自分の人生を台無しにされそうだった事もあり私にある誓いが出来た。
「俺は…この家を崩壊させる!!夕斗を認めない奴らに復讐する」と…
本来であれば夕斗を当主にする事も出来たが、あんな家に縛られるよりもいつかできるであろう恋人とひっそりと平和に暮らしてほしいと思っていた。
それに嬉しい事に自分の婚約者として付き合っていた琴乃が夕斗を好きになってくれていた事と彼女の両親も夕斗の事情を話し同情してくれ私の味方となってくれた。
実は私に対する琴乃の第一印象は最低のクズ野郎…だったそうな。
しかし、夕斗と二人っきりでいる時に仲良くしている所を観られ、脅迫まがいに聞かれ真実を話し共犯者となってくれた事と、三人で過ごした日々は本当に楽しく琴乃は何かと世話をしてくれたのは本当に嬉しかった。
家督を継ごうとした日に私は海外に逃亡し自由気ままの生活をした。
後で聞いた話で、私の行動は夕斗に大きな迷惑が掛かりそうだったけど私を止めなかった事で家を追いだされ琴乃と結婚した。
琴乃の両親は本当に感謝しかなく、私の事も気遣ってくれた事。本当の両親だったらどんなに良かったかと思えるほどの人格者だった事が幸いして海外で一時的に就職も出来た時は死に物狂いで働き恩を返した。
その後は世界各国の放浪の旅だ…
その際に忌々しい事件で一時帰国はしたけど、夕斗との再会が嬉しかったのは今でも覚えている…
だが…あの両親がそれを許さなかった。
私がいなくなった事で分家の長男が当主になった結果は、好き勝手やっていて浪費させ家の衰退の原因を作った両親を追放され極貧生活していた事での逆恨みで…私を庇って夕斗が一生歩けない体にさせてしまった事だ。
その責任から私は一生出て行く覚悟で海外を旅した。
琴乃も義両親も気にしなくていいと言ったけど…親戚の一言で此処に居てはいけないと感じたからだ。
それは病室で見舞いに行って琴乃と会った時に今回の事を詫びて一生かけて償うと言った時に「気にしてないし…それに家族なんだから気にしちゃだめよ」と逆に慰められて謝罪して病室に入ろうとした時に私の事を快く思っていない琴乃の親戚が夕斗こう言ったからだ。
「あの子を寝取られて、子供が出来た事の腹いせであの男たちと共謀して殺そうなんて信じられない!!」
…なんて言った?
私は談話室まで移動して真相を琴乃に聞くと妊娠している事、今でも琴乃の親戚たちは私が夕斗を脅迫して家に居座っていると思っていると悪意を持った言葉で言われを本当の私の事を理解されないと悔し涙を流しながら答えてくれたが…そこまでが限界だった。
私は自分が知らない内に大切な家族を…苦しめ殺そうとしていたのだ…
その日のうちに荷物を纏め海外に出て行った…
琴乃の両親にもう戻らない事と本当は二人の家族になりたかった事を言い、親戚の心無い言葉を謝り私を見送ってくれた…
その後は本当の放浪の旅だ…
前に世話になった自衛官のおっさんと児童保護施設の先生が無差別テロで殺された場所に行き二人を弔った後に少し報告があった。
「…おっさん。アンタの娘さんはいい友達と楽しくやってるぜ。
あのせいで少し引きこもっていたようだけど、二人の友達に励まされてやっと立ち直ったみたいだ…それとこれはその二人と娘の手紙だ…中身は読んでねえから安心しな…
それと…先生にも手紙あるんだが、まさか子供が三人もいるとは思わなかったぜ…
アンタの妹さんも一時期は自分が殺したようなものだって荒れたみたいだけどさ…今は大丈夫だ。
寧ろ、あの映像のおかげで立ち直れたみたいだしおっさんとの結婚式見たかって言ってたぜ…
俺も…随分世話になったし、二人には恩があったのに…正直それが返せないのが辛い」
そうつぶやいた後に手紙を天国なんてものがあるのかは知らないが届けばいいと思い線香の代わりとして燃やした…
燃やしたのは此処に置いていても誰もみる事は無いだろうし赤の他人に見られたくないと思った事と、二人に対しての私はある約束をしていたのだが…守る事は出来なかったので二人の思いの決別の意志として燃やしたのだ…
先生…アンタとの約束は守れなかったよ。
「どんな事があろうかと、『本当の家族』として認めた人の傍には一緒にいてあげて…」
私は…無理だったよ。
この後、私は偶々屋台で買って食べ歩いている時に暴走車の爆弾による自爆テロに遭い死亡し転生した…
そんな事を思い出しながらすっきりと目を覚ました私は懐かしい人達に礼を言った後に、リビングに行けば若干を怯えているエア達と会い、自室に籠る前の日の事を謝罪すれば笑顔で対応してくれて本当に良い子達を雇えて良かった事と今こうして自分がやっている事は無駄ではないと確認できただけでも大きな収穫だった。
その時、白面がいいタイミングで会えたので此処暫くで依頼があるのかを聞けば、結構あったのを白面が代わりに引き受けるか、他の暗殺者に代理を立てていたやっていたらしい。
そんなわけで仕事が無い事になったのでふらふら出歩く事にしたけど、その途中でイエヤスとサヨと…一番会いたくないセリューと会ってしまった…
何で会いたくないかって言えば、ほぼ洗脳したっていう事実もあるけど、帝都警備隊へのラブコール(隊員の引き抜きだよ)が酷くて逃げまくっていたけど、今回はそんなことは無く日常会話程度で済んだのだけど…理由を聞けばイエヤスとサヨが優秀過ぎる事と、別の私がいなくても暗殺される奴が殆ど悪人と言う事でその後かえって治安が良くなってむしろ暇なんだとか…無論セリューはどんな理由があるにしても、暗殺者は悪でしかないと見つけ次第天誅下すなんて言ってたけど…目の前にその犯人いますよ?みたいなコントをしていたけど元気そうで何よりだよ。
そんな警備隊の三人との別れ、最近お気に入りとなった本屋に行きある本を立ち読みした。
この世界凄いわ…漫画があるなんて感動ものだよ!!
此処の店主のラバック君とも仲良くなって色々面白い小説や漫画を紹介してもらってるけど、ラバック君のお勧めの漫画家さんにドはまりして、つい夜遅くまで立ち読みとその感想を言い合って白熱したらこんな時間になってしまった…そういやエア達にはご飯家だ食べるって言ってあったけ?
ラバック君もどうやら女性の夜道は大変だから送ろうかと紳士対応されたけど「こう見えて強いから平気よ」と笑顔で断り気に入った漫画や小説やこの辺の地理などの書物を後々で引き取りに来ることを伝えた後に別れた…
でもね…まさかこんな事になろうとはね。
外の警備隊が騒がしくなってきたので、常備している仮面を付けた後に住宅の屋根伝いに移動して騒動の元の公園にに行ってみればセリューといつも引き連れている犬もどきの帝具がいて、中華服のロングヘアーのメガネさんとツインテールの銃使いとバトル中だった。
遠目で視てるけど、戦況的にはセリューが有利だ。
犬もどきがどうにか頑張ってはいるけど、あれ確か体の何処かにある核潰さないと死なないんだっけ…多分帝具だろう大きな大鋏で刻んでも再生してるしあのツインテールの銃型の帝具のビームも防いでる事から見てかなりタフだし、援軍を求める笛も吹いたし、多分イエヤス達も合流すれば勝ち目無いね…
と思ってはいたけど、武器タイプの帝具使いと生物型の帝具使いは相性悪かったのかセリューがあっという間にピンチになっていて犬もどきが奥の手でさらに気持ち悪いマッシブボディになって攻撃しだすわで何だかそのまま家に帰っていた方が良かったんじゃないかと思っていた。
実は本音を言えば、ほっとくのが吉かなと思った時に、何となくで思い出したけどロングヘアーの人はナイトレイドの一員のシェーレだっけ?手配書見て何となくわかった。
私はナイトレイドに借りがあるのでここで二人をピンチになったら救出して逃がせばいいと思ったからだ。
でも、そんなことしなくてもいいかな…と思った時に戦況が変わった。
犬もどきの雄たけびで行動をとめていた隙をつかれついテールの子が捕まり握りつぶされそうになった所をシェーレが帝具で腕を切断した事で救出した後…セリューの口内に仕掛けられた銃による攻撃でシェーレが胸を撃たれた事で動けなくなった所を犬もどきに食い殺されそうになったからだ。
私は全速力で咬みつこうとしている犬もどきを土星の輪を付けた腕力で思いっきりぶん殴り公園の森の木々なぎ倒しながら吹っ飛んでいった。
セリューは激怒して私に攻撃しろとあの犬もどきに命令するが、私の元々の筋力でも人の胴体に風穴開ける程の威力を土星の輪で思いっきり殴り飛ばしたのだから威力も凄まじく公園の森が一瞬で更地になってるから少しの時間稼ぎにはなるだろう…
なんかツインテールの子が「アンタ何者!!」とか色々と文句言うけど「黙って私に従え…死にたくないならね」と脅しをかけると黙ったので両脇に二人を抱える持ちまたツインテールの子が五月蠅いので置いてこうかと思ったけど、我慢してその場から全力で逃亡した…この時、失敗したのはシェーレの帝具である大鋏をそのまま置いて行ってしまった事だ。
ある程度距離を稼いだ所で私はシェーレの胸の傷の治療の為にマイン(逃げる途中で軽く自己紹介していた)に追手の警戒を頼みシェーレに治癒の力を使って治していた。
始めは警戒していたマインだったが傷口が塞がり意識は失ってはいても呼吸が落ち着いていた事に安堵の涙を流していた。
マインは私に礼を言ったけど「この前の借りをかえしただけよ…」と言い治癒の力は疲労が激しい事を理由にシェーレは自分のアジトで本格的な治療する事を約束してマインには言付けをお願いしてアジトに帰還していった。
…その後、シェーレを私の家で匿っていたのだけどこの子の扱いにすっごい困ったのは言うまでもない…
この後、完全回復させた後でエア達の手伝いをしようと努力は認めるけど、あっという間に悲惨な事になっていたので何もしないでくれと私が頼むって言うカオスな空間となったからだ…
悪気の無いドジっ子は一番厄介だと思い知った瞬間でした…
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魔導具の紹介
土星の輪
原作の石島土門が使用した魔導具
指環型で、力を増幅する効果がある(土門はある理由で鼻ピアスで付けていた)
補足です…
土星の輪はイエヤスに心霊手術で体内に取り込まれた事になっていますが、あの後イエヤスが「体を鍛えたいのだけど土星の輪のせいで力が倍増して筋トレやりづらくなったから修行時は取り除いてくれ」と言われ戻すのを忘れていたからあの場で使えた…
土星の輪が無ければ石冑を使って戦おうとしていました。
後、ホカゲは元男です