「うっし!今日も捜索するぞ!」
「おー!」
三日連続での快調な天気。
そのせいか、二人はいつもより気分が高揚していた。
今回は地図の右側。
履帯の跡から、三台の戦車があると思われる。
今までに見つけた戦車は三台。
Ⅳ号中戦車E型
ヤークトパンター駆逐戦車
クロムウェル巡行戦車
ドイツが二、イギリスが一である。
二人は、履帯の跡を頼りにずんずんと草原を進んでいく。
「それでな、聖グロの戦い方がこれまた特徴的でな。隊列が一切乱れないんだよ」
「へえ。それほど統率力が高いって事だね」
「お嬢様だけに、規律は守らなきゃいけないからな」
などと雑談のすえ、学園艦にはとても珍しい川を見つけた。
「あれ?学園艦ってそもそも船なんだから川なんて無い筈だけど・・・・」
「なんでも、これ、元は海水なんだと。船のそこから海水引き上げて真水に変えて、川上の方で噴出させてるんだってよ」
「へえ・・・・あれ?でも履帯の跡がこの中で途切れて・・・・あ」
目の良い優希は、川底にある金属光沢を見つけてしまった。
「どうやらそのようだぜ?」
「どうするの?流石にこの中に入ってエンジンをかけるなんて出来ないよ」
「発想が足りないよワトソンくん。俺たちにはとっておきの乗り物があるじゃないか」
「そんなもの・・・・あれか」
Ⅳ号がエンジン音を轟かせ、走り出す。
そして、そのワイヤーに繋がれた水底の戦車を引き上げる。
「出たよー!」
「おっしゃ!」
戦車から降りたいほは、早速その戦車の姿を見る。
「こいつはコンカラーだな」
「こんからー?」
「イギリスの重戦車だ。しかし、ここまでくるのにドイツとイギリスの戦車しか見つからないな」
「しかもこんな所に捨てるなんて、よっぽど不要だったんだね」
「ああ、こんな素晴らしい戦車をこうも無残な場所に放置するなど・・・・・許すまじ・・・」
いほが拳を胸のあたりでぎりぎりと握りしめる。
「さて、これも運ぼうよいほ君」
「そうだな」
試しにエンジンをかけてみようとイグニッションを推してみると、どうやら防水加工されていたらしく、安全にエンジンがかかった。
「あれ?こういう所はしっかりしてるのに、なんで捨てちゃったんだろ・・・?」
「ここまで大事にしておいて最後には捨てるのか・・・」
「・・・・いほ君、なんか違う方向に怒ってない?」
それはそうと、戦車全般の操作方法を知っているいほはコンカラーに乗り込む。
「あ、そうだ」
そこでいほはある重大な事に気付く。
「優希。お前戦車動かせるか?」
「え、いやぁ・・・出来ないよ」
「そうだよな・・・ちょっと待ってろ。今から教えてやる」
そう言い、いほはコンカラーから降りる。
まず、優希がⅣ号の操縦席に座り、その上のハッチから指示を出す。
「まず、このボタンがイグニッションでエンジン始動のボタン。そのレバーがサイドブレーキで、アクセルはその鐙。ブレーキはその隣だ。ギアはそこのレバーで出来る。操作はその横に曲がっている二つのレバーだ。まずはサイドブレーキだ。ブレーキを踏みながら、解除しろ」
「よいしょっと」
優希がいほの指示に従いながら、サイドブレーキを解除する。
すると、ガコンという音が響き、戦車が揺れる。
「よし。それじゃあ、まずはゆっくりと前進。ブレーキから足を離してアクセルをゆっくり踏め」
「こうかな・・・?」
優希が器用な手つきで戦車をゆっくりと動かす。
「うわあ・・・」
「よし、こんだけ動かせるなら大丈夫だな。そこの窓から見える履帯の跡を真っ直ぐに辿っていくだけだ。ブレーキとアクセルの方法は大丈夫だな」
「うん」
優希が、見せびらかすようにⅣ号を止める。
「おっし。じゃ、俺はコンカラーに戻るから、先に行っててくれ」
「分かった」
いほが降りると、前進するⅣ号E型。
その後を、いほが乗り込んだコンカラーが追いかける。
ものの数分で、クロムウェルとヤークトパンターのある丘に戻る。
「ん?」
そこでいほは、戦車の小さい窓から、クロムウェルの上に乗っかる人影を見つける。
そちらはこっちに気付いているらしく、こちらを茫然と見ていた。
やがて、二台の戦車の前で止まるⅣ号とコンカラー。
その人物は、金髪に染めたツンツンとした髪型。顔立ちはやんちゃ小僧ともいうべき程に雄々しく、身長はいほたちと変わらない。
そして何より目立つのが、その額にトレードマークともいうべき様につけられている、ゴーグル。
いほがその人物を観察していると、それよりも速く優希がⅣ号から出る。
「
「え?知り合い?」
優希が、クロムウェルの上に乗っている人物の名を驚くようにあげた。
「おお!優希、そこにいたのか!探したぜ!」
一方で東馬と呼ばれた少年は嬉しそうに声をあげる。
優希はⅣ号のサイドブレーキをかけると、その少年にかけよる。
「どうしたんだよ、こんな所に」
「何ってお前、昨日俺との約束すっぽかしたから何か仕返ししてやろうと思ったんだよ!だけどお前がなんか知らん奴に森の中に入っていくから気になってきてくれば・・・・・お前、この俺を差し置いてなに先に戦車に乗ってんだゴラァ!」
「わあ!?」
片腕で優希の首を抱え込み、わしゃわしゃと髪をかき乱す。
しかしその様子は、本気で怒ってはいない様だ。
「優希、知り合いか?」
「あ、いほ君」
一方で、コンカラーから出てきたいほ。
なんとか少年の拘束から逃れた優希は、いほにその少年を紹介する。
「紹介するよ。こっちは僕の幼馴染の
「よろしくな!優希の友達は俺の友達だ!」
「ああ、よろしく」
互いに握手をする。
どうやらかなり活発な人間の様だ。
「彼、自動車部なんだ」
「へえ。そのゴーグルを見ると、乗る事を専門としているようだな」
「ああ。だが、俺が乗りたいのはただのレースカーじゃねえ・・・・・戦車だ!!!」
両手をばっと天に向かって振り上げる。
「戦車!それは男のロマン!その長い砲身から放たれる鋼鉄の一撃は壁を貫き、履帯が走行時にあげる音が、乗り手に高揚感を与え、その力強さはまさに鋼鉄の象!!!しかし、これに乗ってもいいのが女子だけだというのがどうにも納得がいかん!!!俺は、一度でも良いから、戦車に乗りたい!その為だけにいままで走って来たのだ!!!」
熱血に語る東馬。
「すごく熱いね・・・いほ君とは違う意味で」
「俺も自覚はしてるんだが・・・こいつの場合は戦車に乗って走りたいって願望が強すぎんだろ・・・・」
流石のいほも引く程の熱気を発する東馬。
そこでいほはある事を思いつく。
「じゃあ、お前も戦車の捜索を手伝ってくれよ。そうしたら、ここにある戦車に乗せてやる」
「マジか!?」
「マジだ。男と男の約束だ」
「乗った!!!」
いほの差し出した手を、思いっきり握り返す東馬。
円道東馬が仲間になった。(テッテレー)
「助かるよ。これで三人だ」
よし、それじゃあ本日二台目、探しに行きますか」
「「おー!」」
誰かが見ていると知らずに。