ガールズ&パンツァー ブルー・スティール   作:幻在

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生徒会

その日、いほ達は五台目の、ソ連の戦車『T-60』を見つけた。

その日はそれで解散し、次の日、いほ達は、食堂で昼食をとっていた。

いほはサバの味噌煮定食、優希は納豆定食、東馬は焼肉定食。

全員、まさかの定食だ。

がつがつ喰う東馬に対し、優希は少し前かがみに、いほに至ってはまさに本の表紙をそのまま体現したような綺麗な姿勢で食べていた。

「お前、あの西住家の長男なのか!?」

「ああ。まあ、正当な後継者は妹のまほになるけど、中学までは戦車に乗ってたんだ。戦車の操作を一ヶ月で、通信機の扱いを二ヶ月で、砲の撃ち方はその場で覚えたし、指揮の方法は母さんの指導から学んだんだ。いやあ、あの時は必死になって勉強したなぁ・・・」

「なんだか想像できるよ」

回想に浸るいほに対して、笑みを零す優希。

そんな中だった。

放送が入る。

『一年C組、西住いほ。一年B組、飯盛優希。一年A組、円道東馬ただちに生徒会室へ来てください。繰り返します・・・・』

「生徒会室・・・・?」

「なんだろうな?」

その放送に首を傾げる東馬といほ。

だが、優希は何かを察したかのように真剣な表情になる。

「もしかして・・・戦車を探しているのがばれたんじゃ・・・」

「げぇ!?マジかよ・・・・」

優希の言葉に、思わず声をあげる東馬。

だが、いほは驚いく事は無く、慌てた様子も無く、食べ終わった食器を厨房へ返しに行く。

「行くぞお前ら」

「いほ君?」

「生徒会だろうがなんだろうが、俺はやめない。乗る事が叶わなくても、俺は諦めない」

いほはそう言うと、さっさと厨房へ向かう。

「・・・・」

その様子を茫然として見る優希と東馬。

その後、急いで食器の上にある献立を食べ、いほの後を追った。

 

 

 

 

生徒会室。

「一年C組、西住いほ。ただ今参りました」

「い、飯盛優希です」

「円道東馬だ」

ずかずかと生徒会室にはいっくる三人。

「うん、ご苦労様」

そこには四人の男子生徒。

一人は生徒会長席にゲンドウポーズで三人を出迎えた眼鏡の生徒。

その傍らには木刀を床につきたてその柄頭を両手で持ち、騎士ポーズで威圧感満載な表情でいほ達を睨む男が一人。

もう一人は開いたノートパソコンを抱えているオタクっぽい少年がソファーに座っている。

そして最後に、これまた美男子とも言うべき容姿の少年がさわやかな笑みで立っていた。

「楽にしてくれたまえ」

そういうのは、生徒会長席にすわる眼鏡の男子、生徒会長の『北条(ほうじょう) (かるま)』だ。

だが、ここは生徒会室。

そして呼び出される事に心当たりがあって楽にしろといわれても楽になんて出来ない。

なのでいほ以外はガッチガチな優希と東馬。

「さて、どうして呼ばれたか、分かるかい?」

眼を細めて問いかける業。

「さあて、なんでしょうね?」

それに対して、いほはおどけるように返す。

「ふむ、まあそうだろうね」

くいくい、と人差し指で合図を送ると、いほたちの視界の外からもう一人、誰かが資料を持って歩いてきた。

風紀委員長『鹿角(しかかど) 正義(ジャスティス)』だ。

なんとも、おかしな名前である。

その少年はこちらを一瞥すると、いほを一睨みして資料を業に渡す。

「君たち、どうやら裏山で放課後何かやっているようだね」

そう言い、見ていた資料を返して、そこにある写真をいほたちに見せる。

そこには、四両の戦車と、そこにいるいほ、優希、東馬の三人が写っている。

これにはいほも額に汗をかく。

「これ、君たちだろう?」

「ええ、まあ、そうですね・・・・」

歯切れ悪く答えるいほ。

「この戦車、一体どこで見つけたのかな?」

そう聞いてくる業。

「最初の四号は裏山の森の中で、ヤークトパンターは地図上の森の中で、同じように、クロムウェルとチャーフィーもそこで、残りのコンカラーとT-60は右側です」

「ふむ、全部で五両か」

うなずく業。

「それで?」

そこで業の傍にいた騎士ポーズをとっていた武人『土方(ひじかた) 龍三(りゅうぞう)』だ。

通称『鬼の剣道部長』。

「この五両の戦車を探して何をするつもりだった?」

「なにも」

いほは、笑って返す。

「ただ探したかった。それだけ」

「本当?」

そこへ、美男子『刻間(こくま) 比叡(ひえい)』が乗り出してくる。

「君、あの西住流の長男なんでしょ?だったらこれらを使って戦車道を始めるなんてことも考えつくんだけど?」

その様に指摘する比叡。

それに対しいほは何も動じない様子で返す。

「それは貴方たち次第でしょう?俺はなにも、許可無しで戦車道をする気はありません。小学生の時だって、母からちゃんと許可を貰って戦車に乗っていましたし、別に試合をする訳じゃないんですし、自由に乗り回してもいいんではないでしょうか?」

「まあ、確かに道理は通っているけどねぇ・・・」

言葉を詰まらせる比叡。

「ふざけるんじゃないぞ・・・」

そこで正義が憎らし気に声を発する。

「?」

「戦車とは、本来は()()()女が乗るもの。それに男が乗る事はすなわち、その装甲に守られていなければ戦えないのと同義だ。つまりは弱い!我が富士宮工業高校はそんな非力な人間を作る所ではない!」

声を張り上げ、そう()()を述べる正義。

その鋭い視線は、向けられていない筈の優希や東馬を僅かに怯えさせるのに十分な眼光を持っていた。

だが、いほは、それ以上に鋭い視線で返した。

「非力・・・・それは違うぞ?」

「なんだと?」

「装甲に守られていなければ戦えない?それ即ち弱いのと同じ?大いに間違いだ」

いほは、笑みを消して、正義に言い放つ。

「ま、間違いだと・・・?」

その威圧に怯えている事を無自覚ながら隠しながらそう返す正義。

「戦車道っていうのはな、武道の一つだ。剣道、柔道、その他もろもろ。あらゆる武道の中の一つだ。志は人それぞれ。何故(なにゆえ)その道を貫くのかも人それぞれ。その先に手にするものはなんなのかも人それぞれ。だがな、そこに、『非力』なんて言葉はねえんだよ。俺の尊敬する人は、決して非力なんかじゃねえ。誰よりも強く、そして気高く、鉄の意志の持ち主だ。この世で一番強い人間ってのは、力や武力だけを持っている人間じゃない。その力の使い道を理解し、自分の道を進み続けられるものだ。ただ客観的に物事を考えてる奴が、その道を精一杯頑張っている奴らの事を軽々しく非力なんていうんじゃねえよ」

完全に正義を黙殺するいほ。

いほによって、生徒会室の空気は氷点下を行き、全員がその背筋にひんやりとしたものを感じる。

 

 

一人を除いて。

 

 

「いやあ、すまないね」

生徒会長、北条業だ。

「君の心意気は十分に分かった。随分とその人を尊敬しているようだね」

「ええ。目標、という訳ではないですけど、尊敬に値する人間です」

いほは笑みを取り戻し、業の言葉に素直に返す。

「ふむ。これならば、あの爺さんを満足させる事ができるかもしれないな」

龍三がそんな事をぼやく。

「爺さん?」

「誰だそりゃ?」

優希と東馬が首を傾げる。

そこでいほは、振り向いて生徒会室の入り口の方を見る。

「いほ君?」

「いほ?」

「誰か来る」

直後、バァン!と勢いよく扉が開かれた。

「呼んだか北条!」

景気の良いしわがれた声と共に、とある人物が入ってくる。

そこには、やたら派手な装束を着込み、その右手には杖。

スキンヘッドに口元には真っ白い長い髭を生やし、その顔に浮かぶ笑みは豪快の一言に尽きる。

「貴方は・・・・理事長!?」

「ええ!?」

「げぇ!?」

いほが、彼の身分を驚愕の声と共に叫び、優希と東馬がそれに続いて驚く。

「む?他にもいたのか」

そこで理事長と呼ばれた老人はいほ達に気付くも、遠慮なく生徒会室に入ってくる。

「理事長。彼が(くだん)の西住いほと、その友人二人です」

瞬間、理事長がいほに向かって興味深々といった視線を向けると同時に、まじまじと見るように顔を近づける。

そしていほは、この男の正体を知っていた。

 

 

 

バルカン工業高校理事長『雷切(らいきり) 源野(げんの)

 

その正体は、世界有数の力を誇る『雷切財閥』の三代目当主なのだ。

このバルカン工業高校学園艦は、もともと雷切財閥の管轄にある上に、この源野が自ら理事長を務めると言い出し、ここ数十年はずっと彼が理事長を務めているのだ。

とにかく刺激のある事が好きで、革命だろうがなんだろうが、面白いと思ったらすぐさま飛んでいくというぶっ飛んだ老人なのだ。

なんとその年七十歳である。

しかもこの先百三十まで生きられるだとか。

 

 

 

「ふぅむ、良い目をしておる」

「どうも」

源野がいほから離れ、業の方を見る。

「北条、戦車の方は?」

「裏山に五両ほど。どうします?戦車道、やりますか?」

「な!?」

業の言葉に、驚く正義。

その事に、優希と東馬も驚き、いほでさえも動揺を隠せない。

(とんだたぬきだなこの人)

いほが、心中でその様に思う。

そして、一つの大きな笑い声。

「ガーハッハッハッハ!!良いだろう!男の戦車道をここで発足させるか!中々に面白い事をやらかそうとするじゃないかこの奇策師め!」

思いっきり高笑いする源野。

「西住!」

「ハッ!」

源野に呼ばれ、気を引き締めた声で返すいほ。

「喜べ、貴様の念願の戦車道がここで出来るぞ。やるからには、ワシは勝つところがみたい。貴様の見せる戦車道がみたい。せいぜい、退屈させるなよ?」

その源野の言葉に、頬に笑みを浮かべるいほ。

そして、歓喜を混じらせた声で、いほは返す。

了解(ヤヴォール)!」

 

 

ここから始まる、男の戦車道。

 

いずれ、その波は、日本中を揺るがし、やがては世界にも伝播する事になる。

 

ここに立ち上がる富士宮工業高校機甲部隊には、いくつもの試練にぶつかる事になる。

 

 

 

 

 

 

 

北海道地方。

「――――すごい」

パンターにのっていた少女がそう漏らした。

その視線の先には、雪の降り積もる地面の上に、圧倒的力で蹂躙尽くされていた、戦車の残骸。どれもが、白旗を出し、沈黙していた。

その中央に、何両か健在な戦車たち。

ティーガーⅠやパンター、三号戦車など。

その戦車には、『黒森峰女学園』の校章が貼られていた。

「隊長もそうだけど、やっぱり新入生の西住の人も凄いわね・・・・」

同じ戦車に乗っていた運転手が出てくる。

その視線の先には、二両の戦車から上半身を出している、二人の生徒。

一人は、暗い茶髪で背中まで伸ばした髪、鋭い視線を、その髪の間からぎらつかせ、冷酷な目付きで沈黙する戦車を見下していた。

もう一人は、灰色がかった黒髪をなびかせており、その表情は、母親譲りの威厳を持っていた。

この、黒髪の少女が、なんといおう、いほの双子の妹、『西住まほ』だ。

そして、茶髪の少女が、この黒森峰女学園機甲部隊隊長『桜田(さくらだ) 奧華(おうか)』だ。

ふと、森の木に隠れていた敵戦車が、静かにこちらを狙っていた。

狙いを定め、せめて一矢報いようとしているのだ。

だが。

「そこか」

まほが低い声でつぶやく。

「下がれ」

そう命令を下すと、彼女の乗っていたティーガーⅠが下がる。

直後、その戦車が砲撃。

砲弾は掠る事なく地面に直撃。

「砲塔、旋回」

奧華がそう呟くと、彼女の乗っていたティーガーⅡが砲塔を旋回させる。

それにあわてて逃げようとする敵戦車。

だが、どうやらぬかるみに足をとられ、上手く動けない。

そして、ティーガーⅡの砲塔がついにその敵戦車を捉える。

「撃て」

冷徹な一撃(一言)

その言葉通り、無慈悲にティーガーⅡの砲撃がその戦車に突き刺さる。

白旗を上げ、沈黙。

アナウンスが、その戦車の沈黙を告げ、そして対戦者の敗北を告げる。

『黒森峰女学園の勝利!』

その様な事を告げられる。

「お疲れ様です」

まほが、奧華に向かってその様にねぎらう。

だが、奧華はまほを見る事はしない。

「さっさと撤収するぞ。つまらない試合だ」

「・・・・はい」

奧華の言葉に、少し落ち込んだ声で返すまほ。

奧華は、そのままティーガーⅡを走らせる。

「・・・・ふう」

緊迫した空気から解放されたような表情で息をつくまほ。

「お疲れ~」

すると操縦席から同じティーガーに乗っていた黒髪を髪の後ろで結った髪型の少女の運転手が出てくる。

「貴方もお疲れ様」

「いやぁ、あの人も結構厳しいよね~。強くなる事にしか興味ないって感じだしさ~。もう少し柔らかくならないものかね~」

お気楽な感じで、『伊藤(いとう) 千尋(ちひろ)』はそうぼやく。

「それ、隊長の前で言えば確実に殺されますよね?」

すると、砲手席から短髪の眼鏡の少女『(あかつき) 星良(せいら)』がそう咎める。

至って真面目な人物だ。

「あーあ、せめていほの奴が隊長だったな」

「それには無理があるでしょう?大体、男が戦車道をやると、世間から批判を喰らってしまうでしょう?」

「でもさぁ、いほの実力が認められないってのはどうにも納得いかねえんだよな。まほもそう思うだろ?」

「そうだな」

空を見上げるまほ。

「だが、なんだか近頃、破天荒なあの人が、すごい事を起こしそうな気がしてならない」

その顔に笑みを浮かべ、まほは、降りかかる雪景色を眺める。

 

 

 




まほの戦車に乗っているのは原作関係無くオリキャラです。

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