おとぎ話の妖精   作:片仮名キブン

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 ガルナ島の前にこれがあることを忘れてました。


決闘ナツVSエルザ

 町の中心に位置する石造りの強大な白い建物。魔法評議会本部ERA(エラ)、マスター達地方ギルドマスターのトップであり魔導士達の管理を行う機関、その中でも最高位の権力を持っているのが評議員と呼ばれる十人の人間たちである。そんな彼らが一堂に集まり会議しているのは先日発生したララバイの件、何しろ第二種禁忌魔道具が盗まれたのだ。これが、鉄の森(アイゼンバルド)()()の闇ギルドによって盗まれたから今回のような()()()()()()()で済んだというのは評議員全員が一致する考えだ。

 

「まったくもって厄介な事件がまた一つ起きてしまったな」

 

「闇ギルドが起こした今回の事件でのけが人や駅への被害は大きい、また非魔法民達がうるさくなりますよ」

 

「だから私は常々進言していたのだ、闇ギルド等という社会の悪は完膚なきまでに撲滅すべきとな」

 

 会議は冷静とは言い難い状態で続いていく。各々が自分の意見を述べまとまりがなく、意見をぶつけるのではなくただ言いたいことを言い合っているだけ。全員が壁に向かって話しかけているようなものだ。

 

「現実的じゃねえな。ギルドを壊滅させるって言うなら一流の魔導士を何人そろえるつもりだぁ十人か二十かそれだけの人間が連携をとれるようになるまでいったいどれだけの時間をかけるつもりなんだ。しかも闇ギルドの数も膨大、さらに付け加えるならば俺達が一斉検挙なんか実施すれば闇ギルド同士が同盟を結ぶ可能性まででてくる。今までみたいな縄張り争いによるつぶし合いなんてのもなくなるかもな」

 

 無駄話のをぶった切ったのはジークレインの言葉だった。現実に起こったことに対する彼の推測は興奮しているものに対して火に油を注ぐようなものだ。

 

「抗争による被害をあなたは知らないというのですか!!いったいどれほどの手間を我々正規ギルドが補てんしているか」

 

「――やめよ論点がずれている。闇ギルドに対してはいずれしかるべき手段を行使するがそれはいまではない。それに闇ギルドに攻勢を仕掛けても今回のように各地に封印されている魔道具やゼレフの魔法、禁術を用いられるかもわからん。藪をつついて蛇を出すことはない」

 

 いくらすべての魔導士を管理している評議院といえども闇ギルドそのすべてを壊滅させる力はない。非魔法民と呼ばれる魔法を行使しない人たち、一般的に彼らが魔導士に依頼を出しているのだがその依頼すべてが合法的な依頼ばかりではではない。なかには非合法な暗殺やご禁制の品々の制作といった依頼まである。一つを潰したとしても別の闇ギルドが依頼を受けるだけでありイタチごっこになるのが目に見えている。

 

「そもそもこれほどの魔道具の封印を解いたのだ、保管場所は限られた者しか知らぬ。スパイや情報管理の洗い出しもとなると頭が痛いな」

 

「それに聞くところによればこれはゼレフの魔法っていうやん、ゼレフの魔法やったら特一級指定のものやで」

 

「確実に管理責任が問われるな」

 

「まあそんなにピリピリするなよ。幸いにも今回死者はゼロ、あれだけ目の敵にしていた妖精の尻尾(フェアリーテイル)が事態の悪化を防いだのは誰の目から見ても明らか、今回だけは奴らに助けられたみてーだな」

 

「……にしてもたった五人か六人でギルド一つをつぶしちゃうなんて凄まじいわね、末恐ろしいわ」

 

 評議員の中でも若輩にあたるジークレインとウルティアが口にした言葉に思わず他の評議員たちも口をつぐむ。内心は気に食わないがたしかに少数での闇ギルドの殲滅、それも二つ名持ちが所属しているギルドのだ。評議院の中でもそれほどの実力者は多くはない……だが。

 

「なにをいうか今回のクヌギ駅とクローバーのギルド会館の崩壊の責は奴らにあるといえる。常日頃から暴れっぷりを考えると今回の功績など雀の涙程の価値もないわい」

 

「――おいおいララバイによって死者が出ていれば国が黙ってねえぞ。その場合確実に責任に問われるのは俺達だよな、そして封印関連の統括はニノ席あんただ」

 

「ふざけるな!!責任の所在をここまで引き上げるつもりか。下の無能をワシに押し付けけるつもりか!!」

 

「まあ今回は素直に褒美をくれてやることを推奨するぜ。せいぜいねぎらってやるんだな」

 

 ジークレインの皮肉を浮かべた表情に他の評議院達の熱量はさらに激しさを増す。そして会議は誰が責任をとるのかという方向へと話が進んでいくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 町の号外新聞には一面に鉄の森(アイゼンバルド)のテロについて書かれていた。さすがに、本当の目的がギルドマスターの暗殺だったなんてことは書かれていない。クヌギ駅が破壊されたこととけがをした人のことが書かれている。自分が新聞の一面を飾るような事件とかかわりを持つとは思ってもなかったけど……。

 

 あんな事件が起きた後だもん。しばらくは依頼(クエスト)を受けるのもお休みにして、家で平和な日常を送っています。昨日出した手紙にはこう書いておいたけど……嘘、本当は不安なことができてしまった。

 

 先日、鉄の森(アイゼンバルド)の中でも幹部たちは逃げ出したなんて情報がギルド間で通知された。なんでもカゲヤマが魔法解除(ディスペル)を使えることを知らなかった検束魔導士が拘束の確認をおろそかにしたようだ。エリゴールは検束魔導士達を壊滅させて、この借りは必ず返すと言い残し去っていったらしい。

 

 確実に目をつけられてますねわかります。こんなことパパに知られたら心配して帰ってこいって言われるに決まっている。だから手紙には書かなかったけど……これからどうなるんだろう。

 

「いつ来るかわからねえ敵のことを気にしても仕方ねえだろ。もっと気楽に生きようぜ」

 

 能天気な声が隣から聞こえる。口からこぼれるため息こいつらは私みたいな繊細な心をもっていないからそんなことが言えるのだ。私にいつ復讐の矛先が向かうかわからない今、暇そうな人たちに護衛を頼んだのはいい――でも。

 

「グレイ!!何、乙女の部屋で服を脱いでんのよ」

 

 聞いてないここまで常識がないなんて聞いてない。昨日のナツは部屋の中で炎を出して危うく火事になりかけるし今日は裸族がおもむろに服を脱ぎだす。正直人選を間違えた気しかしない。

 

「おいおい外で服を脱ぐほうがマズイだろう。お前大丈夫か」

 

 心配そうなまなざしでこっちに近寄ってくるグレイ、なんだ私に熱でもあると思ってるのか。自分の恰好を見てから人の体調を心配しろと言いたい。

 

「――寄るな変態」

 

変態に頭の心配をされてしまった。そもそもグレイが服を脱ぎ過ぎているという前提条件があるだろうと文句を言いたい。手で触りたくないからハイキックをおみまいしたけど応えた様子もなくグレイは話を続ける。

 

「それにお前は直接鉄の森(アイゼンバルド)と戦ったわけでもないんだから問題ねえだろ。狙われるとしたら俺やエルザ、ナツからだろうから安心しろって」

 

 そうだ。私はハザマと一緒にグレイ達が戦っている間周りの人たちを治療していたのだ。とは言っても、私がしたことなんて比較的軽傷な人たちを避難誘導したり、布を使って簡単な手当てくらいだけど……。立って歩けないような重傷の人たちはハザマの分身の魔法と指から出す紐で治療しているようだった。同じ顔の人間が三十人も同じ場所にいるのは正直言って気味が悪かった。まあ、そのおかげで町の人たちの治療が速く済んだんだけどね。

 

そのハザマだけどギルド会館の修理のためあの場に残っているため、あれから顔を合わせていない。マスターいわくあの場はハザマに任せておけばいい感じになるらしい。他のギルドマスター達も会館さえ修復できればそこまで追及することでもないのだという……まあ、ハザマがララバイをあそこまで持っていくよう指示を出したんだから修復する責任があるはずだからあれは見捨てたわけじゃない。後ろからおいていくなーという悲痛な叫び声が上がっていたが私たちは決して見捨てたわけじゃない。

 

「そんなことよりもそろそろ時間だぞ」

 

「は?時間って何のよ、今日は特に予定は入ってなかったはずだけど」

 

 今日は積まれている本を紅茶でも飲みながらゆったりと消化していく予定なのだ。最近依頼(クエスト)のたびに騒ぎが起きてしまい身も心も疲れ切っている私には休みが必要なのだ

 

「おいおい忘れてんじゃねえよ。出発前にナツが言ってただろう――戦うんだよナツとエルザが」

 

 

 

 

 

 マグノリアのとある大通り、いつもは通行人が行き来し人の流れが途切れることがないこの場所に人だかりができていた。みんなが勝手に騒ぎ出して酒を飲んだり賭けをしたりあれの仲間だとは思われたくないな。

 

「――ちょーっと何やってのよ二人とも」

 

 仲間同士が争うことを面白く騒ぐなんて信じられない――止めなくちゃ。

 

「あら、ルーシィも来てたの」

 

 ミラさんが人混みの中から声をかけてきた。にこやかに笑っている立ち姿からはこの場所がいまから決闘が行われるとはとても思えない。

 

「いいんですかこんなの。同じギルドの仲間同士で戦うなんて怪我でもしたら……」

 

「へいきへいき、あの二人昔は結構戦ってたのよ。そうはいってもナツがエルザに一方的に挑戦してただけなんだけどね。ところでハザマはルーシィ含めてマスターも一緒に帰ってきたけどハザマだけ別行動?」

 

「えーとその、ハザマさんは残ってちょっとした後処理というかサービスというかそんな感じでまだクローバーの町にいるのかと」

 

 思い浮かぶ氷漬けで置き去りにされたハザマ。マスターに囲まれてその姿は見えなくなったけど罪悪感はごまかせない。

 

「なーんだいつも通りね。よかった今回のクエストはちょっと特殊だから報告しないでずっと家にとじこもってると思ったわ」

 

 納得がいったと笑顔でうなずいているミラさん。いつも通りっていうのはどういうことなのでしょうか。

 

「ハザマはね妖精の尻尾(フェアリーテイル)でも修復や回復、後は魔法の解除ねそういうクエスト専門で受けてるのよ。だから、今回みたいに被害が大きい時は帰ってくるのが遅くなるのよ」

 

 それハザマさんかわいそうすぎませんか。クエストが終わってからまたクエストなんて、ナツといくつかのクエストを受けたけどその強さと比例するように人や物に対しての被害も人間離れしている。これを一人でフォローしているのだとしたら、それもギルド全員の…………今度お菓子でも作って持っていこう。

 

「二人ともすごい気迫だな。男なら負けたくない相手がいるたとえそいつが仲間でも乗り越えていかなければ前に進めない相手という奴がな」

 

 背の高い筋肉質な男が後ろから話しかけてきた。筋肉で覆われたその体は魔導士というより戦士みたいな体つきだ。たしかミラさんの弟で名前はエルフマンっていったっけ。

 

「もうエルザは女の子よ」

 

「怪物のメスさ――ゲフォ」

 

 エルフマンとミラさんの間に立っていたえっと誰だっけ。とりあえずその人が胸を押させて悶絶している。持病の発作でも出たのかしら……。

 

「さあさあもうすぐ締め切るよ。エルザVSナツこの勝負は熱いよー、オッズはエルザが優勢だよー。エルザは固いよーエルザにかければ確実だよ」

 

 カナが賭けの元締めをしているのか、その隣には酒樽が置かれており彼女はもう出来上がっているように見えるが全然酔っぱらっているように見えない。そこが彼女の恐ろしいところだ。

 

「ナツに1000Jお願い」

 

「あらハッピーはナツに賭けるのね」

 

 信じらんない。誰もこの状況をどうにかしようって思ってないの、もっと平和的な手段で競い合いましょうよ。ほら………………腕相撲とか。

 

「仲間を対象に賭け事とかムーリー、もっと健全に生きていくべきよ」

 

「意外と純情なんだな」

 

 エルザの勝ちの札を買いながらグレイがいう。お前もか、誰一人この状況がおかしいことに気づいていない……それよりもお前はまず服を着ろ。

 

 

 

◇◇◇

 

「こうしてお前と戦うのも何年ぶりだろうな」

 

 フェアリーテイルのメンバーの中心でナツとエルザは互いに向かい合い戦意をたぎらせている。昔からよく挑まれていたことを脳裏に浮かべているエルザは懐かしむように話す。

 

「あの時はガキだった。俺は強くなった、今日こそはお前に勝つ!!」

 

「……ああわかっているさ。先日の戦いでお前の成長はこの目で見させてもらった。私も自分の本気というものを出したいからな」

 

 予備動作もなしに鎧の換装が行われる。赤い翼を背負い赤色を基本として関節部分にはオレンジ色のパーツが重ねられている名は炎帝の鎧(えんていのよろい)。耐火性能に特化したこの鎧を出してきたことに周囲にどよめきが生まれる。なぜならエルザは先手必勝を常とし、威力の高い鎧や殺傷能力の高い鎧で相手に一切の攻撃を許さない戦闘スタイルだ。そのエルザがナツの攻撃に対して対応するための鎧を選んだということは――エルザ自身が()()()()()()()()()と思っていることを意味している。

 

「やっぱり、エルザに賭ける」

 

「ちょっとハッピー、ナツのこともっと信じなさいよ」

 

炎帝の鎧(えんていのよろい)かそうこなくっちゃな。これで心おきなく全力で戦える」

 

 両手に炎を迸らせながら拳を構える。いつでもとびかかれるように腰を落とし重心を下げているその姿は荒々しい獣を思い浮かばせる。笑みを浮かべたナツと油断ならないと表情を引き締め火花を散らせている。

 

「始めいっ!!」

 

 どこからか現れたマカロフが開始を宣言した。

 

「こっちから行くぞ、おらぁ!!」

 

 先手を取ったのはナツだ。一気に懐にもぐりこむ一撃、だがそれをエルザは後方へのバックステップ一つで回避する。エルザの剣の間合いよりも内側への攻撃はエルザに読まれていた。合わせて剣を横薙ぎにふるう。空気をえぐり取る斬撃を地に体を這わせることでかわす。互いに人間離れしたその戦いに周りの興奮も最高潮を迎える。

 

 下からの顎を狙った蹴りに剣を合わせて軽く弾くだけで何もない空間への空振りになる。さすがにまずいと思ったのか手を地面に付けバク天で仕切り直しを試みる。だがその行動はエルザに読まれていたようで無防備な手への蹴り、転ばされたナツに二撃目の剣をよける手段がない。周りのメンバーはいよいよ決着がついたかのように見えた。だが見下ろしたナツの顔は勝負がついたとは言っていなかった。口から吐かれた炎、このまま剣を振り下ろせばいくら炎帝の鎧(えんていのよろい)でも負傷は免れない。攻撃することを止め、背を反らせながら上空に飛び込むことでその体に火の粉の一つもあたらない。だが、行き場を失った炎が周りのメンバーを巻き込む。

 

「――ちょっナツお前気を付けろ!!」「熱い!!」「もっと周りのことを気にして戦え」

 

 地面に降り立ったエルザと立ち上がったナツ。奇しくもナツの狙い通り仕切り直しが行われたようで、エルザの剣の持ち方が両手持ちに変わりナツの炎はさらにその勢いを増す。

 

 両者の一撃が激突するそう思われたその時――戦闘音を切り裂く一つの音が響く。

 

「そこまでです……まったく往来でこのような騒ぎを起こすとは。野蛮なギルドとは聞いていましたがここまでとは――酷いものですね」

 

 背の高い帽子をかぶり、黒いローブを身にまとったカエルの男はそういうと自然とできた人混みの間の道を歩いてナツとエルザの前で立ち止まる。

 

「全員その場を動かないでください。私は評議院から派遣された使者です……結構」

 

 懐から取り出した羊皮紙の封印を解き、カエルの男はこの場にいる全員に聞こえるよう宣言する。

 

「先日の鉄の森(アイゼンバルド)の事件において11件の容疑がかけられています。よって、容疑者妖精の尻尾(フェアリーテイル)エルザ・スカーレットを逮捕します」

 

「「「「――はぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「えっ……」

 

 エルザ以外の全メンバーが驚きの声を上げる。どうやら決闘の決着はまだ先になるようだ。

 




 
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