おとぎ話の妖精   作:片仮名キブン

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 ちょっと立て込んでますがなんとか書き上がりました。もっと更新スピードをあげたいんですけど…………ほかにもやりたいことが多すぎる。(責任転嫁)


犯される必要がある罪

 いつもは喧騒の絶えないフェアリーテイルの酒場だが今は誰もが口を閉ざしていた。一様に難しい顔をして机の前に座っているだけであった。困惑と苛立ちが周囲の人間から洩れ出ており、ギルド内は鬱屈した空気に包まれていた。

 

 そんな中カウンター席のとある一点のみがやけに騒がしい。テーブルの上にはグラスとその中に閉じ込められているトカゲ。そのトカゲがなぜか人語を話している。内容はここから出せというもので、もしかしたら新種のトカゲかもしれない。言葉を話すネコや顔がカエルのカエル男がいるのだ、人語を話すトカゲもきっといるだろう。

 

「うるさいわね、静かに結果を待つしかないんだから落ちついてよ」

 

「そうだぜナツ評議会には逆らえねえ」

 

 このトカゲはどうやらナツらしい。何の理由があって仲間をトカゲに変身させたかは知らないがこいつらなかなかに恐ろしいことをする。ナツにとって自分の姿形はあまり重要ではないらしい、気にしたそぶりも見せずコップの中で暴れ回っている。そんなナツを落ち着かせようと周囲のメンバーは説得を行うもナツは納得せず余計に騒がしくなっていく。

 

「間違ってるのはあいつらだろ!!エルザを犯人扱いしやがって、俺達はララバイを取り返したんだぞ」

 

 確かに今回の逮捕は不自然な点が多すぎる。そのことは他のメンバーも気づいていた、だが……。

 

「評議院が黒といったら白いもんも黒くなっちまうよ。俺達が何を言ったって無駄ってこった」

 

 この一言が総意だろう。誰もかれもがあきらめており成り行きに任せるしかないのが現状だ。

 

「だがなぜ急に?今までだって物を()()()()で壊しちまうこともあったがこんな風に裁判になることなんてなかったぞ」

 

「知るかよお偉方の考えることが俺にわかるかよ」

 

 そもそもが雲の上のことなのだ。今までだってトラブルを起こし評議院の名は耳にしたことはあった。だが直接役人が乗り込んできたのは今回が初めてだ。破壊の一件にしたってクヌギ駅を壊したのはエリゴールがほとんどでララバイの怪物が倒壊させたクローバーのギルド会館にしても今頃ハザマが必死に修繕しているだろう。今回の事件では逮捕され、過去の事件では逮捕されない。

 

「絶対何か裏があるのに決まってる」

 

 ルーシィはとりわけ納得いかないようで、イライラと机を叩いている。

 

「評議院が何を企んでいたとしてもそんなに悪いことにはならないんじゃないかしら」

 

 周囲でただ一人、いつもと同じ微笑みを浮かべている女性がいた――ミラだ。

 

「ミラさんはなんでそんなに落ち着いているんですか。エルザが逮捕されちゃったんですよ」

 

 ルーシィにはミラの余裕がわからなかった。連行されていくエルザに付き添おうとしたものの部外者に用はないと言われ、ついていくこともできなかった。今頃一人で尋問に臨んでいるエルザを思うと心配でたまらない。

 

「知ってるからかしらね」

 

「何を知ってるっていうんです、もしかしてエルザを助ける方法とかですか?」

 

 今一番教えてほしいことをもしかしたらミラが知っているのではないか。そんな思いがルーシィの中に生まれる。しかしミラの答えはそれとは異なっていた。

 

「誰よりも仲間思いの男の子…かな」

 

 そう口にしたミラの言葉には一点の疑念も持っていないようだった。

 

 

◇◇◇

 評議院フィオーレ支部。マグノリアから一番近い場所にある魔導士裁判が行える裁判所のとある廊下、エルザは道中での使者が()()()()こぼした独り言を思い返していた。具体的な罪状や捜査の経緯といった情報は出なかったが、今回の逮捕には()()()()()()が多数とられているらしい。いわく評議院全員出席の最高裁判が今回行われる。いわく事件の凶悪性と情報の機密性から弁護人の出席も認められず、書記官による記録もとられない。捜査が正常に行われているとは思えないずさんな逮捕、裁判とは名ばかりの単に決定事項を通知するだけのようなこの行為に何のいみがあるのか。口にした使者の顔には悔しさが滲んでいた。 

 

これらの情報を踏まえるにどうやら評議院は私をスケープゴートに仕立て上げ今回の一件の責任の矛先をそらせるつもりらしい。正直に言えば評議院のしようとしていることには怒りを覚える。だが、仕方のないと思う私もいる。死者は出なかったとはいえゼレフの魔法の一つが盗まれたのだ。その恐怖は数百年たった今でも全く衰えることはない。その恐怖を私を裁くことで解決したと周囲に知らせることが目的だろう。

 

 評議院もあまりに重い罰を下せばフェアリーテイルを筆頭に他のギルドの反発も計算しているに違いない。となると有罪は受けるだろうが実際の刑罰を受けることなく、ひっそりと経歴に前科の欄が追加される。今回の事件による被害は私が原因で引き起こされ、評議院は罰を下したという()()が欲しいのだな。私一人が納得すれば誰も不幸にならない収まりのいい結果が得られる。

 

「久しぶりだな……エルザ」

 

 柱の影から呼び止める声がする。その声が誰か認識する前に、隣を歩いていたカエル顔の男がひざまずき頭を垂れる。

 

「――ジークレイン」

 

 評議員になったことは知っていたがこんなところで何をしているのか。そうかこいつが裏で糸を引いていたのか。

 

「貴様が今回の黒幕というわけか、くだらないことを」

 

 殺気を投げつけるも涼しい顔を崩さないジークレイン。何よりも両手を拘束され手出しができない状況で、こいつと顔を合わせることにいらだちを覚える。

 

「おいおいおい勘違いするなよ。俺はフェアリーテイルをかばった側だぜお前もわかってるとは思うがお前は評議院の身代わりにされただけだ」

 

「黙れ……」

 

 こいつが何を言おうが一切が信用できない、だがなぜ私の前に姿を現した。私が敵意を持っていることくらいこいつはよくわかっているはずだ。

 

「まあいい、お前が俺の言うことを信用しようがしまいがどちらでも構わない。本題はだな……」

 

 指で私の顎をなぞりながら顔を耳元に寄せながらささやき声で告げる。

 

「あの事は誰にも言うなよ。ジジイどもも含めてお前の“大好きな”妖精たちにもな」

 

 顎を触られているのに感覚がないどうやら実体のない魔法のようだ。チッ!!こいつがこの場にいたならば思いっきり蹴り上げてやれたものを。

 

「この扉の先では俺と前は初対面。俺も特にお前を害する理由もないし、お前も俺にかみつく理由はない。それじゃあ公正な判決が出ることを祈ってるよ」

 

 もう用はないとばかりに背を向けたジークレインの体が揺らぎ――消えた。

 

「ジークレイン様がこんなところにお見えになるとは……あなた何者ですか」

 

「奴の敵だ」

 

 開かれた扉の先では評議員達が勢ぞろいしている。高いところからこちらを見下ろしたその姿からは絶対的な権力が感じられる。私だ証言台に立ったことを確認すると一男高い席に座っている評議院が杖で床を叩き宣言する。

 

「これより被告人エルザ・スカーレットの特秘魔導裁判を開廷する。」

 

 裁判が始まる。私の推測がジークレインの言葉から裏付けがとれてしまった。奴の言葉を聞くのはしゃくだが、私が納得すれば済む話だ。無駄に暴れて台無しにするのは……

 

「――その裁判。待ったぁぁぁ!!」

 

 閉ざされようとしていた扉が力任せに開かれる。そこに立っていたのはここにいるはずのない男だ――なぜお前がここにいるのだハザマ。

 

 

◇◇◇

 無理やりこじ開けた扉の先には手錠を掛けられたエルザがこちらを見ていた。ふっふふ置いていった俺が今この場にいることに驚いているな、本当は文句の百個も(怖くて一つも言えないを)言いたいところだが状況が状況だ後回しにしよう。

 魔法界の最高権力者の十人がこちらを見下ろしている。小心者の俺の心臓はさっきからバクバクと音を立て、手が自分の意思に反してブルブル震えている。どもらないように注意しないと……。さてそもそもの発端はギルドマスターのあれやこれやの注文(やれ絨毯の模様が気に食わない、やれトイレは二階にもついていた、やれ窓の形が気に食わない)を受けながらリフォームを行っていた時に見覚えのある鳥がこちらに向かって来たところから始まる。

 

 あれは連絡用にギルドに常備してある俺の式神じゃないか、こいつは魔力を溜めておけば簡単な命令なら誰でも式神を使えるというもので、おおかたマスターからの伝言でも預かっているのかと思いそいつの足に括り付けられていた手紙を開ける。魔法がかけられた手紙を開けるとミラが手紙から飛び出てきた。終わらないリフォームとその伝えられた内容の計二つの出来事に精神的ストレスを与えられた俺のメンタルは限界だった…………。

 

 なんでこんなところにいるんですかねー。誰よりも俺が一番そのことを知りたい。もしかしたら俺はアホなのか。その場の勢いと言おうか抑えきれない衝動のまま気がついたらエルザの裁判が行われるという裁判所まで来てしまっていた。(確実にアホ)

 

 正直言ってこの場に俺がいくらエルザを弁護する言葉を並び立てても評議員達は顔色一つ変えず、俺をつまみ出しエルザへの有罪判決を言い渡すだろう。それが組織の力というものでただのギルド所属の魔導士にはどうしようもないことだ。

 

「はじめまして評議員の皆様。私はフェアリーテイル所属のハザマと申します」

 

「知っている。貴様さっさとこの場から立ち去今この場にいるだけでお前を十年牢屋に入れることもできるのだぞ」

 

 そんなに威圧しなくてもいいじゃないか、俺だってこんな場所に長居はしたくない。

 

「今回エルザの逮捕は正常な手続きとは到底思えないのですが。彼女が裁判にかけられる正当な理由をお聞かせ願いたい」

 

「――くどい!!ことは魔導界の平和にかかわる機密性の高いものだ。一介の魔導士ごときが知る権利など一切ないわ!!検束隊よ即刻こいつを地下牢へいれろ」

 

 法廷に待機していた検束魔導士達が俺に拘束魔法を向けてくる。流石にこの人数の拘束魔法を解除(ディスペル)するのはきつい。

 

「私はブルーベル侯爵からの使者として今この場に立っています。私への攻撃は侯爵への攻撃だと心得てください」

 

 ブルーベル侯爵というのはクヌギ駅やオニバスといった一帯を治めている貴族の名前だ。俺がこの場で意見を述べるのためには、最低でもこのくらいの後ろ盾がなければ強制的に排除される……。

 

「嘘をつくな。この短時間に貴様が侯爵閣下の使者になど任命されるわけがない」

 

 鋭いな……。確かにそんな時間を作ることは物理的に不可能だ。ミラからの手紙を受け取った俺は真っすぐここ、フィオーレ支部に向かってきている。当然ながら貴族に謁見する時間はない。だがそれは俺が()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「嘘じゃありません。私は現在ブルーベル侯爵に今回の事件の報告を行ったところです。侯爵閣下は今回の事件、評議院に対して非常に強い不信感を持っておられます。今行おうとしているエルザ・スカーレットに対する裁判は事件を隠蔽可能性があると言わざるを得ません。何の証拠があって彼女を連行したのですか納得できる理由をお聞かせ願います」

 

 俺が式神使いだというのは評議員達も把握しているだろう。自分の分身を作るこの術に意思疎通を行うような便利な力はない。だが俺には確信があった今侯爵と話している式神(おれ)は失敗していないということを。

 

「……たとえそれが事実であるとしても。ことは第二級禁忌魔道具に関することだ。いくら侯爵閣下とはいえ、おいそれとお話することなどできぬ」

 

 ――よし!!口にしたな。今回の事件で秘密にしなければならない理由として誰もが納得しやすいララバイを口実にすると思ってたぜ。

 

「確かに第二級禁忌魔道具は人に知られ、悪用されればその被害は計り知れないものとなる。情報を管理するのは当然のことです」

 

「わかったか。ならば」「――ですがそれが本当に第二級禁忌魔道具ならの話ですが」

 

「――何を馬鹿なことを言っているのだ!!音色を聴いていたものを呪殺する魔道具を禁忌魔道具に指定せずにしてなにを指定するというのか」

 

 確かにそうだその危険性、致死性は疑いようもなく禁忌魔道具指定されるにふさわしいものだろう。だが、本当にこいつらはわかっているのだろうか――()()()()()()()()()()()()

 

「これはS級鑑定士でもあり砂漠の鏃のギルドマスターでもあるジョクマ氏の鑑定書です」

 

 この鑑定書はララバイの調査を行っていたギルドマスター達の中の一人から頼み込んで作ってもらったのだ。

 

ララバイを封印する際、怪物が暴れていたときは逃げ回っていた非戦闘系魔導士ギルドのギルマス達だったが、戦いが終わりララバイが倒されたと知ると次々に実験を開始した。気絶していたララバイは突然の拷問に悲鳴を上げたが、マスターの一人が使った空間魔法―ウサギの花園(特A級の超高難度魔法)で隔離された空間に入れられてしまい、奴の白目をむく悲鳴はこちらには届かなくなった。声は聞こえないが、姿は見えるという理想的な檻に入った貴重な|実験対象<サンプル>を逃すわけもなく洗脳魔法や瘴気魔法のような禁術を使うほどマスター達の自重というブレーキは彼方に飛んでいってしまった。取りあえず超一流の魔導士たちによって解明されたことは、ララバイの笛は笛そのものが生きており休眠状態でも微弱な生体反応が検知される。怪物形態は俺達が魔法を使うように魔力を消費しており、笛の音色はそれ自体が強力なマジックドレインの術式である。そのため音色が引き起こした振動に触れたものはよほどの耐魔力を保持していないと強制的に魔力を吸われてしまう。このため耳をふさぐような音を聞かないようにする対処法は効果がないとみられる。また試したすべての解除魔法(ディスペル)でもこの魔道具の魔法を解除することはかなわないということだ。

 

「鑑定書にも書かれているとおりララバイには生命反応が検知されました。道具に生命反応を宿らせる。そんなことができるのは長い魔法社会の歴史においても一人しか存在しません」

 

 最悪の魔導士ゼレフ。数百年前から現在に至るまで語り継がれるその名は半分がおとぎ話のようなものだ。だが時々ゼレフの遺産と呼ばれる魔道具や怪物を見つけたという噂が立つことがある。大半はクエストの失敗をごまかすためのホラ話や帰ってこなかった魔導士の名誉を守るためなど理由は様々だが、中には本物が混じっている今回のように……。

 

「間違いなく本物の鑑定書だな、サインと魔力紋に見覚えがある」

 

 手に持っていた鑑定書が評議員の一人の手にわたる。お墨付きも得られたことだしそろそろ本題に入ろう。

 

「結論から言いましょう。ララバイはゼレフの作り出した特一級禁忌魔道具であり、封印方法や管理体制に不備が多数見られます。今回の一件エルザ・スカーレットには一切の責任がないことをここに主張します!!」

 

 組織というのは大きくなればなるほど物事の決定には、多大な時間を要するものである。例外として独裁者がおり絶対的な支配がされているような状況はすべてが最高権力者の鶴の一声で決まるが、評議院はそうではない。各々が独立した役割を持ち基本的には他者の足の引っ張り合い。そんな組織がこのようなスピードで判断を下すというのは……組織そのものが危機に陥った場合くらいしか一致団結なんてものは望むことはできないだろう。

 

「つまり貴様はこう言いたい訳か。ワシ達の目が節穴だから今回の事件が起きたと。今回の一件評議院の管理体制には一切の不備は見当たらなかったことは調査報告書によっても明らか。それにこちらには目撃証言がある――鎧をまとった女魔道士が犯人であるとな」

 

 報告書と言っても実際に調査しているのは評議員子飼いの魔道士達だろう。そんな奴らが、上の不利益なるような調査をするわけがない。第三者機関というものをこいつらに教えてやりたい。だがそんなことを言っても何も変わらない。公平性や真実の意味というものが全く意味のないものになるのが力というものだ。いくら正しいこと、素晴らしいことをいったとしてもそんなものは踏み潰されるだけだ……対抗するための力がなければ。

 

「いいえ!!何も評議院の皆さんに過ちがあったとは思っておりません。ただ私は今回の事件認識できていない点があるのではないかと思っている次第です」

 

 評議院を敵にまわすのはまずい。ここはちまちまとアリが壁を壊すようにゆっくりじっくり動くべきだな。

 

「つかぬ事を伺いますが、その報告書にはララバイが盗まれたのが判明したのはいつと書かれているのですか?」

 

「…なにぃ?なぜ貴様にそのようなことを教えなければならない」

 

「たしかララバイ事件のあった日の午後2時頃だったかしら?」

 

「――ウルティア!!貴様」

 

 まさか答えてくれるとは思わなかった。また貴族様の権力パワーに頑張ってもらわなければならないと思っていたのだが、やはり評議員は一枚岩ではないらしい。

 

「それはおかしいですね。私が評議院にクエスト申請した時ララバイという名前を依頼内容に伝達したはずですが。どうやらその報告書には漏れがあるようですね」

 

 一度にすべてを解決するのではなく、孤立させ切り捨てることが必要なことであったと納得させなければならない。そのための手札はすでにそろっている――はずだ。

 




 今回裁判終了までもっていきたかったんですけど、思ったよりも文字数が増えてしまい裁判途中までの投稿です。
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