おとぎ話の妖精   作:片仮名キブン

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 評価、お気に入り登録ありがとうございます。九月投稿できなかったので今月二回目。


空回りしていた二人の妖精

「シャバの空気うめー!!やっぱ自由って最高だ!!」

 

 飲料用炎(魔法)を片手にナツが大食堂の中を走り回っている。さて皆さんおわかりだと思うが、エルザの姿をして評議院に殴り込んできたのはナツである。あの後、牢屋に入れられたナツとエルザは二週間ほど地下牢に入れられたようだ。二週間ぶりの外の空気にナツははしゃぎ回り、さっきの姿みたいに自由を謳歌しているというわけである。一緒にぶち込まれたエルザは椅子に腰掛け酒を静かに飲んでいる。それにしてもこの二人、一週間も狭い牢屋に閉じ込められていたのに全然疲れているように見えない……恐ろしくタフだな、ドーピングでもしてるのか。

 

 さて伯爵様のご威光で牢屋に入れられることは免れた俺であったが、当然無罪放免とはいく訳もなく当然のことながらペナルティが言い渡された。その内容は……壊滅したクヌギ駅の復興を成し遂げるというものだった。まあ確かに破壊された駅の修復は大切だよ、当事者の一人として頼まれたら喜んで力を貸しますよ。でもな……。

 

 ――十日間という期限を設けた評議院を俺は絶対に許さない。

 

 いや、書類上の派遣期間は二週間なんだよ(それでも少なすぎる)。でもな貴族様を引っ張り出したせいで、そことの緩衝役も兼任させられた。sれによって諸々の打ち合わせとかを決めたり先延ばししたりして一段落させた。これで二日潰れた。ついでに修復中の鉄道会社の確認作業具体的には線路の細かな修復(クヌギ駅のではない)とかその他様々の仕事をしていたら実際に作業できる時間は十日間というわけさ。

 えっバカなの?あいつらも報告がどうとか言ってたしクヌギ駅の状況は把握してたはだずよな。えっ無理じゃん。十日とか瓦礫除去だけでもそれくらいかかるわ。それを、応援が一人増えたくらいで短縮するとかマジであいつらの頭の中にはどうなってるんだよ。どんな予測で十日という時間を算出して、俺に一体どんな量の仕事をやらせる気なのか是非教えてもらいたい。

おまけに俺がクヌギ駅に着いたときは住人達が片付け作業をしており修復に派遣された魔道士達とにらみ合っているというお先真っ暗なものだった。そりゃそうだよな、彼らからしてみたら魔道士によって自分たちの駅が破壊されたんだ、魔道士に良い感情を持つわけがない。当然せっかく助けに来たのに感謝どころか怒りの感情をぶつけられた魔道士達もさっさと帰ろうとしていたりで……大変だったとてつもなく大変だったんだよ。

 住人と魔道士が互いに協力して駅の再生に力を合わせるのには映画にできるような話があるのだが今は割愛しておこう。

 

 そんな大仕事を成し遂げた俺は例に漏れずギルドにクエスト完了の報告をするために帰ってきたというわけだ。今回はさらに評議院の方にもいかなければならないというのは、なんとも気が重い。

 

「すげえなあの二人、何であんな元気なんだよ。その元気を俺にわけてほしい」

 

 残念ながら元気玉を作る魔法を知らないのでかえってダメージを受ける。

 

「ハザマの方は大変だったみたいね。でもあれ、マスターが言ってたんだけど形式だけの逮捕だったみたいね」

 

 完了報告書をミラさんに提出していたところとんでもない一言が告げられた。えっどういうこと、形式だけってもしかして俺余計なことした?そうだよな、よく考えたら何一つ悪くないエルザを逮捕しようもんなら地方ギルドを敵にまわすことになる。そんな無謀なことはしないか。まてよ、てことはナツと同レベルなの俺……なんだこの徒労感。どうすればいいのこのメンタル。あーもう今日は何してもダメな気がする。布団を頭からかぶってもだえたいので早退していいですか。

 

 自分の馬鹿さ加減にへこんでいると座っていたエルザがこっちに歩いてきた。

 

「ナツには牢の中で礼を言ったがハザマにはまだだったな。助けに来てくれてありがとう」

 

「いや余計なことしたみたいだったし、あーほんと出しゃばってすいませんでした」

 

 申し訳名ねぇなおい、逮捕されたって聞いていて冷静な判断ができなかった。かなり無茶なことだし、もとから評議院に睨まれていた妖精の尻尾(フェアリー・テイル)が喧嘩を売っただけという。これで評議院の印象も大分悪くなっただろう。事件を引っかき回して余分な罰を受けることになったエルザには頭を下げるほかない。

 

「確かに賢い行動だったとはいえないな。ナツもお前も自分たちがした行動で妖精の尻尾(フェアリー・テイル)の立場を悪くしたのは事実だ」

 

(おっしゃるとおり過ぎてぐうの音も出ねぇ)

 

「……だが私はうれしかった。それに妖精の尻尾(フェアリーテイル)の私たちは仲間を助けようとしてとった行動なら誰もお前を責めないさ」

 

 そう言い切ったエルザの言葉に周りで酒をあおっていた連中が親指を上げてうなずく――最高かよお前ら。

 

「そうよ仲間を見捨てないのが妖精の尻尾(フェアリー・テイル>)の強さなんだから。でもまさかこんな大事になるなんて思ってなかったけど」

 

 ミラがいっているのは新聞の一面に載っている記事のことだろう。誰かが呼んで、出しぱなしにしている新聞の見出しにはこう書かれている。

 

【評議院のずさんな管理。禁忌魔道具の指定にも問題あり、評議院二ノ席責任をとって辞任】

 

 記事を軽く目を通すと先日のクヌギ駅の壊滅が|鉄の森《アイゼンヴァルドによって行われたか、そして奴らが盗んだララバイがゼレフの魔法の一つであることや、今回の事件の責任をとって二ノ席、オーグ・モールトリスが辞任することも書かれている。

  国の方も明確に評議院と事を構えることを避けたかったのだろう。事件の解決には魔道士ギルドが尽力したことも伝えられているつまりは俺たちのことだな。

 

「ハザマそう言えば伯爵から手紙が来ていたわよ。それにしてもよく伯爵とすぐに会えたわね。普通なら門前払いされるところよ」

 

 ミラが手渡してきたのはやたら高級そうな紙で封蝋にはやたら細やかな細工がほどこされた一品だった。封を切ると中には住民達の救護に対する感謝の言葉と、これからもマグノリア国民として国のため勤勉に働くようにと書かれていた。いかにも決まり切った言葉といった感じだな。そりゃそうか、あっちからしたら会話をする必要もない関係。正直手紙が来ただけでも驚きである。

 俺が伯爵とすぐに会えたのには理由がある。単純に顔見知りだったのだ。残念ながら良好な関係とは言いがたいが……。

 

「町を壊した後修理するときに確認のため視察に来ていた伯爵と話す機会がありましてね。具体的にはナツとかエルフマンとかがやらかした時が多いです。はい」

 

 その時もしかめっ面でこちらをじっと見ていただけだったもんな。とりまき連れて、こっちからしたらどういう対応したらいいのかわからず。下手な敬語とかしか使えなかった。周りの人がすごい顔で引いてたし、印象は悪かっただろう。

 

「――そういえばエルザ!!お前との勝負がまだ付いてなかったな」

 

 走り回っていたナツがUターンして戻ってきた。どういうことだ。何事、なんでエルザに殴りかかろうとしてるの。

 

「今日はゆっくりしたいんだ。また機会があればな」

 

「問答無用だ、くらベっ」

 

 殴りかかってきたナツの拳をわずかに体を反らせることで回避する。流れるような動きでナツに背を向けると強烈な回し蹴りをナツへ叩き込む。

 

「良かろう私も魔道士だ、さあ戦おうか」「――勝負ありぃー!!」

 

 いきなり始まった勝負は終わりも突然だった。エルザのカウンターで吹き飛ばされたナツハ壁に叩き付けられ近くで確認するまでもなく気絶しているようだ。

 

「エルザつえー」「流石フェアリーテイル最強の女魔道士」「あいつ……クッ不意打ちして一撃ってプハ…ださすぎろ。ぎゃはははは」「この前の賭けって結局どうなったんだ」

 

 ……こいつらはしゃぎすぎだろう。この程度でどうにかなる奴じゃないが一応確認……しとか…。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 カウンターテーブルに直接座っていたマカロフを強烈な()()が襲った。今まで騒いでたのに突然バタバタと倒れていくメンバー達、これだけ多くの魔導士を一度に眠らせる魔法を行使できるのは妖精の尻尾(フェアリーテイル)の中でも一人しかいない。この魔法に抵抗できたのはマカロフ、倒れようとしていたハザマを抱きとめているミラ。あとは二階にいたラクサスだけのようだ。エルザも本来なら起きていられたはずだが、評議院の地下牢で見た目以上に疲弊していたようだ。

 

「奴が来たようじゃな」

 

 S級時代の眼光で入り口を睨めつけていたミラがその言葉を聞いて警戒を解く。その威圧感に一番近くで受けたハザマはうなされているようで、ウンウンうなりながら顔をゆがませている。

 

 ――マカロフは見た。少しの間、抱き留めていたハザマを見つめていたミラは、笑顔を浮かべハザマを強く抱きしめると背中から何の躊躇もなく床に倒れた。バタンという衝撃音が寝息だけの空間に響き渡る。結構大きな音だったのにもかかわらず誰も起きない。

 

(……おぬしはレジストできておったじゃろうに。それにしても奴は一体どんな強力な眠りの魔法をかけたのか)

 

 ミラは笑顔で眠りについているので多分問題ないのだろう。圧が消えたからか、ハザマの顔も普通の寝顔に戻っている。だがこれほどの威力の眠りの魔法は、本来なら大型の魔物に対して使用されるレベルのものだ。奴の秘密主義にも困ったものだと眠気でおぼろげになってしまった頭で考える。すると入り口から一人の黒い外套の男が入ってきた。彼の顔には頭を額当ての付いた帽子と顔の下半分を覆う大きなバンダナからその顔を確認することはできない。足と腕には包帯が巻かれておりわずかに肌が確認できるのは目元のみといった有様だ。

 

「ミストガン……」

 

 名前を呼んでもそれに応えることはなく、前回のクエストの達成報告書とクエストボードから抜き取った依頼書を一枚ずつカウンターに置く。たしかこの依頼はエルザに行ってもらう予定だったものだ。他のメンバーならともかくミストガンが向かうのなら何の心配もいらないだろう。

 

「……これを頼む」

 

 マカロフが依頼書を受け取ると来たときと同じように真っ直ぐ外へ向かうミストガン。

 

「――おい、眠りの魔法を解かぬかっ!!」

 

「伍。肆」

 

 外に近づくにつれ数を数えるミストガン。

 

「参、弐」

 

 外に出ると幻影魔法を展開し、そこにいるとわかっているマカロフにさえもその姿がだんだん認識できなくなってくる。

 

「壱」

 

 彼の姿が完全に消えると同時に今まで起きることがなかったメンバー達は目を覚ます。

 

 姿を見られたくないという理由で同じギルドの仲間達に遠慮なく魔法をかけるのは他の問題児達とは方向性は違うが十分問題ありだ。マカロフは騒がしくなってきた広間で小さなため息をついた。

 

 

◇◇◇

 

 ああ、これは夢だな。そう確信できる夢を見るときがある。暖かい空間を漂いながらまどろんでいるこの状況は現実ではあり得ないものだ……夢の中でも眠るとは俺はどれほど睡眠を欲しているんだ。自分の精神状態が少し心配になる。いつまでもこの中にいたいという気持ちがあるのだがだんだん周りが騒がしい、仕方ない起きるとしますか。

 

 

 意識は覚醒したがまぶたは開いていない現状。ベッドから出て起きようと腕に力を入れると手に柔らかなクッションがある。はて、うちのベッドにクッションなんておいてたっけ。

目を開けて確認するとあおむけで目が潤んだミラとその胸を鷲づかみにしている俺の右手………………………くぁwせdrftgyふじこlp!!!!!!

 

 すぐに飛び退き床に頭を押し当て無言の土下座。正直体が勝手に動いただけだが、待ってマジでなにこの状況。何でミラを押し倒してギルドで寝てるの俺、落ち着けまずは状況の把握が大事だ。今日の朝ご飯は何だったけなー…………って食ってねえよ!!

 

 とにかく思考が定まらず床に額を押しつけたまま頭を必死に回転させていると、後頭部に殺気を感じた――緊急回避!!横にローリングすると目が血走った色黒の大男。ミラの弟のエルフマンが腕を黒く毛深い者に変化させ、さっきまで俺が頭をつけていた床に穴があいている。

 

「――人の姉ちゃんに何してくれんとんじゃー!!」

 

「いや俺何したの落ち着こっ――ヤベっ!!」

 

 どうにか弁解をしようとしているその間にも煙だったり、銃弾だったりとにかくいろんな魔法が俺に降り注ぐ。――ぬぉぉぉ!!とっさに念糸を屋根の梁に伸ばし上へとどうにか逃れる。

 

「おまっお前ぇぇぇ。なんてうらやまっ、けしからんことを――」「女の敵っ」「……コロス」

 

 ミラの方にはルーシィがフォローのためそばに駆け寄っている。ていうかあの人が攻撃してこないのが一番解せない。二人でクエストに言ったときとか、おいてあるミラの荷物をとろうとしたら殴られた位には手が出やすい人だったんだが……。それよりもさっきから下で遠慮なく魔法をぶっ放してくるあいつらをどうにかしないとギルドが壊れる。懐から自分の姿をした式神を十体展開しそれぞれ出口に向かわせながら一緒に脱出する。どの顔も混乱しきっており冷や汗がダラダラ落ちている。なるほど今俺の顔はあんな感じかってそんな場合じゃねえ。

 

――外に出た時点で生き残りが三体になってしまっているのを感じる。あいつらマジで攻撃してきている。これは本気で逃げないと殺されるな。いまだに何でミラの胸をつかんで寝ていたのかわからない混乱している頭でも一つだけはっきりとわかることがある。

 

「――今日は厄日だぁぁぁ!!」

 

 この叫びの四十秒後ハザマは捕まることになり、その後彼を見た者はいない(笑)。

 




 最初の方の妖精の尻尾って、ラクサスとエルザとミストガンなら誰が一番強いんでしょうね。個人的にはラクサスが一番強そうな気がするんですがけど。
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