おとぎ話の妖精   作:片仮名キブン

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お気に入り登録等ありがとうございます次はガルナ島編です。


呪われた島と妖精達

 帰りたくないが帰ってきてしまった。そもそもが時間稼ぎでろくな考えなどなかったから当然なのだがどうすれば良いのかまったく思いつかない。クヌギ駅の依頼に行く前なんら変わらない。さらに言うならベルーシャとかいう厄介な奴に目を付けられる始末だ。初対面から関わると面倒くさそうな奴だとは思っていたがあいつの下について仕事をしてその予想は大当たりだった。リーダーシップがあり仕事ができることはもちろんなのだが、飴と鞭のバランスが恐ろしくうまい。

中でも驚いたのがクヌギ駅の都市再生計画を住民の人たちに公開したことだ。説明会のような集会を開いて全員が意見を言える場を作った。自分たちの町の事だけあって彼らの熱たるやすさまじいものだった。中で有効だと認められたものは実際に町作りに反映した。まあ採用した意見の十倍は自分の計画を押し通していたが……。

頭ごなしに命令しても人はついてこない。人間がまとまって動くには何らかの目的が必要不可欠だ。ベルーシャの態度は傲慢で自己中心的だがこの町を復興したいという一点においては住民達と意思が一致していた。それを共有することで彼らの最低限の支持を集めたのだ。

 

「ハザマさん!!ポーターさんが次は東の方に分身をと……」「ハザマさん住居隊から応援要請です」「……ハザマさん……ベルーシャ様がお呼びです」

 

 この場にいる魔道士は俺だけではないのだが修復魔法が必要な場面になれば俺が呼ばれる……つまり忙しい。式神を使ったお片付け術はすでにあいつに知られていたため式神をフル投入……くそ疲れる。最後にあのアホはこっちの都合など知ったことかという自己中心的な男。これが意味することは……。

 

「――もう休ませてください」

 

 魔力の使いすぎで腕がプルプルする。目がかすみ目の前の人物が誰か認識できないがこの場にいそうな人間でここまで背が小さな男は一人しかいない。

 

「フン体調管理すら満足にできないとはな。だが振り分けた仕事は全部軌道にのせたようだな」

 

 目の前で死にそうな人間がいるのに皮肉をいうとかこいつには人間の血が通っていないのか。言いたいことは数あれど口を動かす元気がない。俺にできることは肩を貸された常態のまま意識を保つことだけだ。

 

「チッ!!これでは会話にならん。水でもかければ意識も戻るだろう」

 

 非人間的な対応に涙が出そうだ。肩を借りていた人が俺を地面に寝かせる。このままだと本当に水をかけらせそうなのでどうにか口を動かす。立って話をする元気はないので体を起こし地面であぐらをかく。この状態だと見上げることになるのかひとを見下ろすそ気配はどうやら苛立っているようだ。

 

「仕事を果たした人間に水をかけるのがホーランド流なのか。だとしたら絶対に働きたくない場所だ」

 

「口が聞けるのに開かないのが妖精の尻尾(フェアリー・テイル)の礼儀なのかだとしたら噂と違い随分と恥ずかしがり屋なところみたいだな。」

 

 皮肉に皮肉で対応された。良いコミュニケーションというものは殴り合いでは成り立たないというのがよく分かるキャッチボールをするここが大事なんだ。正直言ってかなりむかつく相手だがここで殴りかかってはあいつらと同じ土俵に上がってしまう……おれの戦闘力は無視する方向で。

 

「まあいい。それで一度帰った貴様がなぜ戻ってきたのか理由を聞かせてもらおうか。報告のためだけに帰ったわけではないというのは分かっている」

 

 言えない。事故によって身内と気まずくなってここに逃げてきたなんて。そもそもなんでこいつは俺がここに戻って来たことに違和感を抱いているんだ?人の善意を疑うとは……助け合いの精神というものをこいつは知らないのか。

 

 

「……何を根拠にそんな事を。もしたとえ目的があったとしてそれをなぜ言わなければならないんだ?」

 

「ほうここに来た理由を隠したいようだな。それも魔力切れを起こしてでもそれから遠ざかりたいようだ。安心しろ別に敵対使用としているわけじゃない。むしろその逆だ。貴様の活躍はこちらの想定以上の出来でな簡単に言えば恩を売りたいんだよ」

 

「いやだから何もないって」

 

「嘘は良くないな嘘は。人というのは自分にとって重要ことになると興味を持つ。貴様は俺が貴様がここに来た理由をなぜ気になるのかという疑問に対して疑問で返した。質問に質問で返して誰が応えると思う?そんな事も分からないほど気がとられているとはよっぽど隠したいらしいな」

 

 ナチュラルに心理分析みたいなことをしてきやがる。沈黙は金という言葉があったがあれは本当にそうだと思う。だが口を閉ざすには遅すぎるここは適当なことをいってこの場を切り抜けるしかない。

 

「隠すことは出来ないみたいですね……評議院のジークレイン様に厄介な依頼(クエスト)を押しつけられそうになりまして。こっちの方に逃げてきたというわけ――」

 

 話の途中で首に手を回して身動きがとれない。魔力切れで意識がもうろうしているとはいえ、なんで商会の代表がこんな暗殺術めいた事ができるんだ?

 

「別にお前の弱みを握りたいわけじゃないだからそんなホラ話をする必要はない。商人として大成するにはある程度嘘を見抜く必要がある。魔道士の使う魔法のように百発百中というわけにはいかないが大体七割くらいの確率だ。お前のような奴は安全性を重視する。問題があると時間稼ぎや逃避を選択する傾向がある。だがそれでは根本的な解決にならないことは理解できるだろう?普段ならこんなことは言わないんだが想像以上に働いてくれたんで、こちらとしても協力したいと思っていてな。」

 

 胡散臭いにもほどがある。確かに仕事を振り分けられる前に報酬の話はしたが、大体四割くらい相場よりも高かった。わざわざ俺を呼びつけた理由が報酬の値上げだと――あり得ない。短い関わりでもこいつが人のために時間を割かないことははっきりと確信できる。

 だが俺に打つ手がないこともまた事実。生半可な手段では処刑の結末は変わらない。ならば思い切ってこの男に相談するべきではないか。

 

「実は…………」

 

 流石に誰の胸をもんだかという部分は伏せてベルーシャに事の顛末を語る。突然眠りの魔法にかけられて不可抗力であったことを訴えた。

 

「腕の良い弁護士を何人か紹介してやろうこの俺からの紹介と言えば裁判の相談もしやいだろう」

 

 ――打つ手なしって事かこの野郎!!

 

「まあ待て話は最後まで聞け。お前の状況を整理すると意図せずに女性の胸部を触ってしまったという事だ。たとえお前の意図したものではないにしても触ったことは事実。であるなら完全無実になることはあり得ない。であるなら次に考えるべきなのはいかに罪を軽くするかと言うことだ」

 

 いや俺悪いこと何もしてないのに何で罪を償わなくちゃなんねえんだ。

 

「不服そうだなそもそも前提の考えが間違っている。たとえお前に一切の過失がなかったとしてもその女性にとって害を与えたのはお前だ。その自覚があるからこそお前は逃げ出したんじゃないか。原因である眠りの魔法を行使した奴の次に責任があるのは間違いなくお前だ。時間は限られた資源だ手近なものから精算していくのは正しい」

 

 ミストガンの野郎はもう依頼に行ってしまって次に帰ってくるまで連絡が付かない。あいつをミラの前にふん縛って差し出すことが出来ないなら次のターゲットは俺というわけか。

 

「法というのは大切だ。たとえ示し合わせた約束だとしても法を逸脱したものであるのならそれは批判の的になる。だからこそ邪魔されないステージの上で役立つ武器を用立てようというのだ」

 

 なるほどだからこそ弁護士の紹介という訳か……。いやいや何大事にしようとしているんだこいつは。一瞬納得してしまいそうになったが流石にミラもそんな仲間を裁判沙汰にするか?

 俺の脳内ミラさんはシネとしか言ってこないがそれは考えない。結局ろくな意見はもらえないまま俺は妖精の尻尾(フェアリー・テイル)に戻ることになった。

 

 

 

 誠意だ誠意を示すんだ。俺に今求められるのは誠意を表現することだ。誠意さえ伝えることが出来れば生存することが出来る。俺はやり遂げるためには……土下座それしかない。たとえ周りに人の目があろうと謝意を見せなければならない。突然ギルドで土下座などすればみんなの俺を見る目が変わるだろう……まて本当に変わるか?あいつらの日頃の行いの方がよっぽどひどくないか?

そう考えると勇気が出てきた俺はやるぞやり遂げるぞもはやためらう理由はない。

 

妖精の尻尾(フェアリー・テイル)はいつも通り騒がしかったが今はその騒がしさが有り難かった。誰も入り口に立つ俺に気づいていない。肝心のミラは……いた!!ターゲットはカウンター近くでマスターと何やら真剣に話しているようだ。

 

「ミラお前までラクサスに突っかかる事はないじゃろう。あいつがああいう奴なのは昔からじゃろうて。お前まで暴れると収集がつかんのじゃ」

 

「だからってナツ達がS級クエストに行くのをわざと見逃すなんて……S級がどれくらい危険かはマスターも知ってるでしょう!!」

 

「すぐにグレイが迎えに行ったのじゃしエルザも直に戻ってくる。二人で行けばすぐに連れ戻せるじゃろう。それに今回のクエストは依頼の難しさで実際には不可能なもので危険度はそれほどでもない。ナツらの実力なら大丈夫じゃ」

 

「――でもっ!!」

 

ミラが大声を上げようとしているところに割り込む。普段の俺ならそんなこと恐れ多くて出来ないがこのあふれ出る気持ちを一刻も早く伝えたい。時にはぶつかり合うこともあるだろう俺たちは仲間なんだ互いに許し合う――その心があると信じるんだ。

 

「胸を触ってすいませんでしたぁぁぁぁ!!」

 

 周りの騒ぎ声を掻き消す勢いで頭を地面に押しつけて許しを請う。会話を遮ってしまったのは申し訳ないがこの熱を押さえることが出来なかった。今にして思えば一番の被害者は誰かと言われれば胸に触れられてしまったミラなのだ……二番目は間違いなく意図しない事故の加害者になってしまった俺だろうが。大切なのは互いが互いを許し合うこと今までつらいこと苦しいこと死にそうなこと数々の艱難辛苦に挑まされてきた俺とミラの関係を信用できなかった事が俺の罪だ。今そのことを自覚しただからどうか寛大なお慈悲をいただけませんかねー。

 

「見ろよあれ恥ずかしくねえのか」「ホント非常識」「どうしたハザマなにか悪いモンでもくったか」

 

 解せない。なぜ非常識が服を着て歩いているような奴らからこんな冷めた目で見られなければならないのか。おまえらの日頃の行いの方がよっぽどひどいわ。俺の今のこの姿を見て恥ずかしいと思うとは浅はかだな悪いことをしたら謝る()()()()のことだ。

 

「えーっと急にそんな事されてもどうしたらいいか分からないんだけど……」

 

 俺の頭の先にいるミラは俺の土下座を見下ろしているのだろう。地に頭をつけている俺にはその顔を伺うことは出来ないが声色からは戸惑っているようだ。たたみかけるなら今しかない。

 

「逃げて申し訳なかった。だが一つだけ分かってほしいのは決してわざとじゃなかったんだ。決して決して触るつもりではなかったもちろん俺がお前の胸を触ったことは事実だ。申し訳なかった」

 

「あいつなんであれだけのことを言うのに二日もかかってんださっさ謝っちまった方が楽だろうに」

 

「そんな事よりナツ達よ。S級クエストなんて危険すぎるグレイが迎えに行ったけど、帰ってこないところを見るとやっぱりハルジオンで止めれなかったのかな……」

 

 外野がうるさい。どうやら俺が離れている間にまた事件が起こっているようだ。いつもは後始末ばかりしていたのでちょっとはおとなしく出来ないのかおまえらと思っていたが、今回は俺の件が忘れ去られているみたいだありがとう本当にありがとう。おまえらのその落ち着きのなさに救われるとは思っていなかった。本当に人生とはないが起こるか分からない。

 

「ふーんハザマは私の胸を触って悪かったと思ってるんだ」

 

「もちろんだ。俺に出来ることならなんでもしよう……本当にすまなかった」

 

「………どうだった?」

 

 ――どうだった、どうだったと言われても……これどう答えても詰みのやつではなかろうか?想像以上に答えに困る質問が飛んできた。待てよ俺はあの時強制的に眠らされていたならば――。

 

「寝ぼけていてキオクにナイノデそのしつもんにはオコタエできまセン」

 

嘘だ。本当は服ごしでもハッキリ分かる大きさでした。そんなに柔らかい部分があってなんであんなにも()()()()()のか本当に不思議だ。

 

「じゃあ何であやまってるの?」

 

「えー許してほしいから?」

 

 何で謝ってるのかなんて答えは一つしかない。殺されたくないからだがこんなことを馬鹿正直に言うのが悪手であるのは流石に理解している。適当に口から出た言葉は思いのほか俺の心境を表していた。

 

 幸いにもミラはこの答えに満足したのかそれ以上の追求をしてこなかった……だが。

 

「じゃあお願いが一つうんうん二つあるんだけど!!」

 

 一つじゃねえのか!!確かに回数制限は付けてなかったけどこういう場合普通は一つだろ欲張りか!!

 

「なんでしょう」

 

「一つは今ナツとハッピーとルーシィがS級クエストに無断で行っちゃって。連れ戻してきてほしいの」

 

 はっ?あいつらアホか?ナツとハッピーはきっかけがあれば行くのはわかる。あいつらの向こう見ずな所は長い付き合いだよく苦労させられた。しかしルーシィはそういうタイプは見えなかったが……元々素養があったのか元からそういう奴だったのか人は見かけによらない。待てよてことは今からS級クエストに行けと?なるほどやはりミラさんは俺に死んでほしいらしい。

 

「りょりょうかいしました」

 

「二つ目は戻ってきたら買い物に付き合って……それでチャラ」

 

 ……法外な何かを買わされるのか、はたまた次の罰も無茶ぶりか悪魔かこの人!!俺が下手に出てたら何でもかんでもいうことを聞く男とだと思ってないか?

 

「戻ったぞマスター。報告は聞いたナツ達を追いかけたいのだがどこに行けばいい」

 

 勢いよく入り口から入ってきたエルザが勢いよくカウンターまでやってくる。少し驚いた顔のマスターがエルザに紙を渡す。

 

「詳細はそこに書いてある。くれぐれも皆無事で帰ってこさせてくれ」

 

「ああ任せてください。マスタームッそこにいるのはハザマかちょうど良いお前もこい!!」

 

 来たときと同じようにズンズンと広間を進むエルザその左手で俺の手をつかみ無理矢理引きずりながら外へと向かう。待ってこっちは詳しい依頼の内容も把握していないのに今から行くの?S級だろう準備準備が必要だって。なにも考えないで突撃するなんて無茶苦茶すぎる。

 

「イテテ、放して人間の体は手首を固定されたまま後ろ向きに歩くようには出来てない。おい人の話を聞け――マスター助けて!!」

 

 広間の真ん中でマスターに助けを求めるも手をヒラヒラさせるだけで何もしてくれない。ハッふざけんなよ?S級クエストなんて一生行かない方がいいような化け物の巣や人が生きていけない魔境、一休さんのトンチが必要な無理難題とかに立ち向かわなきゃなんねえんだぞ。さっきは感謝したけどマジでナツふざけんな連れ戻したらあいつは一度きっちりと締めてもらおう――エルザにな!!

 

「いったか。それにしてもハザマを生かせる必要はなかったんじゃないか?エルザ一人でも十分ナツを連れ戻せたじゃろう」

 

「S級クエストを甘く見てないだけですよ。私たちはもう誰も仲間失いたくないんです。だからハザマもあんな態度でもクエストを受けたんだとと思います」

 

「ハザマか……お主の気持ちも知らぬ訳じゃないが、あんまり構いすぎるとかえって逆効果じゃぞ。おぬしとて今回のことは本意ではなかったんじゃろう?」

 

「それとこれとは話が別なんです!!」

 

 頬を染めて言い切るミラの気持ちがマカロフには分からなかった。いつも大がかりな手段をとっているのだが決定的な一歩を踏み出さず結局そばにいるだけだ。そもそもミラとハザマがくみ始めた頃はミハザマのことを嫌っていたのにいつの頃からかミラが構うようになっていた。だがハザマの方はミラの変化を受け入れられていないようで良い意味でも悪い意味でも細かいことは気にしない妖精の尻尾(フェアリー・テイル)の中では浮いてしまっている。仲間だからという理由だけで無条件に受け入れられるなら苦労はしない。現に自分も息子と孫とは決して良好とはいえず時には家族ですら関係が破綻することを知っている。やはり何かきっかけが必要なのだろう。

 

(うまくいかないものじゃな)

 

 開かれたままの扉を見ながらマカロフは妙案が思いつくようにと自身の頭をさすった。

 




 後半テンションがおかしいのは疲れて正常な判断ができず徹夜中の一時のハイテンションです。後日後悔するタイプの……。
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