誤字報告ありがとうございます。なんで誤字るんだろう
「やめろ無理だ。デリオラの恐ろしさはお前も知ってるはずだろ!!」
「……お前が、お前がそれを言うのか?デリオラに挑もうとするお前に俺とウルが言ったときお前はどうした?」
「――がは!!」
無拍子で目の前に現れた氷塊。俺の反応速度を凌駕したリオンの造形速度に手も足も出ない。
「お前がデリオラに挑んだからウルが死んだんだぞ。お前がウルの名を口にする資格はない!!」
リオンの魔法が全身を埋め尽くす。真っ白になった視界の中で最後に聞いたのはリオンの憎しみに満ちた叫びだった。
「消えろ!!消え失せろ!!もう二度とお前に俺の夢を邪魔させはしない」
何も言い返せなかった。本当は分かっていた俺の心が認めちまってたんだウルが死んだのは俺の所為だって
目が覚めると見覚えのない場所で寝かされていた。リオンに倒された後ナツに担がれた所までは覚えているんだが。ナツが村まで連れ戻ってきたのかと思ったが天井が天幕になっている時点で昨日泊まった部屋ではないようだ。
「目が覚めたみたいだな良かった」
首を動かすと手から糸を出すハザマの姿が。なんでここにハザマが?疑問が頭に浮かんだ瞬間それまでの風呂に手も入っている心地よさが急に体強く締め付けられる苦痛に変わる。
「――グハッ」
「申し開きを聞こうかグレイ」
「エ、エルザ」
俺を見下ろすエルザは今まで見たことがないくらい激怒していた。だがそんな事はどうでもいいリオンの奴を止めななきゃなんねえ。エルザにも協力してもらわねえとあの災厄の悪魔デリオラを倒すことはできない。
「大体の事情はルーシィ達から聞いた。それでお前までナツ達に協力している理由は?」」
ここはどこだ村じゃないようだが――まさかリオンの奴ら本当に村を攻撃したのか。村人達は無事なのか、確認しねえと。
「…………これはずせよ」
横を見ると泣きながらハザマの式神に拘束されるルーシィとハッピーがいた。だがナツはどこに行ったんだ?体の拘束をほどこうとするも外れる様子はない拘束力の強さてきにこいつが本体だろうまったく動けない。
「自分の立場がわかっているのか」
エルザの迫力が増し空気が割れる音が聞こえた。ルーシィとハッピーが縛られているのにも関わらずはじかれたように後ろにはねエルザから距離をとる。何に怒ってるんだ?今はそれどころじゃねえのに――。
「――ナツは?」
持てる戦力をすべて投入しても安心は出来ない。ハザマとエルザが来てくれたのは幸運だ二人とも頼りになる戦力だ急いであの遺跡に戻らなくては。
「それはこっちが知りたい。ハザマそっちは何か見つけたか」
「全然ダメだ。やっぱり遺跡の方が怪しいんじゃないか?」
糸から逃れるために魔法を使おうとするも魔力を通すことができないハザマの糸が邪魔してるみたいだ。
「私も探そう。ハザマお前は引き続きこいつらを見張りながら式神を捜索してくれ。ナツを見つけ次第。ギルドに連行する」
聞き捨てならない言葉が聞こえた到底無視できない。ハザマの糸が体を傷つけるが顔を無理矢理上げる。エルザは俺を見ず外へ向かっていた。
「ふざけんな!!この島のやつの姿を見たんだろう。それを放っておくつもりか!!」
夜になると翼や角、鱗等が生えてまるで伝説に聞く悪魔のような姿に変わるなんて最悪すぎる。村人達は自分たちの変わりように涙を流していた。更に時間がたてば意識まで悪魔のように乗っ取られるなんてこれ以上放置していたら犠牲者増えるだけだ。俺たちが止めなきゃなんねえ。
「お前に何ができる。正式に依頼を受けたわけでもないお前達が出しゃばらなくてもいいだろう」
失望が胸に満ちる。島の人を見捨てるような奴を今まで仲間と思っていたなんて――。
「見損なったぞエルザ……」
「ナツだけでなくお前もマスターを裏切るつもりか。どうなるか分かってるだろうな」
剣を首に突き立てこちらを睥睨するエルザ。少しでも動けば剣が首に突き刺さるだろう。だがそんな事は関係ない。目の当たりにした苦しんでるこの島の人も自分の過去も放り出すことは出来ない。たとえここでエルザを倒すことになっても――。
魔力を通すことが出来ないのはハザマが妨害してるからだろう。ならこいつがコントロール出来ない魔力を込めてやれば良いだけの話だ。造形魔法を使う時とは違い自分の魔力を制御せず無理矢理行使する。だが俺の魔法が暴発することはなかった。
「二人とも熱くなりすぎだ。冷静になれ!!」
拘束していた糸の数が倍以上に増え、ためていた魔力が抜けていく。同時にエルザの右手に糸が巻きつく。喉元にあった切っ先が俺から離れ今度はハザマに剣が向けられる。
「……どういうつもりだ」
「お前こそどういうつもりだ首に剣を突きつけて、グレイはグレイで魔力を暴走させて無理矢理魔法を使おうとするし、これが仲間にすることか!!」
確かに首から少し血が出てる。たいした傷じゃねえそれよりもこの糸を切らねえと。
「――お前もだバカ!!次あんな真似したら締め落とすぞ」
首に巻きついた糸がきつくなり吸われる魔力の量が増えた。これ以上魔力を抜かれたら意識が飛ぶ。仕方ないここは様子を見るしかない……。
拘束され簀巻きにされたまま話が進む。リオンにやられた傷はハザマが治療してくれたのか体に痛みはないが、さっきのことをまだ警戒しているのか魔力の吸収は継続して行われている。ちくしょう速くリオンの奴を止めないとデリオラの封印が解けちまう。
エルザはやる気がそがれたのか剣をしまいハザマの横に無言で立っている。どうやら無理矢理連れ帰るのではなく話を聞いてくれる気になったらしい。ハザマは俺たちがもう争う気はないと分かるといくつか質問してきた。
「まずこのクエストはS級魔道士しか受けられないって事は知ってるよな」
S級クエストが爺さんが認めたやつしか受けられない事は知っている。最初はルール違反をしたナツをぶん殴って止めるつもりだったがあいつの卑怯なだまし討ちの所為でガルナ島に来ちまったのは予想外のことだったが正直俺も自分の実力がS級に通じるのか試してみたくなり、途中からはあいつらに付き合うのを楽しんでる部分もあった。
「……ああ」
だが島を回ってる途中で見つけた洞穴の底でデリオラを見つけてからこのクエストは
「頼む……デリオラは師匠のウルの敵なんだ」
今回の氷漬けのデリオラもそれを溶かそうとするリオンも元を正せば俺の過去にすべての原因がある。
ウルは俺に造形魔法を教えてくれた師匠だ。デリオラに住んでた町を破壊された俺は瓦礫の山でデリオラを呪うことしか出来なかった。両親も故郷も同時に失いデリオラへの復讐することだけを考えて死ぬところだった俺を助けてくれたのがウルだ。たまたま近くを通りかかった彼女は生存者を探していたらしく助けられた俺はデリオラを殺すために即座にウルへ弟子入りを志願した。
修行は厳しいものだった。ウルはスパルタで雪の中素っ裸で特訓するのが常だった。だがデリオラのことを考えるとどんな厳しい修行も乗り越えられた。ウルは俺ともう一人弟子の面倒を見ていて、そいつが今回デリオラをこの島に運び込んだリオンだ。あいつはウルに憧れていつかウルを倒すためにウルに弟子入りしたと言ってたが当時の俺はリオンを軽蔑していたそんな軽い理由で強くなれるわけないってな。
ある日普段の修行場から離れて町に買い出しに来たとき旅人の噂話が聞こえた。
「そういやデリオラの話聞いた?何でも北の大陸に移動したらしいな今ブラーゴあたりにいるって話だ」
「マジかじゃあイスバンにようやく平和が戻ったって事だなよかった……」
心臓の鼓動で体が震える。修行場である山小屋に帰って自分の荷物をまとめるデリオラの居場所さえ分かればもうこいつらといる理由はない。もうデリオラにただ蹂躙されるだけのガキじゃない魔法も覚えた俺があいつの息の根を止める!!
「お前には無理だグレイ!!デリオラに勝てる魔道士なんかいない」
「俺は絶対父ちゃんと母ちゃんの敵をとるんだ!!誰にも文句を言わせねえもしもし言う奴がいたら誰であろうと容赦しねえ!!」
「どうしても出て行くというなら破門だ死にに行くような弟子を育てた覚えはない!!」
ウルは俺を止めるつもりだったんだろう。今なら分かるがあのときウルは俺の楔になるように魔法を教えてくれたと思う。助けられた時俺はデリオラに呪いの言葉を吐いていたがそうしなければこのまま死んじまっても良いと思ってた。そうならないようにウルは魔法を教え俺に生きる目的を与えた。厳しい修行も復讐から意識をそらせる目的もあったんだろう。家族も故郷もすべてを失った俺にウルは人の暖かさで包もうとしてくれた。大人として支えてくれた。だが得たものよりも失ったものばかり見ていた俺はウルの言葉で立ち止まれるほど賢くなかった。
「せいせいするね。だけど……もし俺が死んだらもっと強い魔法を教えてくれなかったあんを恨む」
あの日の外はひどい吹雪だった。ウルに弟子入りするまでの俺なら間違いなく遭難していたのだろうが、最初に習った冷気と一つになるという教えを無意識に出来る程度には魔法が上達していた。そっからはデリオラの後を追って一直線だ。ウルの事なんて忘れてデリオラをどうやって殺すかだけを考えてた――けどウルとの再会は思ったよりも早かった。
◇◇◇
デリオラの名は聞き覚えがある。十年ほど前に
まさかグレイがその被害者だったとは……
グレイの話を聞いてふん縛って帰るのは無理だと悟った。覚悟を決めてしまっている何があろうと譲るつもりはない顔だ……どうすんだコレ?今は俺が止めてるから戦いになっていないが、俺がいなかったらグレイはすぐにでも立ち上がり話に出たリオンとか言う奴の元へ行く気だろう。個人的にはグレイの応援をしてやりたいがエルザマジギレしてんだよなぁあれを説得するにはかなり勇気がいる。
問題のエルザはグレイの話を聞き終わると鞘にしまっていた剣を持ちグレイに問いかける。
「条件がある。この仕事を片付けたらお前達全員おとなしくマスターの裁きを受けることを誓うか?」
――驚いたエルザが引き下がった。あれほど激高していたのにグレイの話を聞いて何か思うところがあったのか腕組みをしたままグレイに問いかける。
「――もちろんだ。俺に出来ることなら何だってする頼むエルザ俺に力を貸してくれ」
エルザは一度深く目をつむり黙ってグレイを拘束していた念糸を断ち切った。
「……二度はないからな」
「恩に着る!!」
自由になったグレイは座って頭を下げる。良かったどうにか話を落としどころに落ち着けさせることが出来た。だけど一つだけ言いたいことがある。別に念糸切る必要なくない?俺に言ったら解除しましたがな。おかげでグレイの魔法を妨害していた俺の魔力までごっそり削られたそもそもただの剣でなんで魔力が切断できるんだ?はぁ過ぎたことをとやかく言っても仕方ない状況を整理しよう。
まずこの島には封印されたデリオラとそれを解除しようとしているグレイの兄弟子リオンとその一味がいる。幹部と思われる奴は少なくとも一人撃破。残りも幹部も追撃がないところを見るとまだここを見つけていないのだろう。こちらの戦力は五人プラス行方不明のナツ。
封印解除は月の魔力を使っているため、夜遺跡の地下洞穴のデリオラに月光を照射することで効果を発揮する。
そして島民の方達は遺跡には近づけないので増援として期待は出来ないどうすべきか……。
「はぁー良かったグレイとエルザが戦わずに済んで」
「本当にもうグレイには困ったもんだよエルザ様に逆らうなんて……」
「いや、様って」
エルザが許したのならルーシィとハッピーを捕らえておく必要はない。念糸がほどかれた二人はのんきに体をほぐしている。そんな二人を横目で見ながら何か考えこんでいるエルザのそばによる。俺に考え違いだったら良いんだがエルザの様子に違和感があるんだよなぁ。
「めずらしいな。どうしたんだエルザが……こう自分の意見を曲げるなんて」
人の言うことを聞くなんてと、言いそうになったがすんでの所で言い方を変える。穏便に事が済んだんだわざわざ喧嘩を売る必要はない。
「私だってあいつの覚悟に何も感じないわけじゃないそれに押されて剣を先に抜いたのは私だ。お前に止められていなかったらあのまま戦闘になっていたかもしれん。裁くのはマスターなのであって私ではないのにな」
確かにいきなり剣を向けたのはやり過ぎだが止める側のグレイの態度にも問題はあった。流石にそんな過去があったなら仕方ないとは思うが……どうやらエルザは落ち込んでいるらしい。とても落ち着かない。普段はもう少しおとなしく出来ないのかとか考えているくせに柄にもないことを言ってしまう。
「グレイも話を聞かなかったからな。いきなり仲間を拘束してた俺も悪い」
「なんだそれは励ましてるのか?」
俺の会話能力の低さをまざまざと見せつける結果になった。苦笑いのエルザがこちらを見る何も言わなかった方が良かったなこりゃ。
「いんや。誰の所為かとかそういう話じゃないって話なだけだ」
全員が仲間にする態度じゃなかった。俺もエルザもグレイの必死さに気づかなかったし。グレイはグレイで理由を話さず自分の都合を押しつけようとしたしな。全員コミュニケーション下手か!!
「……そうか」
一言だけそう返すとエルザはテントから外へ出て行った。出て行ってくれて助かった正直変な空気になっていたからな。今エルザの後を追うのは気まずい俺も速く出て準備すべきなのだろうがもう少しグレイの様子を見る振りをしておこう。
ハザマは拘束する時魔力の封印が出来る設定。今回簡単にグレイを拘束できたのは最初からグレイの治療のため念糸を巻き付けていたからです。
普通にグレイが元気だったらこんなに簡単に拘束することは出来ません……弱って奴にしか強気に出れない主人公。