おとぎ話の妖精   作:片仮名キブン

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呪われた島の住人となぞの遺跡

「なにが起きているんだ」

 

 振り上げられたデリオラの腕が崩れ落ち砕け散る。腕にあったひび割れは体全体に広がりその瞳は既に何も映していない。亀裂は大きくなりその巨躯からどんどん肉が剥がれていく。

 

「バ……バカな!!そんなまさか……デリオラは既に……死んで……」

 

 恐怖の象徴デリオラはまるでできの悪い泥人形のように破片となって大地に落ちた衝撃で粉々になっていく。体を構成していた血肉と骨のどれもが残ることなく洞窟内を塵が舞い上がる。

 

「十年間……ウルの氷の中で命を溶かして……あの咆吼は死にぞこないの最後の叫びだったのか……」

 

 俺たちがおびえ恐れたあの叫びは死にゆく怪物の断末魔だったのだ。抜け殻となっても放たれていたあの威圧感。生きているこいつはどれほどの怪物であったのか。

 

「かなわん、もう俺にはウルを超えることはできない……」

 

 リオンから涙と共に言葉がこぼれ落ちる。

 

「…………」

 

 一人の人間が成した遂げた偉業。十年もの間自らの中にデリオラを封じついには災厄とまで呼ばれたデリオラを終わらせた。

 

「す……すげーなお前の師匠」

 

 すごいなんて言葉で片付けられることではないがそうとしか言い様がない。俺達は人が起こした奇跡の一つを目の当たりにしている。

 

「ありがとうございます……師匠……」

 

手で覆ったグレイの目元から涙がこぼれている。ずっと自分を責めてきたんだろうその呪縛は今ウルによって解かれた。彼女はただひたすらに怪物からグレイ達の未来を守ったんだ。

もう一人の弟子であるリオンの顔を見ると、泣きはらしたその顔には先ほどまであった追い詰められたもの特有の影が消えている。もう彼が道を踏み外すことはないと思えた。今まで二人を縛り付けていた恨みも憎愛も消えることはないだろう。だが二人とも必ず飲み込んでくれる溶け出した氷は大地に染みわたるのだから。

 

「おーい、みんな無事ぃ」「あ、ハザマもどこに行ってたの?私たち大変だったんだからねじっとしてられなくて迷子になるなんてナツみたい」

 

 ルーシィ達が()()()()()()()やってきた……。いち早く集団から飛び出したハッピーはナツと再会を喜び合っている。お前にはあの後ろで怒気を放っているお方が目に入らないのか。なにが大変だったーだ。おいら達もついにS級魔道士じゃねえんだよ。明日の太陽が拝めるかも分からないのによくもまあ喜べるもんだ。あとナツみたいっていうのはどういうことだ俺はそんなに落ち着きがないって事か。

 

「――はっエルザ!!」

 

 やっとナツがエルザに気づいた。ナツお前は色々問題を起こすが良い奴だったよ。

 

「そうだったぁぁぁエルザ様の罰があったんだー」

 

 いやエルザ様って……確かに様付けしたくなる気持ちは分かるが、隣に立っているだけの俺でもちびりそうだもん。その怒りを向けられているハッピーやナツ達が恐怖に沈むのは当然とも言える。

 

「その前にやることがあるだろう。悪魔になってしまった村人達の依頼はデリオラを倒すことではないだろう。クエストは帰って報告するまでがクエストだぞ」

 

 ここで以外と優先順位を見定めるエルザ様。落とし前は後できっちり付けるおつもりですね分かります。

 

「え、でもデリオラは倒しちゃったんだから村の人達ももう悪魔になることはないんじゃないの」

 

 ルーシィが焦りながら問いかける。だが残念なことに俺の知る限りデリオラの所為で悪魔化したなんて話は聞いたことはない。ならば村人たちの姿が変わってしまったのはデリオラが原因ではなく違う原因があるということだ。

 

「村人達がおかしくなったのは月の雫(ムーンドリップ)の膨大な魔力が人々に害をもたらしたのだ。デリオラがいなくなったところで彼らの問題が解決したわけではない」

 

「そんなぁぁぁ」

 

「なら、さっさと直してやろうじゃねえか!!」「あいさー」

 

「――どうやってだよ。一番どうにかなりそうだったハザマがお手上げなんだ。他に打つ手なんか……あっ」

 

 岩に寄りかかり必要最低限の応急手当立てを無理矢理施していた俺の方へグレイが目を向ける。視線の先に映るのは俺ではなく――。

 

「おれは知らんぞ」

 

「何ぃ?」「いー」

 

 こいつが頑なに手当を嫌がったので念糸でふん縛りながらの治療になってしまった。ふてくされた顔をしてこちらを見上げるリオンを端からみたら拷問にでもかけているように見えるんじゃないかこれ?でもこいつが知らないんだったら島の人達が悪魔化した原因がさっぱり分からない。もしやデリオラと月の雫(ムーンドリップ)この二つが合わさった事による特異な症例とかか?そうなったら正直お手上げだぞ。

 

「だってあんた達が知らなかったら他に誰が呪いをかけたっていうのよ」

 

「三年前この島に来たときに村があったのは知っていた。しかし俺たちは村人達に干渉はしなかった。奴らがここに来ることもなかったからな」

 

「三年間一度もか?」

 

 おかしい……。月の雫(ムーンドリップ)はずっとこの遺跡に降り注いでいた。彼らだってギルドに依頼を出す前に自分たちで調査はしていたはずだ。地べたに簀巻きにされたリオンの言葉を信じるならそれが一度もなかったようだ。今にして思えば俺が遺跡の事を尋ねたときも言葉を濁していたことも変だ。彼らが何かを隠しているのは間違いないだろう。

 

「ああそうだ。それに月の雫(ムーンドリップ)の光が人を悪魔の姿に変えたという話も疑問がある」

 

 グレイの腹の傷を治療しながらリオンの話を聞く。こいつはなんでさっき治療したばかりなのにより重傷になっているのだろうか。幸いにも腹の傷は自分で凍らせて出血を防いでいたので死ぬことはなさそうだが十分に大けがだ。本来ならここで凍傷にでもなって重傷化しそうなものなのだが、氷の造形魔導士なら最低限の場所を凍結させて被害を最小限にできるらしい。氷の造形魔法便利だな。この前のララバイの時も応急手当てに役立ったし俺も教えてもらおうか。

 

「何だよ自分がしてきたことに今更言い訳でもする気かぁ?」

 

「まさかこの期に及んで言い逃れはしないさ。ただな俺たちも同じ光を三年間浴び続けていたんだぞ。気を付けるんだな奴らもただの被害者というわけじゃない腹に何か抱えているのは間違いないだろう。ま、ここからは俺には関係ない話だ。後はお前達のしごとだろう」

 

 ナツはほぼ擦り傷みたいなものだし大丈夫そうだ。これでとりあえず重傷の奴らの治療は終わったか。

話を聞くに月の雫(ムーンドリップ)が原因ならこいつらが悪魔化していないのは説明がつかないな。この遺跡内に特別な魔法でも掛けられているのか?遺跡を満たすマナと複雑に絡み合った魔法を関知することはできるが俺にこれを解析するのは無理だな。十年単位の時間があっても解き明かせる気がしない。

 

「は?何言ってるんだよ。お前達が村をこわ――ぐわっ」

 

 エルザがナツの頬を挟み言葉を途切れさせる。悪魔化の原因がこいつらじゃないにしてもやってきたことに弁明の余地はない。少なくとも村の修復の手伝いくらいはさせなくては筋が通らないだろう……何か考えがあるのか?

 

「おい、どうしてナツを止めるんだ」

 

 エルザに近寄り小声で話をきく。こいつらを無罪放免で許すのには納得がいかない。

 

「あいつらもデリオラに家族を殺された被害者だ。奴らにも同情の余地がある。デリオラは倒されたもう過去に縛られる必用はない。それくらいの許しがあってもいいだろう」

 

 そうは言いますけどねエルザさん。それ俺への負担とか考えてくれてますか?そりゃあ俺だってかわいそうとは思いますよ。でもねあなたたち戦闘力は申し分ないですけど村の修復に役立つとは思えないんですね。人手なんてものはねえ復興の時はいくらあっても足りないもんで、もしかして俺がいるからすぐに大丈夫とか思ってません?そしてなにより――。

 

「それとこれとは別問題だろこいつらいに起こったことは確かに悲劇だ。でもな村の人達だって理不尽に奪われたんだ。自分達の暮らしが唐突に壊される悲しみはこいつらが一番知ってるはずだろ!!失ったものは戻ってこない。ならせめてケジメだけは付けるべきなんだよ。こいつらは村の人達に謝る……これからのことはそれから決めるんだ」

 

 あれだけのことをしでかしといて筋も通さないのは納得がいかない。グレイは腹を刺されてるんだ。それにこいつらがどんな奴でもなにか悪事を働いでいるわけでもないただ普通に暮らしている人々の営みを破壊する権利なんて無いはずだ。

 

「ムッ……村人達に秘密があるのは事実だが謝罪の一つも無いというのは確かに筋が通らないな……」

 

 リオン達も村に連れて行くことになった。だがその後は自由にさせるつもりだ。本当なら検束魔道士にでも引き渡すべきなのだろうが……。

そうならなかったのには理由がある。まずグレイがかばったのだ。もとをただせば自分がデリオラに挑みかかったことが原因で始まった事件だ。兄弟子を犯罪者にするのは避けたいようだ。それに今回の一件で幸いにも死んだ人はいない。体が悪魔貸してしまった人はいるが……。流石にそれだけなら迷わず評議会に引き渡すのだが。引き渡してもまともに捜査してくれかも怪しいんだよな。

まずリオン達がデリオラを復活させようとした証拠がない。怪物はウルによって塵となってまるで夢幻のように消えてしまった。俺たちがいくらここにデリオラがいたと言っても評議院はここがS級クエストになるような立ち入り禁止の島ということも相まって調査員の派遣すらしないだろう。良くてデリオラが封印されていた永久凍土の確認くらいか、それすらするかどうか怪しいところだが。

十年前まではデリオラと言えば姿を見たら終わりの災害のような存在だった。それがある日を境にパタリと消えてなくなってしまった。当然公式の記録ではデリオラが死んだとはどこにも書かれていない。特定危険魔道災害に数えられるデリオラはそれ専用の観測チームが組まれており少数ながら活動は今でも続けられている。人々に残った恐怖は十年という年月を掛けても消えることなく残っている。

グレイの話ではデリオラは氷山の中に埋められたということだから場所を知っているのは実際に埋めた奴らとそれを命令した奴くらいだろう。おそらくデリオラという存在を風化させて人々の記憶から消そうとしたんだろう。普通の奴なら誰だってあんな化け物のことは速く忘れたい。

 グレイ達がデリオラの封印場所を知っていた理由もウルが封印した所に駆けつけた魔道士達の話を盗み聞きしたからだそうだ。そうでもなければこんな化け物の封印場所を当時十にも満たないガキが知っているわけがない。

 評議院は再びもみ消すだろう。ララバイの時がわかりやすい。ララバイの封印を解除した鉄の森(アイゼンヴァルド)の奴らを評議院は本気で逮捕する気がない。捜索隊の人数は片手に数えられる程度しか配備されていない。

評議院の隠蔽体質は筋金入りで闇ギルドがのさばっているのがその証拠だ。正直今の評議院に闇ギルドを相手にして勝てるほどの力はないが、そもそも評議院は魔道士に罰を与えることをよしとしない。妖精の尻尾(おれら)が評議院に目の敵されても存続が許されているのはそういった部分もある。

 

「俺たちは負けたんだ。勝者の言うことにはおとなしく従う。」

 

 さっきまでの狂気的な覇気はどこへ行ったのか。やさぐれて投げやりなリオンのこの様子ではその内どこかの闇ギルドにでも所属しそうな気がする。心配だなでも俺にはこいつに掛ける言葉が見つからない。

 

「もったいねえな」

 

「……何がだ」

 

 様子をうかがっていたグレイの一言にリオンが反応する。

 

「お前もどっかのギルドに入って見ろよ。世界はお前が思っている以上のもんだ。仲間がいてライバルがいて目指したい目標があって、そこには今のお前にはない新しい何かがきっとある。少なくとも俺はウルと別れた後にそれと出会った」

 

「くだらんな。実にくだらないものだ」

 

「どうせお前のことだ。ウルを越えた後の事なんてノープランだったんだろ。折角生き残ったんだ。ちょっとはそのくだらないことを試してみたらどうだ」

 

 その言葉にリオンは言葉を返さなかった。だが否定もしなかった。

 

おとなしくなったリオンを連れてすぐに村人達の元へ向かえたら良かったんだが、そうもいかない事情が俺にはある。

 

「すまない。デリオラの件が一段落したところ悪いんだが、ちょっと俺の話を聞いてくれないか?」

 

 デリオラにひけを取らない化け物との遭遇、自分の目で見て体験したことだがまるで夢を見ていたように現実感がない。一つの問題が片付いた後でさらにもう一つ問題を起こすのは気が引けるがみんなはこんな荒唐無稽な話を信じてくれるのか……不安だ。

 

「どうしたハザマ?このタイミングで切り出すんだ。重要なことなんだろうな」

 

 俺だってこのまま村に帰ってすぐにでも村人の呪いの方に集中したかったさ。これに関しては本当に申し訳ないと思うよ、だがこっちもせっぱ詰まっているんだ。

 

「ああグレイ。お前達とはぐれたときちょっと厄介な事があったんだ」

 

 俺は巨大な蛾にさらわれた時の話をした――改めて言葉にすると訳わかんねえな。なんだよ蛾にさらわれて不思議空間に連れさられるって。

 

「なるほどハザマを連れ去ったその蛾のことだが思い当たる節がある。どうやらこの遺跡は破壊しなればならないみたいだな」

 

 おいおい思い当たる節ってエルザさんあなたはあんな怪物に心当たりがあると……どんな人生歩んできたらそんな事になるんですか?

 

「え、この遺跡壊しちゃうの?勝手に壊しちゃうのは不味いと思うんだけど」

 

 ルーシィが至極まともなことを言った。何一つ間違ったことを言っていない俺もそう思う。だがあんな力を持った化け物の言うことを無視して俺が無事に済むとも思えないが、待てよ……。

 

「それもそうだないったん村の人達と合流した方が良い。あの蛾には期限を定められた訳でもないし、よく考えたらあいつは封印された中で磔にされて動けない状態なんだ。もっとゆっくり考えてからどうするか決めるか」

 

 俺も自分の命が賭けられていて冷静に物事を考えられていないみたいだ。ここは一旦落ち着いて……。

 

「いやこの遺跡は今すぐに壊そう」

 

 こいつすごいこと言うなこれを壊す?今すぐに?いや流石に無理でしょ、そびえ立つ遺跡は見るからに頑丈そうだ。どうやってこんなもんを壊すって言うんだよ……エルザさんお得意の鎧でもこの建築物を破壊するのは現実的じゃない。まあ何人かそれができそうなやつが知り合いにいるから全面的に否定することはできないんだが。

 

「ナツ先ほどの轟音はお前が起こしたものだろう。」

 

「ああ、なんか柱で囲まれた大広間みたいなのが地下にあってよ。そこをぶっ壊したら遺跡が傾いてデリオラに光があたらねえんじゃないかと思ってよ」

 

 マジかよナツの奴この遺跡を傾けたのか。あの地響きはてっきりデリオラ復活の前触れかなんかだと思っていたんだがナツが引き起こしたものだったなんて。それにしても思いついたとしてそれを実行に移すかねよく生き埋めにならなかったな。見ろよルーシィなんかドン引きな顔しているぞ。逆に言うならルーシィ以外は真面目な顔で今の話を聞いているんだが……。

 

「いやいや中に入ってその大広間の柱を壊したとしても、そのまま落ちてきた天井と一緒にぺちゃんこになるのがオチだぞ」

 

「……はあ、そうならないためにお前がいるんじゃないか」

 

 ――俺ですか?

 

 再び遺跡に戻ってきた俺達だが、先ほどデリオラの氷が鎮座していた最下層の一段上。ナツが遺跡を傾ける際にぶっ壊したという大広間に来ていた。それにしてもこの場所は明らかに他とは用途が異なっている。今まで通ってきた入り口や通路にはコレを月の満ち欠けやこれを築いたであろう人達が壁画として描かれていた。だがこの部屋には床を全て使うほど大きな魔方陣が一つ設置されており、さらにその周囲には二十八にも及ぶ魔方陣が連結して展開されていた。

 ナツが壊したという柱は十三本ありその全てを巨大魔方陣の上に打ち込んでこの遺跡を支えているようだ。

 

「なんだよこの部屋。ここがただの遺跡じゃないってのは月の雫(ムーンドリップ)を発動できる時点で分かっていたがこの魔方陣は極めつけだ」

 

 そう今俺達は遺跡の上で月の雫(ムーンドリップ)の儀式を行っていない。なのにこの魔方陣は稼働し続けている。地面の巨大魔方陣ももちろんだが、その周囲の魔方陣さえもが恐ろしい量の魔力を用いて運用されている。おそらく巨大魔方陣の魔力量はあのデリオラさえも余裕で上回っているように感じる。俺が見たのは死にかけのデリオラだがそれでもこんな小島に放置されて良いような代物じゃないことははっきりと分かる。

 

「ちくしょうマジでしっかり直ってやがる。あの仮面砕くくらい思いっ切り殴ってやったら良かった」

 

 ナツが壊したという柱にもびっしりと術式が埋め込まれており、いかにもこれを壊したら不味いぞ言うように時折表面に浮かんだラインが発光して巨大魔方陣と連動して魔力が流れ込んでいるのを感じる。

 

「ナツぅぅぅこんな明らかに壊したら不味そうな柱を良くも壊してくれやがりましたね!!」

 

 ここを壊したらなにか起きるに決まってるよこの部屋の魔力が暴走して遺跡が爆発とかしても不思議じゃねえむしろよく爆発しなかったな。野生動物並みに勘が良いくせに何でここ壊したんだよ。

 

「それでこの部屋は何なんだよ」

 

「俺が知るか。俺はザルディが連れてきたベルアの月の民とかいう奴らの月の雫(ムーンドリップ)の儀式を手助けをしていたに過ぎない。この部屋に入ったのもこれで二回目だ。何か余計な事をして儀式を行うことができなくなっては事だからな。この魔方陣を調べたこともない」

 

「お前よくそんな行き当たりばったりの計画でここまでこれたな。完璧にしくまれてるだろ。それ」

 

 事件の首謀者が事件についてなにも知らなすぎる……。嘘をついている様子もなく本当に何も知らないのか。聞いた話によるとリオンが仲間達とデリオラの封印を解こうとしているところにある日突然ザルディが接触してきたらしい。あいつは自分もデリオラを倒すために旅をしてその中で絶対氷結(アイスドシェル)を溶かす方法を見つけたが、自分ではデリオラを倒すことはできないため最強の魔道士を探していたのだという。

 

「ああ、だがあのときの俺は疑うことを知らなかった。ウルが死んでウルを超えるためにはウルが倒し損ねたデリオラを殺す事でしか達成できないと思い込んでいた。グレイと別れた俺は修行をしていた雪山に戻った。家にあった魔道書は全部よんだ。当然絶対氷結(アイスドシェル)の書かれた魔道書は一番に読み直した。だが魔道書を最後まで解読しても氷を溶かす方法は書かれておらずそれどころか氷には術者の命が宿っていると書かれ戻す方法は無いと記されていた」

 

「リオン……」

 

「当然迷ったさ氷を溶かすとことはウルを殺す事と同義だからな。だがいくら調べてもウルを元に戻す方法を見つけることはできず一年経っても二年経ってもそれは変わらなかった。いつしかウルをもとに戻す方法はこの世に存在しないんじゃないかと思うようになった。俺はウルを超えるという夢をかなえることができず一生生きていくんじゃないかとな」

 

 やったことは褒められた事じゃないが行動力だけは凄まじいなこいつ。見ず知らずの男に連れて行かれたわけのわからん遺跡でわけのわからん儀式を三年間行い続けるとか普通じゃねえ。

 

「エルザ本当にこれと壊すのか?俺は反対なんだが……」

 

 ここを壊して何か良いことが起きる予感がまったくしない。触らぬ神になんとやらここを壊すなんてとんでも――。

 

「さあやるか」

 

 だがエルザさんはそう思わなかったようでいつの間にやらヒョウ柄の鎧へと姿を変えており準備万端だ。

 

「あれは飛翔の鎧か使用者のスピードを上げる効果のある鎧だ」

 

 おいおいマジかよあの鎧ほとんど肌色丸出しだぜさらに豹耳が付いている。こんな鎧で敵の攻撃から身を守るというのなのだろうか豹耳は付いているが。もはや鎧と言うよりコスプレだな豹耳もついているし。

 

「――ハザマお前は私が柱を切ったらすぐに修復魔法を使ってこの柱を補強しろ。だが完全には修復するなあくまで崩れないように保つだけだ」

 

 そう言うとエルザは柱に向かって駆けていくグレイの説明したとおりすごい速さだ。

 

「――飛翔・音速の爪」

 

柱にむかったエルザは柱の周りを跳びまわる。そしてエルザが着地するとそこには切り刻まれた柱が……はあああああ!!!!

 

 こいつはなにをしやがりますが!!エルザが柱に向かったと思ったら柱が切り裂かれている。それもご丁寧に一本丸ごと丁寧にカットされている。慌てて修復術をかけて柱を修復するが魔法的な抗力は切れてしまったのだろうさっきまで柱に走っていた魔力の流れが感じられない。

 

「おいぃぃっエルザさん何を!!」

 

 慌てていたので形だけを取り繕う修復になってしまった。だがすでにエルザはすでに次の柱に狙いを定めている。それからエルザはあっという間にすべての柱を切り裂いて俺は半分泣きながらすべての柱を修復することになった。

 




 多分次でガルナ島を終わらせられる。

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