おとぎ話の妖精   作:片仮名キブン

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 感想ありがとうございます。最近ルビ機能というものを知りましたので早速使ってみました。


死神と呼ばれる理由

魔導自動車とはその名の通り魔力を使って動かす車である。前世の自動車と大きく違うところは魔力の質によって性能が大きく左右されるという点にある。質がいい魔力だと速く低燃費で走るし、逆に質が悪い魔力なら遅いうえバカみたい魔力を消費する。つまり何を言いたいかというと、S級という超一級の魔導士が直で注入した魔力で走る車内は地獄であるということだ。

 

「オぇ……うっ」「イッタ!!お尻打った。あ、ナツの顔が青を通り越して白色に」「……ぐ……ムム」「だらしねぇなお前グガっ――」

 

 クローバーに向かうため線路沿いの道を爆走している俺は舗装されてない道というものを甘く見ていたようだ。乗り物に弱いナツはもちろんのこと、それ以外の面々もエルザの運転には参ってしまい体を車内のあちこちにぶつけ涙目である。さっきから何度かスピードを落とすよう頼んでいるのだがスピードは落ちる気配もなく、窓から見える景色が後ろへ後ろへと流れていく。まあ、今は何よりも時間が大事というのはわかるのだが隠密性や安全面も考えていただきたい。本来は足取りをつかめなくするため線路沿いなんていうわかりやすい道は走りたくない。しかし、クローバーに向かうためには大渓谷を渡らなければならず、そのための橋が鉄道橋しかかかっていないため結局線路を走るはめになる。ならば最短距離で行こうということになりこのルートを走っているわけである。今になって思えば汽車を緊急停止させたときに用いた理由がよくなかった。

 

「危険な魔導士が車内にいる可能性」というのは、後ろ暗いことを企んでる連中に対してあまりにもストレート過ぎだ、けが人や列車の故障といった偶然に起こりうる内容で連絡するように指示すべきだったと考えても後の祭りだ。鉄の森(アイゼンバルド)もバカの集まりってわけじゃないだろうし、このまま何もなしとはいかないだろう。

 

「ハザマ、ルーシィ、グレイ、クヌギ駅の様子がおかしい――」

 

 こちらからの要望を全無視していたエルザ様が声をあげる。その声色からただ事ではないと慌てて窓の外を見ると目を疑う光景が広がっていた。建物らしきものがボロボロに壊れていおりかろうじて残っている看板からこの建物が駅であると認識できた。建物の屋根板はところどころ吹き飛び近くには見当たらない。線路から列車が脱線し、先頭の車両は倉庫らしきものに突っ込んでいた。。列車で運ぶはずだったであろう資材が散乱して足の踏み場もないほどである。何人かの人間が倒れている人を一か所に集めており、竜巻でも通ったのかというのが最初の印象だ。

 

「……う…そ」

 

 ルーシィはあまりにも非現実的な出来事に固まって、その顔には理解ができないことが目の前に起きていることに対して恐怖の色が表れている。

 

こんな()()()な事態が自然に起こるわけない。となると――

 

「ルーシィちゃん」

 

仲間とおまけ一人の体を念糸で固定すると同時に車が()()()()

 

「ハエはほんとに行儀が悪いな、なんでもかんでもたかってきやがる。」

 

「……エリゴールさん…」

 

 とっさの固定では勢いを殺しきれなかったらしい。外に放り出された衝撃で念糸がはずれたカゲヤマが名前をつぶやいた。

 

「俺たちの要求は簡単だ。――ララバイを渡して死ね」

 

 横転した車からはい出てみるとさっきまでは崩壊した駅に目が行ってばかりだったが、救助していると思っていた人間がガラの悪い笑みをうかべながら立っている。

 

 カゲヤマの発言から中央に立って発言したのがエリゴールとなのだろう。上半身を露出させ肩から胸にかけて悪魔をあしらったと思われる刺青をしている。右手一本で鎌を持ち上げているところを見るとやせ形の体型とは裏腹に力持ちらしい。それにしても非常にまずい状況だと言わざるを得ない。俺より先にはい出たグレイと横転する前に車を乗り捨てたエルザはすでに戦闘態勢になっている。しかし、車酔いでグロッキー状態のナツと運動神経がそこまでよくないであろうルーシィはまだ車の中に取り残されている。実質戦える戦力の半数が行動不能。さらにエリゴールが二つ名持ちだというのが最悪である。二つ名というのはある一定の強さの指標となる。ナツの火竜(サラマンダー)のようにそいつが持つ魔法の特徴を表す場合もあれば、エルザの妖精女王(ティターニア)のように立場を表す場合もある。さて、今回のエリゴールの二つ名、死神は、はっきりいって『おうちかえるー』と駄々をこねたくなるレベルでやばそうな相手である。

 

「渡せって言われてハイそうですかって簡単に渡せるわけねえだろう」

 

「下種どもが一人残らず切り伏せてやる――」

 

グレイが当然のように答える。この町をこんな状況にしたのは間違いなくこいつらだろう。そんな奴らに大量殺人が可能な魔道具なんか渡せばどうなるかなんてわかりきっている――絶対に飲めない要求だ。

エルザはこんなことをしでかしたこいつらをぶちのめすオーラが体から噴出しており、既に剣を構えエリゴールに狙いを定めている。

 

「はぁー」

 

 一瞬エリゴールがため息をついた。それと同時に鎌を一振りするとエリゴールとエルザたちの間に倒れている人の腹から血があふれ出た。

 

「――渡せ」

 

「「なっっ!!」」

 

 こいつヤバい、人を傷つけることに何も感じていない。俺はこいつのことを()()()()()()()()()()ということがはっきりとわかった。

 

「――グレイィィィ!!!こっちに来い!!エルザはこいつらを一人も通すな!!」

 

 念糸を伸ばして一気に切り裂かれた人のもとまで跳ぶ。地面は血で濡れ、ショックからだろう男性は気絶しているようだ。

 

「グレイこの人の体を凍らせてくれ」

 

「……」

 

「――傷口を凍らせろ!!」

 

 怒りでブチ切れているのがありありとわかる顔をしているが、そんなことはこっちの知ったことじゃない。この人を死なせないことが一番大事だ。右手は治療のため修復術を使っているため、左手から念糸を出し無理やりグレイの首の向きを変えて傷口に目線を移動させた。

 

「傷口の周りだけを凍らせてくれ――」

 

 少しは周りが見えるようになったのかグレイは魔法を発動させ傷口だけを凍らせた。グレイに念糸を使う必要もなくなった。全力で治療にあたるため両手を使う。俺の魔法では無くなった血液は修復することができない。失血死が今この場で最も確率が高く避けなければならない事態だ。懐から取り出したサポート用の式神で役割を分担する。さっき封印のためとはいえ一番出来がいいのを使用してしまったのが悔やまれる。一番大事な修復は俺(本体)がやり、他の式神たちで生命反応の確認や凍った箇所が凍傷にならないよう保護する作業などを分担して行う。

 

「……これでいいか?」

 

 無言でうなずく。――凍結……傷が筋肉を通り抜けて内臓まで届いて……念糸で組織を結合させる…同時に修復。血管は血が出ているもの以外……。

 

「――あいつらに落とし前つけさせてくる」

 

 グレイが何かを言ったようだが聞こえなった。――絶対この人をこんなところで死なせるわけにはいかない。俺は必死にこの人の治療のため意識をとがら次第に自分の手元しか認識できなくなっていった。

 

 

 

◇◇◇

 

 車から出た俺達を待っていたのは半壊した町だった。危なかったハザマがとっさに体を車と固定していなかったら下手したら死んじまうところだったな。俺も含めて男どもはそんなやわな体じゃねえと思うがルーシィは見るからにどんくさそうだからな。体の状態は軽い打撲程度だ……これなら問題はない。しかし車を転ばした犯人らしきやつらが、がれきの散乱している中ニヤニヤ笑いながらこちらを見ている。チッ……ナツのバカはこんな時でも車酔いでダウンしてやがるしルーシィはまだ車の中だ。ハザマはカゲヤマとかいうやつをもう一度拘束しようとしているな、立っているのは俺とエルザくらいなもんだ。

 

「ハエはほんとに行儀が悪いな、なんでもかんでもたかってきやがる。」

 

 一番高いがれきに腰かけた男が言い放った一言でそいつがどんな奴かよくわかった。こいつらはクズだ。不気味なその男は片手でバカでかい鎌を持ちこちらをにらめつけている。

 

「俺たちの要求は簡単だ。――ララバイを渡して死ね」

 

 男の周囲がゲラゲラと大笑いをしている。俺はこの手の妖精の尻尾を馬鹿にした態度が大嫌いだ。そして俺以上に妖精の尻尾を大切にしている奴が俺の隣にいる。

 

「渡せって言われてハイそうですかって簡単に渡せるわけねえだろう」

 

「下種どもが一人残らず切り伏せてやる――」

 

 全員ぶちのめすために剣を構えたエルザの背中を守ろうとエルザの後ろで警戒に当たる。さすがのエルザもこの人数は一人で相手するには分が悪いだろうからな。周囲には魔法を使おうとするものがいない。俺の周りを円状に警戒していたため、そいつがした行動に一瞬硬直してしまった。

 そいつはエリゴールは自分の一番近くに倒れた人の腹を鎌で切り裂いた。

 

「――渡せ」

 

 あいつは今何をした――目の前で突然何の前触れもなく人を切り裂いた。その顔には何も変わったところはない。がれきに座っている時から変わらずこちらを見下した顔しか浮かべてねえ。つまり、あいつは誰かを傷つけることに何の情も抱いてないということか。ならばあいつは人を傷つけることになんのためらいもない化け物だな。…殺す……殺してや

 

 首に縄をかけられ視界からエリゴールの顔が消えた。代わりに目の前にはいつになく真剣な表情をしたハザマがこちらをにらめつけ言った。

 

「――傷口を凍らせろ!!」

 

 怒鳴り声でハザマが指示を出す。よく見ると切られた人の胸は上下しており、まだ死んでないことが分かった。ハザマの手から光が出ておりよく見ると糸で傷口をふさごうとしているようにも見えた。まだ生きているということが認識でき、さっきまで頭を埋め尽くしていた殺意が少し薄くなった。

 

「傷口の周りだけを凍らせてくれ――」

 

 すでにハザマはこちらを見ておらず、処置に集中しているのか俺が傷口をふさぐように発動した魔法で自分の手が凍り付くのにも構わず治療を続けている。いつの間にかハザマは三人に増えており、けが人を囲むように全員が真剣な顔でそれぞれの手がぶつかり合うことなくすごい速さで動きまわっている。

 この人のことはハザマに任せようそれよりも今は――

 

「――あいつらに落とし前つけさせてくる」

 

 あいつらに痛みってやつを教えてやる。

 




 ハザマ能力

 間流結界術(笑)
できること
・念糸
・天穴
・修復術
・式神
・暗器の扱い
・魔法の解除
・封印術
できないこと
・方囲 定礎 結 滅 解

他の術については今後の展開次第ということで
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