おとぎ話の妖精   作:片仮名キブン

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 ゴールデンウイークが終わってしまった。


消えた呪歌

大鎌の柄の部分を地面につけ右手のみで支えている。左手に持った三つ目の髑髏が装飾された笛は死の唄を響かせると言われているララバイだ。その様相は死神そのものであり、顔は声のない笑みを浮かべていた。エリゴールはララバイをくるくると回しながら穴から洩れる呪いが込められた音に耳を傾けている。

 

「エリゴールさん計画は第二段階になりました。あいつらは俺たちが始末しますんで、ターゲットを殺りに行ってください」

 

ターゲットだと……どういうことだ奴らの目的は無差別テロじゃないのか、所かまわず笛を使う計画ではないようだ。まるで個人を指定するかのような言葉に少し引っ掛かりを覚えたが今はそんなこと気にしている場合じゃねえ、とにかくエリゴールを止めるしかない。

 

「焦るなレイユール。この計画は絶対に失敗は許されねえだが、どこからかぎつけたか知らねえが羽虫どもが寄ってきちまった。羽虫ごときが何匹集まろうが関係ないが目障りであることには変わりはねえ。だからなここらで一つララバイで眠ってもらおうじゃねえか」 

 

どうする。聞いただけで死ぬ音なんて壁を作って防げるようなもんじゃねえ、耳をふさげばどうにかなるのかもしれないが倒れている奴らが犠牲になってしまう。

 

「「やめろぉぉぉおぉぉぉぉぉ!!」」

 

 後ろからナツとエルザの叫び声が響く。二人とも後ろにいる人たちを守るためにエリゴールから距離をとったのが悪かった。止めることができるのは俺しかいない。

――繰り出した氷のつぶてしかしエリゴールの周囲の奴らが各々の魔法で防がれる。エリゴールは興味がなく焦点が合ってない眼で俺達を見渡すとララバイを口に当てた。

 

 ――その瞬間。ポン!!という音ともにララバイが煙となって消えてしまった。

 

 最近見たことがある音と煙。思い出すのは列車の中で見た人形劇、あれはハザマの式神か――いったいどのタイミングですり替えたのか知らねえが、よくやった!!エリゴールは自分に起きたことが信じられないのか笛を吹く体制で固まってしまっている……まったく奴の呆けた顔が傑作だぜ。

 

「どこまで俺をコケにすれば気が済むんだハエ!!」

 

 さっきまでの無感情な顔から一転、怒りに身を任せ放たれた弾丸のように俺へと向かってくる。しかしエリゴールの鎌は俺まで届かなかった。後ろからカッ飛んできたナツの拳が顔面にめり込んだからな。

 

「るぉぉぉぉぉぉらぁぁ」

 

 足と手から噴射した炎と体中からほとばしる炎でナツが巨大な火の玉のように見える。後ろからかなびく炎が尾を引いておりその速度を物語っていた。当然、そんな強烈なカウンターを受けたエリゴールも無事でいられるわけもなく、体を回転させながら弾き飛ばされていく。

 

「よっしゃぁぁ、さっきの分のお返しだ」

 

「――グレイ、ナツよくやってくれた」

 

 遅れてエルザも到着する。後ろに残っていた鉄の森(アイゼンバルド)の連中はどうなったかと振り返れば……こんもりと目を引く物体がある。よく見るとそれは気絶した人が重なってできているようだ。うわー下のほうにいるやつ泡を吹いているじゃねえか。まあ死んでねえみたいだしとりあえずはいいか。ルーシィはハザマのそばでけが人の手伝いをしているみたいだ。おんなじ顔の奴の中に囲まれて不気味な空間だが慣れてしまえば問題ない。

 

「なにバテてるんだよ、あとは全部俺が倒すからお前はおとなしくしてろ」

 

「ハァ!!全然バテてねぇからむしろ今から俺が全員倒すところだからお前が休んでろ」

 

「――喧嘩をするな」

 

 俺とナツの頭にエルザのげんこつが落ちるでもこれで気合が入った。ナツが言ったことはあながち間違いじゃねえ、さっきの魔法の連続使用で魔力が少々心もとない状態だ。目の前に見える敵は4人。短期決戦で勝負を決めてやるここが正念場だ。

 

「「エリゴールさん!!」」「大丈夫ですか」

 

 フっ飛ばされたエリゴールも口から血を吐き出すとそばに寄ってきたメンバーたちには目もくれずこちらをにらめつけていった。

 

「……お前ら楽に死ねるとおもうなよぉぉぉぁ!!」

 

「ヒッ!!」

 

 あまりの怒気に空気が震えるエリゴールの周りにいた仲間たちすらビビるその強烈な闘気がここまで届いやがる。

 

「おい――あのマフラー着けたピンクの奴以外を殺せ。あいつは俺の得物だ手を出すんじゃねえぞ。それともし負けるなんて事があったら……そん時は俺がお前ら全員を殺してやる」

 

「「ヒィ――わかりました」」

 

 エリゴールはその返事を聞いた瞬間ナツの周りにだけ竜巻を発生させ上空に放り出した。空中での移動方法ないことと乗り物に弱いことが相まって奴のなすがまま攻撃され続けている状態だ。ハッピーがいればサポートもできたのだが、地上からではどうしようもない。

 

「――ナツ!!」

 

「ナツは大丈夫だ。あれしきの攻撃でどうにかなるような奴じゃない。エリゴールはナツに任せて私たちはこいつらをさっさと倒すぞ」

 

 「だが――」

 

 エルザになおも言いつのろうとしたがそこから先の言葉が出なかった。なぜなら黒いヒモが俺に突き刺ささろうと迫ってきていた。

 

「運がいいなお前。だがよそ見している暇なんてないぜ、さっさと串刺しになれよ」

 

「俺の運がいいんじゃなくてお前がヘボなだけだろ。ちゃんと狙ってるのか」

 

 エリゴールをぶっ飛ばしに行きたいがこいつを倒してからじゃねえと行けそうにねえな。エルザは残り二人を相手に戦っている。つまりは……。

 

「ったく俺もなめられたもんだぜ、お前みたいな三下一人で十分だと思われてるなんてな」

「――調子にのるなよ!!」

 

 全方位から迫ってくる奴の魔法。両手すべてから放たれる十本の線で目の前が埋め尽くされた。さっきギリギリ回避に成功した特徴からおそらく奴の思うがまま自由に操作できる魔法のようだ。引き付けてからじゃねえと黒紐の軌道が変わっちまう。しかし、一本かわしても残りの紐が俺を仕留めるだろう。なら――回避しなければいい。

 

「調子にのってるのはお前たちだろ」

 

 黒紐が俺を取り囲むよりも先に奴と俺との間に氷のトンネルを作る。紐一本一本の威力では俺の氷は砕けないトンネルを走りぬける。興奮しているのか大口を開けたバカ面がよく見えるぜ。その気持ち悪い顔に氷魔法をたたきつける。

 

「これで仕舞いだ。お前たちの計画も残りの奴らも俺達が止めてやる」

 

 顔を凍らされた紐使いは人を見下した顔のまま固まった。こいつはこのままにしておくことにして次はエルザの援護に向かわないとな。俺が駆けつけたときにはもう戦いは終わっているかもしれないが……。

 

「――ガハッ」

 

妖精の尻尾(フェアリー・テイル)に喧嘩を売ったことをこうかいしろ……もう聞こえてねえか」

 

 

 駆けつけるとエルザの周りには鉄の森(アイゼンヴァルド)の奴らが倒れている。残っているのは二人おそらく幹部だろう。

 生き残った二人のうち三本のひげの男はエルザと同じ魔剣使いのようだ。エルザが近接戦闘で相手を瞬殺できないことが信じられず思わず足を止めて見てしまう。どうやらもう一人のデブがサポートしていることが原因のようだ。デブのほうは、潜行(ダイブ)の魔法を使い魔剣使いが危なくなると地中に逃がすというパターンでエルザの剣閃を回避している。デブを倒そうにもデブも危なくなれば自分で潜ればいいだけなのでエルザにとっても攻めあぐねている状態のようだ。

 

「くそ、このねーちゃんめちゃく強えじゃっつ!!」

 

「間違いねぇ!!この女妖精女王(ティターニア)のエルザだ。俺たちのかなうような女じゃねえ」

 

「かなわなくてもやるしかねえんだよ!!こいつを殺さねえと俺達がエリゴールさんに殺されちまう。とにかく時間を稼いで隙をつくしかない」

 

 エルザの猛攻に打つ手がないのか二人同時に地中に潜りエルザ一人だけが大地に立つ。剣を正面に持ち周囲を警戒していたエルザだが、急に力を抜き剣を下げる。

 

「……面倒だな、グレイ氷で大きい武器を頼む」

 

 俺がそばにいたことにエルザは気づいていたようだ。言い残すと突然真上に跳躍した。空中でエルザが換装した鎧を見たことによってエルザの作戦を理解した俺は注文通りの氷を造形する。

 

「アイスメイク―“破城槌《ルークブレイカー》”」

 

 エルザが換装した鎧は巨人の鎧(きょじんのよろい)本来は遠くに槍などを投げる時に使用するのが本来の使い方だが、その膂力はエルザが持っている鎧の中で1番のものだ。この鎧で地面を思いっきりでかいハンマーで叩けばどうなるか。

 

 轟音とともに地面に大きなひびが入る離れたところに立っている俺の足元も揺れる。ひびの入った大地がめくれ上がり二人の男が姿を現した。

 

「――なんだー!!」「……ぐふぁっ」

 

 運悪くハンマーの真下にいたため衝撃をもろに受けてしまったであろうデブは気絶しているようだ。そのせいで魔法が切れたのかネズミ顔の男は隆起した地面に足を取られそこから脱出しようともがいている。そこをエルザが逃すわけもなく剣の一振りで相手を切り倒してしまった。

 

「さすがだなエルザ、二人同時に倒しちまうなんて」

 

「グレイこそ無事だったかあとはエリゴールだけだ。早くナツの援護に向かうぞ」

 

「あいつ一人じゃ荷が重そうな敵だからな。あいつには一発きめてやらねえと気が済まねえ」

 

 俺たちはナツとエリゴールが戦っている場所に向かった。

 

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