この世すべてに愛を   作:紫藤 霞

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 ランベリー城にたどり着く少し前。

 敵情視察と相手の情報を集めるべく部隊を分けて情報収集に当たったラムザたちであったが此処で思いもよらぬ事に遭遇する。

 

 なんと、ランベリー城にはすでに兵は無く廃城となっている、と言う情報なのであった

 

「私とエバンズの2人で行ってきたけど見張りの兵1人としていなかったぞ」

「ついでに、人の気配と言うか人の住んでいる様子は伺えなかった」

 

 先行して敵情視察をしてきた2人の情報

 そして自分達で手に入れた情報を元に困り顔になるラムザ。

 攻城戦、と言う事を想定していただけに肩透かしを受ける事になった。

 だが、ランベリー城にエルムドアが居る以上、確実に罠を仕掛けてくる筈である。

 此処で打って出るべきか、もう少し慎重になるべきか悩んでしまっているのであった。

 

「ラムザ、下手に悩むのは時間を無為に使うだけだぞ?」

「そうは言っても」

 

 躊躇いがちにエバンズのほうを向いてから

 

「罠があるのは間違いないとして、其れ含めてどうにかして見せるぐらいの意気込みでいかんで如何するかね」

「シーラさん」

 

 確かに二人の言う通り、此処で立ち止まっていても事態は好転しない。

 だからと言って、無意味に突撃するのは蛮勇となってしまう。

 さらに、中にはエルムドア。

 ルガヴィに返信する相手が居るのだ。

 下手を打って全滅してしまう危険があった。

 だからこそ、躊躇ってしまっているのだが

 

「ラムザよ、取り敢えずは城門まで全員で行ってみるのは如何だろうか?」

「何かあれば全力で逃げ出す準備をしておけば大丈夫かと」

 

 アグリアスとアリスの二人の意見。

 

「私もその意見に賛成よ。ルガヴィが居ると分かっている以上伏兵が居るなら逃げるのもありだと思うわよ?」

 

 クラウディアも同じ意見。

 ただ、どうしても逃げられない理由もある

 

「もし、アルマが居るなら、蛮勇であろうと逃げられないかな」

 

 苦笑いをしながらランベリー城を見るラムザ。

 その事に関しては誰も何もいえない

 そう、言えない筈なのだが

 

「アルマ嬢、アルマ嬢なぁ」

 

 エバンズが頬を掻きながらラムザに対して自分で疑問に思っていることをいう

 

「アルマ嬢、居ないかも知れんぞ?」

「え?」

 

 その返答は予期していなかったラムザ。

 何で居ないのか、と目で聞いてくる

 

「さっきシーラと敵情視察に行ったとき敵の数を知ろうとしたんだが」

 

 此処で一旦言葉を切る。

 躊躇いながらそれでもうむ、と言いながら

 

「俺にはどうしても居るように感じなかったんだよなぁ。逆になんと言うか、ルカヴィに近い怨念の様なものが感じられたが」

 

 そんな事を言い出したのであった。

 それには困惑の色を隠しきれないラムザ。

 アルマの為にここまでやってきたのにそのアルマが居ないとなると話は別である

 

「どうする?突入はやめておくか?」

「確かな事はエルムドアは確実に居る、だけどアルマは居るかどうか分からない、と言う事だな」

 

 一応の補足説明を付け加えるエバンズ。

 エルムドアが居るのは分かるのにアルマが居るのだけは分からないのだ。

 

「エルムドアは居ると此処にアルマが居ると言い、エバンズは居ないと言うか」

「エバンズ、其れは本当?」

 

 ラムザの質問に曖昧に答えるエバンズ。

 居る、と言われれば居るのかもしれない

 居ない、と言われれば居ないかもしれない

 その教会が曖昧なのである

 だから必ず居ないとはいえないエバンズ

 だが、彼が感じた感覚では居ない可能性のほうが高いと言う事である

 

「今までこの感覚を信じて戦ってきたから居ない、と断言したいところではあるが」

 

 頭をガシガシとかきむしるエバンズ。

 だがそれでも意見自体は帰ることが無く

 

「今回ばかりは保障できん。ルガヴィ以外のモンスターも多く居るみたいだから確実に居ない、とは言えん」

 

 ラムザは其れを聞いてしばし熟慮する。

 このまま突入するかしないか、今までのエバンズの経験則は頼れるものだからもしかしたら本当にいないのかもしれない。

 だが今回は其れが外れて、もしも居たらどうするのか

 必死に悩んだ挙句、ふぅ、とため息をついてから

 

「やっぱり行こう。アルマが居る可能性があるなら少しの可能性でも賭けてみたい」

「よし、ならば今から突撃だな!」

「うん、皆、奮起していこう」

 

 ラムザが決めた事に基本的に口を出さないエバンズはその意見に反対をすることは無い。

 ただ、ラムザに先程の怨念の様なものには注意が必要だと伝える

 其れにも気をつけるといい、ラムザ一行はランベリー城に突入するのであった

 


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