ぼいろ。 作:みっくすじゅーす
そこそこ生きて来た私ではあるが。
こうして目の前でファンタジーを見せられると。
その、反応に困る。
「はい、これが私の必殺技、ずんだアローです。当てた餅をずんだ餅にする事が出来るんですよ。味も保証します。さあどうぞ」
ええと、はい。頂きます。え、今?あ、はい。……ずんだ餅ですね、美味しいです。はい。
最近引っ越してきたばかりのお向かいさん。
たなびく深緑の髪。
東北ずん子。
秋葉原にずんだカフェを出す目的があり、しかし実家の東北から秋葉原に通うのは辛い為こちらに活動拠点を借りる事にしたらしい。
……うん、突っ込みが追い付かない。
「こちらにはいつでもいるわけではないので、ご近所さんへの挨拶周りはきちんとしておきたいなと思いまして。
朝早くからすみません」
いえいえこちらこそわざわざありがとうございます。
という事は普段はやはり東北で?
「ええ、そうなりますね。カフェを作る為の資金繰りなどはやはり向こうでないと厳しいものがありますので。なので、こちらには居ない事が多いんです」
ははあ、なるほど。それで挨拶周りですか。
お若いのに良くわかっていらっしゃる。
近隣の方々は優しい方が多いですし、まあ家の一軒くらいなら。
「あはは、そう言って頂けると嬉しいです。それでは私は次のお家に挨拶をして参りますので、これで失礼しますね」
はい、それでは。良いご近所付き合いをしましょう。
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さて、衝撃の挨拶周りから早二ヶ月。
私の家には今、小学生の女の子がいる。
東北きりたん。
うん、名前からして突っ込みたい所はあるのだが、まあ、あのずん子ちゃんの妹さんである。
「やだあにさまったら、小学生の女の子にツッコむだなんて、ナニをですか?じぽですか?」
どうしよう扱いに困る。
家の同居人はこういう時に限って親友とお出かけ中である。
つまりこの家には小学生女児と大人な私だけ。
防犯ブザー。近隣住民の冷たい視線。詰みである。
「まあ、あにさまがそんな事するような人ではないからずん姉様が私を預けているわけですし。……しないですよね?」
しないよ!
いやけどずん子ちゃん、かなり張り切ってたね。
「そうですね。物産展、しかも東北フェアなんて正に独壇場ですね。きっと今頃ずんだアローが火を吹いてますよ」
無双だね。
しかし、きりたんちゃんはついて行かなくて良かったの?
きりたんぽ的に。
「今回はずん姉様一人の方が動きやすいとタコ姉様とも相談しましたので。蝶のように舞い、蜂のようにアローを刺す姿は会場できっと一番目立つでしょうから」
……つまり、目立ちたくないからついて行かなかったと?
「ヤダナーソンナコトアルワケナイジャナイデスカー」
棒読み。