ぼいろ。 作:みっくすじゅーす
ある日の休日。
以前、コウ先生に頼まれていた町内会主催の夏祭りの手伝い。
準備も終え、無事始まるのを見届けたのち。私は本部テントで体を休めていた。
流石に、疲れた。何か飲み物でもと思い、クーラーボックスに向かおうとし。
「はい、お疲れ様です。よく冷えたビールですよ」
そう言って私に差し出してくれたのはセイカさん。ああ、ありがとうございます。そのまま私は受け取り。カシュ!
……あーっ、やっぱり旨い。
「いい飲みっぷりですねー。もう一本行きます?おつまみも買ってきてますよ」カシュ!
おお、これはありがたい。
テーブルの上に並べられたのは、たこ焼き、お好み焼き、焼きそば。
いずれも茜ちゃんの屋台作である。
関西系のプライドが刺激されたのか、いつものおっとり口調は消えた早口で。
「粉もんはウチが作るよ。ほかの人はいらん。粉もんの屋台はウチだけでええ。あ、葵は文句言わんと馬車馬のよう働いてな」
「!?」
などと言い放ち、結果1人で三種の屋台を出すという荒技にでたのである。
1人(+馬車馬)で三種など無謀なとも思ったが。
……うん、どれも美味しい。カシュ!
「茜ちゃん無双でしたよー。コテと串を持ち替えながらどんどんさばいていく様。葵ちゃんは完全にゾンビ状態でしたけど」
だろうね。いやしかし、本当に美味しい。ビールが進む。
「ええ、私も丁度いいタイミングで仕事上がりだったものですから、ビールが身体中に染み渡ります」カシュ!
カシュ!そういやセイカさん。前に言ってた特異点がどうの、本当に私なんですか?
「ええ、やはり貴方を中心にして組織が動いていますね。一回接触もあったはずです。ええと、たかのつ」
ああセイカさんそれいじょうはいけない。
ええと、まあとにかくそれなら気を付けます。カシュ!
「そうですね、何かあってからでは遅いです。充分に気を付けてください」カシュ!
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いかん、飲み過ぎた。
流石に2人でケースを開けたのはまずかった。
酔いを醒ますためしばし散歩していたのだが、見てはいけない幻覚が見えた。
「お久しぶり、ディレクター。元気そうで」
幻覚では、ない。聞き覚えのある声。
ベージュがかった灰色の長髪。
ソラに響くうたうたい。
IA。
なんで、ここに?
「ディレクターがこの街にいるって聞いたから、来た」
来た……って。IA、キミはそんな簡単に言える立場では。
「そう、ディレクターとは違うね」
……。
「ゆかりは?一緒?」
……ゆかりさんはかき氷を食べ過ぎて腹痛で自宅待機だよ。
「ふー……ん。そう。そんな事するようになったんだ。変わったね。ゆかりも、ディレクターも」
IA、キミは、私を恨んでいるのか?
「ううん、そんな事はないよ。ただ、知りたかっただけ……また、ね」
そう言い残し、IAは去っていく。
後に残されたのは、後悔と懺悔と生温い風だけ。
私は、立ち尽くしていた。