いきなり勇者部滅亡?そんな訳ないんですけどね。
「はぁっ!」
あの異物、バーテックスがなにかを放ったのは見えた。赤い何かも見えた。だがそれが、まさか必死の一撃だとは思わなかった。
それが迎撃されるまでは
そこに立っていたのは赤い人。
最初、私はこのようにイメージが開いた。
次に感じたのは純情の花、情熱の花。
そして私はそのようににイメージを結んだ。
周囲には爆風が広がる。そう、あれは爆撃だったのだ。赤い人が防いでいなければあの炎は私たちに寸分狂わず当たり、爆発が起き、死んでいただろう。
ここでこみ上げるのは、動揺、安堵、感動からの不安、そして僅かな不信。
「余が来たからにはもう安心だぞ。で、どうする、わが奏者候補よ。」
「弱ったわね、もう敵の射程範囲内だなんて。とりあえず、こっちの説明が終わるまでがんばって耐えて。」
「なんという無茶ぶり!そなたが先に説明しないのが悪いのだろう!」
言動からして悪い人ではないかもしれないが、その軽快さは逆に違和感を覚える物だった。何故あの人はこんな非日常な空間で普通に振る舞っていられるのだろうか。
「どこまで説明してたっけ?そう、このスマホの機能を使って神樹様の、勇者になることができるのよ!」
「余は無視か、無視されるのか!なんと言う横暴!余が生前にしたことなど豆のように小さく見えるぞ!」
「お姉ちゃん、だんだん漫才みたいになってるよ...」
樹ちゃんの適切なつっこみにより風先輩は一瞬むぅ、となったが
「いいのよ、とにかく早く説明しないといけないのよ。えっと、勇者になればあの敵と戦うことができる力が手に入るわ!後は、えっと、そうそして、そこで騒いでるあの赤い人は、
「そうだ、余こそがローマ皇帝、ネロ、というか今度はバーテックスが邪魔してくるのか!」
今度は白い爆弾が複数出てきたようだ。それがこちらに向かってくるのだが、その動きが
あまりに異常だった。
なぜなら、それはあまりにも自由にこちらに向かってきたのだ。速さや向きにも多大な変化があった。私にはどこに来るのか予測をする事はできなかった。
しかし赤い人はそれを難なく破壊して見せた。
「改めて紹介しよう。余こそが、余こそがあの偉大な神聖ローマ帝国皇帝、ネロ・クラウディウスだ。クラスは見た通りのセイバーだ!よろしく頼むぞ!それで誰と契約するのだ?」
「そうね。なら...」
「そんなのできるわけないじゃないですか!あんなのと戦うなんて私には無理...」
私は否定した。戦うなんて出来るわけがない。あんな絶対に敵わないアレと戦うなんて。こんな体で?
「友奈、東郷と一緒に逃げて。そしてセイバー、あんたは友奈と東郷を守って。」
「なるほど、いつ狙撃されるかわからんしな。では、余は守りに専念するとしよう。」
「わ、わかりました。」
「樹。あんたも一緒に逃げなさい。」
「駄目だよ!一緒に行くよ。どこまでも。」
樹ちゃんと風先輩は何かの約束をしたのだろうか、しかし私には関係のない話だった。
状況は混乱していた。様々な事が様々な変化を起こしていた。そのような中で次に何が起きるのか分かる術もなく、ただ敵が近づいてることだけは理解していた。
気づいたら風先輩と樹ちゃんはここにはいなかった。きっと敵と戦っているのだろう。
それに対して私は恐怖に駈られて戦うことができなかった。
「大丈夫だよ、東郷さん。私と、セイバーさんがついてる。」
「ありがとう...友奈ちゃん...」
友奈ちゃんは私を励ましてくれる。だけど私は恐怖から逃げられない。
私は何してるのだろう。
後輩が頑張っているのに
先輩が先導しているのに
助っ人が来てくれたのに
世界が壊れてしまうのに
友奈ちゃんが私を元気づけているのに
私はなにもできなかった。
風先輩に応援の言葉をかけることはできなかった。
樹ちゃんに良いアドバイスをしてあげられなかった。
今も赤い人に感謝の言葉をあげられていない。
世界を守るなんて、私にはできっこない。
だけど友奈ちゃんを守っていきたい。
「風先輩!樹ちゃん!」
いきなり友奈ちゃんが叫んだ。風先輩と樹ちゃんに何かがあったのだろうか。そう思い風先輩と樹ちゃんがいる戦場をふと見てみたら、
「こっち見てる...」
私たちを見ていたのだ。こちらをしっかり。アレが持てる全ての感情をもって殺意を向けながら。あるいは無感情で冷静に殲滅する目標を定めているかのようだった。
「くっ、二人ともやられてしまったか。このままだと樹海が傷つけられてしまうし、かと言って余が先陣を切る訳にはいかんしな...」
このままだとアレがさっきの爆撃をしてくる。近づいてくればその頻度と火力は増していってしまう。遠い今なら。
「友奈ちゃん、一緒に逃げよう...」
「嫌だ、友達は見捨てない。」
友奈ちゃんはそこで何かに気づいたかのように携帯のアプリを見て、まさか、友奈ちゃん?
「そうだ。友達を見捨てるようなやつは勇者じゃない!」
「待て!余は...」
爆撃が来た。思案中だったのか赤い人はその攻撃に対応することはできなかった...できなかったが...
「友奈ちゃん!」
友奈ちゃんは勇者に変身し爆弾をやり過ごしてみせたのだ。そしてそのまま友奈ちゃんは敵のいる場所に跳躍してみせた。
その後アレは倒されたが、私は結局なにもできなかった。
解説
バーテックス その2
バーテックスは神性、神殺しのスキルがない限り倒すどころか傷をつけることすらできない。
ただし、特異点・魔眼等はその例外にあたる。これについては次回
とりあえず、書き終えました。
なんか地の文が多すぎな気がしたので減らしました。
ここでこの作品のコンセプトを少し
「この作品はクロスオーバーすることで出来上がった世界を原作とは違う視点で見ることを第一としている」ということです。
おかげでセイバーの活躍がいまいちパッとしません。
ですが、この後に大活躍がある(かもしれないので)ご安心ください。
最後に
誤字脱字、アドバイス等は感想欄に
評価は評価欄にお願いします。
ここまでこのような文を読んでくださってありがとうございます。ここから伏線をたくさん敷いていくのでお楽しみください。