仮面ライダージェイル   作:ホワイト・ラム

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さて、ダァト編ともいえるこの回も終わりです。
今期はダァトの性格などの掘り下げが出来ました。

最近、原作リストに「仮面ライダー」が追加されてうれしい作者です。


Dの憂鬱/日の昇る時

「どうしたの?何かあったの?」

纏衣が酷い汗をかく、健吾を心配する。

 

「なんか、嫌な夢をみた……」

心配する纏衣を納得させるため、健吾は苦し言い訳を言った。

 

「そう?ごはん出来てるから――」

 

「『心配しないで』か?」

 

「お兄ちゃんどうしたの?」

自身の言葉を先読みした、健吾に纏衣は少し不思議そうに話す。

後は「いつも通り」にしたくして、カバンを持って家を出る。

 

「――やっぱり、居ましたね」

 

「へぇ、記憶があるのか」

予想通り、家の壁にもたれかかっていたダァトが健吾の言葉に驚く。

 

「わずかにですが……なんて言うか、ぼんやりと……そう!夢を見て起きた直前みたいな?」

 

「その表現は、ひどく的確だな。

それだけループを繰り返したって事かそれとも――」

一瞬だけ考えて、ダァトがもたれていた壁から体をおこす。

 

「どっちにせよ、始まった以上終わらせる訳にはいかない。

いや、正しい終わりを待つしかないんだ」

 

「正しい終わり?」

 

「ループしてる原因がある筈だ。それを見つける、そしてお前は普通に生活しろ」

 

「普通にって、何度も死んでるんでしょ?」

 

「俺とバイトが守る。といっても完璧じゃない。

だからある程度は自分で注意しな」

そう言って、その場で飛び上がり近所のへいの上に立つ。

 

「危ない時は呼べ。助けてやらない事も無い」

ダァトはその場から飛び去って行った。

 

 

 

「なんだかなぁ……」

健吾はその言葉通り、成るべく気を付け時に助けられながらその日を過ごしていく。

何時もより車道の広い道を選び、細心の注意を払い続ける。

 

「さてと、仕事に戻るかな……」

喫茶店で簡単な食事を終え、健吾が店を出る。

そしてそれを見つめる異形――マグネットプレイズナーがいた。

 

『磁力展開』

右手の5本の指を広げる、赤と青色も指先に磁力が宿り足元の鉄骨が浮き上がる。

現代社会に鉄を使用していない物など稀だ。

そしてマグネットプレイズナーはそれらを自由に動かすことが出来る。

 

『もう一度――死ね』

 

「ヴォウ!!」

鉄骨が落ちる寸前、右手がバイトによってはたかれる!!

 

「よ!まぁだ、こんな事してるのか?」

楊の待機していた工事中のビルの奥からダァトが現れる。

 

『ダァト!!』

 

「まてまてまて、戦う気はゼロだ。

お前もこのループから出たいんだろ?」

 

「このループは()()()()()()()()だろ!?」

自身からからカギを引き抜き、楊がいら立差し気な怒声を発する。

 

「使えそうな、ヤツを見つけた……だが、失敗した。

たったそれだけだ」

何の悪びれもなく、ダァトがそう話す。

 

「こっちはいい迷惑だ!!」

 

「落ち着け。そう言ったろ?

お前も、俺も目的はこの世界から抜け出す事。

そして、ポイントは間違いなくあの男、お前は何度もアイツを殺してループを起こして、ループの崩壊をねらったんだろ?」

 

「そうだ……」

ダァトの言葉を楊が肯定する。

 

「だが!!」

ダァトが、バイトを捕まえメリケンへと変化させ、3つある首の先から光弾を撃つ!!

その先には、やはり健吾が歩いており、その頭上から植木鉢が落ちて来ていた。

ダァトの撃った光弾はその植木鉢を破壊して、健吾の死を回避させた。

 

「分かるか?俺たちが手を出すにしても、奴は死んでる。

そう、世界その物がヤツを殺そうとしている様にな……」

 

「お前だって――」

 

「ああ、実験の為に何度か()()()()()

だが、違うみたいだ。

なら、今度は逆をする。殺さず生かすんだ」

ダァトの言葉に楊が頷いた。

 

「手伝えば、良いのか?」

 

「お前のキーはソレに向いてるだろ?」

 

「分かった『だけど今回」だけだ、もう手伝いはしない』

再びマグネットプレイズナーへと変身した楊はその場から消えていった。

 

 

 

 

 

「あれ――?」

会社の帰り道、突如として健吾をある感覚が襲った。

いや、正確にはその感覚が()()()()()()()と言った方が正しい。

突如分からなくなったのだ、今までうっすらとこの次が分かっていたが、その瞬間だけ何も分からなくなった。

なんだ?なぜなんだ?

 

その時、目の前から無数の鎖が襲い掛かってきた。

そう、全くの予想外に身を縛られながら悲鳴を上げる。

 

「た、助けて!!ダァトさん!!」

 

「ヴォウ!!ヴォオ!!」

絡みつく鎖を、ダァトの連れているバイトが噛み千切った!!

 

「げっほ!げほ、げほ……」

肺が酸素を求め、激しくせき込んだ。

気が付くとダァトが立っていた。

 

「大丈夫か?」

 

「はぁ……はぁ……あ、ありがとうござい……ます――」

 

「気にするな。俺の用事も此処まで見たいだからな……」

後ろを振り返るダァト。

それにつられ、健吾もそっちに目をやる。

 

「纏衣?なんで、ここに――?」

そこに立っていたのは、健吾の妹の纏衣。

呆然とした様子で立っている。

 

「ついにたどり着いたんだね?」

纏衣の近くに楊が立つ。

役者はすべてそろった――

 

「なんで?なんで()()()今みたいに助けてくれなかったの!?」

纏衣の悲鳴のような声が、響く。

 

「その場にいなかった。無理に決まってるだろ?」

 

「あの時?前の廃工場の事か?」

 

「違う」

健吾の言葉をダァトが否定する。

 

「笹山 健吾。おまえは――」

 

「いやぁ!!!言わないで!!!」

楊の言葉を、纏衣が否定する。

しかし楊は止まらない、残酷すぎる真実を告げる。

 

「お前は、もう死んでる。

バイク事故、いや正確にはプレイズナーという怪物に操られた男によって殺されてる」

言葉を継いだダァトが話す。

 

「うそだ……だって……」

 

「リフレクトプレイズナー。他者の悪意のベクトルを操るプレイズナーだ。

お前は、そいつによって悪意を操られた男によって殺されてる」

 

「そんな……だって今、俺は!!」

 

「ここは、現実の世界じゃない。

お前の妹、ドリームプレイズナーによってつくられた、虚構世界だ」

 

「虚構?せかい?」

 

「うわぁああ『ああああ」あああああああ!!!』

呆然とする、健吾を他所に、纏衣の姿が変わる。

赤黒い豪奢なドレスを纏った様な、魔女へ。

口の顔白い顔は、目元から黒い涙のような物が絶えず流れ続けている。

そして彼女を中心に、空間に穴が開き、周囲の物をゆっくりと吸い込み始めた。

 

『おにーちゃんは死んでない!!死んだのは夢だ!!

悪い夢は覚めろぉ!!』

ドリームプレイズナーが腕を振るううと、近くの電柱が引き抜けダァトに飛んでいく。

 

「なら、なぜお前の兄は死んだ!?

この世界の支配者たるお前なら、兄を保護することが出来たはず!!

だが、殺そうとした!!

本当は、もう兄が死んだことを理解しているのだろ!?」

 

『違うううう違う、違う!!違う!!

やり直すんだ!!死んでない世界を!!』

それはあまりに不可能な願い。何度夢見ても、なんどやり直しても『夢』では『現実』を塗り替える事などできない。

朝が来て夢は消えるモノ――永遠に『夢』を見ることは出来ない。

 

『お前は邪魔だぁあああああ!!』

バキバキッ!!

 

近くの家の屋根が外れ、ギロチンの様にダァトの首を狙う。

 

「!?――しま」

地面が割れ、植物の根がダァトの足に絡みつく。

屋根がダァトに当たる瞬間――!!

 

「危ない!ぐはぁ!?」

健吾が盾に成って、ダァトを守る。

 

『おにいちゃ……そんな……』

 

「一回くらい、守らせてくださいよ……」

健吾がダァトに笑いかける。

 

「お前……」

 

「お願いが有るんです……アイツ、纏衣を助けてください……

アイツ、幸せになる筈なんです……

本当に俺が死んでるなら、死人である俺がアイツを抑えてちゃいけない……」

 

「奴を倒すことの意味わかってるのか?」

ドリームプレイズナーを倒すこと。

それは夢の世界の終焉を意味し、夢の中でのみ生きている健吾は――

 

「かまいません……やってください!!」

 

『うわぁああ!!やり直し!!やりなおしぃいいい!!』

周囲の景色が崩れ、ダァトの健吾を抑えつける!!

だが、その瓦礫がわずかに揺れた!!

楊――マグネットプレイズナーの能力だ!!

 

『チャンスは未だ!!

ドリームは世界を再構築する時無力になる!!

夢の支配者の弱点はそこだ!!』

 

「分かっている!!」

瓦礫をけ破り、ハウンダーへと変身したダァトが高く飛び上がる。

 

カチャン、カチャン、カチャン……

 

ベルトについた、バイトを素早く3回バックルに押し込む。

3つあるバイトの口からカギ先がでてバックルにある3つの穴を同時に回した。

 

『ファイナル・バイト!!』

 

「うおぉおおおお!!」

地面を蹴った後、空中でしゃがむ様に丸まる。

そして、高速で縦回転を繰り出し、全身の青いエネルギーが満ちる!!

その姿は、まるで青い太陽――夢の終わりを告げる朝日の様で――

 

「ハンターズ!!ファング!!!」

猟犬の牙を思わせるエフェクトと共に、両足の踵堕としを放つ!!

 

『いやぁああああっぁああああ!!!』

ハウンダーの蹴りで、ドリームプレイズナーが悲鳴を上げて、爆発四散した。

この夢の世界の悲しき支配者が遂に倒れたのだ。

それを示す様に、空が地面が少しづつ灰色に染まり消えていった。

 

「……おわったか」

バイトをベルトから外し、ダァトが再び元の姿へと戻る。

この世界を構築するプレイズナーは倒した。

無限に思えたループ世界も遂に終わるだろう。

そう、終わりだ。纏衣の健吾の死を認められない心、その心が唯一逃げ込めるハズの場所だった夢の世界は崩れた。

彼女は現実に向かい生きていかなければならない。

 

 

 

「ありがとう、ダァトさん……

やっと、やっと、本当に終わるんですね……」

ダァトの前、健吾が立ち尽くす。

 

「ああ、お前も終わりだ……」

その言葉通り、少しづつ健吾の体が消えていく。

健吾という人間が、ようやく正しく終われる。

 

「最後に、最後に伝言をお願いできますか?」

 

「かまわない、好きにしろ」

そう言って、健吾は微笑み最後の言葉を残し消えていった。

白い光の中に、ダァトが消えていった。

 

 

 

 

 

「ん……まぶしい……」

カーテンの隙間から、漏れた光が纏衣の顔に当たる。

何の反応も無かった彼女の顔が、わずかに歪んだ。

 

暗い部屋の中、もう何日も何もしたくない気持ちが続いていた。

もう誰居ない家、誰も居ない部屋。

 

僅かな空腹を感じて、毛布の隙間から這い出て立ち上がる。

その時――

 

ブゥン!ブルルン!!

 

「え……!?」

家の中の、ガレージから聞こえるバイクの音。

そう、この音は兄健吾の愛用しているバイクの音、そして、事故に遭いもう二度と聞けないハズの音だった。

 

「なんで――」

一瞬兄が戻ってきた。なんて楽観的な思想がしたがそんなことはあり得ないと頭を振って否定する。

最も現実的なのは、兄と同じバイクを持つ泥棒という可能性だ。

 

纏衣が、バイクの音に呼びつけられる様に部屋を出る。

何が起きているのか、分からないが確かめなければならないという気持ちだけは先行していた。

 

居てもたっても居られず、部屋を出る。

 

「うッ――」

夕焼けが目に染みたが、そんなのは後回しだ。

ずっと寝ていた影響で体が、だるく重いがそれも今は忘れようとする。

もたつく体にムチ打って、音の聞こえるガレージまで走る。

 

「お兄ちゃ――」

 

「違う。俺は違う」

ガレージに確かに人はいた。

兄の乗っていたのと、非常によく似たバイクにまたがる男が一人、エンジンを吹かしていた。

黒いヘルメットのせいか、顔は分からない。

だが、その声に聞き覚えは全くなかった。

 

「あなたは――」

 

「健吾からの伝言を預かっている。

良く聞け?言い直しはゼロにしたい。

『幸せになってくれ。俺の分も、俺が成る筈だった分の幸せも、お前が持ていってくれ』だとさ。

それが、アイツの『最期』の言葉だ」

そういって、その男はバイクを発進させようとする。

 

「まって!待ってください。

あなた、お兄ちゃんの知り合いなんですよね?

お願いです、助けて!私、私ひとりじゃもう――」

 

「断る。それはお前の問題だ。

俺に関係はゼロだ。

じゃあな」

そして、その男は振り返る事もなく、バイクを発進さえせた。

 

 

 

「…………」

纏衣の最後の縋りつくような顔がよぎる。

助けて。かつて何度そう、懇願されただろう?

そして、それを何度断っただろう。

 

『おやおや、逃げても良いんですよ?

ご自由にどうぞ。

恐怖に負け、私に負け、そして無様に逃げても構いませんよ?

さぁ、ご自由に。私が気まぐれで貴方を狩らない限り、貴方は生きていけます。

良かったですねぇ』

思い出したく無い記憶が、脳裏にこびりついて離れない。

嫌な相手の、にやけた笑みが消えてなくならない。

 

ガン――!

 

苛立たし気に、近くの看板を蹴る。

 

「俺は、ハウンダー……刈り取る者……

俺は、逃げ出した看守……誰も守れはしない……

今はただ、力を手にして――ヤツの首に食らいつく!!

そう、それだけでいいんだ……」

 

ダァトの言葉を聞くものはいなかった。

懐から取り出したドリームキーを投げると、空中でバイトがそれをかみ砕き破壊した。

懐に戻ったバイトが小さく、そして悲しそうに鳴いた。




さてさて、次回より再び玲久と岩さんに焦点が。
そして新キャラ、出流の目的が見えるかな?

作中でも言っている様に、リフレクトプレイズナーの中で、被害者の名前として笹山 健吾は既出です。

あれ?って思った人もいるハズ。
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