さてさて、本当に活躍するのかな?
「ふぅうううう!!」
「むぅうううん!!」
取り調べ室の中、岩さんの玲久がお互いの顔に青筋を立てて、机を挟んで向かい合っている。
「あああああ!!」
「なぁあああ!!」
お互いが右腕を出し、その手を合わせ力を掛ける。
「らぁあああああ!!」
ドォン!!
岩さんの気合の声と共に、玲久の手の甲が机にくっつく。
俗に言う腕相撲の勝負である。
「ははは!勝ったぞ、指名手配犯!!」
「あーあー、警察官が一般市民に手を出すとか、どーでしょーねー?」
勝ち誇る岩さんを、玲久が覚めた目で見る。
「勝負の世界に、そんなの関係ねぇよ!!」
「あー、暇だなー」
尚も勝ち誇る岩さんに愛想をつかしたのか、玲久が椅子から立ち上がる。
「腹減ったー、飯まだかー?」
コンコンとマジックミラーとなっている部屋の監視窓を叩く。
非常にのんびりと二人が部屋で過ごしている。
『もくく~ライダーは何処だぁ?』
スモークプレイズナーが空を浮かびつつライダーを探す。
そう、自身の創造者に与えられた役目はライダーの妥当。
倒すのだ、自身のすべての力を以てして!!
しかし――
『ライダーって、どんな格好してるもく~?』
残念な事に、スモークはライダーの姿を知らなかった!!
とりあえず、騒ぎを起こしておびき出す作戦をとる!!
「ん?なんか煙くないか?」
「喫煙所が近いからだろ?」
*スモークプレイズナー攻撃中。
サラリーマン二人が煙草を手にして喫煙所から出てくる。
『効かないもく~』
彼の能力は残念なことに、高濃度の煙草も煙を吐きかける事なのだが、喫煙者にはあまり興味はなかった。
コレが、煙草を気にするご婦人なら多分に効果はあるのだろうが――
『効かないもく~!!』
「見つけたぞ!!お前がプレイズナーか!!」
『もく!?』
喫煙所の外、スモークプレイズナーの前に出流がベルトを腰に巻いて登場した。
「アイツら……のんきすぎだろ?」
「何かの策では?」
隣の部屋では、上北と東右の二人がコーヒーを飲みながら監視していた。
机の上には、ジェイルドライバーが置かれ回収された2本のキーは出流が持って行った。
キーが無ければ問題ない。部屋から出れなければ問題ないと高をくくって再度、腕相撲を始めた二人を眺め始める。
「ふっ!!」
「ああ!!」
お互いが机を抱く様に右手に力を籠めるが――
『む こ う は お そ ら く ふ た り』
『い ま は ち ゃ ん す を ま て』
二人が、机の下に伸ばした手に指で文字を書いてコミュニケーションをとる。
声に出せばすぐにわかるが、腕相撲をしていると思わせ、こうしてうまく情報交換をしてるのだ。
『あ の と び ら な ら あ け れ る か も し れ な い』
『う ま く こ ち ら に お び き だ せ』
掌に書く文字で、お互いの情報を交換していく。
ゆっくりと二人の中で、作戦が練られていく。
『出流、無理はするなよ』
眼鏡屋の大型トラックに、偽装したトレーラーの中で芽栗警視総監がインカムを手にする。
「分かってるよ、父さん」
『もくもく?』
一人で話してる様に見えたのか、スモークが不思議そうな顔をするが――
「プレイズナー、罪の意識を忘れた心の弱いザコが成る社会のゴミだよな?
なーら、余裕!!」
出流は自信ありがちに、ポケットから虫眼鏡を取り出した。
『虫眼鏡?』
「さぁーてと、いきますかぁ!!」
『モードチェンジ!!シーカー!!』
出流の持つ虫眼鏡の根元にあるスイッチを押すと、虫眼鏡のレンズに一瞬だけ目のような模様が浮かんだ。
そしてそのままC字型の部分に虫眼鏡の丸い部分を押し込んだ。
『オープンアーイズ!!ルッキントゥ・ザ・トゥルース!!』
「変身!!」
出流がバックルに押し込んだ、虫眼鏡を弧を描く様に動かす。
イメージとしては、レバーを引くような感覚だ。
その時、出流の姿が緑のアーマーに包まれる。
緑に茶色のステレオタイプな探偵の服をイメージしてるのか、白いボディに所々濃い緑のパーツが光る。
青い複眼にの下にひげを思わせる黒の色合いが入る。
さして最後に、虫眼鏡の奥の機構がスライドして開いた。
『なんだぁ?あなたは?』
「俺はシーカー!!仮面ライダー、シーカー!!
さぁて、逮捕の覚悟は出来てる?」
掛け声と共にシーカーが飛んだ!!
「行くよ?さっそくスラッシュの性能テストだ」
シーカーがベルトの虫眼鏡、『シーカーレンズ』を引き抜く。
そして、持ち手の部分を持ってレンズを回していく。
『モードチェンジ!!スラッシュ!!』
ベルトから音声が鳴り、シーカーレンズの中で細い光が数回走った。
そしてその光の軌跡の残った部分が、剣の形を作る。
一瞬だけその剣が、回ってレンズの端に消えていくと、シーカーレンズの上部に剣の刀身が出現する。
「やっぱ、コレだよ!!食らえ!!!」
刀身の出現したシーカーレンズを振って、スモークに切りかかる!!
「おおおおらぁああああ!!!!」
『も、もくぅうううう!?』
スモークが真っ二つに切られ、シーカーが肩に剣を構える。
「ふっ、こんなモン――なに!?」
『なにか、したもく?』
シーカーの目の前、スモークプレイズナーは平然と体をくっつけて再生する。
「ふざけやがって!!」
フォン!!フォン、フォン!!
2度3度と、シーカーレンズを振るうが当然相手は気体の体を持つプレイズナー!!
効果は全くなかった!!
「くっそ!!なら――」
シーカーが腰左側にマウントされる、四角い道具を持ち出す。
それは金属制のメジャーを意識して作られた、『シーカーメジャー』。
剣の様に伸ばして攻撃は勿論、最長で30メートル以上伸びる金属ワイヤーの様にも使える!!
「終わりだ!!」
シーカーメジャーを伸ばすが――
ボフン……
『何がしたいもく?』
こちらも所詮物理攻撃、同じく気体の体をしているスモークには待ったく効果が無い!!
「なんてことだ……武器が聞かない……」
『もくく~、全く持って無様もくね~
今度はコッチから行くもく~!!』
スモークプレイズナーが走り、シーカーの周りにまとわりつく!!
視界はすぐに真っ白な煙に覆われる!!
「くそ!?目かくしなんて、卑怯だぞ!!」
『もっくっく!!勝負に卑怯も何もないもくよ!!
食らえもく!!』
前の見えないシーカーに向かって、スモークプレイズナーが拳を振るう!!
ボワン……ボワン!!
「ひ、卑怯な!!」
『も、もく!?』
尚ももがくシーカー、果敢にスモークも責めるが――
『き、気体の体ではダメージが無いもく!?』
何度も言うように、スモークの体は気体!!
気体がぶつかってもシーカーには効果が無かった!!
生身の人間なら、煙たさでダメージを受けるだろうが、シーカーのマスクは対ガス性能はばっちり完備!!
攻撃を完全に無効化している!!
「くそぉおおお!!」
『くそうもくぅ!!』
どちらも相手にダメージを与えることが出来ない!!
泥仕合!!完全な泥仕合と化した!!
そんな二人の姿を見るモノが一人――
少し離れたカフェのオープンテラス。
男が目を細め、紅茶を楽しむ。
『いけませんね、実に――実にいけない。
ジェネラルはあんなものをお望みではない』
ピチィ!!
手の持ったティーカップが壊れ、悠然と男が歩き出す。
役にたたない存在を始末する為に――
「おらぁ!!」
もう何度目に成るか分からない、シーカーの攻撃。
空を切るだけだが、今回は《《手ごたえがあった》》。
『どうも、お二人さん。こんにちは』
煙の中、シーカーが触れたのは一人の男の掌だと気が付く。
「!? あんた、一体誰だ?危険だ、今すぐここから逃げろ!!」
『逃げろ?それは異なることを言いますね。せっかく面白く成って来たんですから。
ああ、申し遅れました。私の名はクレル。
以後お見知りおきを――』
そう言って、ひどく不快な笑みをその男は浮かべた。
「があぁあああ!!」
シーカーがクレルの蹴りを受け、地面を転がる。
それを追いつめる様にゆっくりクレルが歩いていく。
『おやおや、弱いですね。本当に弱い』
油断して、視線を離した瞬間、シーカーがベルトのシーカーレンズを引き抜き――
『モードチェンジ!!スラッシュ!!』
刀剣を出現させて、クレルの足元を狙う!!
が――
『児戯ですねぇ』
キィン!!
クレルの靴底が、剣の切っ先を踏んで抑えつけた。
「なに!?」
『はい。無様無様』
反対の足で、クレルがシーカーを蹴飛ばす。
そのままよろめいたシーカーは街頭に背中をぶつける。
「くっそ!!なんだよ!!俺はただの一般人じゃないんだぞ!!
俺は――」
『道化ですか?』
瞬時に目の前に、クレルが出現してシーカーの首に手を掛ける。
「かっ――はっ……」
呼吸が阻害され、マスクの下で出流が目を向く。
「この――」
シーカーが、右手を挙げた瞬間、クレルが腕から蜘蛛の糸の様な物を出し、街灯にシーカーをつなぎ留める。
『出流!!危険だ!!脱出しろ!!』
芽栗警視総監がインカムに向かって指示を飛ばすが、当然縛られていればそんな事は出来ない。
「抜けない!!抜けないよ!!逃げたい!!けど、けどぉ!!」
無様に泣き叫び、なんども腕を引っ張る。
『まるで紐で吊るされたおもちゃですね』
くっくっくとクレルが笑う。
『クレル様、そいつを倒すのは俺の仕事でして……』
『スモーク、貴方には戦闘能力は無いでしょ?
なので、私が別の仕事を差し上げます。
けれど――すこーしばかり、強化が必要ですねぇ』
クレルがスモークプレイズナーの体に手を突っ込む!!
『なにを――うぐ!?』
クレルの手の先、看守の持つ能力によってキーが出現する。
『より強く成りなさい』
クレルが手首を斬ると、黒い血が流れだしキーを染めた。
『うぁああ!!ぐるぁああああ!!!』
その瞬間、スモークプレイズナーの体色が黒く変化する!!
『行きなさい、悲劇を生むのです』
『ぐるぅぁあああああ!!!』
スモークプレイズナーが、飛び上がった。
『お待たせしましたぁ!手と足、どっちから順番に切り刻んで欲しいですかぁ?』
蝙蝠の羽の様な物を出しながら、クレルがゆっくりシーカーに近づいていく。
「ひぃ、あぁああああ!!来るな!!くるなぁ!!」
『良いものを見せてあげましょうねぇ』
クレルがシーカーの首をつかみ、スモークの飛んでいった方を向かせる。
そこには黒い煙が、多数上がっていた。
「な、なんだこれは!?うわぁああ!!」
ガシャーン!!
「前が、見えない!?」
ビビーッ!!
スモークプレイズナーが、車や乗り物の運転手の顔に絡みつく。
高濃度の煙に一瞬だけひるむ運転手たち、その一瞬のミスは事故を起こすには十分な隙で――
シーカーのそば、クレルが楽しそうに語りだす。
『聞こえますか?なんの不幸も無いモノたちの悲鳴が――
ついさっきまで幸せに囲まれた存在が、潰え消えていくのが――
悲劇は悲しみを生み、悲しみは心の幸福を殺します。
そして、悲しみに染まった心は傷付き、自らの不幸を他者に分け与えます。
苦しみ、悲しみ、不幸、涙、悲鳴――良いですね。実に良い!!
それらは、皆プレイズナーを生み出す糧になります。
悲しみが悲しみを呼びそれは無限に連鎖するのです!!
さぁ!!始まります!!憎しみの連鎖が!!悪意のパンデミックが!!』
シーカーの視線の先、スモークが煙の体を赤ん坊を抱えた主婦に巻き付けようとしていた。
「させる訳にはいかないなぁ。
そうだろ?レイク?」
「ああ、言えてるな。ダァト」
シュバッ!!
『がぁああああ!?』
突如として、スモークプレイズナーが霧散する。
一瞬だけ、スモークの体に穴が開き、後ろに黒い戦士が立っていた。
体にある、オオカミの様な意匠。そして手には今しがた奪った鍵が一本。
「助けてやったんだ。ここからはお前がやれ」
「ふっ、良いね。丁度ストレスがたまってたんだよ!!」
ダァトに促され、玲久がバックルとキーを構える。
『おやおやぁ、宿題はできたんですか?』
クレルの目が嬉しそうに細まった。
初戦でここまでやられるライダーも珍しいですね。
ほら、販促とか無いから……
相手が悪かったんです。そう、ライダーとして目覚めたレンゲルの相手がジョーカーだった的な運の悪さです。