仮面ライダージェイル   作:ホワイト・ラム

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さて、シーカー編。
3話に続きましたが、今回で一区切りです。


正義を望む者/厄災の使途

町の商店街の少し開けた場所、カフェが併設される小洒落た通りで数人の男たちが向かい合う。

その様子をそこからさらに離れた場所にある、偽装されたトレーラーの中で警視総監の芽栗が見ながら驚きの声を上げる。

 

「アイツは……!

なぜだ?取調室に監禁しておいたはず……」

その時、一瞬遅れて芽栗の携帯に部下の上北から通話が入る。

 

「なんだ?お前に監視を任せた――」

 

『芽栗警視総監!申し訳ありません。

指名手配犯の青年の逃走を許しました!!』

その言葉に頭がカッと熱くなる。

 

「馬鹿者!!!自らの仕事すらできんのか!!」

 

『な、なぞの男が急にやって来て、壁を壊したんですぅ!!

さ、幸い小早川は壁を壊した勢いの破片に当たり、気絶していましたが、バックルとキーを奪い返されました』

上司に怒られ、理不尽な理由で失敗をして今にも泣きだしそうな声で上北が話す。

 

「なぞの男?」

芽栗がトレーラー内のディスプレイに写った、黒服の男に目を向ける。

例のジェイルの変身者、玲久と名乗る青年と並び立っている。

 

計画はこの時点で大きく歪んでいる。

息子の出流にライダーの力を与え、プレイズナーを倒させ自身の持つ警察の力と、息子の持つ一般市民の両方の部分を利用し、特例として自由度の高い対プレイズナー部署をつくる予定だが、このままではその存続も怪しい。

 

「くっ、皆なぜ私の思い通りに成らない!!」

手に持っていた携帯を投げすて、忌々し気に吐き捨てた。

 

 

 

 

 

『もぉ~く、すもぉ~く……』

黒い姿になった、スモークプレイズナーが空気中で薄れていく。

気体の体、確かのそれは物理を無効化できるだろうが、ダァトのもと看守としての力には敵わなかったのか、あっさりと気体の体からキーを引き抜かれてしまった。

 

「ほぉ、スモーク……面白いな、使えそうだ。

貰っておいてやろう」

にやりとダァトが笑うと、ポケットにキーをしまい込んだ。

 

『か、かえすもく……』

 

「バイト……やれ」

 

『ヴォうん!!ヴォん!!』

 

『もぉおおおおお……!!』

空気中でバイトに散らされ、スモークプレイズナーは完全に消滅してしまった。

 

 

 

「さぁ、レイク。ここまで助けてやったんだ。

これ以上俺の手伝う事はゼロだろぅ?」

 

「ああ、わりぃな、助かった」

ダァトと玲久がクレルに目を向けながら話す。

 

『んっふっふふ。良いですね、友情、努力、助け合い。

人の持つ情という概念。私それが大好きなんですよね。

我々、看守の仲間にも関わらず、それを手にしたダァト……

いいですねぇ!同じジェネラルから生まれた者同士、私たちは兄弟の様な物。

どうです?また、『監獄』に戻る気は?』

 

「断る!俺もバイトもあそこにはもう戻らない」

ダァトの拒絶の言葉、しかしクレルの顔に驚きの感情は無かった。

最初から断られる事を予想していたのだろう。

 

『そうです――か!

なら、ここで二人ともお別れという事で』

歪んだ投球フォームのような姿を取り、右手を地面に付くのではと思うほど、クレルが手を垂らす。

そして、何かを投げるモーションをする。

その途端、玲久とダァトの視界を覆い隠すような無数の黒い物体が飛ぶ。

それは墨の様に流動して、蝙蝠の形を成す。

 

「変身!!」

玲久が素早くバックルを腰に巻き付け、キーを押し込んだ。

 

『クライムキー!!コード・チェンジ!!

ブレイク・ア・ターゲット!!ゲット・ア・フリーダム!!』

 

「変身……」

ダァトまでもが、バックルを装備して変形したバイトをそこに押し込む。

 

『エマージェンシー!!エマージェンシー!!エマ!!エマ!!エマ!!エマ!!エマージェンシー!!

GO!!ブレイキングファング!!』

 

1人は囚人をイメージさせる白黒の戦士、もう1人は看視者と猟犬をイメージさせる紫の戦士。

仮面ライダージェイル、並びにハウンダーが並び立った!!

 

「はぁ!!」

 

「ふっ!!」

視界を覆う無数の蝙蝠をジェイルは拳で、ハウンダーは蹴りで撃ち落としていく。

二人のコンビによって、無数の蝙蝠たちが次々落とされていく。

 

『お見事ですね』

パチパチと手を叩き、クレルが絶賛する。

だが――

 

『これ、何かわかりますか?』

ニヤリと笑みを浮かべたクレル。

自らの体の後ろに隠していた少年を取り出す。

 

「た、助けて!!」

何処か遊びに行った帰りなのか、泥だらけの服で足元には自転車とサッカーボールが転がっている。

 

「!? お前、やめろ!!」

 

「胸糞の悪い奴め……!」

 

『ありがとうございます。最高の言葉ですねぇ!』

酷く歪んだ笑みを浮かべ、クレルが喉を鳴らして笑う。

 

『おやおや、坊やはサッカーが好きなんですか?

そのユニフォーム、似合ってますよ?』

クレルの言葉に怯えながら、コクコクと必死になって首を縦に振る。

 

『そうですかぁなら――』

クレルの目が一瞬蛇の様に無機質な物へと変わった。

そして――

 

()()()()()()()()

 

ザッシュ!!

 

クレルの手が少年の足の前で、振るわれる。

瞬時に大量の血が足首から流れ出し――

 

「い、ぎゃぁああああああああ!!!」

一瞬のタイムラグを挟んで少年の悲鳴が響き渡った!!

 

『ああ、可愛そうに。もう、サッカーは出来ませんね。

それだけじゃない。まともに歩く事も、立つ事すらできませんよ?

あなたはもう、地面を這いずって生きるしかないんですよ。まるでムカデの様にね?』

 

「ぎゃぁああああ!!!痛い痛い痛い痛い!!

ごめんなさい!!謝るから!!ボクが悪かったから!!」

足から血、目からは涙を流して少年が慟哭する。

 

『良い絶望です。あなたなら良いプレイズナーに成れますよ?』

クレルが少年の胸に、キーを差し込む!!

そのカギは少年の幼気な心を容赦なく蝕む!!

足を奪われた絶望は、歩く事の出来る他者への嫉妬へと変わる!!

 

『エンビィ!!うらやま、恨めし、嫉妬マシマシ!!奪い取れ!!

エヴォリュート!!ランページ!!』

 

『ほう、いきなりエヴォリュートしましたか』

クレルの目の前で、少年の姿が変わっていく。

人間型の体から、ムカデのような長い体へ。

その身体は車のタイヤが連なっている様に見えた。

タイヤの側面からは、人間の手がそれぞれ伸び、直線で連結されるタイヤの円と円同士の数珠繋ぎは、ムカデをタイヤで表現したような姿だった。

 

『恨めしぃ!!歩ける奴らが!!みんな踏みつぶしてやる!!』

少年の変化したプレイズナー、ランページプレイズナーがタイヤの体を軋ませ走らせる!!

 

ガァン!!

 

その特攻は、近くにあった車をその巨体で押しつぶすことから始まった!!

さっきのスモークの騒ぎで、周囲には大量の逃げ遅れの車の山。

それは当然ランページプレイズナーのターゲットと成り得て――

 

「ダァト!!」

 

「ああ、俺なら追える。

そいつを殴る役目は、お前に任せる」

ダァトが停めてあったバイクに飛び乗り、走っていくランページプレイズナーを追いかける。

 

「なんで、こんなことをした……あの子供は無関係だろ!!」

 

『くくく、なぜですって?カンタンですよ。

私好きなんです。人が絶望に染まり、やさしさや善意を投げすてた真の姿が――

アレこそが、人の本性。偽りの笑顔を捨てた先にある真の姿』

 

「お前とは、分かり合えないよな!!」

ジェイルが、ジェイルナックルを両手に装備する。

最低のゲスの顔面に一撃入れるべく走り出す!!

 

『勝てる気ですかね?――――()()

クレルの姿が変化する。

細身の体は、細くも筋肉のある姿へ。

蛇のような、無機質な目はそのままに、後頭部は蛇の尾を頭に乗せたような長い一本髪が現れる。

四肢にまとわりつくのは蜘蛛の手足をイメージさせる黒と黄色のライン。

それを下地に、同じく蜘蛛の体の模様の様な物が上に形成される。

そして両肩には蝙蝠の羽。ニヤリと開いた口には牙が数本覗いていた。

蛇に蜘蛛に蝙蝠。多くの人間が生理的嫌悪を現すであろう生物達の融合がクレルの今の姿だった。

 

「この、化けも――の!?」

殴りかかった瞬間、クレルの姿が消える。

それと同時に、ジェイルの後ろに瞬間移動したクレルの手刀がジェイルの背に当たる。

 

「早い!!」

 

『いいえ、貴方が遅いんですよ』

酷く不快な声で、クレルが笑って見せた。

 

 

 

 

 

「あ、ああ……」

電柱に張り付けにされた、シーカーこと出流は目の前の現状の声を漏らすばかりだった。

 

『出流、今のウチだ。脱出するんだ』

シーカーの中に内蔵された、スピーカーから父の脱出の指示が聞こえてくる。

しかし、出流の腰はすっかり抜けて立つ事すら困難。

 

『父さん……これが、戦いなんだね……』

振るえた声に、芽栗が息子をひどく心配する。

ソレもそうだ。

シーカーのカメラを通して、様子を見ていたがこれはひどいモノだった。

最初は気体の触れる事の出来ない相手、護身術や体術はある程度納めている出流だが、こんな相手はそれらの技術の埒外だろう。

息もつかせぬタイミングでさらなる敵の襲来。

今度は、競技などの法を持たぬ冷酷な殺意とこちらをなぶり殺しにして遊ぶ残酷な愉悦。

明確に命を狙われる体験など、したことなどがある訳ない。

最後に来たのは、人間が怪物へと変わる瞬間の目撃。

それら一連の事件で、出流の心は完全に折れた。

 

芽栗はそう思っていた。

 

が――

 

「俺が思ってたのと、ずいぶん違うよ。

何もかもが上手くいかないよ……可哀そうな犯人もいた。

本気で泣き叫ぶ悲しみがあった。

許せない、『悪』があった!!

けど、そいつらを倒そうとする人がいる!!

俺もその人たちの並ぶ、力がある筈だ!!

うあぁあああああああああああああ!!!」

 

ブチッ、ブチチ!!

 

クレルの糸が、シーカーの腕力の依って引きちぎれる!!

出流が、シーカーメジャーを腰から外して、クレルに振るう!!

 

シャン!!

 

『何ですかあなたは?邪魔ですよ?』

シーカーメジャーのソードパーツの依って、クレルの腕にわずかに血が垂れる。

他のプレイズナーの様に体が変化したという点は同じらしい。

 

「俺はシーカー!!仮面ライダーシーカー!!

悪意の闇を引き裂き、真実を照らす者!!」

出流の拳が、クレルの鳩尾に叩き込まれた!!

 

『ごっ!?この、力は――』

何かを判断した、クレルが一歩下がる。

胸に手を当て、予想外の一撃の驚きの声を上げる。

 

時を同じくして――

 

ドゴン!!

 

地面が衝撃によってわずかに揺れる。

どうやらダァトが決着をつけた様だった。

 

『……下らない。

詰まらないですね。いいでしょう、今回は此処までです。

色々やりたい事もありますしね』

クレルが両肩の羽を広げた瞬間、全方位に再び蝙蝠が広がる。

 

「ウッ!」

 

「くっ!」

ジェイル、シーカー両名が顔をとっさにかばい、次に目を開けた瞬間クレルはそこにいなかった。

 

「逃げたか……」

玲久が変身を解く。

それと同時に、ボロボロになったパトカーがやってくる。

 

「指名手配犯!!事態は!!」

 

「おそいよ、岩さん……一応は解決」

玲久は悠然と、岩さんの乗って来たパトカーに飛び乗る。

 

「お、お前ら!!」

そんな二人に、出流が声を荒げる。

 

「ん?」

 

「きょ、今日は助けられたが、たまたまだ!!

次回は、次回こそは俺の、シーカーの力を見せてやる!!」

出流の言葉を聞いた岩さんが無言でパトカーを走らせた。

玲久がパトカーの窓を開け体を乗り出す。

 

「やってみな!!それは自由だぜ!!」

玲久を出流が無言で見送った。

 

「ふぅ、正義のヒーローも大変だな」

ダァトとか言ったやつが呼んだのか、救急車がきて少年が連れていかれている。

多くの被害がでた。

それはこの町の傷に成るだろう。

だけど、だけど数人の正義を愛する存在によって守られた命もある。

 

「――――」

出流が何かをつぶやくが、その声は誰にも届くことは無かった。




正義味方って難しいですよね。
出流はそんな風に迷うキャラとして生まれました。
成長に期待ですね。
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