そして、今回からタイトルを修復しました。
少しは分かりやすくなったかな?
ボコ……ボゴゴ……
僅か一寸先も見えない闇の中。
ただひたすらな闇が広がっている。
自身は今、頭を下にしてる気だがもはやそれすらも曖昧だ。
純粋な闇は光だけでなく、時間も、広さも、上下の感覚すら溶かしてしまうのだ。
自らの形すら溶けてしまうであろう闇の中で、クレルが声に耳を傾ける。
ムゥオオオオオオオォ……
地獄の底から響いてくる様な重い声。
それと同時にぼんやりと、ソレの伝えたい事が伝わってくる。
『ええ、そうです。新たなライダーが出現しました』
『―――――――――――――――――――――――――――――――――――――』
『いいえ、私の知る限りあんなキーは存在しません。
あれは、貴方様の生み出したクライムキーとは違う存在です』
『―――――――――――――――――――――――――――――――――――――』
『はい、分かっております。
放っておく気はありません。
しかし、同時に気になる事が……』
『――――――――――――――――――――――――――――――――――――――』
『いずれは、我らを脅かす前に――ええ、勿論ですとも。
そして頂きたい物が……』
数回の会話の後、クレルの意識が途切れた。
キィイイイイイイ……ザバンッ!
ジェネラルの間。
闇の底のジェネラルの封印された巨大な扉がかすかに開き、クレルがそこから這い出して来る。
扉の中はまさに闇の海。
液状化した触れる事すら出来る闇の中からクレルが帰還した。
『…………うぐ、げぁ!ゴッボ!!』
白目を剥いたクレルが、口からビチャビチャと闇を吐き出す。
その闇はすぐに霧散するが、数本のブランクキーが残る。
『ジェネラルからの叱咤ですね』
クライムキーはジェネラルから生まれる。
何の願望の込められていないブランクキーから、クレルを始め数人の幹部クラスによって、悪意を吸収しクライムキーへと変化する。
そして、またジェネラルへと還っていく。
『ふぅ、キーを集め、そしてライダーを刈る……
少し面倒ですねぇ……』
手にした数本をキーを持ってクレルが歩き出す。
計画はすでに進んでいる。
そう、以前からの計画を少し、ほんの少しライダー打倒へと向けるだけで良い。
「さぁさぁ!ドンドン食べてください?貴方はヒーローだ」
「ほぉう?」
芽栗警視総監の用意した高級なマンションの一室にダァトが豪奢な椅子に体を預ける。
テーブルの上には、複数の豪華な料理が所狭しと並び、シェンデリアには明かりがともっている。
「さささ!ゆっくりやってくださいな」
「いきなり呼ばれて何事かと思えば……」
胡散臭そうな顔をして、ダァトが目を細める。
「いやいやいやいや!貴方様はまさに英雄ですよ。
巨大な怪物をたった一人で止めて、さらにはライダーですら有らせられます!
確かに?もう1人ライダーはいますが、あんな指名手配の脱獄囚とは明らかに違いますよね?」
芽栗が露骨なまでにダァトの機嫌を取ろうとする。
「悪いが食事は済ませた。コレだけが用事なら、帰っていいか?」
不機嫌そうに、ダァトが椅子から立ち上がる。
「ああ、待ってください。用事は此処からです」
芽栗がダァトを静止する。
「なんだ」
「あなたのライダーシステムを渡して欲しい。
今の我々のシステムはまだ不完全だ。
前回の出流の戦い方を見て、理解した。
さらなる強化が必要だ。
そして――あなたの持つ情報もすべて吐いてもらいます」
ダァトの態度に、今までのへりくだった態度が消えた芽栗。
威圧感さえ感じる態度にダァトが、口角を上げる。
「なるほどな?」
トントン!
出流がとある部屋のドアをノックする。
中から小さく、どうぞの声を聞いた後で扉を開ける。
「経過はどう?」
「あんまりよくない……」
そこには足に包帯を巻いた子供がサッカーの本を読んでいる。
「お兄さん……」
その子供が本を閉じて出流を見る。
「どうだい?足の調子は?リハビリ次第なんだろう?」
「お兄さん……俺、どうしよう?
俺の、武器無くなっちゃった……」
落ち込んだように少年が話す。
この少年は、前回クレルによってプレイズナーへと変わった少年。
運良く足は切断とは成らなかったが、それでも長いリハビリが必要なのは変わらない。
いや、この子供がサッカーを好んでいる事を考えると、その間は非常に致命的な時間と言えるだろう。
夢はサッカー選手と言っていただろうが、その夢はもう叶わないだろう。
「ん……そうか……」
出流が憐れみを覚える。
少し前、出流の考え方は大きく違っていた。
プレイズナー=心の弱い者がなる存在。
心が強ければ成らないと、しかし出流は見たのだ。
心など関係なく人を陥れる
心の中で、未だにあの男の笑い声が聞こえる気がする。
全身に纏った不快感は、一度見たら忘れられない。
「どうしよう……どうしよう……俺の、俺の武器が……!!」
焦ったような少年の声。
しかし、少し気になる単語があった。
「武器?」
「僕の武器だよ!!僕はサッカーが出来る事が武器なんだ!!
それしかない!!これがないと……他の奴らに潰される!!
生き残れないんだ!!」
必死な声、常軌を逸したその様子に出流が不振に思う。
「そこまで――」
「成るよ!!生き残れないなら、強者の踏み台だ。
学校って言うのはそう言う所なんだ!!
食うか食われるか、なんだよ!!」
とても子供とは思えない、気迫に出流がたじろいだ。
「そ、そっか……」
出流は不振に思いながら病室を後にした。
「あ、いらっしゃい」
「どうも……」
廊下に出ると、少年の母親が待っていた。
どうやら外で話を聞かれたようだ。
「今回は……その……」
「仕方ないですわ。運が悪かったの。
世の中って不平等よね?生まれから恵まれたことも有るし、それどころか才能すら潰されることもある……
生きる事って、戦う事ですよね。
出来るなら、私が変わってあげたいくらいだけど……それも無理ね」
何処かあきらめた様に母親が笑みをこぼす。
この悲しみは、本来なかったはずのものだ。
無理やり悪意を開かれ、多数のけが人が出た。
少年は確かに加害者だが、それ以上に被害者なのだ。
「すいません……」
再度謝る出流が強く、拳を握った。
此処は戦場――戦って、唯一一人の勝者を決めるコロシアム!!
吹く風には、土の臭いと血の臭いが混ざり合う!!
そして熱狂する、観客たちの熱い声援!!
(コロセ!)(殺せ!)(ころせ)(殺せ!!)(コロセ!!)(殺せ!!)(殺せ!)
『くふふ、いいですね。順調に育っていますよ』
扇状になったコロッセオの、観客席にクレルが座る。
蛇の様に細長い瞳は、コロッセオで戦う戦士たちを見ている。
『8割方完成ですかね』
決着のついたコロシアムをクレルが後にする。
『あとはライダーをここに引きずり込んで――』
「こんなことに何の意味が有るんだ!?」
クレルの隣、フェニシオンが声を荒げる。
『面白いでしょ?』
「何を考えているかと聞いているんだ!!
何だこれは!!一体いつの間にこんな
あくまでも何処までも冷静に冷酷に答えるクレルに、フェニシオンが掴みかかった!!
『なんですか?この手は?』
「今の俺は、研究の為に『牢獄』の外に出ている!!
いいか?研究の為だ!!こんなものを作って俺の研究の邪魔をしたいのか!!」
フェニシオンが苛立たし気に話す。
『研究?研究の為ですって?
あなた一体何をしました?
作ったプレイズナーは、僅か2体。
そしてそのどちらもまともに死者すら出していないじゃないですか?』
「俺のプレイズナーは殺人を目的としていない!!
あくまで研究の一環だ!!!お前の様な殺人狂と一緒にするな!!」
ざわざわと、コロッセオの観客たちがざわめきだす。
それもそうだ。まさかの場外乱闘。
未だ戦いの熱の醒め止まぬ戦場の空気。
刺激を受けない訳ないのだ!!
『殺人狂?私の事ですか?私を殺人狂だと?
酷いですね?私、殺したいから殺したことなんてありませんよ?
殺人は最後に行きつく結果であって、私の目的はあくまでジェネラルに喜んでいただく事ですか――ら!?』
クレルの頬が、フェニシオンによって殴りつけられる!!
そしてフェニシオンが自身の胸に、クライムキーを差し込んだ。
「変身!!」
『ネクスト・エヴォリュート!!NO.37フェニシオン!!』
フェニシオンが自身の体にキーを差し込んだ時、姿が大きく変化する。
体は錆びた銀色の鉄によって、骸骨の肋骨をイメージさせる胴体へ。
顔も同じく髑髏だが、やはりこちらも錆びた銀色で背中には鳥の羽の骨の様な物が形成される。
最後に、炎が羽にまとわりつき両腕が炎で形成される。
分かりやすく言えば、その姿は炎を纏った錆びた銀の骸骨に羽が生えたような姿だった。
『NO.37……フェニシオン……あなたの姿にして、偉大なるジェネラルの一部……』
『ふっざけるんじゃねぇ!!俺は俺だ!!
テメェらの計画に乗ってやっただけに過ぎねぇ!!』
フェニシオンがクレルをつかみ、その背中の翼に炎をともしコロッセオの中心まで飛んでいく。
『おやおやぁ……聞き分けの無い人ですねぇ……』
コロッセオの中心に降り立ったクレルも同じくフェニシオンの様な異形へと変わっていた。
蜘蛛と蛇と蝙蝠の混ざり合った生物のキメラと、炎を纏う骸骨が向き合う。
『くふふふ、このシチュエーション……あなたにとっても良いモノじゃないですか?
看守と戦えることなんて、本来ないので。
どうぞたっぷりと――!?』
『ごちゃごちゃうるせぇ!!』
フェニシオンの炎を纏った拳が、クレルを狙う!!
『くふ、くけけけけけ!!そんな攻撃!!』
『所詮様子見さ!!』
フェニシオンが背中の炎を纏った翼で撫でる様に、クレルを襲う!!
クレルも自身の蝙蝠の様な翼をはためかせ、上空へと逃げる!!
その時、両腕から毒液をフェニシオンに吐きかける事も忘れない。
『ちぃ、スネーク、バット、スパイダーの複合プレイズナー。
やっぱり厄介だ。
いや、一番厄介なのは、3つのキーを取り込んで平然としていられるヤツの精神と――ぐぅ!?』
フェニシオンの動きが空中で止まった。
よく見ると、腕に蜘蛛の糸の様な物が絡みついている。
『3種のキーの圧倒的、相性の良さですよね?』
クレルがフェニシオンの首に、蝙蝠の羽の形の刃を突きつける。
『此処までですね。私としても、優秀なプレイズナーを失うのは惜しい。
ジェネラルに捧げれる、数字付きと成ればなおさらです』
クレルが踵を返すと共に、元の姿へと戻る。
そして足で跳躍して、コロッセオの席へと戻ってくる。
『さぁ、何時ライダーたちは来てくれますかね?』
クレルがニヤついた笑みを浮かべた。
「おい、ここだ」
「はぁ~学校?」
「指名手配!!黙って仕事に移るぞ!!」
とある学校の前、出流に呼ばれた岩さん、玲久の3人がバイクを止める。
近所でも有名な進学校で、小学中学高校が同じ敷地に寄り添うようにあるのが特徴的だ。
「すこし、調べたいことが有る。
学校側にはもう、アポは済ませてある」
出流が校門を勝手に開けて、中に入っていく。
「はぁ、出来れば近寄りたくないんだけ――ど?」
玲久が校門を過ぎた時、一瞬にして空気が変わった。
四角い後者は、扇状に歪んで、巨大なコロッセオの様になっている。
真ん中には、闘技場と思われる場所が――
『ががー、ぴー!!次の種目は「体育」で――す』
校内放送の様な物が、響き中心に複数の男女――恐らく生徒たちが集まってくる。
そして――
「うわぁあああ!!」
「おおおおおお!!」
生徒たちが、全身を鎧の様な物で固めて、戦いを始める。
ある者はリレーのバトンで相手を殴り、ある者はバットで相手を殴る。
バスケットボールに鎖を付けた鉄球の様な物を振り回す生徒までいる。
異質、まさに異質な空間に玲久たちは息を飲んだ。
フェニシオンの姿は、フレイムプレイズナーです。
イメージは火葬された死体と炎です。