さて、本格的に情報が出ますので、いろいろ考えてみるのもありですよ?
「さぁ、捕まるのはどっちかな?」
指を振るい目の前の怪人――プレイズナーを挑発する玲久。
いや、今やその姿は白と黒の囚人服を思わせるスーツに身を包んでいる。
「なんだ、その姿は……」
岩さんが呆然のするが、玲久――いや、ジェイルは答えてくれない。
『はぁー?俺以外に、もいたのか。
邪魔だな、ああ!邪魔だな!!』
コックプレイズナーが、小柄な人間と同じようなサイズに成った幅広な包丁を構える!!
『むぅぁああああ!!!!』
上段からの斜斬り!!
ジェイルの肩を狙う!!
「へっ!読めてるって!」
『チェイン・ナックル!』
ジェイルがバックルの鍵をひねる!
その瞬間、ジェイルの拳に手錠が出現する。
手錠といってもジェイルを拘束するモノではない、メリケンサックの様に右の拳に武器として装着される!
「はぁあ!」
キィン――!
金属音がして、コックの巨大包丁が止められる!!
そして、そこ包丁をはじき、拳でコックの腹を何度も殴る!!
「おらおらおらぁ!」
「ぐ、う!が!な、なめるな!!」
コックは左手に今度は中華鍋を出現させて薙いだ!!
「くわっ!」
一瞬だけ予想外の攻撃に、たじろいだジェイル。
転んですぐに体勢を整えるが、そこにすでにコックの姿は無かった。
「あー!逃げられたか……」
『釈放終了ー』
ベルトから、キーを引き抜き再び元の姿に戻る玲久。
カギとバックルをそれぞれ、ズボンの中に戻す。
「おい、指名手配犯!!今の、定食屋含め、お前の姿はなんだ!?
お前も――、化け物か!?」
怯えるような表情で、こちらに銃を向ける。
「待った待った!タンマタンマ!俺は微妙に違うって!」
慌てたように、両手を上げる玲久。
さっきまでの怪人と同様とは思えない表情だった。
「説明してもらうぞ。おまえも、それとお前が知ってそうなアイツも!」
岩さんの言葉に、困ったように玲久が頷いた。
「な、なんじゃこりゃ!?」
留置所に戻った岩さんが大声を上げる。
鉄格子のはまっていたはずの、牢は無残に鉄格子が折れ曲がって人が一人余裕で出られるような穴が開いている。
「あー、さっき出るときに壊しちゃいました。
すいません」
「すいません。で済むか!!馬鹿もん!!
留置所の意味ないだろ!!」
軽く言い流す玲久に岩さんが、怒声をぶつけた。
「いや、だって鍵なかったし……」
「こんのぉ…………はぁ、お前の『ソレ』はこーいう事が簡単に出来る道具って事だな?」
曲がった鉄格子を叩きながら、玲久の持つ鍵とバックルを見る。
当然だが、鉄格子に何かした様子はなかった。
完全に力のみでひん曲げられた感じだ。
「説明してもらうぞ。一から全部。
お前がナンで、その鍵がナンで、あの怪物がナニか」
岩さんの言葉に、玲久が頷いた。
「あの化け物は、『プレイズナー』です。
少なくとも、俺はそう教えられました」
「プレイズナー?」
「なんて言えばいいんだろう?わかりやすく言えば、タガの外れた人間――ってとこですかね?」
一瞬考えた様にして、すぐにポケットから古びたカギを取り出す玲久。
それはさっきも使っていた鍵だった。
「この鍵は『クライムキー』人の心の檻を開ける鍵です」
「心の檻ぃ?」
またしても出た聞いたことのない単語に岩さんの目が険しくなる。
「そう、例えば岩さん。
急いでいる時に、車で道で信号に捕まった事ってありますよね?」
「あ、ああ。勿論だ。よくある事だな」
岩さんの言葉を受け取って、一瞬だけ玲久が深呼吸した。
「じゃぁ、その信号を無視したことはありますか?
いや、もっと言うと人を轢いてでも目的地に向かおうとした事は?」
「馬鹿な!ある訳ないだろ!」
ふざけるなよ。と言って岩さんがテーブルを叩いた。
しかし玲久がそんな様子など気にせず言葉を続ける。
「じゃぁ、それは『なぜ』?」
「『当たり前だから』だ!!人を轢くなんて許されないし、そもそも倫理的にも法的にも問題はある!!」
何か過去に思う事が有ったのか、岩さんが大きな声で威嚇する様に怒鳴った。
「立派な人だね。『当たり前だから』か……
世の中が岩さんみたいな人ばっかだと良かったんだけどね……
じゃ、なんで犯罪って起きるんです?逆に言えば、なんで犯罪って《《起きないんです》》?」
一瞬だけ悲しそうな顔を見せた玲久が、ゆっくりと口を開いた。
だがそれより先に岩さんが口を開いた。
「どうしても、その犯罪を犯さなくてはならない時……か?」
「そうです、飢えて死にかけた人間がパン屋でパンを盗む気持ち……
分からなくもないでしょ?
けど――
どうしても譲れない部分がある、けどそれでも法が邪魔する。
『罪』を犯したものを断罪する『罰』それが嫌で、人は法に従ってます」
椅子から体を乗り出し、後ろに有った留置所の鉄格子をドライバーでカンカンと叩いた。
『罪』を犯した者が収容される鉄の檻、『罰』の形だ。
「…………」
じっと睨む様に岩さんが玲久の次の言葉を待つ。
「『罰』は『罪』の抑止力の一つ。
だけど、クライムキーはその――」
「タガを外すのか……」
プレイズナーと化した料理店の店長を思い出して岩さんがつぶやいた。
「で、お前のソレは?」
岩さんが次は、鉄格子をイメージさせるバックルを指さす。
「これはジェイルドライバー。
とある人から受け継いだ物です。
そして、これは俺の心を写したキー……」
古ぼけた、同じく鉄格子の意匠のついたキーを見せる。
「この二つで、俺はジェイルになる」
一瞬だけまじめな顔をして、岩さんを射抜いた。
「……ほかにもいろいろ聞きたいことが有る。洗いざらい吐いてもらうからな!」
岩さんのまっすぐな瞳をみて、玲久が笑った。
「はぁ……はぁ……はぁ、ッ!」
橋の下、コックプレイズナーが柱にもたれかかりうずくまる。
「ウッ!」
白目を剥き、首元からぬるりとクライムキーが排出される。
真っ白くて、なんの意匠も無い普通の鍵に見えた。
「はぁ、はぁ……くそ!邪魔が入ったか……だが!」
何かを小さくつぶやいて、男はカギを握りしめ去っていった。
そして、それを見る影が一つ。
「あーあ、思った以上に成長しないか……今回はハズレだな~」
一人の少年がその姿を見る。
何かの制服なのか、上等な作りの紺色の制服。
頭にかぶるのは、看守の帽子。
「違うな、お前のセンスが悪いだけだ。見る目自体無い」
後ろから声がして振り返る。
ほぼ同時に、視界の端に3つ首のこぶし大のメタリックなイヌが通り過ぎる。
「ッー!お前は、小型のケルベロスに黒い服の痩身の男――
ダァトだな!?上はお前を自由にしてるようだが、僕は違うぞ!!
僕は――ぐぁ!?」
ポケットからカギを取り出そうとして、ダァトに壁にたたきつけられた。
首を持たれ、体ごと持ち上げられる。
「お前、見ない顔だな。新入りか?
ほう、一応『数字付き』のキーか」
少年の持っていたキーを取り上げ、そこに掘られている数字を確認する。
「か、返せ!!僕のだ――」
「バイトー、やれ」
『ヴァウオ!』
無造作に放り投げたキーを空中で、バイトが咥える。
そして――
ヴァギィん!!
「ああ!」
少年の目の前で、キーがかみ砕かれる。
「ふぅ、口の利き方を知らないガキは嫌いだ」
「ぼくの、ぼくのキーが……」
少年を離しすと、折れたキーに近づき必死で破片を集める。
「安心しろ、そんだけパーツが有ればしばらくすれば再生する。
一個お利巧に成ったな、口の利きかたには気を付けろよ?
次にもう許す気はゼロだぞ?」
ダァトはバイトを伴って、そこから姿を消した。
(キーは、だれかれ刺せば良いってモンじゃない。
より多くの抑圧された『精神』それが必要だ。
そして、理性を砕いたときより大きく暴走する器……)
「……近くに、いるな……一人」
ダァトが腰のキーをぶら下げた金輪を持ち上げる。
一本のキーが、何かを指す様にピィンと立っていた。
「暇だしな、久しぶりにレイクと遊ぶのもいいかもな」
笑って、上機嫌でバイトを撫でてダァトは何処かへ去っていった。
「はぁ……はぁ……」
コックプレイズナーは、自分の店のあった場所に立っていいた。
ソコは警官が来たのか、立ち入り禁止のテープが巻かれ大量の残骸が残っているだけだった。
「うわー、ほんとに無いんだ」
「言ったろ?もともと繁盛してない店だったって」
声のする方を向くと、若い男女のカップルがスマフォで写真を撮っていた。
店長の口が三日月状に歪み、肩に鍵穴が出現する。
「いらっしゃいませ……」
そして、キーをそこに刺して回す!!
『プライド……俺が一番、俺が至高、世界の頂点!!』
「っていうかー、ボロくてやってるかどうかしらなかったしー」
「ま、常連とか、通ぶった奴は行くんじゃないの――おう!?」
カップル二人の前に、コックプレイズナーが立ちふさがる。
『ようこそ、お客様。
お客様は新装開店第10号のお客様です……じっくりとお楽しみください』
「う、うわぁああああ!!」
「きゃぁああああああ!!」
「な、なんだよコレ……」
カップルの男が声を漏らす。
目の前の地面には、体を埋められ顔だけ出された10人の男女。
そしてその前に、木片や、コンクリートの破片などが皿に盛られている。
『サービスの、ランチでございます。
本日は特別価格でご奉仕させていただいております。
メニューは、コンクリートと木のサラダ。泥と川水のスープ、炭火焼き石、デザートの雨水となっております!!』
「ふざけんアな!!」
『料金は10万円です!!さぁ、くッて俺の店をたたえろ!!
口コミで金ずるを集めるんだよ!!金を落とせ!!』
男の口に木片を詰め込む!!
「見つけたぞ!プレイズナー!!」
プレイズナーの目の前に、玲久が立ちふさがる。
「店長、誘拐に監禁、そのたいろいろありそうだな」
岩さんが銃をプレイズナーに向かて構える。
『お客様ですか?もし違うなら……食事ささせて客にしてやる!!!』
「やってみろよ。俺は自由だぜ?変身!!」
玲久がベルトを腰に巻き、キーを差し込む!!
『ブレイク・ア・プリズン!!ゲット・ア・フリーダム』
「さぁ、捕まるのはどっちかな?」
変身したジェイルがとびかかった!!!
『なんども、同じ手はさせんぞ!!』
コックプレイズナーがナイフや、お玉、鍋を出現させて投げつけてくる。
どうやら、遠距離で敵を近づけさせない戦法を選んだようだ。
「は、ほッ!と!」
『チェイン・ナックル』
しかし、ジェイルも戦闘には一日の長があるようで、武器を華麗に腕でいなしていく。
両腕に再度召喚した、メリケンサック手錠で防御している様だ。
『はぁはぁ……まだ、まだ……』
「キー自体の適合率が低い……そんな強い敵じゃないな……
なら、わりぃけどさっさと決める!!」
ジェイルが、バックルの鉄格子を閉めた。
キィーン、キィーン、キィーン……
何かの待機音が鳴る。
『はぁはぁ…………おれが、店を――』
「もう休め、しばらくは定休日でいいだろ」
そういって、鍵を回す。
『チェイン・ジェイル!』
「はぁっ!」
ジェイルが足を振り上げると、手錠型のエネルギーが射出される!!
『むぅあ!?』
そのエネルギーが、地面とプレイズナーをつなぎ留める!!
そして回転をしながらジェイルが飛び上がる!!
両足を広げた蹴り、回転するたびにエネルギーが射出され、どんどんコックプレイズナーを拘束していく。
『まさ、か。こんな所で――!』
「ライダー、キック!」
回転によって遠心力を付けた蹴りがコックプレイズナーにめり込んだ!!
『ぐぅあああああああ「あああああああ』ああああ!!」
プレイズナーが倒れ、その肩の鍵穴からジェイルがキーを引き抜く。
「当然、ナンバーキーじゃないか……」
そういって、ジェイルが玲久の姿に戻る。
「さぁて、次はどこに行こうかな~」
カチャン!!
「留置場だよ。バカが!」
岩さんが玲久に手錠を付ける。
「はぁ~!?なんで!どーして!!」
「馬鹿野郎、てめぇ、いろいろぶっ壊しただろうが!!
留置所の檻も、あとさっきのは過剰防衛なんじゃないか?」
「そんな!?相手は怪人――」
「馬鹿野郎!!怪人にだって人権は有るだろうが!!
ほい、店長。あんたも逮捕だ!!」
岩さんは倒れる店長にも、手錠をする。
「よぅし、指名手配犯。おまえはまだ余罪があるみたいだから、しばらく留置場暮らしだ!!
ったく、呼んだ本庁は店長を連れて行ってもらうとして……
ぐひひひ!検挙だ、久々の現行犯逮捕!!この調子で、エリート街道に返り咲くぜ!!」
とても楽しそうに岩さんが笑い出した。
「なんだかんだ言って、岩さんが一番すごいのかもな……」
玲久が小さくつぶやいた。
個人的に好きなキャラ『岩さん』
本名的な物は考えてなく、「刑事っぽいキャラ欲しいな」と投入しました。
国家権力大好き、怒鳴るの大好きなちょいワル悪徳警察です。