次回以降は第二章という事になります。
世界が終わる日の天気について考えたことは有るだろうか?
世界の終末。昨日まであった世界が滅ぶという映画や漫画の中でしょっちゅう起きている事体。
この世に不滅は無いらしい。生き物にも物体にも『終わり』が来るらしい。
ならば――世界の終わりはどんな風なのだろう?
「なんだあれは……?」
かろうじてダンタリオンを追い返した、出流が目の前の光景に言葉を失う。
空は雲に覆われ、海に浮かぶのは船を重ねた異形の物体。
そして、その船から伸びる巨大な漆黒の腕――
まるで怪獣映画を見ている様な気分にすらなる光景に、出流はふと正気に戻る。
「行こう――とにかくアイツを!」
本能的にアレが『良くない物』だと悟った出流は、バイクにまたがりアクセルを吹かそうとする。
『此処で手を退け。本物の地獄を見ることに成る』
ダンタリオンの声が出流の脳裏によぎる。
地獄――あの手が地獄を呼びよせる物なのか?
それとも、あの手その物が地獄なのか?
「く……」
気付かぬうちに、出流の手が震えていた。
今なら戻れる。日常に。
ベルトもキーも捨て、再び警察を目指す様になっても良いハズだ。
「よぅし――行こうか」
深呼吸をして、出流は海の方――地獄の方へとバイクを向かわせた。
ベリアルを臨む海岸には4人の瞳が同じ、敵を見ていた。
「あれは、何なんだ!?おい、指名手配犯!!知ってんなら教えろ」
「あれは……『ジェネラルの手』だ……ジェネラルが、ベリアルを扉にしてこっちに来ようとしている……」
珍しく弱弱しい口調で、玲久が話す。
手に持つキーとバックルまでもが震えているのが分かる。
「ジェネラルぅ?何だそりゃ?」
知りもしない単語を聞いて、岩さんが眉を顰める。
「たはは……ジェネラルって言うのは、悪意の塊だ。
人間の弱い心のスキマにカギを差し込んで、開いて……狂わす。
クライムキーの原型は全部アイツだ」
ボロボロのダァトが、華姿に横たわらせてもらいながらなんとか話す。
「キーの原型の産みの親……だと?」
岩さんが、海に浮かぶベリアルを睨みつける。
「ダァト…………止めろ」
玲久の制止も聞かず、なおもダァトは口をひらき続ける。
「俺とレイクは、アイツの居る〈監獄〉に居た……
プレイズナーではなく、プレイズナーを制御するための看守候補としてな……」
「看守候補!?玲久君とダァトさんが!?」
華姿が珍しく表情を崩して驚く。
看守というと華姿の脳裏には、自身の友人に非道な事をしたクレルの姿がちらつく。
いや、此処に居る全員が看守――クレルを思い描いていい気になる奴はいないだろう。
それだけ
『おやおやぁ?ずいぶんと――楽しい話をしていますねぇ!!』
その時、海から水しぶきを飛ばして、クレル(怪人態)が姿を見せた。
腕からはやした、翼型のブレードを真っ先にこの中で戦闘力の低い華姿に向ける。
その瞬間、ダァトが華姿を突き飛ばしクレルの攻撃から、自らを盾にしてかばって見せた。
「きゃ!?」
「ぐぅあ!?」
『何をしているんでしょうねぇ?』
ぐりぐりと、突き刺さったブレードでダァトの背中を抉って見せる。
「コイツ――!変身!!」
玲久が素早くベルトを巻いて、ジェイルへと変化した。
そしてチェイン・ナックルを持ってクレルへと殴り掛かる。
『おおっと――なんて、野蛮なんでしょう?私怖くなってしまいます、ね!!』
クレルの蹴りがジェイルを弾き飛ばし、海岸の砂へと押し込んだ。
『くっふっふっふ、無様ですねぇ!さぁ、ベリアルを扉にしてジェネラル様が降臨なされますよ。さぁ――悪意の扉を開けて――』
「そこまでだぁ!!」
砂浜をバイク事かけてきた、シーカーがクレルをシーカーレンズで攻撃する!!
クレルはとっさに、腕でシーカーレンズのブレードを受け止めるが……
『貴方は!?ぐぁ!?またしても!!』
クレルの傷がついた部分が溶け出し、その痛みに顔を顰めて見せた。
「どうやら俺の攻撃は良く効くようだな!」
シーカーを跳ねのけ、クレルが距離を取る。
『間違いない……!
これは、看守を始末する為の対看守の能力!
一体なぜ、このような力があるのですか!?ただの人間風情に!!』
「さぁな、だが人間は悪意に屈しない力があるって事だ!!」
シーカーとなった、出流はクレルに猛攻を仕掛ける。
この中で言う最強の肉体を持つ物はクレル、そして戦闘要員の中で最弱はシーカーだった。
だが、今この場所ではその力関係は全くの逆転した状態だった!!
「鶴自 玲久!!ここは、この看守は俺が押させる!!
お前は、あの船を!!」
『!? そうはさせませ――』
「させるんだよ!!」
一瞬、シーカーの拘束を抜け出したクレルが、ダァトが此処まで逃げるのに使ってきた船に向かう。
だが、その時素早く岩さんが銃を抜き、正確な射撃能力でクレルの目を打ち抜いた!!
『あああ!!!みんな邪魔ですよぉ!!』
傷を負った目を回復させつつ、クレルが抵抗とばかりに尻尾を、翼を周囲に振り回した!!
「あばよ!ヘビ野郎!」
玲久はジェイルに変身しつつ、尻尾を、翼の攻撃をかわして船へと飛び乗った。
そして全力で、ベリアルへと向かっていく!!
「みんな、ありがとな」
ジェイルが後ろを振り返る。
船とベリアルの秘密を明かした、ダァトの華姿。
今もクレルを抑えてくれている岩さんと出流。
〈監獄〉を逃げ出した時はたった二人だった。
看守を作る実験の被験者。クレルのような力を持つ存在を生み出すべく行われた実験の中で自身はとある人物によって、ダァトと共に逃げ出した。
ダァトはより大きな力を求め、プレイズナーを作る旅へと。
そして自分はバックルを持って、一人当てのない旅を――
だが、何時からか一人じゃなくなっていた。
態度の悪い悪徳警官に、無表情で無感動の女学生、父親のコネで勝手しまくる坊ちゃん。そしていつの間にか、戻って来たダァト。
「困ったな……本当に困った。捨てらんないもんがこんなに増えた。
なぁ――
ベリアルの甲板の上――無数の泥で出来たプレイズナーモドキたちと戦う玲久。
その問いかけの先――黄金のプレイズナーが立ってた。
『黙れ!!俺に、そんな同情を向けるな!!』
黄金のプレイズナー――キングが錨を模した、黄金のフックを振りまわす。
『チェイン・ナックル!!』
ジェイルはナックルを装備して、そのフックを正面から受け止める!!
「七つの海を駆けた海賊なんだろ!?なんでだ、なんでそんな奴が
『黙れと言っている!!俺は、もう人間じゃない!!海の男でもない!!
俺は道具だ!!お前の言うクズの道具になっちまったんだよ!!
仲間が潰されても!!ただの道具として利用されても!!それでも俺は、生きて居たいんだ!!かまわない!!全部を捨てても良い!!宝も、仲間もいらない!!ただ、俺だけを生かしてほしかったんだ!!』
キングの髑髏を思わせる顔から、黄金の涙が流れる。
体は貴金属と宝石で出来ている。心は海賊のプライドのそこに有った生きる事への醜い執着。欲しかった黄金とプレイズナーとして死なない体。そこには確かにキングの求めたすべてがあったハズだった。
「じゃあ、なんでそんなにつらそうに戦っているんだ!?」
『うるさいうるさいうるさい!!俺はこれで良いんだ!!俺はこの自分に満足している!!そうだ、何も不満などない!!無いんだ!!』
お互いが武器をつばぜり合わせして、大きく後退する。
『ハぁ――はぁ――はぁ――』
キングが、肩で息をして両腕を大きく広げる――
「ハぁ――ハぁ――はぁ――」
ジェイルがベルトに、キーを押し込み回す。
そして一度締めた鉄格子を再び開く――
「『おあぁあああああああああ!!!』」
両人が走って、甲板の中央までお互いの蹴りがさく裂する!!
凄まじいエネルギー余波で、周囲のプレイズナーモドキが崩れていく。
『っ――!』
僅か、ほんの僅かな一瞬、崩れ落ちるプレイズナーの中に自分の仲間の面影をみたキングの力が抜ける。
その瞬間、二人の拮抗が崩れた。
ジェイルの蹴りが、キングの持つベルトへと深々と突き刺さった!!
バックルが砕け散り、キングの宝石の黄金で出来た体にひびが入る!!
『あっ――カモメ「が鳴いている。』なんて、きれいな海なんだ……」
最後の瞬間、キングがひび割れる手を空へと伸ばした。
潮風の匂いと、波の音そしてカモメが羽ばたくのが見えた気がした。
ドシャ!!
キングが倒れ、仲間と同じ様に泥となって形を失った。
「ベリアルを、ベリアルを壊さないと――」
ジェイルが立ち上がって武器を構えた瞬間、何かが飛び込んできた!!
『させる訳、無いでしょう!!』
それはクレルだった。
体はボロボロ、銃撃の後や切り傷が体の至る所にある。
どうやら、無理やり飛んで追ってきた様だった。
「クレル――!」
『させませんよ……この、ベリアルはジェネラル様を呼び出す貴重なキーです。
それをみすみす!!』
クレルがジェイルを蹴飛ばす。
甲板に頭をぶつけ、うなだれる。
キングとの闘いは、確実にジェイルの体力を奪っていた。
「くっそ……此処まできて……」
『はぁはぁ……トドメ、です』
クレルの手が毒々しい紫に染まる。
宣言通りトドメを指す為の力なのだろう。
『キィイイ!』
何か、鳥のようなものがジェイルの視界に入った。
「なん、だ?カモメ?」
空を飛ぶ鳥のような、姿。
クジャクの様にも見える赤い尾羽根。
何かが、空を飛んでいた。
『キィンンンンン!!』
『うぁ!?なんです!?』
それが急降下して、クレルの腕を焼く。
口から炎を吐きかけ、クレルが悲鳴を上げる!!
『あぁああ!?うそでしょう!!この、この炎も!?』
ずぶずぶと炭化した腕は、嫌なにおいすら残さない。
かろうじて人と分かる程度の形があるだけだ。
どうやら、この炎もシーカーと同じ様に対看守用の力があるようだった。
「一体誰が……?」
『キィイイイ!』
その炎を纏った鳥が、ジェイルの前に降り立った。
それは存外小さく、掌にもてるほどの大きさだった。
『聞こえて居るかな?』
その鳥から声が聞こえた。
渋い老人を思わせる声だった。
「あんたは?」
『私はシーカーの開発者だ。名前はまだ言えないが……
君のジェイルを強化するシステムが完成した。それがこのマシンだ。
炎の力を纏わせることが出来る、だが最後のカギは君が決めてくれ。
君はいくつか、キーを持っているんだろ?このマシンはそのキーを強化するマシンだ。使って見たまえ、レイク君』
そう言って、鳥型の機械から聞こえる音声が止まった。
それと同時に、そのマシンの胴体部分がスライドしてキーを指す鍵穴が出現した。
これが、例の穴らしい。ここに強化したいキーを選ぶのだ。
じゃら……
玲久が掌のキーをみた。
変身に使っているジェイルキー、武器を召喚するスラッシュキー。
話を聞いていた時から、玲久の中では何を使うべきかもう検討は付いていた。
『ああ、ああ!!忌々しい!!アナタも、アナタ潰してあげます!!』
「消えんのはお前の方だ!!」
ジェイルは突如走り出し、クレルの脇を抜ける。
走って、プレイズナーを躱し最後に目的の場所へと走る!!
「あんたは、もっと自由に生きれたハズだ。
仲間もそれを望んでいるんだろ?鳥の様に自由に――また、飛ぼうぜ!!」
ジェイルは泥の中――キングだったものから目的のキーを取り出した。
『それは!?返しなさい!!!』
「悪いねぇ、こちとら指名手配犯なんだ」
ジェイルが、黄金のキーを鳥型のマシンへと差し込んだ!!
『キーセット!!ブレイズバーン!!』
鳥型のマシンの目が黄金に輝く!!
ジェイルはそれを、自身のベルトへと装着する!!
その瞬間、炎があふれ出し、目の前にキングの幻影を形作る。
『……ありがとな、アンタのおかげで俺は助かったよ……また、仲間と海へ行ける。
俺の愛した仲間と、愛した海と、愛した宝を求めてな』
笑みを浮かべ消えた瞬間、ジェイルの姿が変わる。
両肩に船のマストを思わせる砲と帆。
黒と白の体に黄金の縁取り。
背中に背負うのは船の錨か。
『ふぅ――分かるぞ、今ならわかるさ……あんたの愛したモンが』
ジェイルが右手を握ってみる。
握った手から火があふれる。
その姿は灼熱の太陽を写した様に、明るく宝石の様に煌いていた!!
『名前が必要だな――太陽のような、光……そして海賊どもの、情熱……
そう、仮面ライダージェイル――パッショネスサンとでも呼んでもらおうか!!』
太陽のひかりを纏ったジェイルが走る!!
黄色い残光を残し、クレルの腹に拳を一撃見舞う!!
『がぁ!?』
痛みに目を見開くクレル。
その瞬間にジェイルPSが回し蹴りを繰り出し、クレルを弾き飛ばした。
「行くぜ、ゆっくりやってる暇は無いんだ」
ベルトに装着した鳥型機械の背中のボタンを押すと首が回転して胴体部分が開く。
そこにはさっき、差し込んだキーがあった。
ジェイルはそのキーを、ひねり再度押し込む!!
『フィニッシュ・パニッシュ!!』
ジェイルの両肩の帆を模したパーツが肩から、腕へと移動する。
帆の先端が開き砲門へと変わる。
『バカな、この私が負けるなど!!ありはしない!!』
「行くぜ、この海にお前は邪魔だ!!」
両腕の砲門から、迸る光と炎でクレルが吹き飛ぶ!!
その衝撃はベリアルにもあたり、すさまじい悲鳴を上げて見せた!!
『あ、ああ……燃える……ベリアルが……ジェネラル様の希望が……』
腹に穴が開いたクレルが、崩壊するベリアルに飲み込まれ海中へと沈んでいった。
「こちも、やばいか……脱出だ!!」
ジェイルは両腕の帆を背中の錨に接続する。
そうすると、つばさの様に体が軽くなった。
「はお!」
そして船を蹴り、海上を飛んでいく。
ベリアルが壊れたのか、次々とプレイズナーたちが泥へと戻っていく。
そして船を集めて作った本体も、ばらけて海へと帰っていく。
「じゃあな、もう悪意に捕まるなよ」
玲久は沈んでいくかつて海賊たちの夢を乗せた船を見送った。
けっして海賊たちは勇者でも聖人でもなかった。
だが、此処までの悪意に飲まれる存在でもなかったハズだ。
何とも言えない気持ちになって、それでも前を向いて玲久は自身の仲間が待つ、海岸へと向かっていった。
海賊たちは書いてて楽しかったですね。
作中でも言われたように、褒められた存在ではないのですが、クレルに利用させるほどでもなかった気がします。
「悪い子供ほど、本当に悪い大人の格好の餌食になるからさ!!」