またしても、異質な話を目指してみました。
「変身……!」
警視庁の息子、目栗 出流が腰にCの形のバックルが付いたシーカードライバーで仮面ライダーシーカーへと変身する。
虫眼鏡型とツール『シーカー・アイ』をバックルに嵌める。
『オープンアイズ!!ルッキントゥザトゥルース!!』
一瞬の閃光のあと、立っていたのは緑を基調にした探偵を思わせる姿のライダー、シーカーだった。
『ぐ、ぐぅ……!』
目の前には、シンプルなデザインのミラーボールの様な怪人。
手に持つ武器は鉄アレイの様にも見える、プラネタリウムにある映像を映し出す様な機械。
『お前など、怖くはない!!貴様程度の存在を、おそるるに足りず――』
プレイズナーの言葉を無視して尚も、シーカーは進み続ける。
「…………」
マスクのしたの出流は何も口に出さない。
『出流……』
「大丈夫だ、父さん……ああぁあああ!!」
シーカーレンズをバックルから外して、ブレードモードへ移行する。
疑似クライムキーの持つ、対看守用に特化したエネルギーが、刃を形成する。
「やめてよ!!お願いだ!!」
その時、一人の青年が走ってきてシーカーの足もとに絡みつく!!
「逃げろ!逃げるんだ!!こいつは、俺が押さえて――ぐぅあ!?」
「邪魔をするな!!」
付き飛ばされた青年は明らかに、プレイズナーをかばっている。
その姿をみたプレイズナーは、逃げるように背を向けるが――
「逃がしはしない!!シーカーメジャー!!」
腰についている、まるいメジャーを取り出し、その一部をシーカーレンズをかざす。
その瞬間、シーカーメジャーが起動した。
「そをらぁ!!」
シーカーメジャーは本物のメジャーの様に、すさまじい勢いで伸びまるで鞭の様にしなる剣の様でもあった。
ズバァん!!!
『お、あ!?』
そのしなる斬撃は、プレイズナーの足に切り傷をつくり逃走を阻止した。
『あ、ああ……』
転がるプレイズナーに、シーカーが武器を構えて追い詰める。
「やめろぉおお!!俺が『いい』って言っているんだ!!
なんで、ほっといてくれないんだよ!!」
「ほおっておける訳ないだろ!!この――負け犬が!!!」
一瞬の躊躇を見せた後、シーカーが青年を突き飛ばした!!
「トドメだ」
シーカーレンズをバックルに押し込み、深く横に倒する。
するとエネルギーか、バックルから右腕に集中する。
『アカネ……すまない』
倒れる青年のほうを向いて、一瞬だけ優しい顔をしてプレイズナーはシーカーの拳によって破壊された。
「あ、ああ……」
暮れる夕日の中で、青年は倒れた自らの相棒だったものを見て、うなだれた。
「ん……朝か……」
一人の青年が、顔に当たる日光に目をしかめながら目を覚ます。
だが、その目覚めはほんの一瞬のみ。
「はぁ……だる……」
青年はそう言って、布団をかぶり目を閉じる。
平日であるにも関わらず、青年は眠ったふりを続ける。
きっかけは何だったか?
もう何が本当のきかっけかは思い出せない。
だが、その一端は確か自分の名前が男なのに
きっかけは何だったか?
ずいぶん前に間違った気も、つい最近間違った気もする。
高校受験に失敗したからだろうか?
決して悪くない成績をとっていたつもりだが、気が付けば自分は中学では所謂、陰キャ。
友人たちとクラスの隅でアニメを語るオタクどもを目の敵にしては、奴らとは違うと嘯き、勉学に励む者をがり勉と罵り、体育会の男どもを青春を無駄に過ごす奴らと無視した。
だが、時間は流れ、
青春という時間を無駄にし、何もつかむことは無かった。
運よく残った道は、名前さえ書けば入れるとまで言われるバカ御用達の名前だけの大学。
けれどこれも、心配してくれなかった教師のせいだという事に、
きっかけは何だったか?
自分は周りのバカとは違うと壁を作ったからか?それとももうすでに何をすべきか分からなくなっていたのか。
流されるまま、過ぎる4年。高校と同じ、変わったのは場所と自分の年齢。
ふと、思い出すと小学生の頃の自分は、大学とはもっと輝いてると思っていたはずだ。
今目の前にあるのは、灰色に日常。
真綿でゆっくりと首を絞められ、人生が終わっていくまでの時間。
人生と書かれた砂時計が、ゆっくりと砂を落としていく様を見る様で……
きっかけは何だったか?
授業で嫌なことが有って、わざと寝坊した。
気が乗らないとか、適当な理由をつけて家から出なくなった。
パソコンさえあれば、誰かと繋がれた。一人じゃなかった。
そうして明音は自分の世界へと逃げて行った深く、深く……
きっかけは、一人の女だった。
「こんにちは」
「……は?」
夜のコンビニで、漫画を読んで何か買おうとブラブラしていた時、一人の女に話しかけられた。
ずいぶん長い間、人と会話していなかったので、自分が話しかけられた事に気が付くのに数秒の時間がかかった。
「あ、え、あ、の……」
突然の出来事に、明音の声はどもった。
舌が言葉を忘れたように、正しく発音できなくなった。
久しぶりに晒す自分の醜態。明音はその場から逃げ出そうとさえ考えたが、その女はまるでそんな明音の考えを読んだように、優しく明音の手を自身の手で包み込んだ。
「ごめんなさいね?急に話して、びっくりさせてしまいましたね。
ゆっくり、ゆっくりとで良いので気分を落ち着かせてください」
優しいまるで慈母の様な、声に明音の精神はだんだんと落ち着きを取り戻していった。
「あ、えっと……な、なにか?」
「何か――と言われましても……私も、何か貴方がとても思いつめている様に見えたので、つい、話しかけてしまったんです。
急ぎの用があったのなら、ごめんなさいね」
つつましく、拝むようにこちらに手を合わせてくる。
「えっと、大丈夫……です……」
「ほ ん と う に ?」
「い!?」
明音が否定の言葉を出した瞬間、女が目の前に移動した。
数センチ前の距離から、女の瞳が明音の瞳を覗いていた。
その目はまるで明音の心の奥に隠した、弱さを見ぬく様で――
「ああ、いけない。つい、ムキになってしまいましたわ」
再度ごめんなさいね。と言って後ろへ下がる。
「もし――もしも、貴方が苦しみから逃れたいのなら……『それ』使ってみてくださいね」
「え?――わ!?」
女が指差した先、明音の指には一本のカギが握られていた。
手元のキーに意識を映した瞬間、さっきまでいた女は煙の様に姿を消していた。
「な、なんだったんだ?」
一瞬夢かと思ったが、明音の手の中のカギは消えずに残っていた。
「これ……どこのカギだ?」
明音は自身の机の上で、カギを転がしていた。
今の時代に良くあるキーではなく、昔話に出てくるような古い錠前を開く鍵の様に見た。
「うーん?こんな古いカギで開くような扉、俺の知る限り無いぞ?」
指でつついたり、転がしたりするが何か得られる情報は無かった。
「おかしな、イカレ女に絡まれただけか?はっはっはっは」
小さく笑い飛ばして忘れてしまおうとした時――
ドン!!
「おい!うるさいぞ!!引きこもり!!」
ドアを叩く、妹の声。
こちらをバカにしたような口調を容赦なく、こっちに投げてくる。
「……ん、だよ……」
明音はおびえる様に、小さく文句を言っただけだった。
昔は仲は悪くなかったはずの妹は、今はすっかりこっちをバカにする嫌な奴へと変貌してしまっている。
明音は胸の内に小さく穴が開いた気がした。
「うちも、決して金持ちではない。いいか?
お前を養うのもタダじゃないんだ……わかるな?」
厳格な父親が、明音の前に座る。
場所は家の居間。明音の両親、父親と母親がこちらをにらんでくる。
「いや、俺大学……行って」
「行ってないだろ!!最後に行ったのは何時だ!?
もう一か月以上行ってないだろ!!単位が取れなきゃ意味ないだろ!!」
明音の反論は父親の一喝によって一瞬で、払いのけられる。
「あ、明日から行く……行けばいいんで――」
「もう遅いわ!!まともに行っていないのに単位がもらえる訳ないだろ!!
働け。明日から高卒で仕事を探せ」
父親の言葉を聞いて明音は未だに、自分が何とかこの事態を回避しようと知恵を回そうとする。
「まって、待てよ親父。働くんならさ、大卒のほうが給料とかちゃんと――」
「その大学に行ってないのがいけないんだろうが!!
もう、行かなくて良いと言っているんだ!!ただ働け!!それだけだ!!」
取り付く島もない物良いに、明音がたじろぐ。
「働け。俺は今までお前を甘やかせすぎた……」
「待って、お願い、お願いします!!明日からちゃんと大学行くから、お願い!!
だから待って!!待って!!」
「働け。もうお前にはそれ以上求めん」
父親はそう言って、部屋を出て行った。
母親もその後に続いて部屋を出ようとする。
「くそばば……親父にチクりやがってこのクソババァ!!!」
明音が立ち上がり、母親を殴ろうと拳を構えた時――
「この!くそ息子が!!母親に手を挙げるとは何事だ!!」
父親が、素早く戻ってきて明音を殴り飛ばした。
「いでぇ……いでぇよ……なんでだよ……なんで俺が!!
なんで俺ばっかりぃぃぃいいいいいいいいいい!!!」
明音の叫びに反応するように、ポケットのカギがうごめいた気がした。
「はっ、はっ、はっ……」
明音はそのキーを取り出して、握る。
なぜか本能的にそのカギをどう使えば良いのか、解った。
『願え、強く。強固に』
明音が自身の胸に、そのキーを差す。
その瞬間体から何かが、引きずりだされるのが分かった。
「な!?」
「きゃぁ!?」
両親の叫びが聞こえる。
『こんにちは、マスター』
明音の目の前に立つのは、白い怪人。
手には鉄アレイの様な物を持っている。
「お前は……」
『私は、貴方様の願いの具現化。望みを叶えるべく生まれた存在。私はフィルムプレイズナー以後お見知りおきを。
貴方が欲しいものはちゃぁ~んと、解っています』
フィルムプレイズナーは、両親の体に手を突っ込んだ。
その手は解ける様に体に入り込み――体から、映画のフィルムの様な物を取り出した。
「あ、ああ……」
「あう……」
両親はそのまま意識を失って、床に倒れた。
『えーと、これと、これはカット!ですね』
フィルムプレイズナーはハサミの様な道具で、フィルムをカットする。
そして、それを自身の体にセットして、手に持った鉄アレイの様な物を光らせる。
「うわっ!?」
まばゆい光に、明音は視界を覆う。
「明音、お前は自慢の息子だ」
「明音、貴方はお兄ちゃんなんだから、妹を大事にね」
明音の前に現れたのは、両親。
何時か言っていた様な、こちらを励ますような優しい言葉。
「と、父さん……母さん」
明音は目の前の優しい両親に抱き着いた。
その時足元にあった本当の両親を踏みつけたが、そんなのは些細なことだった。
「明音、明音」
「明音、明音」
「お兄ちゃん、お兄ちゃん」
明音の部屋では3人の家族が、かわるがわる明音を誉めたたえている。
明音にとってはこの3人が本物の家族。偽物の家族は隣の部屋に押し込んである。
「なぁ、フィルム。もっとほかの事は出来ないか?」
『他の事?もちろん可能です。私の力は記憶の抽出と編纂と再現。
近場でモテモテリア充から記憶フィルムを盗んで、記憶を貴方用に書き換えれば……』
「さすがフィルムだ!!こいつらにも飽きてきたんだよね。
さ!早く言ってきて!!!今すぐに!!」
まるで幼児退行した我がままな言葉に、フィルムは黙ってそれに従う。
ゆっくりと、ゆっくりと明音の寿命を減らし、そして虚構の優しい世界を連れていく。
「出流……例の家、怪しい奴らが出入りしているのが分かったぞ」
「連続、誘拐昏睡事件、やはりプレイズナーか」
データを見ながら、出流がその家へと向かう。
珍しい犯人側の視点でした。
実際殺人はしていないのですが……
けど、このままなら明音君は命が削れて死んでいました。
いずれも救いがないと考えるか、もとに戻ったのかは読者で判断してください。