前々から、ばらまいていたあの人の過去が少しだけ……
ぼッ!どがっ!!
暗闇の中、何かが暴れる音がする。
「終わり――だ!」
黒い看守のような服を着た男――ダァトが目の前の怪人を殴り飛ばし怪人が音もなく粒子となって消滅する。
残るのは地面に落ちたキーが一本。
「人間を介在しないプレイズナー……ヴァレフォのプレイズナーか……」
ダァトがキーの持ち主に検討をつけると同時に、目を見開いた。
「ぐぅ……くそっ!!前の戦いで……」
懐にあるバイトはぐったりとしており、多数の傷と火花が小さく散っている。
「ここじゃ、まともにメンテナンスもできないか……」
「ほぉう……お困りの様じゃの?」
暗闇の奥、老人の声にダァトが反応する。
「お前は……まさか、こんなところで会えるとはな……」
「ああ、久しぶりだな。ダァト……」
老人を守るように、炎の鳥のマシンが羽ばたいた。
「楊くん……あの子、失敗しちゃったみたい……」
豪奢な一級ホテルを思わせる部屋の中、ヴァレフォが楊に申し訳なさそうに話す。
「そうですか……ダァトめ……」
忌々しそうに話す楊は小さくため息をついていた。
ぴりりりりり!ぴりりりりりり!
その時、部屋の電話が鳴り楊が何気なしにその電話を取った。
『どうも――お仕事頑張ってます?』
「ッ!?」
相手の声を聴いた瞬間、楊の体中の毛穴から嫌な汗が出たような気分がした。
それほどまでに、その電話の声の相手は
「何の用?――クレル……」
忌々しそうに、声の相手の名前を呼ぶ。
『何って……激励ですよ?
貴方の先輩としてね?』
未だに意識も戻っていないと思っていた、それどころかもう二度と意識が戻ってほしくないとまで思った相手がクレルだった。
『さて――残念なコトながら、私はかなりのダメージを受けてしまいました……
貴方は貴方で私のいない間努力して下さったようですが……まぁ、深くは言わないで起きましょう?それが貴方の為でもありますよね?
さてさて、猿真似とは言え、私の仕事を代わってくれたんです。礼を言うのが先ですかね?
さてと、本題に移りましょうか……私の意識は回復しましたが、残念なことに〈監獄〉を離れれるほどではありません……
なので、私の代わりにお仕事をお願いしたいんです』
なぶるような、なじるようなクレルの言葉を聞きながら楊が反応して見せた。
「お仕事?」
『そうです。そうですよ。前々から私がスカウトしようと思っていた人物がいます。
その子を迎えに行ってください。
彼とはいろいろと気が合いましてね?話は8割がた向こうに通っていますから』
資料を送ります。の言葉と共に電話は切れた。
♪~♪ーーーー♪~~!--♪
ゆったりとした音楽が、蓄音機から流れる。セットされたレコード盤の上を針が走りレトロな感じのする音楽が流れる。
岩さんはその自身に不似合いな音楽を聴きながら、調度品にも見える椅子に座る。
「……………」
ゆっくり目を閉じて、多少埃臭くなって部屋の空気を吸うと昔の懐かしい日々がよみがえる。
『あら、またきたの?夕飯、食べていくでしょ?』
『おいおい、母さん。こんな奴に飯なんて――』
『あ!人美さん!また来てくれたんだ!!』
自身を迎え入れてくれる6つの瞳。
当時荒れていた、自分を止めてくれた警察官と、その妻とその一人息子。
目をつむるだけで優しい思い出が蘇ってくる。
『なにぃ!?警官になりたい、だぁ?出来るんなら、やってみろ!!』
『人美さんならなれるよ!!父さんよりも、ずっと立派な!!』
『そうよ、こんなダメ親父でも、成れたんだもの。きっと成れるわ』
再度聞こえる懐かしい声。
「……ああ、そうだ……」
無意識に岩さんが声を漏らす。
つぶった目から、一滴の涙が静かにこぼれた。
「岩さん?」
「ハッ!?――!!」
突然聞こえた、現在の声に岩さんが慌てて飛び起きて腰に手をやる。
「岩さん、銃ならないよ。この部屋に入るとき何時も弾抜いてるだろ?」
「分かってら!!」
玲久が指摘すると、ばつが悪そうに岩さんが所在なさげに腰をさする。
「あー、指名手配犯?お前は一応拘留中の身分だ、解るな?」
「そういえば、そうだった。すっかり居ついちゃったし……」
岩さんの言葉に、玲久は自身の今住んでいる留置所の事を思い出す。
一応ベットがあり、トイレもあり食事も出るとある意味では宿泊施設の様な物だ。
「勝手に檻から出るな!!そんで、勝手にこの家にも入って来るな!!」
「なぁ、岩さん。この家ってなんだ?岩さんが個人で所有しているワケじゃないだろ?」
先も言ったように、非常に豪勢でところどころバラのあしらわれた壁紙に、アンティーク調の家具、どれもこれも玲久の知る限り岩さんの趣味とは到底思えない物ばかりだ。
事実、上の部屋には伏せられた写真立ての中に3人の仲のよさそうな家族がいた。
そして極め付けには――
「この、銃痕も……」
不自然な位置の絵をずらすと、そこにあるのはここで銃の発砲があったという証。
「なぁ、そろそろ教えて――」
「出てけ」
玲久の言葉を岩さんがたった一言で、遮った。
そして突き付けられる明確な拒絶の意思。
「岩さん――」
「出ていけと言ったんだ!!貴様は、大人しく檻の中に入っとれ!!」
岩さんはすさまじい力で、玲久を捕まえると家の外まで引きずっていった。
「んだよー、岩さんはー……あの家に居るときはなーんか、おかしいんだよなぁ。
なんていうの?不機嫌なのか、ヘンにセンチメンタルなのか……」
玲久は戻ってきた留置所の机にぐでんと体を預けている。
その対面では、華姿が無表情で眼鏡をかけてパソコンを叩いていた。
「玲久君は、むしろ無神経過ぎませんかね?
いえ、プレイズナーの臆せず向かって行ったり、常に自分を見失わない辺りは心強いんです――がっと!
ふぅー……ようやく、レポートもひと段落ですね……」
流行りに乗せられ買ったUVカット眼鏡を外し、華姿が背伸びをする。
「なんで留置所で、レポート書いてんの?」
「こっちのほうが落ち付くんですよ。大学は今テスト週刊ですからね。
図書館なんて行けば、うるさいのが山ほどいて……
かといって、家に居ても誘惑が多くて……留置場ははかどりますねぇ……」
そう言って、足元に置いたコンビニ袋からコーラを取り出して口に含んだ。
「なーんか、おかしな光景だなぁ……」
またしてもそんなことを思いながら、玲久が苦笑した。
「おーい、小早川は――ないのか?」
扉を開けて、出流がやってくる。
「ん?なんか、岩さんに用事?」
「今は、いませんよ……ぷはぁ!生き返るぅ!!」
非常にリラックスした様子の二人をみて、出流が小さく眉をしかめる。
片方は机に座り、片方は持ち込んだコーラを味わう姿。
「お前たちな……」
「んで?ぼっちゃんが、なんの用?」
「――以前、頼まれていた物が手に入ってな……それを持ってきた……」
出流が見せたのは数枚のチケット。裁判の傍聴と書かれている。
「裁判のチケット?なんで、こんな物……っていうか、こんなの売ってるのか」
玲久が興味深そうに手を伸ばすが――
「なんだ?知らないのか?」
出流がひょいっと、チケットを持った手を避ける。
「裁判の傍聴は自由だ。誰でも、いつでも、自由に公判を見ることができる。
無論写真撮影や、録音は出来ないが――それでも、基本的に裁判は自由開示だ」
「あ、知ってます!!法学の授業で、実際見てレポートを書くっていう課題ありましたもん」
華姿がそう話す。
「へぇー、裁判ってそんな簡単に見れるのか……あれ?
じゃあ、なんで『チケット』なんてあるんだ?
誰でも見れるなら、そんな物必要はないだろ?」
玲久の言葉を聞いて出流がやれやれと言いたげに、手を広げる。
「はぁ、まぁそうだよな、うん、普通はそう考える。
裁判は誰でも見れる、そう『誰もでも』だ。だからさ、有名な裁判には大勢の人間が集まってくるのさ。そりゃあもう、数百人単位で、だ。
だからさ、整理券が必要になるときもあるって事だ」
「なるほどねー。んで、その整理券が必要なほど重要な裁判って?」
再度玲久が出流の手から、チケットを奪い取ろうとする。
だが、再度素早く躱すとポケットにチケットをしまい込んだ。
「これは小早川に渡しておいてくれ。
結構手に入れるのに、苦労したんだからな?確実に頼むぞ?」
念を押して、出流が玲久の手に今度こそチケットを握らせた。
「岩さんの興味ある、裁判……ね?」
ピらぴらとチケットを振る玲久。
その横で、小さくうなづいた華姿がが、パソコンのキーボードに指を走らせる。
「……これ……あった、玲久君ありましたよ!!」
華姿が見せたのは、過去の起きた事件の新聞の切り抜き。
パソコンでの画面越しなので、多少は画面が荒いが新聞の切り抜きの写真に写る屋敷は間違いなくたまに岩さんが過ごしている屋敷だ。
二人はゆっくりと、事件の概要を見ていく。
それは数年前に起きた殺人事件。裕福な一家が押し入ったと思われる相手によって惨殺された事件。
内容としては、警官の住む家であった裕福な家の家族が銃で殺害されたという物。
犯人は名前や年齢が公開されてはいないが、殺害された家族――警官の父親から銃を奪っい、それを持って家族を殺害したと思われている。
警官を殺すという、異常性――のちに逮捕された犯人は「警官である相手を殺したかった」と供述しており、警官内部に大きな波紋が起きたらしい。
その事件自体は、銃声を聞き駆け付けた、一人の新人警官によって犯人は逮捕され終わりを迎えている。その時警官は犯人に向けて発砲、犯人は足に傷を負い新人警官の行動は世論により賛否が分かれた。
現在犯人は裁判判決を待ている最中だという。
「岩さん……」
文章にしてはひどくあっさりした。
何処にでもある普通の不幸なニュースだ。
だが、おそらくこの事件の当事者、またはそれに近い立場の岩さんは未だにそのことを引きずっているのだろう。
玲久の頭に、何時もはきはきとしている岩さんの落ち込んだ姿が、思い浮かんで離れない。
まだ事件は終わっていないのだろう。いや、きっと裁判が終わっても犯人が刑を執行されても、それでも岩さんにとってのこの事件は終わらないのだろう。
そう思うと、玲久には少しだけ胸に思うところがあった。
ズっ……ずっ……
一人の男が、足を引きずって狭い部屋の中を歩く。
40代ほどの白髪が混じり始めた男で、衰えつつある体に対してその眼光は鋭かった。
「なんだ?俺に何か用か?」
畳の上に座ったまま、背後に感じる気配の主に問いかける。
「
聞こえてくるのは、どこか幼さを抱えた声。
「違う。別人だ」
悠里は振り向きもせず応える。
「初めての犯罪は、17の時の無免許運転。高校中退後は、主に建設現場でのバイト生活。21の時、数人の仕事仲間を鉄パイプで殴り暴行と傷害で逮捕。
その後も、出所と暴行事件を繰り返す。
最後の事件は――――」
「警官の一家をぶっ殺そうとした事だな。奪った銃で嫁さん撃ち殺して……んで次は警官をってな?
噂には聞いたことが有る――ムショん中で、ヤクきめたやばい奴が言ってた。
『犯罪者を集めてバケモンに変えてる組織がある』ってな、お前はそれか?」
この時初めて、悠里は後ろを振り返った。
だが、そこにはすでに誰も居ない。
「今度の裁判――お前はおそらく死刑だ。
まだ生きたいのなら……それを使え」
キィン!
古ぼけたカギが畳の上に落ちた。
「そんなもんの答えは、当に決まっている」
悠里は迷うことなく、そのカギを手にした。
最近のライダーに思う事。
エボルは仲間に成らないでほしい、そしてもう一つは葛城パパが黒幕はやめてほしいという事。
なんか、ライダーの父親キャラって、ラスボスにされ気味じゃないですかね?
某物理学者や、テラーさんや、天才外道学者、ゲーム会社初代社長などなど……