仮面ライダージェイル   作:ホワイト・ラム

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ずいぶん久しぶりですが、投稿です。
初期プロットから書いていた奴をようやく出せました。


ファントム・ペイン/傷跡を開く者

「『小戸 悠里』が逃げた――!?」

とある家、岩さんが掛かってきた電話を受け取り、その顔を険しくゆがませた。

その名を覚えている。もう10年も前になる、忌まわしい事件にかかわった人間。

 

「おやっさん……」

岩さんが、写真立てに入った家族の写真を、見て真剣なまなざしを送る。

小戸の名を聞いて、岩さんの脳裏には10年前に悲劇が思い起こされた。

 

 

 

ガサツで不器用で、要領が悪くて……時には他人に手を出す程度の悪人で――

俗にいう不良のレッテルの張られた高校時代。

教師も大人もみんな、自身を外見で判断するばかりの無能で何も知りもしない連中だと見下していた。

 

同じはみ出し者たちと、一緒に暴れて傷のなめ合いをする事だけが唯一心の癒える時間だった。

 

自分を追いかけてきた、いけ好かない警官だけが唯一自分に本気で向き合ってくれた気がした。

悪い事は何度もした。学校をさぼり、パチンコ屋に逃げ込み、たばこをふかし、酒を飲んでは免許など気にせずにバイクにまたがった。

 

そのたびに、その警官は自分にげんこつを落とした。

時には一緒になって、迷惑をかけた人間のもとに赴いて、頭を下げてくれた。

 

 

 

いつからか――自分はその警官の事をおやっさんと呼んでいた。

自分以上にガサツで不器用で、要領の悪い男だった。

けど、優しさや心の熱さも自分以上だった――

そして、持っている家族の温かさも――

 

『あら、いらっしゃい。人美君夕飯食べていくでしょ?』

美人で気立ての良い奥さん――なんで、おやっさんなんかと結婚したのか不思議だった。

まぁ、本人に言ったら『バカ』と言っておやっさんに殴られたが……

 

『人美兄さん!来てたんだ!!』

二人の間の一人息子。自分では到底理解できないような勉強をして、自分では1000分の1も理解出来ないようなひどく難解なことをしていたのを覚えている。

医学部なんて、到底理解できない学部で、それも主席での卒業を控えていた。

将来はたくさんの人間の役に立つだろと、岩さんは何となく思っていた。

 

 

 

『あの日』までは――

 

「おやっさん!!おかみさん!!」

岩さんの目の前で、大切な二人が倒れていた。

ただ転んでいるのでもなく、眠っているのでもなく、死んでいた。

 

「警官――か?」

横に立つのは、灰色のコートを着た男。

手には包丁を持って、物言わぬ屍となった二人を見下ろす。

 

「お前は――!」

その顔は何度か、指名手配犯のポスターで見たことが有った。

小戸 悠里。様々な犯罪を行ってきた危険な男だった。

特に幾度となく、自身を邪魔してきた警官にはその、怒りが顕著だった。

そして――

 

 

 

 

ドォごぉん!!

 

「な、なんだ!?」

過去を思い起こしていた、岩さんは突如やってきた振動に現実に引き戻された。

 

どぉぉぉん!!

 

再度襲い来る振動!!

その振動は家の壁に、何かがぶつかる衝撃だとすぐに理解する!!

 

「な、なんなんだ一体!?」

岩さんが、勢いよく家を出ると家の前の門が半壊していた。

パラパラと、転がるコンクリートの塊を踏みつけ、一人の男が姿を見せる。

 

だるそうに立つ姿、灰色の服。

数年前の思い出から、抜け出てきたような姿で小戸は立っていた。

確かに違うのは、あの時持っていた物が包丁から一本のカギになっていた事。

 

「邪魔をするな……退け。殺しはしない。俺はこの家を壊すように頼まれたんだ」

小さくぼそぼそと話して、自身の胸にクライムキーを差し込む。

 

『ふみ……つぶされたくない……だろう?』

全身が肥大化して、灰色の表皮に包まれる。

胸にはトゲの生えた恐竜のような顔。

そして、同じく尻尾に無数のトゲが生えた尻尾。

嘗て、地球を支配した古代種の恐竜。その一種を思わせる力強いボディ!!

名づけるならば、ライノセラスプレイズナーか。

 

『俺は――自由になる』

ライノセラスが、再度家の壁に向かって駆けた。

胸の角を鋭く尖らせ、尻尾をふるい、岩さんの思い出の詰まった家を――

 

「しまった!!銃が!」

とっさに伸ばした、腰のホルスターそこにはあるはずの銃は無かった。

そうだ、部屋の外に置いたまま出てきてしまった!!

 

ならば、すべきことは一つ!!

 

「おをおおおおお!!」

ライノセラスの前に、岩さんが両腕を広げて立ちふさがる!!

 

『!? 死にたいなら――望みどおりにして――』

飛び掛かるライノセラス。岩さんの目の前に別の影が躍り出る!!

 

『ひゅーどぉーん!!』

 

『ぐぅあ!?』

ジェイルの乗るバイクに轢かれライノセラスが、転がった。

 

「指名手配犯!!」

 

『よぉ――岩さん、あのボンボンに頼まれて裁判のチケット持ってきてやったけど……

なんか、絡まれてるっぽいよな?』

すでにジェイルへと変身を終えていた、玲久がバイクから降りる。

 

「おせぇんだよ!来るならもっと早く来やがれ!」

岩さんが文句を言うが、ジェイルは気にしていない様だ。

 

『ハイハイって、すぐにコイツ片巣からまっててよっと!』

 

『チェイン!!ナックル!!』

素早く、ナックルを装備してライノセラスに殴りかかるが――!

 

『な、かってぇ!?なんて硬さだ!!』

 

『無駄だ。俺の表皮に傷をつけることなど、出来ん!!』

ライノセラスが両腕をジェイルに叩きつけようとした時、ジェイルも同じく応戦する。

結果として、二人が両腕を使いお互いを押し合う形へとなる!!

 

『ぐぅぅ……コイツ、力も、くそ、つえぇええ!!』

 

『貴様の力など、たかが知れているッ!!』

ライノセラスはそのままジェイルを、胸の角で押し上げ昆虫の喧嘩の様に投げ飛ばした!!!

 

『うわぁ!?岩さん逃げろ!!』

ジェイルの視界の先――岩さんが再度家の前に立ちふさがる。

そして、その岩さんに向かってライノセラスが本気で走りこんだ!!

 

『岩さん!!勝てるわけがない――!!!

にげろ――!!』

しかし岩さんは逃げない、ライノセラスとの距離が縮んでいく!!

そして角の先が触れる時――!!

 

「国家権力を――舐めるな、ッ!!」

 

『な、お前まさ――』

岩さんがライノセラスプレイズナーの、剛力を逆手にとって腕をつかむ――!

プレイズナーは様々な性質を持つが、その多くは人間の形をとるという大まかなルールがある。

もとを正せば人間が変化したものであるから、体の基本的な構造が似るのはもはや当然と言える。

ライノセラスは、胸部に角がある程度の変化で、人から大きく形が乖離していないのが功を制した様で……

 

「はぁあああ!!!」

岩さんがライノセラスの表皮を掴み、自分事相手を巻き込むように倒れる。

その時、ライノセラスの圧倒的な突進のパワーを逃がし、そして体全身で相手を投げ飛ばす!!

 

『なぁぁああああ!?』

 

「これが、おやっさんから貰った『巴投げ(国家権力バージョン)』よ!!」

投げ飛ばされたダメージよりも、投げ飛ばされたという、現実にダメージを負ったライノセラスは、空を見たまま地面で、混乱してもがいていた。

 

「今だ!!やれぇ!!指名手配犯!!」

 

「わーかってるって!!」

 

『チェイン!!ストライク!!』

ジェイルの、ナックルにエネルギーを纏わして倒れるライノセラスの腹に向けて、全力の拳を叩き込む!!

 

『ぎぃいいい!!?』

 

「どーだぁ!!地面を背にしてるんなら、ダメージを逃がすことは出来ないぜ!!」

岩さんがまるで自分の手柄の様に、大声でまくしたてる。

その言葉と、ほぼ同時のタイミングで小戸の変身が解除され、体からクライムキーが排出される。

 

「岩さん、俺がやったんだけど?」

戦闘の終わりを確信した玲久が同じく変身を解く。

後は落ちたカギを回収すれば、すべてが終わりだ。

 

パァン!!!

 

「んな!?」

伸ばした玲久の手の先、地面に落ちたカギが破壊される。

 

「なにが起きて――」

驚きに目を見開き、顔を上げ岩さんを見るが、その顔は玲久以上に驚愕に満ちていた。

言葉を失い、ただ現実が理解できないとばかりに、口をパクパクさせる。

 

「お、お前……どうして……脱獄したのは、小戸だけじゃ――」

岩さんの見つめる先には、酷くラフな服装――個性すら感じられない人込みに中に紛れたら消えてしまいそうな少年が立っていた。

 

「へぇ……まだ、覚えててくれたんだ」

不意にかかるのは、この場にふさわしくないのんびりした声。

まるで暇な午後に、散歩にでも出かけた様な気安い声。

うっすらと笑みを浮かべ、その一人の青年が歩いてきた。

 

「おま、えは……!」

その青年を見た瞬間、岩さんの表情がこわばる。

 

「岩さん?」

玲久は岩さんの異常に気が付かなかった。

そこからは一瞬だった。ほんの一瞬で、世界が変わった。

 

「はぁあ……警官なんてとっくにやめたと思ってたよ。

だってそうでしょ?」

青年が、『何か』を構える。

銀色のボディに、紫のパーツが散らされ、持ち手が付いた横にしたL字型の形状。

先端には口――或いは()()

 

ぱぁん!!

 

「ぐぁあ!?」

 

「だって、詰まんないでしょ?警官なんてすぐ飽きちゃいそうだしね」

一発の音と共に、岩さんが胸を押さえて倒れる。

青年の持つ、道具の口からは煙があふれてくる。

 

「が、岩さん!?」

このタイミングで要約、玲久は『岩さんが撃たれた』という事に、気が付いた。

 

「お前――!何者だ!!」

玲久が岩さんの胸の傷を、自身の脱いだ服を宛がいながら青年をにらみつける。

 

「あ――」

既視感。玲久の中に妙な既視感を感じて、言葉を止めた。

青年は尚も言葉を続ける。

 

「あれぇ?人美さん話してなかったの?俺の事?

ひっどいなぁ~、今だって住んでるんでしょ?俺の家に、さ!」

くるくると、おかしな形の銃を指で回しながら青年が笑みを浮かべる。

 

「おまえ、あの家の、()()()――」

 

「そう!せ~かい!」

青年の既視感、それは岩さんがいつもいる家に、飾ってある写真立ての青年だった。

 

「なんで、だって家族は……全員、小戸に……」

玲久が混乱して、珍しく慌てふためく。

その姿を少年は、嬉しそうに眺めている。

 

「小戸?おど、おど……あー!ハイハイ!小戸 悠里ね!!

そこに転がってる!」

青年は、尚も倒れる小戸を銃で指した。

 

「アイツもバッカだよな~、警官に恨みがあるなんて、犯罪者なら当たり前なのに!

最後まで俺に利用されたことに気が付かないんだから!」

 

「お、おまぁえ!!」

小戸が、怒りの形相をして、ボロボロの体で立ち上がろとする。

 

「はぁ……はぁ……5年前の事件……犯人は小戸だけじゃない……」

 

「岩さん!?」

岩さんが話し出したことに気が付いた玲久はすぐに駆け寄った。

 

「俺の……俺の恩人を殺したのは、小戸を利用した……コイツだったんだ。

コイツは、自身の両親を、興味本位で殺したんだ……!!」

岩さんの言葉に、玲久が目を見開く。

 

「いや、だって()()()()なったし。正義感あふれる父親と、優しく良妻賢母な母親の間ですくすく育った俺!大学は医学部の首席で、将来安定の自慢の息子。

俺は独り立ち可能な年齢だし、もう両親とかいらないでしょ?

だから、殺したんだよ。

あ!ウソ!本当は絶望する顔が見たかったってのもあるよ?

だってさ、両親が一生懸命育てた俺に裏切られて殺されたときの顔って見たことないだろ?なら、さ。

見るしかない訳じゃない?銃を撃ってみたかったってのもあるし、丁度使えそうなバカもたしさ。

けど、俺の計画が、人美さんのせいでおじゃん!

俺は逮捕されて、そのまま終身刑だよ?酷すぎじゃん?

だ・か・ら!これはご褒美だよね?」

青年は、銃を再度構え小戸に向けて数発発砲した!!

 

「ぐぁ!?」

小戸の胸の数個の血の華が咲く。

そしてそのまま小戸は二度と立ち上がらなかった。

 

「ふぅっふっふ!人を殺すのはやっぱすげーや!!

テンション上がりまくり!ドーパミン出まくり!!」

楽しそうに笑う青年のその姿は、今まで見たどのプレイズナーの変身者よりも異常だった。

 

「そう言えば……仮面ライダーなんだろ?あんた。

看守さんがそう言ってたよ。あんたを殺せば――俺を自由にしてくれるってね!」

青年が銃を構える。

改めてみると、見たこともない武器だった。

銀と紫のボディに、銃口から手のひらを覆うように金色の波打った刃の様なパーツがある。

形はリボルバーが無い事から、オートマチックが近いのだろうか?

 

カチっ!

 

青年は銃をスライドさせる。

安全装置を外す、要領だ。

そして、スライドして出てきた鍵穴に、ポケットから取り出したキーをはめる。

そのまま、銃口の自身のこめかみに、突き付けて――

 

「変身――!」

 

「ストップ、だよ」

青年がトリガーを引こうとした時、楊が青年を止める。

 

「あー、看守さんだー」

 

「戦闘の許可はしていない。離脱するよ」

楊の言葉に、楽しそうにしていた青年の顔が固まった。

 

「へぇ?看守さんも、邪魔をするのか……」

瞬間両者にひり付く空気が走った。

青年が銃口を、尚も自身の頭に突き付け。楊がポケットの中のキーを撫でる。

 

「まぁいいや。うん、そうだね。今日は退散しようか。

人美さん。さよなら――そうだ、俺。名前を貰ったんだ。

今度会う時は、『フォルネウス』って呼んでよ」

青年――改め、フォルネウスは自身の銃に30の数字の刻まれたカギを取り出して見せた。

 

「それじゃあね」

フォルネウスが地面を撃ち、土煙を上げた一瞬後に二人はすでにそこに残っていなかった。




作中の少年は、すさまじいスピードで幹部へとなりました。
やはりサイコパス気質な人は、良いプレイズナーになるんでしょうね。
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