仮面ライダージェイル   作:ホワイト・ラム

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さて、第3話。
少しずつ、ストーリーが展開されていきます。


暗躍する刃/切り裂く者

タタタタ……

 

暗い閉塞感のある場所を、一人の少年が走っていく。

その顔は思いつめた様な、何かに怯えるような顔をしている。

彼の名は黒輪(くろわ) (よう)

 

「…………っ」

そして一つの扉の前で、足を止める。

一瞬だけ躊躇したが思い切って、その扉を叩いた。

 

「はーい、今、空けますね?」

一瞬のラグがあり、中から響くのは優しそうな声。

扉から姿を現したのは、シスターの様な服をきた髪の長い女性。

なぜか武骨な鍵の束が腰にぶら下がっている。

柔和な笑みで、少年を出迎えた。

「あら、楊ちゃん。おかえり」

 

「うぐ……ヴァレフォ様……」

楊と呼ばれた少年が、ヴァレフォと呼んだ女性に抱き着き遂には泣き出す。

 

「あらあら……どうしたのかしら?」

 

「僕の、キーが……破壊されました……」

楊が、懐からバラバラになったクライムキーを取り出す。

以前ダァトによって破壊されたものだった。

 

「あらまぁ……可哀そうに……大丈夫ですよ。私は怒ってなんかいません。

私はあなたが無事に帰って来てくれただけで充分なんですよ?」

優しく笑いかけると、キーを取り上げた。

 

「大丈夫です。数字付きに覚醒したキーはこれくらいじゃ完全破壊できません」

慰めるように何度も楊の頭を撫でる。

 

「けど、けど僕の――」

 

「このキーは前任者が居なくなったので、あなたに渡しただけですよ?

やはりクライムキーは、自分で育てなくてはいけませんね。

私の様にね?」

そういって、胸に下げた6のナンバーが付いたキーを見せる。

このキーは楊のあこがれの象徴だった。

美しく強い彼女を彼女たらしめる道具。

彼女はこのキーと共にヴァレフォという名を貰ったのだ。

 

「はい……ヴァレフォ様……!次こそダァトを――」

 

「はぁ?」

ダァトの名を出した瞬間、ヴォレフォの顔が凍り付く。

柔和な笑みは消え失せ、不気味な冷たさを持った顔に変わる。

 

みしッ――

 

女の物とは思えないような力が、楊の頭蓋をつかんだ。

 

「い、痛いです……」

 

「会ったのですか?ダァトに?ダァトに出会ったのですか!?」

痛がる楊を無視して問いつけるヴォレフォ。

 

「こ、このキーを壊したのも、ダァトです……!」

 

「あら、そう?そうなの!うふ、うふふふ……

そう、ようやくダァトが姿を見せたの……そう、ダァトが……」

ケタケタ笑って、自身の指の爪を噛むヴォレフォ。

 

「あ、あの……ヴォレフォ……様?」

 

「楊ちゃん。私には行くべきところが出来ました。

だから、少し私と一緒にお出かけしましょうね?」

有無を言わせぬ、迫力で楊の腕をつかむ!!

 

「オイ!お前クラスが勝手に出歩くなんて、関心しぇねな?」

野太い男の声と共に、ヴォレフォの腕がつかまれる。

 

「あら、女性の手を勝手につかむなんて……関心しませんわよ?」

その男はボロボロの革ジャンを着ていた、どこに売っているのかジーンズも赤い色だ。

そして、ヴォレフォの様に腰に鍵束が付いている。

 

「フェネクス様……」

楊の言葉に応える様に、男の腰に揺れる37と刻まれたカギが揺れた。

 

「ふぅ、会議って訳じゃないが、ジェネシスがお呼びだ。

集まらないと後で、ほかの連中からなんか言われるぞ?」

 

「……仕方ないですね。

楊ちゃん、このキーをあなたに与えます、ダァトをこれで――」

ヴォレフォが一本の鍵を楊に渡す。

 

「はい、すぐに向かいます」

そして受け取るや否や、楊は歩いてきた道を走って戻っていった。

 

「けッ、まるで忠実なイヌだな。

他のやつも、いろいろばらまいているらしいぞ?」

 

「まぁ、ひどい。私の手塩にかけたあの子を――」

二人は談笑しながら、逆方向へと歩んでいった。

 

 

 

 

 

同時刻、とある留置所にて――

 

『はーい、今日の占い最下位はおとめ座のアナタ!

気合を入れすぎて空回り、もがけばもがく程ドツボに嵌まっていきます。

いったん落ち着いて、深呼吸。落ち着きがなにより大切です。

ラッキーアイテムは、分厚い本!それではいってらっしゃい!』

 

「チッ、俺が最下位かよ……分厚い本とか、持ち歩かねーしよ……」

朝の占いを見て銃の手入れをしながら岩さんが悪態をつく。

事件が起こった後、提出する書類などが重なりどうにも慌ただしい時間が過ぎていた。

 

「ええ?岩さんその顔でおとめ座?似合わなーい、きもーい、ありえなーい!」

玲久が天丼を食べながら、岩さんを笑う。

 

「指名手配犯……貴様ぁ!勝手に牢から出るなと言ったろ!!

しかも、俺の朝飯を食うな!!」

 

「えー、だって穴空いてるから簡単に出られるし、腹減ったんだよ……

ウマッ!この海老天!!」

玲久の指摘通り、隣の牢には内側から無理やりこじ開けた為、人が余裕で通れるほどに隙間が開いてしまっている。

最早、そこは牢としての機能を果たしてはいないだろう。

 

「あー!食うなって言っただろうが!!」

玲久から、どんぶりをひったくると岩さんが一気に残りを掻き込んだ!!

 

「いやー、ここの海老天最高!どこの店?」

 

「この前、怪物になったオヤジのとこだよ。

店はつぶれたが、奥さんが旦那の帰りを待つって、実家で出前を始めたそうだ。

時と金に余裕が出来たら、家をリフォームして店を再建するらしい。

戻るべき場所を守るんだってよ」

 

「『戻るべき場所』……か」

何処か寂しそうに玲久がつぶやいた。

その顔は何を思っているのか、岩さんには分からなかった。

 

「そういえば、前いたあの怪物。

他にもいるのか?」

岩さんが話題をそらす様に聞いてくる。

その言葉に玲久の視線を元に戻す。

 

「最低でも20体前後は……『アレ』よりやばいのがいる」

玲久がポケットから、一本のキーを取り出す。

鈍い銀に、ナイフとフォークの意匠が彫り込まれている。

先日倒した、コックプレイズナーのキーだ。

 

「正直な話、コイツはまだまだ弱い」

玲久言うように、コックプレイズナーは戦いの中で、弱った様子を見せほぼ自爆に近い形で倒されている。

 

「キーは成長する。最初は何もない、ただ単純に人間の心のタガを外すだけのキー。

そして次に、その心を暴走させプレイズナーに進化するとキーも進化する」

コックのキーが、一瞬だけ光を反射して見せた。

 

「進化?道具が?」

 

「ああ、そう。クライムキーは人間を学習してより強く進化する。

まずはコレを――」

玲久がキーを岩さんに近づける。

そうすると――

 

「うお!?」

岩さんの胸に鍵穴が開いた。

 

「覚醒しろ、プレイズナーとして!」

 

「や、ヤメロぉ!?」

玲久が岩さんの胸の鍵穴に、コックプレイズナーキーを差し込んだ!!

 

ずぶぶぶぶ!!!ずぶぶぶぶ!!

 

キーが岩さんの体内に入るが――

 

キィン!!!

 

「ああ、あ?」

一瞬で、体内からはじき出され壊れてしまった。

 

「やっぱり、進化してないな。

岩さん、聞いてよ。本当ならこの形のキーは元になった犯人の形を覚えて、この形に別の人間を変化させれるんだ。

勿論、適合とかもあるけど……他者に融合できるほどではなかったんだな~」

けらけらと壊れたキーを持って笑う。

 

「指名手配犯!!俺を実験台にするな!!」

 

「いや、岩さん犯罪者になりにくそうだし、キー自体も進化してないって知ってるから――」

 

「問答無用だ!!馬鹿もん!!」

玲久は追い出される様に、その部屋から逃げていった。

 

 

 

「はぁー、はぁー、問題は数字付きになった場合なんだよなー」

玲久が自分の、牢屋を模した意匠のついた鍵を見る。

 

『逃げるぞ!!早くここから――』

 

『いけぇぇっぇぇぇぇぇ!!お前は自由だぁああああ!!』

 

「ッ――!」

昔の記憶がフラッシュバックする。

自分にこのキーと、ドライバーをくれた男の言葉そして――死に様を。

 

「分かってる、俺は全部の数字付きをぶっ壊して自由になる……」

嫌な因縁を思い出し、珍しく強く拳を握った。

 

 

 

 

 

とあるビルの前で、二人のOLが話す。

「おはよーございます!先輩!」

 

「おはよう。うえ、まぁたぬいぐるみ買ったの?」

後輩のOLの車の中を見た先輩が苦言を呈す。

 

「えー、だってぇ、かわいいしー」

そういう後輩の車内は所狭しとぬいぐるみが並んでいた。

ルームミラーには2匹のうさぎがぶら下がり、ガラスと車体のスキマには様々なぬいぐるみが並んでいる。

そして極めつけは――

 

「なんで助手席にでかいハムスターのぬいぐるみ?」

70㎝は行くのではないかという、巨大なハムスターのぬいぐるみだった!!

そういうデザインなのだろうか、ひげを蓄えネクタイをしている。

なんというか、ハムスター親子のパパさんといった趣だ。

 

「ああんーもー!ぬいぐるみじゃないです!彼は私の、彼氏です!キャハ!」

 

「訳分からん……」

先輩OLが頭を抱えて、その場を後にした。

 

 

 

『ヴァウォン!!』

駐車場の影から、3つ首の機械のケロべロスが姿を見せる。

3つの首がいら立ったように吠える。

ダァトがいつも連れているバイトだ。

 

「そう、イラつくなバイト……

まぁ、俺も俺で厳しいんだが……あー、見ていてイライラする!」

 

ボゴン!!

 

OL二人のやり取りを見ていたダァトが近くの車を思いっきり殴りつける!!

社長専用と書かれた場所に停めてあった黒塗りの高級車が一瞬でボンネットに風穴が開く!!

 

ビー!ビー!ビー!ビー!

 

途端に車のセキュリティが鳴り響く!!

 

「しまった!バイト逃げるぞ!

かまわない、どうせキーはもう差した。

後は勝手に成長するのを待つだけだ!!」

車のセキュリティを聞きつけて、警備員が集まってくる前にダァトはその場を後にした。

 

 

 

 

 

「ああー!私の車が!!」

退社時刻になった時、OLの一人が大声を上げる。

車の中に有った、無数のぬいぐるみがすべて無残に切り刻まれていたのだ!!

 

「ど、どーして!なんで、こんな事するのォ!!」

後輩OLが泣き叫びながら、綿と布の切れ端になったぬいぐるみを抱き上げる。

 

「あーあ、仕方ないわよ……

破れちゃった物は……直せないなら、また少しずつ買いましょ?」

先輩が慰めるが、その瞳はひどく冷ややかな物だった。

 

きぃぃぃぃぃぃ……カチャン!

 

ダァトは遠く離れた場所から、誰かの心の檻の鍵が開く音を確かに聞いていた。

 

「くはははは!準備は上々さて、もう戻る気はゼロだ!!

どう動くか、待ってるぞ!レイク!!正義の犯罪者様の力を見せろ!!」

公園で楽しそうに嘲笑して偶然居合わせた主婦に噂された。




機密レポート
『クライムキーの進化段階』

以前より、人の精神に影響を与えさらにはDNA自体を変化させ超人に進化させることが分かったクライムキーだが、さらに興味深い仮説が出来た。

それは『人の精神をキー自体が学習する』のではないか?
という仮説だ。

被験者Aになんの学習もないキー(便宜上ここでは「ブランクキー」とよぶ)を差し込み、プレイズナーを製作した。
今回は、被験者Aから進化する形でクリケットプレイズナーが誕生した。
およそ120時間キーと融合させ、被験者からキーを取り出した。

以前の報告に有る様に、被験者の精神を反映してブランクキーがクリケットキーへと進化した。
異例ではあるが、このキーをほかの被験者Bに融合させた所すぐさまクリケットプレイズナーへと変貌した。
被験者AB両名に面識はなく、精神構造も大きく違う。
これは、キーが学習した内容で他社の精神を汚染、または影響を与えたのでは、と推測される。

上手くいけば、意思を持たぬ物に、クライムキーを指すことが可能なのではないだろうか?

クライムキー研究資料から抜粋。
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