仮面ライダージェイル   作:ホワイト・ラム

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仮面ライダー映画見てきました!
個人的にはローグの、決めのセリフがかっこいいと思いました。
少しダークな感じですが、すごくグッと!!


優しい笑みを……/楽しみの為だけに

「ふ~っふ、ふん、ふん、ふぅふふふふん~、ふ~ふっふっふ、ふふふん」

 

とある部屋の中、若い青年の声で鼻歌が聞こえる。

ドイツか、どこかの民謡で、その声を聴いた楊は何処だったかな?と脳の隅で考える。

 

「フォルネウスなに――を!?」

ドアを開けると同時にした、異様な香りと光景に楊が顔をしかめる。

フォルネウスは作業を止めて、椅子事クルリと楊へと振り返った。

 

「あは!看守さん、来てくれたんだ!

いや、さぁ~、実はすんごい暇しててね?散歩がてら面白いおもちゃを見つけたから、遊んでたんだよ。

あ!ちゃんと、道具の調整もしたよ?遊んでばっかじゃないよ?」

ほら、とフォルネウスが視線を向けた先には、何かの肉塊がビニール紐で天井から潰されていた。

その肉塊は、自身の無念を撃ったえる様に、かろうじて目と分かる部位をこっちに向けていた。

 

「あ、これプレゼント」

フォルネウスが投げるのは、小さな皮のリング。

みーちゃんと名前の書かれた、動物用の首輪だった。

 

「さっきさ?おばーさんが、『みーちゃん、みーちゃん』って言いながら道歩いているんだよ。

もう、おっかしくてさ!

あ~、あの世で再会させてあげたかったな~、離れ離れはかわいそうだし……」

にやにや笑いを浮かべて、フォルネウスが腰に銃をさわる。

 

「…………」

楊はフォルネウスの言葉をじっと聞いていた。

異様な残虐行為を、一切の躊躇なく、自身の楽しみの為だけに行う姿勢は看守である楊をして、フォルネウスに対して「狂っている」という評価を出させた。

クレルは彼こそが理想のプレイズナーと語るが、一体この理想の体現者でどこの誰が得をするのだろうか?

楊には全く理解できなかった。

 

「そう……」

楊はそう言って、その部屋を後にした。

彼は楊の知っているプレイズナーたちとはあまりに大きく離れている。

フェニシオンも、ヴァレフォも、更には看守時代のダァトでさえもキーを使う者には立派な意思があった。

それはひどく利己的だが、それでも――

 

「アイツは違う……」

何処までも、何処までも、自身の遊びのために能力を使おうとするフォルネウスをみて楊が小さく顔をしかめた。

 

 

 

 

 

 

 

翌日――

約束の公園に、少年たちはやってきていた。

用事があるなどの理由で、人数は少なくなっているが、それでもわくわくと食べれる残飯を持って、犬を拾ってくれた青年との再会を楽しみに待つ。

 

「あ――きた!」

一人の少年が、角からやってきたダンボールを抱える青年を指さす。

青年もこっちに気が付いたのか、軽く手を振って会釈する。

嬉しそうな少年たちと、楽しそうな青年の笑みが交錯する。

 

(できれば……間違いであってくれ……)

祈るような気持ちで、出流が青年を見る。昨日改めて父から渡されたフォルネウスの資料をみて、出流は愕然としていた。その資料は、昨日の青年とあまりに似すぎていたからだ。

 

昨日の写真の青年はただの他人の空似だ、大丈夫だと必死に自分を納得させようとする。

そうこう、している間にも青年は少年たちの前にダンボールを置いて……

 

「ああ、みんな。よく来たね。

昨日、大急ぎで仕上げたんだよ」

そう言って、段ボールからこぼれる一つのカバン。

 

「え?」

一人の少女がカバンを手に取り、その瞬間――

 

「ひっ!?」

カバンを手元から落とした。

 

「ひっどいなぁ。犬を3匹も使って作った、カバンなんだよ?

もっとも、出来てるやつに毛皮を張っただけだけどね?」

カバンの表面につくのは、犬の顔面の皮。

悪趣味なことに、あえて形を残して元がなんであったのかを分からせる様にしている。

 

「なんで?ちゃんと、大事にするって……」

 

「い、犬欲しかったんじゃないの?」

 

「あ、うそ……こんな……」

少年たちの態度をみて、フォルネウスが満足したかのような顔を見せた。

 

「んじゃあ、逆に聞くけど君たちはさ?

本当に通りすがりの優しい人が、犬を四匹とももらってくれると思ったの?」

 

「え?」

フォルネウスの言葉に、少年たちが一様に顔を見上げる。

 

「いや、だからさ。君たちは本当に、『偶然通りかかった人』が『偶然犬が大好き』で『四匹もの血統書すらない犬を欲しがる』って思ってたのかって話!」

その言葉を聞いて、子供たちは茫然とする。

言われていればほぼあり得ない話だ。

求めた物はあまりにも、都合の良すぎる妄想で、そんな妄想が現実になったと疑いもしなかった。

 

「俺のことを普通の犬好きの人間だと本当に思ってた?

犬を殺すかもしれないとか、虐待が趣味な人とか、自分が騙されたとは毛ほどに思わなかったのかな?

んじゃぁさ、君たちは到底理解できない甘ちゃんだよね?」

 

「あ、ああ……」

 

「ぐす……ぐす……」

子供たちが、フォルネウスの言葉に涙を流し始める。

その涙を見た瞬間、フォルネウスの顔が嬉しそうに歪んだ。

 

「『えーん、えーん、いたいよぉ。みんながボクのことを飼ってくれないから、殺されちゃったよぉ……すごく痛いよぉ』……

なーんちゃってー!はっはっはっはっは!!!」

足元に転がった犬の顔の張り付いたバッグを揺らし、まるで犬がしゃべってるかの様に動かす。

あまりにも、あまりにも趣味の悪い腹話術だ。

 

「き、さまぁ!!!」

出流はベルトを巻くと同時にフォルネウスに、殴りかかった!!

許せなかった。小さな子供たちの希望を踏みにじり、醜悪な玩具を作り出し、更にその様をあざ笑う。

フォルネウスは自身の楽しみの為だけに、何の罪もない子供と不幸な子犬の命を弄んだ!!

正義を旨とする、出流の中でフォルネウスの行為は決して看過出来る物ではなかった!!

 

「変身!!」

出流は姿をシーカーへと変え、今だ薄ら笑いを浮かべるフォルネウスへと殴り掛かった。

 

「へぇ、それがライダーね?ふぅん……じゃ、()()

フォルネウスが、腰から取り出した銃を自身のこめかみに突き付け、一切の躊躇なく引き金を引いた。

 

その瞬間、地面からすさまじい衝撃が放たれ、地面の石が同時に舞い上がった!!

 

「ぐぅ――!?」

シーカーが両腕をクロスして、防御を構えると砂埃の中から何かが出てきた。

 

『はぁ……なんて、気分が良いんだ……』

ガシャガシャと何かが、こすれるような音がする。

まるで金属か、固い鉱物か……

 

『くふふ、ああ、早く遊びたいよ……』

煙の中から姿を見せたのは、奇妙な怪人だった。

能面の様な灰色一色の仮面。

古いのかところどころひび割れ、口角が釣りが立った様に見える。

頭たまから生えるのは、生き物の牙の様なパーツと、婉曲した刀の様なパーツ。

その二つが、鬼の角の様にも見える形で生えている。

体はファンタジーにある、龍の鱗を加工した様な鎧で、不思議な生物感がある。

まるで西洋の部品を使って鎧武者を作ろうとしたかの様な姿だ。

右手に持つのは短い銃剣、左手には波打つ刀を持つ剣を逆手に持っていた。

背中には、非対称のエイの様なパーツを背負っている。

統一性のない、酷くごちゃごちゃしたデザインだ。

 

「なんの、プレイズナーなんだ?」

出流がフォルネウスをみて、相手の能力を探ろうとする。

 

『あっはっはは!ちょっと、難しいかな!?』

フォルネウスが地面を蹴ると、背中の左右非対称なエイの様なパーツがうごめいた。

そして、地面を走り、左手の剣ですれ違いざまにシーカーを切りつけた!!

 

「はやい!?なら距離を――」

 

『させる訳ないでしょ?』

フォルネウスが右手の銃を、シーカーに向けて打ち込んで見せる。

当たった地面が、衝撃で再度えぐれる。

 

「なんて奴だ――!」

威力もさることながら、武器の威力、行動速度、バランス自体がとても高いレベルで存在しており、弱点らしい弱点が見えない相手だった。

 

『うふふふ……良いね、良いね!!

これぞ、人間の力の歴史そのものだ!!』

 

「歴史、だと?」

再度切りつけてきたフォルネウスの攻撃を、シーカーレンズで受け止める。

 

『そう!奪って、壊して、排除して、傷つけて、恨んで、憎んで、害して、害して、害して害した、人の争いと憎しみの連鎖が俺の姿――!

そう!!俺は『ヒストリー(歴史)』プレイズナーさ!!』

フォルネウスが宣言すると同時にシーカーを蹴飛ばした。

二人の間に距離が出来る。

 

「なるほど……人の、歴史か……」

荒くなる息を整えつつ、出流がじっくりとフォルネウスを観察する。

鎧に、骨に、侍に、銃……一見なんの整合性もないこれらの物も、人の争いの歴史に立った道具たちと言われれば納得できるのも不思議である。

人が生きる上で、他人を蹴落とし、何食わぬ顔で奪っていった物の集合体が、このプレイズナーだ。

 

『けど、なーんか、あんたむかつくよな?

なんでも無いって、済ました顔してさ――少し、いじめてやろうか』

フォルネウスがにやりと笑うと、左手の剣を腰の鞘にしまい、何処からかキーを取り出し銃弾を込める様に、右手の銃に押し込んだ。

そして、それを涙を流す少年たちへと向けた。

そして――

 

「やめ――なに!?」

容赦なく引かれる、フォルネウスの弾丸。

その弾丸は普通の弾丸とは違い、カーブを描きながら不規則な軌道を見せて飛ぶ。

 

『さぁ、面白いものが見れるよ?』

フォルネウスの弾丸が、地面に落ちていたバックを打ち抜きそのまま、3人の少年たちの胸を撃ちぬいた!

 

『殺しは、しないさ――『強制解放』』

 

「あ、ああ……ああ、『くるしい、く」るしいよ……ぐるしいよぉぉおおおおお!!!』

撃たれた少年たちが、体を爆発させるかの様に巨大化させていく。

 

『あああ……あおぉおおおお!!おおおおおお!!』

その姿は3頭を持つ犬、地獄の番犬のケルベロスを思い浮かべさせる。

だが、4つの足は血も肉も剥ぎ取られ無残な骨の骸のみ、3つの頭はすべて皮を剥ぎ取られ、ひきつった筋肉の束が醜い笑みを浮かべている様に見える。

 

「なんだ、コレ……こんな、うわ!?」

怪物の爪が、地面を引き裂きシーカーが後退する。

 

『わぁああああああああああああああああんんん!!!!』

犬の咆哮にも、子供の叫び声にも聞こえる叫びを放ちながら怪物があばれる。

 

「やめろ……こんな事――ああ!?」

とっさにシーカーが怪物に組み付くが、前足で振り払われてしまう。

 

「なんで、こんな……非道なことが出来るぅ!!!」

 

『おもしろいだろ?被害者ズラした奴らを……おもちゃに変える。

あはははははは、最高だろ?なぁ!?』

異形と成ったフォルネウスの笑みが、シーカーと怪物をせせら笑う。

残酷も、無常も、非常の自身の楽しみの為と笑い捨てた。

 

「ぐぅあ!?」

怪物の3つの首がシーカーの胸に食らいつく。

 

バキバキと、アーマーが砕ける音がする。

 

『ははははははは!!砕け!!かみ砕けぇ!!』

フォルネウスの笑い声が響くその時――!!

 

『ヴォう!!うぉう!!』

一匹の機械の犬が、怪物に飛び掛かる。

それに驚いた怪物が口からシーカーを落とす。

 

『なんだよ?せっかく、楽しく遊んでたのにさ?』

フォルネウスが、ゆっくりとこちらに向かって歩いてくる男をにらむ。

 

「遊び?これが?お前、センスはゼロだな――

なら、俺が面白い遊びを教えてやろうか。

人間の範疇から、転がり落ちた怪物を狩る遊びだ」

機械の犬――バイトを手にして、ダァトが不機嫌そうに口だけ笑った。




次回につづきます!!
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