仮面ライダージェイル   作:ホワイト・ラム

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今回は、この作品を書き始めてから最もやりたかったシーンの一つが出ます。
ちなみに元ネタはメロンの君のとあるセリフから。


100と101番目の正義

「変身」

ダァトの掛け声に反応して、バイトがその手に収まる。

怪物を視界にとらえ、悠然と歩きながらいつの間にか出現していたバックルを撫でる。

 

「さて――修理後の初試運転だ。行くぞ?」

 

『ヴォウ!!』

バイトの鳴き声と共に、ダァトがバックルにバイトを押し込め3つの突起に3つの頭を噛ませる。

 

『グルルルルルルァ!!!』

怪物が、口から火を放ちダァトを包み込む。

その炎の中から駆ける影が一つ!!

 

微温(ヌル)いな――それで俺を殺せる可能性は――ゼロだ」

ハウンダーとなったダァトが手に持ったバイトを巨大な怪物に叩きつける。

額に一撃を食らい、怪物が後退する。

 

『あぁああん!!』

人とも獣とも違う、声を出して怪物がのたうち回る。

その光景を見ていたフォルネウスの口調が変わった。

 

 

『俺の新しいおもちゃが……なに物だ!?』

目のまえの光景に、フォルネウスが目を見開く。

ハウンダーの拳は怪物の腹に突き刺さり、ゆっくりと手を引き抜いていく。

その先には――

 

「ずいぶんと、詰まらんな」

 

パキンッ!

 

指に握られたカギが真っ二つに割れた。

 

「これはプレイズナーですらない。

クライムキーを利用した、疑似的な物……それっぽくでっち上げたに過ぎないな」

ダァトの前で、怪物から戻った少年が薄目でシーカーの姿を追う。

 

「しっかり見ておけ、アイツは――お前たちの為に戦おうとする。

そうだろ?あとは()()()()

ダァトの言葉に出流が力強くうなづいた。

 

 

 

「なんでだ……なんでこんな事が笑ってできる?」

出流がフォルネウスに向かって言う。

変身もしないで、幹部クラスのプレイズナーに向かっていくなど、自殺行為以外のなにものでもない事など、ライダーである出流にはわかっていた。

 

『なんで?なんでって?()()()?』

フォルネウスが不思議そうに、辺りをきょろきょろ見回す。

 

『俺が子供たちに本当のことを教えたのを言ってる?

それとも、犬をバックにしたこと?

あ、そっか!俺が子供と犬の死体でプレイズナーを作ったことを言ってるんだろ?

まぁ、自分の力を試したかったってもの、あるよ?

新しいおもちゃで遊んでみたくなったんだよ』

そう言ってフォルネウスが、自身の手に持つ銃と剣を振る。

 

 

「お前の過去――少し、調べた……

人美の過去の経歴を含めて。

お前の父親は警官だった!!厳しくも優しく、そして多くの人に頼られていた!!

お前はその姿を見て医者を目指して努力してたんじゃないのか!?

父の様な、警官の様な、人を救う存在に成りたかったんじゃないのか!?」

出流が叫ぶ。びりびりと空気が震えフォルネウスが手の中で転がしていた銃を止める。

 

『はぁ?んな訳ねーじゃん!!

なに?親父が警官だから俺もその姿にあこがれて、『人を救う為に~』なんて?

あっはっは!!何だよそれ?べたべたじゃねーか?

なにドラマの見過ぎ?ちがうよ、ちがう。

俺が医者に成りたかったのは、生きた人間の内蔵を触ってみたかったからさ』

 

「貴様……!」

出流が、絶句する。

目の前に居るのが同じ人間ではないと思った。

『怪物』自然にそんな言葉が頭に浮かんだ。

そうだ、こいつは怪物だ。プレイズナーとも人間とも違う。

人の心が無い怪物だ。

 

『正義だ善意だ優しさだなんだって、くだらない!!

いいかい?たった一人の悪意には、百人の善意を壊す力がある!!

いくら、正義が束になっても無駄なんだよ!!』

フォルネウスが、波打った刀身の剣を振り上げ、出流を狙う。

 

「むだ……?

正義が、善意が、優しさが?」

一瞬だけそうだと思った。

無慈悲に捨てられた犬たち、人通りの多い所に捨てたのはきっと飼い主の最後の善意だ。

その犬たちを見つけた子供たち、小さな小さな事だが犬の為確かに悩み、解決策を考えてくれた。

餌を与え、新たな飼い主を見つけようとした。

確かにつながっていた、優しさが、善意が。

だが――それをフォルネウスのたった一人の悪意がすべてを踏みにじった!!

 

『そぉうさ!!100人の正義は、たった一人の俺によって壊される!!』

 

「違う!!絶対に違う!!!」

出流がバックルに、シーカーアイを押し込み、シーカーへと変身した。

そして、素早くシーカーレンズを引き抜き、フォルネウスの攻撃を止めた。

 

「無駄じゃない。確かに優しさは!!善意はあった!!」

フォルネウスの武器を振り払い、今度はシーカーがフォルネウスを狙う。

再度刃と刃がぶつかる音がする。

 

『はぁ?無駄に決まってるだろ?何度正義が集まっても!!無駄!!』

フォルネウスの右手の銃がシーカーを撃つ。

 

「ぐぁああ!?」

火花が飛び、シーカーが離れる。

 

『二度と、正義なんて言えない様にしてやる!!』

 

ドン!!ドン、ドン!!

 

二度、三度と銃撃を放つフォルネウス。

シーカーの姿が、硝煙に包まれ見えなくなる。

 

『はっはっは!助けに来る奴なんて、もういない!!

都合のいい、正義の味方なんて――うぇ!?』

煙の中から、何かテープの様な物が現れフォルネウスに巻き付いていく。

 

『これ、は!?』

 

「シーカーメジャー、時にムチ、時に拘束用ロープになる優れものだ」

体を縛られたフォルネウスは、体に力を入れ始める。

シーカーメジャーがみしみしと嫌な音を鳴らし始める。

 

『そんなんで、とらえた積りかよ!?』

フォルネウスがシーカーメジャーを引きちぎる。

そして、シーカーに向かって銃を構えるが――

 

『どこに!?』

一瞬で、姿を消したシーカーを探すフォルネウス。

その答えは――

 

「俺は、ここだ!!」

頭上から聞こえる声。

そこにはこっちに、足を向けて跳ぶシーカーの姿があった。

 

「お前が、100人の正義を壊すなら、俺が101人目加わろう。

お前が、1人の正義をつぶすなら、俺がたった一人でも100倍の力で守ろう!!

お前に、奪わせはしない!!俺はライダー!!シーカー!!100と101番目の正義だ!!」

シーカーの蹴りがフォルネウスに叩き込まれる!!

エネルギーを纏い、フォルネウスが後退していく!!

 

『ぐぅ、さ、させる訳ないだろ――!?

フン!!フン!!』

フォルネウスは蹴りを受けながらも、銃と剣を叩きつけてシーカーを攻撃する!!

 

「うぉおおおおおおおおお!!!」

 

『は、な、せぇえええええ!!!』

 

ドォオオオオオオン!!

 

爆発が起こり、両人の姿が消える。

 

「ぐぅあ……はぁ、はぁ……」

変身が解けた、出流が地面を転がる。

服は所々焼け焦げ、顔からは血を流している。

 

『へぇ……頑張った方じゃない?』

煙の中から、フォルネウスが多少足を引きずりながら、姿を見せた。

 

「お前、まだ……」

出流の前で、フォルネウスが笑みを浮かべ――

 

『じゃあ――トドメ……あれ?』

シーカーの前に振り上げた腕に、火花が走った。

それと同時に、フォルネウスの表皮の一部が崩れる。

 

『な、なんで?』

僅かな驚き、シーカーの攻撃は決して無駄ではなかったのだ。

 

「はぁはぁ……はぁ……はぁ……」

ひるむフォルネウスの前に、シーカーがゆっくりと立ち上がる。

こうなった原因は主に二つ。

一つはフォルネウスが自身の体の力を過信したこと、プレイズナーとして能力は確かにあるが、それは今まで戦いを知らなかったからだ。

出流は多くの戦いを、シーカーとして積んできた。

だが、経験値という明確な差がこの結果を生んだのだ。

 

『あ、あああ……くそ、力が……きえる……!!!」

フォルネウスが倒れる瞬間、誰かが走ってきてフォルネウスを受け止めた。

 

「お前は……!」

 

「いやな顔だ。出来ればもう会いたくなかったな」

出流に、ダァトまで声を上げる。

その視線の先には――

 

『どうも、皆さんごきげんよう』

見るだけでおぞけと不快感が湧きだす怪人、クレルだった。

 

『どうも、ずいぶん治療に時間が掛かりましてね?

いや、おかげでもうすっかり大丈夫ですよ』

嫌なニヤニヤ笑いを浮かべて見せる。

無事をアピールするかの様に、手まで降ってくる。

そして、抱きかかえるフォルネウスに視線を戻す。

 

『さて、やられはしましたが、貴方はちゃんと仕事を果たしました。

無能な楊や、裏切り者のダァトより優秀ですよ?』

 

「仕事……?」

フォルネウスが、弱弱しく尋ねる。

 

『そおう!警察に因縁がある人物となれば、必ずシーカーが出てくるはず。

私はそう思いました。そして事実その通りとなった』

クレルがシーカーバックルに視線を向ける。

 

『対看守用の能力を持つ、シーカー。

それを弱らせること……そして、弱ったシーカーを処分する事!!』

クレルが手袋を紫に染めていく。

一滴落ちた、紫の液体が地面を嫌な臭いを出して、焦がした。

 

『死になさい……!!』

クレルの手刀がシーカーバックルに当たる瞬間、炎がクレルを焦がした。

 

『くは、くははは!!ようやくお出ましですか!!

ええ、ええ、そうでしょうね?

このバックルが、壊されると困るのは、貴方だ!!』

クレルが目をむく先。そこに炎を守った骸骨の怪人が立っていた。

忘れるはずはない。あの炎を纏う姿は――

 

「フェニシオン……?」

プレイズナーの幹部である、フェニシオンがクレルと向き合う様にして立っていた。

 

『ああ、やはり貴方は警察と繋がっていましたね?

それどころか――』

 

「うおらぁあああああ!!」

クレルの視界から、ジェイルが蹴りを放ってきた!!

咄嗟にその攻撃をクレルが回避する。

 

『レイクの脱走にも、かかわっていた……

そう!!ライダーたちのすべての元凶は貴方だった!!

ようやく、尻尾を掴みましたよ?』

ちらりとクレルが、周囲を見回す。

ダァトにジェイル、そしてフェニシオンを相手に、フォルネウスをかばい戦うのは無謀だ。

クレルの選択は早かった。

 

『では、また会いましょう?仮面ライダーと、裏切り者の皆さん』

恭しく、馬鹿に丁寧なポーズでクレルがお辞儀をすると、糸で絡めとったフォルネウスを抱えたまま、伸ばした糸を伝って逃げていった。

 

「クソ!逃がしたか……

けど。まさか、あんたがシーカーの開発者だった……いや、半分気づいてたのかもしんない。

こんなベルトを作れるのは、少なくとも『監獄』のメンバーだって」

玲久が出流の持つシーカーバックルをみて、そうつぶやいた。

 

「ふっふっふ……苦労したぞ?

監獄の中から外に、アクセス出来る人間と接触して少しづつ設計を外に出して……

長かった……わしが悪魔の力に手を出してから後悔していた。

だが、ようやく贖罪が出来る」

フェニシオン――否、老人は懐かしむような、何とも言えない表情をしながら笑みを浮かべた。

 

「ようやく……ようやく役者がそろったという事じゃな」

老人の目の前には、3人の青年たちが立っている。

監獄から抜け出たライダージェイル。

看守の力を持つ裏切り者ハウンダー。

そして、老人が心血を込めて作り上げたシーカー。

そのメンバーに、老人が目を細める。

 

「玲久……お前の今の相棒……そう、岩さんとか言ったか?

こうなってしまえばアイツももはや、部外者とは言えないか……

なるべくこの件には誰も関わらせたくなかったが、仕方ない……

話す時が来た様じゃな……『ジェイル』の真実を」

フェニシオンの言葉に、皆がうなづいた。




ビルド終わっちゃったな……
龍騎みたいな、全員復活エンドで主人公たちだけはあの世界で生きていく……
少しほろ苦いですね。

毎回思うんですが、ヒーローが精いっぱい命を懸けて救った世界にも、多分多くの悪人はいるんですよね……
つぎから出続ける悪人たち、ヒーローは何時まで命を懸けてそいつらと戦えばいいんでしょうか?
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