仮面ライダージェイル   作:ホワイト・ラム

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大分時間が空いてしまいましたが、投稿です。
今回と次回をもって、過去編は終了の予定です。


マッドバースデイ/輝ける者たちへ

「……また失敗だ。やはり土台無理な話なのか?」

 

「ああ、あの『ジェネラル』の力は大きすぎる」

 

「今回の帰還者はゼロ……ふむ、手段を変える必要があるな」

それぞれ3人には、素晴らしい才能とそれに見合った社会的地位があった。

だが、それはここでは関係ない。

〈監獄〉彼らはこの場所をそう呼んでいた。

25年前に突如出現したこの場所を、3人は合法的に入手し、それぞれの持つ金と権力と才能を駆使して、日本でも有数の凶悪犯罪を犯したものを集める一種の刑務所を作った。

 

「おい、何をしてる?」

 

「過去のデータを見ているんだ。使えるものがあるかもしれない……」

一人の人物がパソコンのキーボードを叩く。

そこにはここ数年で集めた、被験者たちの膨大なデータがあった。

そう、囚人たちは被験者として使われていた。

もともと重い罪を負った者達だ、一生外には出られず、これは半場狙った事だが、立地条件的に、会いに来る家族や友人がいないであろう人たちだ。

人の来ない孤島にして、被験者は犯罪者。その事実がゆっくりと3人の人間らしい心を麻痺させていった。

その結果、少しづつではあるがおかしくなっていった。

 

 

 

「おい!なんだこの被験者の数は!!」

その中の一人。咲良が、とあるデータを見つけ大きな声で実験担当の仲間を呼びつける。

 

「ん?一体どうしたんだ?」

 

「このデータの事だ。おかしいと思ったんだ、なぜこんなにも被験者がいるのかって……

お前ら意図的に、家族の居ない奴を裁判で凶悪犯にしたて上げたな!?」

咲良が嘗ての親友に詰め寄った。

 

「ああ、そうだ……地面の間にあるジェネラルの扉へ人を送り込む事すでに300人を超えた。

だが、戻ってくる人間は稀で、意識を残した奴は混濁してまともな会話も不可能。

もっと、データがいるんだよ!!じゃ、仕方ないだろ?小さな事件を起こした奴を、消えて気にする者が居ない奴を、連れてきて使うしかないだろ!!」

 

「貴様……!!」

咲良が憎しみを込めた顔をして、男をにらむ。

 

「だが、進歩が無かった訳じゃない……いい物を見せてやろう」

男が、ポケットから一本の古ぼけたカギを取り出した。

 

「なんだそれは?」

 

「ジェネラルの扉の中にある物質を研究して作った物だ。

悪意という不確かな物を形にすることが出来る。

そして、人間の持つ本来の悪意と過剰反応することで……」

男は自身の胸にキーを差し込んだ。

その瞬間、男の体が変わっていく。ジェネラルの持つ悪意とその人間の持つ願望が融合して、体の形すら変えて異形へと生まれ変わる!!

 

『はぁ……私はこの姿を、「プレイズナー」と呼ぶことにしたよ。

今回の実験では、数名の被験者に、この「クライムキー」を持たせることにする。

いや、今はこのキーをより強力に扱える道具も制作している最中だ』

 

「オマエ、なんてことを――」

 

『臆病野郎も、もうすでにこの力をみているぞ?

喜んで協力してくれるそうだ』

男は異形と成った顔をして、笑って見せた。

酷く醜くゆがんでいると、咲良は思った。

 

「!?なんだ!!」

フェニシオンの笑みに反応するように、〈監獄〉全体が揺れた。

その衝撃で、にらみ合っていた二人が驚くと同時に……

 

『この感覚はなんだ?まさか、「俺と同じもの」が?』

全身を突き刺すようなぞわっとした()()()

一瞬前の何かと変わっているのが、明確に理解出来た。

違うのだ、二人はつい先ほどから、ここにはこの世界にあってはならない物が出現したと、本能で理解出来た。

二人は何も言わずに、ジェネラルの居る場所へと走り出した。

 

 

 

 

 

「ひ、ひぃ……!」

一人の男が、尻もちをついて扉の前にいた。

地面に存在する巨大な扉は少し開いていて、そこに無数の人間を実験として送り込んでいた。

皆、帰らず、あるいは精神を病んだものあるいは、体の一部が異形化している者もいた。

全員、まともに話す事は出来ず、ジェネラルの扉の中は未だに分かっていない事が多い。

 

『おや、何をほおけているんですかね?』

一人の男が、立って見下ろしている。

言葉のすべて、態度のすべて、見ためのすべてが不快感をあおる男だった。

 

『ああ、貴方たちですね?私を迎えてくださったのは?

私は……クレル。ジェネラルの使いです。

以後お見知りおきを』

クレルと名乗ったその男は、行儀よくお辞儀をした。

 

 

 

何時からか狂っていたその、〈監獄〉はクレルの登場で完全に狂ってしまった。

『さぁ、囚人たち!今日もジェネラル様の為に、その命を捧げなさい!!』

 

クレルの合図と共に、拉致された人間たちに黒いガスが注入される。

その瞬間、囚人たちは皆、音もなく顔を苦悶に歪め、白目をむき口から泡を吐いて、2度3度と痙攣して、それっきり動かなくなる。

 

クレルはそれを満足気に見て、ひとりひとりに鍵を突き刺していく。

すると、被験者たちは皆ミイラの様にしぼみ、残ったのは少しだけ装飾が派手になった鍵が数本残る。

 

『ああ、残念。今回も生き残る人間はいなかったですね。

けど、大丈夫、まだまだ被験体はまだいますから』

〈監獄〉内部はもはや、人間の住まう場所ではなかった。

この世に地獄が有るなら、ここがまさにそうなのだろう。

 

「くそっ!どうなっているんだ……みんな、なにも思わないのか?」

咲良は他の二人に話すが、どちらも態度はそっけない。

 

「い、いかんとは思う……けど……」

 

「ここまでやってきた俺たちに、もう戻る手段は……」

そう3人は皆、戻る家がり、彼らを支えにする者たちが多くいる。

彼らは自らの権力を失う事を恐れているのだ。

そして、もう一つ。それは純粋にクレルに対抗する術が無いという事。

クライムキーを使えるのは現在フェニシオンのみ、だがそれも戦うような姿ではない。

事実上〈監獄〉は、クレルの支配下にあったのだ。

 

 

 

「…………」

咲良が無言で施設の底にあるジェネラルの巨大な扉を眺める。

今も闇の中で蠢く巨大な怪物。そしてそれを渦巻くかの様に、螺旋状に積み上げられた階段は自身の罪の重さを示している様だと思った。

 

「あれ、咲良さんまた来た?」

 

「暇な奴だ」

 

「あ、え?」

急に投げかけられた言葉に、咲良が顔を上げる。

そこは檻の目の前。D1~10と番号がうたれ、動物の様に管理させる。

そこは、ジェネラルの被験体の中でも比較的若くて、軽犯罪または攫ってきた人間を閉じ込める場所だった。

 

「やぁ……二人とも……気が付いたら、ここに来てしまったようだよ……」

たははと力なく笑う咲良。

この檻の2人の住人は、〈監獄〉にいて今も目が死んでいない貴重な人材だった。

彼らには名前は無い。ただひたすら番号で呼ばれるのみだった。

 

「まぁ、いいや。俺もダァトも待ってたし」

 

「俺は待ってなどいない。嘘をつくなよレイク」

少年の言葉に青年が皮肉に答える。

この二人の名は咲良が付けた。

元の名前など憶えていないという事から、檻の番号から付けたのだ。

D10でダァト。D09でレイク。

10人いた檻の住人ももう彼ら2人だけに成ってしまった。

少しだけの短い会話。だがそんな二人の人間らしい会話は咲良にとって、この監獄で唯一人間らしい事を出来る場所だった。

「じゃあ、私はそろそろ行くよ」

 

「ばいばーい」

 

「もう来なくていい……」

二人の声を聴きながら、咲良が歩き出す。

純粋な、邪推すらなく話せる貴重な間柄の人間。

それは、咲良にとって彼らは守るべき者たちと認識させていた。

 

「ならば……止めるしか……」

咲良が〈監獄〉にある隠し部屋に座り、ある物を見る。

無数の機械が散乱する場所にある、監獄の檻を思わせるバックルに、扉を開くための鍵穴。

それは、ジェネラルのキーの力を人体に安全に使用する為のフィルター。

悪意ある力から、悪意をろ過し、正義をなす為に作られた力。

 

凡そ、数時間程機械をいじっていて、咲良が一息ついた。

 

「ふぅ……一応は完成という事かな……」

一本の鍵を机に置き、動作の確認をする。

おおむね問題は無い様だ。

 

「出来るか?囚われの俺に……」

そのバックルは、囚えるバックル。

封じ込め、そしてプレイズナーを罪から解放するバックル。

 

「明日だな」

明日、咲良は監獄の支配者、クレルに、ひいてはその背後のジェネラルに対してクーデターを起こすつもりだった。

クレルの持つ、プレイズナーを人間に戻す技術を写し取るのに、ずいぶんと時間が掛かった。

最初は小さな、悪意だった。

だが、その悪意は膨れ上がり、今は多くの者を巻き込む嵐となった。

 

「私が、止める!!」

そう決心したとき、悲鳴が聞こえてきた。

咲良はその声に、覚えがあった。

 

「レイク……レイク!!」

悲鳴の主を聞き分け、ジェネラルの控える地下へと走る。

 

 

 

 

 

「うわぁああああ!!あああああ!!離せ!!はなせぇ!!」

 

『良いですね。良いですね。実に良いですよ』

鎖で縛り付けたレイクを見下ろし、クレルが笑う。

その視線の先には、同じく鎖で縛られたダァトがクレーンによって吊り下げられていた。

クレーンの下には、ジェネラルの潜む扉の穴の隙間。

 

「ダァト!!ダァト!!」

レイクが声を上げるが、ダァトは黙ったままだ。

微かに動くが、大けがを負っているのが分かる。

 

『……例のベルトを』

 

『ああ、解っている』

クレルのそばに控える怪人が答えた。

 

「っ!お前……まさか」

 

『ヤァ、サクラ。ヨウヤクワタシモ、コノスガタ二ナレタ』

それは彼らのもう一人の友人の姿。

彼もまた力におぼれ、クライムキーによって怪人へとなったのだろう。

 

『では、実験を始めましょうか?』

クレルが黒いドライバーをダァトの腰に巻いた。

そして、手の中で何かを弄ぶ。

 

「それは……?」

 

『バイトと私は呼んでいます。今日の実験の為に作ったメカでジェネラルの力を吸収してキーを成長させます。

もっとも、ジェネラルの力は強すぎるので、人間をクッションに挟まなくてはいけませんがね?』

それは奇しくも、咲良の研究に近い技術だった。

咲良のドライバーがキーを制御して、人間に使えるようにする物なら。

クレルのドライバーは、人間を制御して、キーを守るために使う物だった。

近くても、考え方はまるで逆だった。

 

『最悪、ライブモードが有るので自力で帰って来れるのが強みです』

面白そうにクレルが喉を鳴らす。

 

『さぁ、貴方の友人の晴れ舞台です。ゆっくり見ましょう?』

クレルが指を鳴らすと、ダァトが扉の中へと落ちていった。

 

「ダァト!!ダァト!!!おい!!離せ!!友達なんだ!!

あいつは、俺と一緒にいてくれた!!大事な!!」

レイクが張り裂けんばかりに、声を上げる。

だがクレルは笑うばかり。

 

咲良がぎゅっと、拳を握った。

 

(耐えるんだ……!

今は、もうじき、システムは完璧になる。

まだ、不完全なシステムじゃ……勝てないんだ……)

完全に勝てる保証がない。それを理由に咲良は動くのをためらった。

 

『ああもう!うるさいですね?つぎは貴方の番ですよ?

ジェネラルの中はとても素晴らしいですよ?心地よい悪意の世界です。

貴方も私と同じになりましょう?罪に怯える人間達から、羽ばたきましょうよ?

この、悪意の力で……え?』

クレルが目を見開く。

それは自身の目の前に、見た事もない灰色の人物が立っていたからだ。

仮面の様なバイザーに覆われた目。全身を走る薄い灰色と濃い灰色の2色の灰。

その男の蹴りが、音もなくクレルの顔面を蹴り飛ばした!!

 

『ぐぁあ!?なんです、一体貴方は!?なんですか!!』

 

『咲良……?』

 

『なにぃ!?』

怪人の読んだ名にクレルが目を再度見開く。

咲良がいない。そして目の前に武装した戦士がいた。

 

「俺は、俺はこの悪意の渦の中に縛られた者たちを助ける戦士だ!!!

今だけは、俺は臆病な鶴自 咲良ではない!!

俺は自らの罪を償い、罪を許す者!!彼らの輝きを守る者!!仮面ライダージェイルだ!!」




少しづつ見知った名前が出てくると、時間軸が近づいてくる気がしますよね。
なかなか時間の矛盾が出ないようにするのは、難しかったり……
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