仮面ライダージェイル   作:ホワイト・ラム

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さて、この物語ずいぶん進んできましたね。
大体5話前後で終了の予定です。
あくまで予定なので、変わる可能性は十分ありますが……


残酷な真実

「出流本当に行くのか?」

目栗警視総監が、自身の息子である出流に聞く。

 

「父さん……ああ、俺は行くよ。玲久も同じ考えだ」

自身の家の中、出流が準備を進める。

 

フェニシオンが何者かに始末されたその翌日、出流はとある港町に一隻のクルーザーを用意していた。

データの解析は終わり、肝心のジェネラルに対抗する技は無いがそれは現在シーカーが持っている『対看守用システム』を使うしかあるまい。

 

「出流。お前が出る必要は無いんだぞ?」

 

「父さん、俺はもう決めたんだ。シーカーの力を使って、悪を倒すって……

俺、初めてシーカーになった時より成長してるハズだからさ。

見ててほしいんだ、俺が立派に正義の為に戦う事」

 

「正義か……お前は昔っから正義感が強かったもんな……」

その言葉に、出流が少し言いよどんだ。

 

「けど、父さん。俺、正直分からなくなってきてるんだ……

最初は玲久も犯罪者だって思ってた。けど、それなりに理由があって……

その他もそうだ、プレイズナーはみんな悪だって思ってたけど、みんな悲しみが有って、みんな変えたい現実があって……どうしても正しいだけじゃいられない時に――

悪意が心の隙間に入り込むんだ……ひょっとしたら、悪のプレイズナーなんて居ないのかもしれない……みんな、ジェネラルってやつに利用されてるだけなんじゃないかな?

――いや、すごく悪い奴も実際いたけど……」

うまく言えないけど、と出流が言葉を濁した。

 

「……いいさ、いいさ。お前はお前の考えに従え――

それより、明日行くんだろう?集合場所とかはどうした?」

 

「まだ、玲久と人美には伝えてない。何処から情報が洩れるか分からないしな。

けど、いつでも出られる準備はしておいてくれって言ってある」

 

「そうか……船、港にあるんだよな?」

 

「ああ、そう、例の港だ」

最終確認とばかりに、二人がうなづき合った。

ジェネラル達の居る『監獄』の場所の詳しいデータは、すでにフェニシオンが教えてくれていた。

出流が用意した、船はすでに自動運転で目的地まで行ける様になっている。

あとは、メンバーで乗り込んで戦いジェネラルを倒すのみ。

 

だが、それは勝率の低い戦いだろう。

玲久は新たな力を手にしたが、出流はパワーアップが叶わなかった。

ダァトも仲間にしたいが、目栗の用意した隠れ家からダァトは姿を消してた。

 

現在考えられる作戦としては、看守であるクレルを出流が押さえジェイルがジェネラルの破壊するという物だ。

 

「出流、疲れただろ?明日に備えて寝ろ」

目栗警視総監が出流を促す。

親としての心情は息子を危険にさらしたくないのだろう。

だが、出流の意見を尊重する気らしい。

 

「ありがとう――父さん」

目栗警視総監が出流に笑いかけた。

 

「――――雨が降ってきたな、嵐が近いか?」

降り始めた雨を見て、目栗はつぶやいた。

 

 

 

 

 

数時間後――目栗は港に立っていた。

「じゃ、()()()()()

 

シュボッ!

 

目栗が手にしたライターを地面に落とす。

雨が降っているが、何とか地面に敷いた火薬の上に着火した。

その炎は一気に大きくなり――港の船に引火した。

 

パチ、パチ……

 

夜の闇が、船の燃える炎で明るく照らす。

その炎は雨で消える事もなく、大きく大きく燃え上がった。

 

「その船は、俺が用意したフェイクだよ。船には変わりないけど、本命の船は別の所にある。

そして、ここにその船が有るのを知ってるのは、それを用意した業者以外では――

たった一人しかいない。そうなんだろ?父さん」

雨の中、出流が目の前の人物に指を突き付ける。

探偵が犯人を指し示す様に、だがその表所は暗く重い。

 

 

 

「いたのか――出流……」

 

「出来れば、居て欲しくなかった。間違いであった欲しかった……

けど、けど――間違いじゃないんだね?」

雨がひどくなり、お互いの顔は見えない。

だが、親子である二人にはお互いが誰だかわかる。

 

「隠しカメラだな?フェニシオンめ……」

 

「ああ、そうだ……フェニシオンは、用心してた。

あの人は何年もかかって自身の正体を隠すと同時に、研究結果を隠す程の慎重派……

当然――父さんの正体も……」

フェニシオンの用意していた隠しカメラ。

出流は以前そのことを教えられていた。フェニシオンが玲久に新たな装備を用意すると同時に、フェニシオンは自身の命を餌にして万が一プレイズナーが攻めてきた時用の罠を用意していたのだ。

 

「くっくっく……はっはっは……はぁーっはっはっは!!

見つかってしまったね。『あーあ、残念だよ」ダッテ、オ前二ばれナイ様二、必死ダッタンダゾ?』

目栗警視総監の姿が変わる。

浮かぶのは球体。それぞれに接続されるようなコード。

そして、その球体に目や口が浮かぶ。

 

以前、ベリアル事件の時に見たプレイズナー。

フェニシオンを殺した『臆病者』と呼ばれた男のプレイズナー。

 

ダンタリオンが出流の前に立ちふさがった。

 

「うわぁあああああ!!変身!!」

緑の閃光が走り、出流の姿がシーカーへと変身する。

 

『かかってくるが良い』

ダンタリオンはもはや声すら変えず、目栗の声のままだった。

 

「うわぁああ!!おぉおお!!」

シーカーレンズを振るい、ダンタリオンに切りかかる。

だが、ダンタリオンは束にした触手であっけなく受け止める。

 

『ヨワイナ』『弱イ』『あいてにもならないよ』

ダンタリオンの球体にある複数の口から、笑い声が漏れる。

 

「ああああああ!!わぁああああああああ!!あああああああ!!」

声が張り裂けんばかりに、出流が叫ぶ。

 

『うるさいぞ』

ダンタリオンの、触手により打ちのめされシーカーが地面を転がる。

 

「ハぁ、ハァ……はぁっ――」

 

『無力』

起き上がろうとする、シーカーの顔面をダンタリオンが蹴飛ばした。

 

「ぐぅ!?」

 

『私には残念ながら、一気に勝ちに持っていける能力はない。

フェニシオンの様に火力を利用した技はないし、フォルネウスの様なキーとうまくマッチする狂気も無い、楊やクレル達看守の様な、キーに対しての絶対的な優位性もない。

残念だが出流。私はお前をこうしてゆっくり倒すしかできないのだ』

 

カッ!

 

ダンタリオンの周囲の目が一斉に光り、光線がシーカーを吹き飛ばした。

 

「うぉああ!あああ!!」

腰にあるメジャー型の武器、シーカーメジャーを取り外し剣の様に振るった。

それは縄の様に、ダンタリオンに絡みついた。

 

『フン、こんな物――』

 

ぶち、ぶちぃ……!

 

『武器にすらならんわ!!』

ダンタリオンの蹴りがシーカーを捉える。

 

「…………」

水たまりに転んだ、シーカーがシーカーレンズを落とす。

 

『どうした!?そんな物か!!それならば――消えろ!!』

シーカーをダンタリオンの光弾が打ち据えた。

一瞬、体が跳ねてうつ伏せで変身の解除された出流が倒れる。

 

『運が良いな。生き残ったか……』

 

「なぁ、なんでだよ……なんで、プレイズナーになったんだよ……父さん……」

 

『私は、オマエが生まれるより前から、プレイズナーだ。

この力――お前が初めてライダーになった時のことを覚えているか?

楽しそうにはしゃいでいたな?力を持つと楽しいだろう?

私は、その力がお前よりも大切なんだよ』

そう言って、笑い出すダンタリオン。

 

「もう、もう父さんじゃないんだな……

もう、ただの怪物なんだな!?」

 

『お前の父親の姿こそ、私にとっては偽りだ。

私はダンタリオン!!偉大なる人類を超えた種族プレイズナーだ!!』

 

「そうか……そうかよ!!変身!!」

出流がバックルにシーカーレンズを押しこんだ。

 

『オープンアーイズ!!ルッキントゥ・ザ・トゥルース!!』

レンズがはまったドライバーから、エネルギーが走り出流は仮面ライダーシーカーへ変身した。

 

「目を開けろ……真実を見ろ、か……

ああ、そうだよな。目の前の『敵』平和を脅かすプレイズナーを倒す!!

俺は、俺は仮面ライダーだ!!」

 

『こぉい!!シーカー!!』

シーカーレンズを振るい、ダンタリオンに切りかかる。

ダンタリオンは触手を使い、防御するがそれすら、切り刻まれていく。

 

「これでぇえええええ!!」

 

『させるかぁああああ!!』

ダンタリオンに、刃が刺さる瞬間ダンタリオンが、その刃を手で受け止める。

火花が散るが、両者一向に動かない。

 

『私は、私はぁあああ!!』

ダンタリオンの触手が、シーカーに巻き付く。

そしてそれらの瞳が同時に発行して――

 

かァ!!

 

全ての瞳が同時に爆発して、両者が吹き飛ぶ!!

 

『!!』

その時、爆風の中でダンタリオンはシーカーのレンズが折れるのを見た。

シーカーのシステムは詳しい。あの武器は他の装備の起動装置だ。

アレさえなければ――

 

『私の勝ち――!?』

勝ちを確信した、ダンタリオンの表情が凍りつく。

爆炎の中、取っ手の折れたレンズをシーカーがしっかりとつかむ。

 

 

 

「うぅあああああああああ!!」

取っ手の折れたレンズの先をベルトに無理やり押し込んだ。

そして、最後の技を発動させる。

ベルトから発された、エネルギーがシーカーの右足に集まる。

『シーカー・フィニッシュ!!』

 

『……ああ、やっと解放される』

一瞬だけ、ダンタリオンが笑った。

そして、一切の防御を捨てて息子の技を、受け入れた。

 

「シーカー……シュート!!」

大気を揺らすような蹴りが、ダンタリオンの触手を引きちぎり、その本体の胸を捉えた!!

そして、エネルギーを迸らせ――

 

『強くなったな……出流……ぐあ、あ……あああ!!』

ダンタリオンが爆発四散した。

 

 

 

「父さん、なんで……なんで!!」

倒れる目栗を出流が抱き上げる。

 

「ああ……負けてしまったか……私は、やはり『臆病者』だ……

怖かった……んだ……自分が、この力を失うのが……」

弱弱しく目栗が笑う。

警視総監という、重役。警察たちのトップに君臨する人物の言葉とは思えなかった。

 

「足りなかった、今の地位では……もっと、力が権力が欲しかった。

誰にも臆病者などと、いわせぬような力が……

だが、だめだな……過去からはにげられんよ……」

 

「だが、お前は決別した……私なら絶対にできない決断を下した。

臆病者の息子とは思えない、事だ」

 

「シーカーを作ったのは父さんだろ?

いや、父さん一人が作ったんじゃない。フェニシオンの協力があってこそだろ?」

 

「そうだ……私は、『監獄』に仕えながらもフェニシオンにもかかわっていた。

両方の組織の間に居たのさ……まるで、獣にも鳥にもなれなかった蝙蝠だよ……

怖かった……監獄も、監獄の加護を失うのも……だから、私は両方に味方した……

クレルにプレイズナーとして使えそうな犯罪者を見繕い、フェニシオンにはジェネラルを消す為のシステムを作るのを協力した」

 

「…………」

出流は黙り込んだ。

悪と戦えない。しかし善の為に協力をする。

なるほど、確かに臆病者だ。自身の父はどっちの道にも進めなかったのだろう。

だが――

 

「俺が生まれたよ。父さんも間違った道は俺が正すよ。

父さんが作ったシーカーで、俺が悪の親玉をつぶす!!

シーカーはそのための道具でしょ?」

 

「ああ、頼む……私が出来なかったことをお前がやってくれ……」

そう言って、目栗はチリになって消えた。

服だけが残り、雨に流され海に消えていった。

 

「父さんの思い、俺が受け継ぐからな……!!」

出流は唯一残ったダンタリオンのキーを拾いあげた。

これは目栗の罪の象徴――。

 

だが、出流の腰に巻かれたベルトは目栗の作った正義の象徴――。

二つの道具は目栗という男の功罪その物な気がした。

 

「俺は、俺の決めた道を生きる!!」

出流の言葉と共に、太陽が昇り始めた。

 

 

 

 

 

「良いのか?」

凡その事情を聴いた玲久が出流に話す。

 

「……父さんも無念も過ちも、もう見てられないんだ。

これ以上、他の誰かが間違った道に進まない様に、その大本を正すんだ」

出流が隠しておいた、船の二人が飛び乗った。

そして、朝日の中を進んでいった。




プロット段階から、ずっとやりたかったんですよね。
このネタ。それが出来て今回は満足ですね。
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