書いても書いても……
なかなか、納得がいかなかったんですよね。
『あ、あああ!!なんでだ!!なんで俺がぁ!!』
フォルネウスが、腕からガトリングを精製して、辺りに銃弾をまき散らす。
金属や、壁に当たり暗い地下の中に、一瞬だけ光源が生まれる。
『チェイン・ジェイル』
『あ――――』
フォルネウスが何かを話そうとした時、すでにジェイルの靴底が眼前に迫っていた。
「終わりだ」
「あ、ああ……ああ……」
フォルネウスの変身が解け、生身の状態となり倒れる。
体からキーが排出された。
「案外、余裕……だったか?」
「正直、岩さん狙われてたら分かんなかった……
出流はどうなったんだ?」
クレルの策略により、出流と離されてしまっているのがきつい。
戦いながら移動した結果、ずいぶんと離されてしまったようだった。
正確な位置どころか、この施設の全容すらわからない中で、それは酷く絶望的に思えた。
暗い施設の中、彼を探すのは骨が折れそうだった。
「よぉ?こんな中、散歩か?」
「!?」
「お前は!!」
壁の所、誰かが座り込んでいる。
尻もちをつき、背を力なく壁に預けている。
「ダァト!」
「レイク……お前も連れてこられたのか?」
「連れて、来られた?」
ダァトの言葉から、何があったのかを玲久が察する。
「久しぶりに、帰って来たんだが……手荒い歓迎を貰ってな。
生き残りがまだいたか……」
ダァトが、倒れるフォルネウスを見て目を細める。
「この島に人は殆どいなかった……お前が?」
「すこし暴れたが、ガタが来てな。
後は……任せていいか?」
ダァトが力尽き、倒れる。
そのそばを、バイトが心配そうに見守った。
「ダァト!」
「……心配するな、気絶しただけだ」
岩さんがダァトの首に手を当て、生存を確認する。
「囚人も、看守もほとんど姿を見せなかったのは、ダァトのせいだったのか……
このチャンス、逃す訳には行かないな!!」
「よぉし!行くぞ、指名手配犯!!」
岩さんが気絶したダァトを背負う。
決戦がいよいよ近いと、玲久は悟っていた。
「はぁ!とぉ!!」
シーカーが武器を振るい、怪人クレルに切りかかる。
クレルは爪を鋭く尖らせその武器を受け止める。
『貴方の力は、私にとって非常に相性が悪いようですね』
「ああ、そうだな!!悪のお前は正義の俺に絶対に勝てないからな!!」
クレルの爪が、煙を出し少しづつ消失していく。
『そういう事を言っているのではありません』
クレルの蹴りが、シーカーのボディを吹き飛ばす。
『はぁ、ダンタリオンもずいぶんな物を遺しましたね……
私を倒す希望?
良いでしょう!!ならば今ここで、その希望を消し去り彼の行為が全て水疱に帰す瞬間を見届けてあげます!!
むぅん!!』
全身に力を籠めるクレル。
そして、次の瞬間クレルが爆散した。
「なに!?」
湧き上がるのは、不快な生き物たち。
頭上には蝙蝠が飛び、胴には蜘蛛が糸を引き、足元には蛇が這いずり回る!!
『私は』 『ジェネラル様』 『より生み出された』
『悪意の』
『導き手』 『クレル』 『我が』 『使命は』 『ジェネラル様に』 『極上の』
『悪意を』 『お届けする』 『事』
『愚かな』 『人間たちの』 『心に入り込み』
『時に』『優しく』 『時に』『必要性を』 『持たせ』 『時に』
『誘惑して』 『堕落』 『させる』
『今まで』
『何人も』
『そうやって』 『プレイズナーを』『作って』 『きました』
『そして』
『何人もの』 『魂を』 『ジェネラル様に』 『捧げて』 『来ました』 『こんな所で』 『あなたたちの』 『くだらない』
『正義気取りに』 『負ける訳が』
『無いんですよ!!』
無数の生き物に分裂した、クレルが口々に話す。
それは、まるで生き物を使った津波の様にも見えた。
『消え』 『なさい』 『正義の使者』
「…………」
無数の生き物たちが、一斉にシーカーに襲い掛かる。
「言いたいことはそれだけか?
そんな、くだらない事が、お前の存在意義か!!」
シーカーが取り出すのは、ここに来る寸前に見つけたキー。
ソロモンの悪魔たちの中で最も後の数字である72が刻印されたキー。
72番目の悪魔、それは――
『クライムキーセット!!グレイト!!カモン!!
シーカーレンズがダンタリオンの能力を発揮する。
「行くよ。父さん……」
空中に出現するのは、無数の目玉。
それらはまるで、その小さな生き物の持つ悪意を糾弾するかの様に、にらみつけた。
そして瞳に光を溜め――
「さらばだ、悪意の伝道者!!」
『ぃいいいいぎゃぁあああああ!!!』
『あぁああああああ!!!』『ぬぅあああああああ!!!』『ごぉあああああああ!!』
『じゃぁあああああああ!!!』『はぁあああつぅああああああ!!』
クレルの破片が、光により浄化されていく。
やがて、それらの破片は一体のヒトガタ。クレルへと戻った。
「うっクぅ!?」
クレルを目の前にして、出流が膝をつく。
それと同時に変身が解除される。
プレイズナーの力を使う事を想定した、シーカーと言えど幹部クラスのキーはやはり本来の反発し合う性質もあって、ダメージがあったようだった。
「出流!!大丈夫か!?」
その時、走って来たのは玲久と岩さんだった。
あの光が目印になった様だった。
そして、3人の前にクレルが力なく、手すりにうなだれていた。
「もう、終わりだな」
岩さんの言葉に、クレルが笑った。
『はぁ、はぁ……はぁ……ようやく、ようやく揃いましたね……私は、今、この瞬間を待っていたのです』
ボロボロのクレルが何とか、立ち上がり手すりに体を預ける。
「もう、ここまでだ!!散々してきた罪を償う時だ!!」
玲久の言葉に、クレルが目を見開いた。
『償う?私が、罪を……?
貴方たちが、一体なんの権限で、私を裁こうというのか?
わたしは、解放しただけ……貴方たちの、本心を!!欲望を!!願いを!!力を!!
そして、それを我らが生みの存在ジェネラルにささげるぅ!!
それこそが、それこそが私の、使命!!
ジェネラル様に、お仕えすることが、私の喜び!!』
クレルが、懐から何かを取り出す。それは――
「バイト!?それは、ダァトの!?」
その手に持つのは、バイトそっくりの道具。
シンプルな成型色のままのデバイスだった。
『データを頂いたんですよ……この道具がどうしても必要だったんです。
いえ、必要に
貴方たちのおかげでねぇ!!』
バイトを振るい、周囲に攻撃を仕掛ける。
その余波に、玲久達がひるんだ。
『このバイトは、キーの性能を使用者に打ち込む……貴方たちのベルトの姉妹品……
くっくっくっく……はっはっはっは!!
キーの性能と!人間の悪意!!そしてそれらの相性!!
プレイズナーはその純粋な掛け算により生まれる!!
キーはジェネラルが生んだ存在!!同じくジェネラルから生まれた私も、同等!!
理解できますかぁ?ここには、たった今、ここには「最大級の悪意を持った人間」と「最高級の悪意を持ったキーに相当する存在」がそろっているんです!!』
「しゃぁああああ!!」
階段下から、巨大な体を持つ蛇が姿を見せた。
そして、大きく口を開き、下の階層で倒れているハズのフォルネウスを吐き出した。
そこで初めて、玲久はクレルがしようとしている事に気が付いた。
「やめろ!!それ以上は――」
『さぁ!!ジェネラル!!いまこそ、復活の時です!!』
クレルが自身にバイトを突き刺し、さらにそのまま気絶するフォルネウスにバイトを突き刺した!!
その瞬間、クレルが黒いタールのよ様なものに変わり、バイトを通してフォルネウスの中に流れ込んだ!!
『くひひひひひひひ!!復活、復活です!!』
フォルネウスが白目をむきながら、クレルの声で話す。
その様子はどう見てもまともではなく、完全に乗っ取られているのが分かった。
よたよたと、頼りない足取りで手すりに上る。
「クレル!!もうよせ!!」
玲久の言葉が投げかけられるが、クレルは何も変わらない。
『正義は消して悪を消滅させれない。なぜなら、人の心は容易く悪に屈するからです。
さぁ、ジェネラル!!哀れな人間たちを解放しましょう!!
正義という、偽りの仮面をはぎ取って、悪意の満ちる世界へ――』
クレルが足を滑らせ、手すりから黒い扉に向かって落下する。
その時――
『むぅおおぉおおおぉおおおぉおおおおおお!』
闇の中、扉の隙間から野太い真っ黒な腕が現れ、クレルの胴体を鷲掴みにした。
『私の中に取り込んだすべてのキーと、ドス黒い魂を持った男の体です。
お受け取りくださぁああああ”ああ”ああ”あ”あ”ああ”ああ”あ”あ”あ”あ”ああ”あああ”あ――――――――――ぐぇへ”!?』
その腕がクレルを握りつぶし、その破片が扉の間に吸い込まれていった。
数瞬の静寂が、空間を支配する。
「何が起きたんだ?奴は、おかしくなって自害したのか?」
岩さんが銃を構えたまま、クレルの落ちていった暗闇を覗く。
「!? 岩さん!!やめろ!!」
それは確信にも似た予感。
嘗てここに幽閉されていた、玲久だからこそ
「何が――!?」
ばぎぃん!!ぶちぃん!!ギチギチ!!
闇の中で、何かが暴れる音がする。
縛り付けられていた鎖を引きちぎり、この世界とソレが消して混ざらぬ様に、隔てられていた最後の壁が崩れていく音。
「岩さん、出流を連れて逃げろ。ジェネラルが起きた!!」
『おぉおおおお!!!ぉおおおおおおおお!!!!ォおおおおおおおっ!!
ライダー!!だいだだい、ライダぁ!!ら、いだぁあああ!!』
暗闇の中、闇よりも尚も濃い『黒』が昇ってくる。
こちらを目指し、決してこの世の物ならざる存在が、襲ってくる!!
拙い言葉を吐き出し、自身を邪魔した玲久と出流を狙っているのが分かる。
「岩さん、逃げろ!!」
玲久が反射的に、岩さんを突き飛ばし黒い闇の中へ身を翻す。
『ぶぅあああああおおおおおお!!』
悲鳴にも、憤怒にも、憎悪にも聞こえる悲鳴を発しながらジェネラルがジェイルを飲み込んだ。
『くっひっひっひ!無駄なことをしましたね。ここはジェネラルの体内。
全てのキーが生まれた場所。
ここは地上に出現した、地獄!!』
何処からか聞こえるクレルの声に、玲久は目をつぶった。
苦しい、寒い、ねじ切る、憎い、燃やす、妬ましい、羨ましい、悔しい、刺す、壊したい、奪いたい、殺したい、痛い、熱い、沈める、晒す、殴る、許せない、潰す、偽る、奪う、欺く、蹴る、犯す。
数えきれない、様々なマイナスの感情が流れこんでくる。
消して止まる事の無い、悪意のみの世界。
1から10まですべてが、負の感情により形作られた究極のプレイズナー。
これそこがジェネラルを構築する全てだった。
「……むなしいな。この上なく、むなしいよ」
玲久がジェネラルに持った感情は『哀れみ』だった。
この負の感情のあふれる地獄の中、『負』しか持たない、ジェネラルに玲久は素直に同情をした。
許せない事はたくさんある。自身やダァトの誘拐、無関係な人間がたくさんプレイズナーへ変えられた、そしてそのプレイズナーによってたくさんに人の悲しみが生まれた。
悲しみは、炎が燃え広がる様にやがて巨大な、地獄へと姿を変えた。
その地獄の爆心地、始まりの場所がここだ。
だが――
「びっくりするほど、なーんにも無いんだな」
マイナスに凝り固まっただけで、外には何もなかった。
『なぜ!?なぜ、発狂しないのですか!?
ここはジェネラルの中!!たとえジェネラルが、不完全でも、肉体を持たなくても!!
脆弱な人間の精神が耐えられる訳がない!!』
マイナス思念の嵐の中、クレルの残滓の声が聞こえる。
「……じゃ、終わらせるか」
ジェイルが、キーをベルトに差し込む。
そして、格子状のパーツをベルトに被せ――
「終わりだ、ジェネラル」
『やめろぉおおおお!!』
クレルが、一瞬だけ形を作り、ジェイルに爪をつき刺そうとした。
「
バックルを開き、それと同時に右足でクレルを蹴り倒した!!
『何故?なぜ、なぜですかぁ!!
なぜ、私がぁ!!人の悪の心を糧とするジェネラルが、なぜ、ただの人間である貴方に負けるぅ!!なぜだぁ!!!』
ジェネラルの中、僅かに残ったクレルの残滓が凶悪に目を見開く。
そして、再度その形を失っていく。
「人は変わっていくんだ。たとえ、一度心を悪に染めても……
何度でも立ち上がることが出来る!!過ちを認め、贖罪をし、罪を滅ぼそうとする!!」
そう、玲久の言葉は正にそうだった。
復讐に燃えるダァトは、兄妹の思いやる心を知り。
恐怖に負けた咲良は、守るべき者を見つけ。
一度は悪に魅せられたフェニシオンは、友と共に抗う道を選び。
臆病者と蔑まれた目栗は、最後には力を息子に託した。
そして、それらの心を繋ぎ、悪から生まれた力を正しく使う戦士が――
今、仮面ライダーがここにいる!!
「お前たちだけなんだよ!!ずっと同じ悪意にばかり、染まった存在は!!
俺たちは前に進んでいる!!お前たちの様に、止まってばかりじゃないんだよぉ!!」
『うあぁあああああああ!!!おぉあああああああああああああ!!!!』
クレルが、ジェネラルが咆哮する。
口を開き、手を広げ目の前のライダーを迎え撃とうとする!!
それは、闇の外から見ていた岩さんたちにも聞こえていた。
「いけ!レイク!」
「いくんだ……玲久……」
「やっちまえ!!指名手配犯!!」
咆哮するジェネラルの声の中、不思議とその声だけが聞こえてきた。
「みんな、今、終わらせるからな」
ジェイルの蹴りが、閃光と共にジェネラルを真ん中から撃ちぬいた。
黒い粘つく闇が、一筋の光によって溶けていく。
その姿は、まるで夜の闇がが太陽に日差しで消えていく様だった。
「終わった……のか?」
まばゆい光の中、最初に目を覚ましたのは岩さんだった。
暗いかった監獄の中は光が差し、明るくなってた。
「はぁ、はぁ……やったみたいだ……」
出流の言葉を聞き、岩さんが気が付く。
「指名手配犯は何処だ?あのおかしな恰好をしたやつも居ないぞ」
その言葉通り、ダァトの姿もない。
「まさか――!」
思い当たるのは、以前聞いた玲久の過去。
玲久とダァトは『看守』を作るために用意された人間だと。
ならば、その『看守』たちの親と言える存在のジェネラルが消えたならば?
嫌な予感が、岩さんを支配する。
「指名手配犯!!おい!!返事をしろ!!
指名手配犯!!!!国家権力である俺様の命令が聞けないのか!?
おい!!指名手配犯!!!!―――おい!!
出てこい!!
だが、帰ってくる声はなかった。
「ちくしょぉ……なんだよ、勝手にどこ行きやがった……
アイツ、警察は悪人捕まえて粗品貰って、給料上げてからが本番だろ!?
逮捕して、殉職してちゃ意味なんて――!?」
「いま、声がしなかったか?」
出流が耳を澄ませながら話す。
「この声は……指名手配犯!!」
岩さんが、手すりから覗き込むと――
「岩さーん……助けて、プリーズ……おれ、ボロボロでうごけねぇ……
今、見捨てられたら、ガチで死ぬから……」
施設の底の底、玲久が力なく手を振っていた。
「バッカ野郎!!心配さえんじゃねーよ!!」
「え、なに?岩さん心配したの?」
「うるせぇ!!してる訳ねーだろ!!犯罪者が一人くたばろうが、俺は痛くもなんともねーんだよ!!」
帰りの船、岩さんが玲久と話していく。
出流は何とか、船を自動操縦にして、仮眠をとることにした様だった。
「なぁ、指名手配犯。全部これで終わったんだよな?」
「ああ、終わった……すべてのキーを生み出したジェネラルは消えた。
もう、新しいキーは作られない。
既存のキーはまだあるだろうけど……どうなんだろ?ただの鍵になったのか、それとも……
けどさ、立ちふさがるなら、また戦うだけさ。俺は、指名手配犯で仮面ライダーだからさ」
玲久が手の中の、ジェイルのキーを見る。
鎖をイメージさせる装飾の古びたカギだ。
「さっき俺は終わりって言ったが、間違いかもな。
やっと始まるんだぜ?お前の、普通の生活が……一人の人間として、今日から生きていくんだ。
この世界でな?」
「この世界……」
二人が沈んでいく夕焼けを見る。
太陽が沈み、もうじき夜の闇が来る。
人の心もそうだ。明るい時もあれば暗く濁るときもある。
だが、その心を照らす時は必ずまた来る。
明けない夜はない様に、沈まない太陽もまたない。
「岩さん、帰ったらステーキ食わしてくれよ!!」
「ああん!?何言ってるんだ?無職宿無しの癖に、ちったぁ働いて稼いでから言いやがれ!!」
何時までも、二人の騒ぐ声が海上に響いていた。
終わりじゃありません。
あと少しだけ、解き放たれた他の幹部たちの話がのこっています。
もう少し会付き合いをお願いしますね。