仮面ライダージェイル   作:ホワイト・ラム

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さて、ジェネラルを倒した一行。
ここから、最終章へ向けて進んでいきますが、まずは現状整理の回です。

巨悪の根源を消した世界はどのようになったのか、御覧ください。


平穏

拘置所のボロい机の上、どんぶりが4つ置かれている。

椅子につくのは玲久、華姿、出流そして立っているのが岩さんだった。

 

「えーでは、僭越ながら私が、開始の音頭を……」

 

「いえーい!俺一番のり!!」

岩さんの言葉を無視して、玲久がどんぶりに手を伸ばす。

 

「バッカ野郎!!まだ俺の話が終わってねーじゃねーか!!」

 

「岩さんの話より、俺は天丼の方が大事なの。

岩さんの長話のせいで、てんぷらが冷めたらどうすんだよ!」

関係ないとばかりに、玲久がどんぶりの蓋を開け、海老天を齧る。

 

「んの野郎……!

せっかく、ささやかな祝賀会を開いてやったって言うのに……!」

岩さんがぎりりと歯を食いしばるが、相手はこの騒動の一番の立役者。

ぞんざいに扱う事は出来ない。

 

「いやー、しっかし……あの戦いの後に出た食事が『これ』って……

高級ホテルのディナーとまではいかないけど、せめて回らない寿司とか、ステーキじゃないの?」

文句を言いつつも、玲久が箸を止めない。

 

「うっせぇ!金って問題が有るんだよ!!」

 

「岩さんって、江戸っ子っぽい言葉使いなのに、宵越しの金は持つ主義なのか」

 

「持つに決まってるだろ!!現代と江戸時代じゃちげーんだよ」

ギャンギャンと二人が言い争い始める。

 

「……ふっ」

その様子を見て、出流が小さく笑みを作る。

だが、それも一瞬で、再度暗い顔に戻ってしまう。

 

「…………」

諸悪の根源を倒したというのに、その表情は晴れない。

正義に燃えて、周囲も見れずひた走っていた出流にしてはずいぶんと暗い反応だ。

だがそれも仕方ない。

 

彼は自身の目的にして、ずっと目標にしていた人物を喪った。

葬儀も終わり。誰にも知られること無く彼の名誉は守られた。

だが、出流の中には残酷な真実がまだ深い傷として残っている。

 

「出流さん、みそ汁作りました。飲んでください」

気が付くと目の前に、豚汁が差し出される。

 

「私は戦えなかったですけど、ここにいるみんながヒーローだってのは、私知ってますから」

 

「琴始……」

差し出されたお椀を手にして、出流は微笑み返した。

少しだけ、前が見れた気がした。

 

「お!ぶたじるじゃねーか!良いね、あったまるぜ」

 

「え!?岩さん、ぶたじるは無いでしょ!?

トンジルだろ?」

岩さんの言葉に、玲久が文句を言い、再度両人の間に緊張が走る。

 

(あ、また始まる)

華姿が声をあげる前に、二人の言い争いが再度始まった。

余に日常的な、事象に華姿は漸く何時もの日々が帰って来たのだと実感できた。

 

 

 

 

 

とあるホテルの一室で、二人の人物が話し合う。

 

「ヴァレフォ様……ジェネラル様が……」

楊が無感情な言葉で、事態を告げる。憔悴した姿から非常に彼が追い詰められているのが容易に見て取れた。

だが、その相手はすでにその内容を理解していた様だった。

 

「ええ、解っています。我らが主が消えたのですね」

髪の長い女性、ヴァレフォ。クレルが一時的に姿を消した時、楊が独断で連れ出した幹部プレイズナーの女性だ。

 

数日前、『監獄』との連絡が突如取れなくなった楊は現状を調査する為に、島へと戻た。

そこには嘗てジェネラルが居たという痕跡すらなく、何もない無人島だった。

うすうすと看守である楊も感じていた。

この世から、自身のキーの作り主が消えた事を。

そしてそれは、同じくヴァレフォも感じていた様だ。

 

「けど、力はまだある様ですね」

キーを撫でつつ、ヴァレフォが話す。

 

「楊君。ここを出る準備を――

何時までも同じところにはいられませんからね。

新しいお家を用意しましょう。そこでまた新しい救済を始めれば良いのです。

ですが――すこし、やり方を変えるべきかもしれませんね……」

彼女が新たな道を模索するように他のプレイズナーも動いているかもしれなかった。

 

「ヴァレフォ様……僕は……」

不安そうな顔をして、楊が話す。

 

「楊君……良いんですよ。怖がらなくて良いんです。

確かにジェネラルは消えました。そして同じくクレルも消えました。

今まで私たちを守っていた『監獄』は確かに無くなったのです。

これからはそれらに頼らずに生きていかなくてはいけません。

けど、これで良いのかもしれません。

私たちは、クレルに縛られない自由を手にしました。

そして、力は未だに残っています。また始めましょう?

自分たちがしたい事を――ああ、そうですね。

私やフェニシオンの様に、施設から逃れた他のプレイズナーも居るかもしれません。

その子たちに接触してみるのもいいかもしれませんね」

 

「ヴァレフォ様……」

 

「さぁ、楊君。私たちの新しい門出ですよ」

その日ヴァレフォと楊は姿を消した。

何処へ行ったのか、現時点では知るすべはない。

 

 

 

 

 

 

『ニュースの時間です。昨日未明、一人暮らしの小林 三実さん69歳が自宅で遺体となって発見されました。

近所の住人が小林さんの姿を、一週間以上見ない事を不審に思い、確認したところ死後3日程度の小林さんが発見されました。

室内は荒らされ、金品などが持ち去られている事から、金銭目的の殺人として調査を――』

 

「…………あ」

何気なくつけたTVから流れるニュースに、華姿が固まる。

楽しい空気が一瞬で吹き飛んだ気がする。

それほどまでに、他の3人の目が真剣になったからだ。

 

「………えっと……チャンネル別のに――」

 

「気にする事はねぇ。()()()()()だ」

岩さんが豚汁に口を付けながら話す。

 

「けど――」

 

「ジェネラルとかいうバケモンが消えたって、この世から犯罪が無くなるなんて思ってねーよ。

アイツのやったことはタダ犯罪を助長したに過ぎない。

悔しいがよ。誰が何をしても、犯罪は消えないんだよ」

 

「でも、だって――この人たちは玲久君たちが助けた人でしょ!?

怪物を見たことが無い私は分からない。

けど、そいつらはきっとこの犯人たちに回り回って危害を与えるはず。

玲久君たちが頑張って倒したって、守った人の中から()()――」

 

ドォん!

 

机に岩さんの拳が叩きつけられた。

 

「分かってるんだよ。そんな事!

だから、法がある、罰がある!

全ての人間を管理なんて出来ねー、そんなのは監獄と変わらねぇ。

だからこそ、『正義を守る存在(警察)』が必要なんだ」

 

「ま、岩さんの手に負えない奴らが出た時は『正義の味方(俺たち)』に任せろって」

玲久が、小さく笑った。

 

「ジェネラルが倒れても、ばらまかれたキーは未だ健在。

それは、同じくキーを持つ俺たちが一番わかってる」

出流がキーを触って、未だに力を持っていることを確認する。

 

「ま!暗い話は後々!せっかくのごちそうが不味くなるって!」

玲久達が食事に戻った。

全てが解決したわけではない。だが確実に進んではいる。

華姿も、再度どんぶりに手を伸ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜の闇の中、一人の女性が夜道を歩く。

 

コっ……コっ……コっ

 

赤いナイトドレスに、ヒールに派手な服装。

香水と酒の匂いが漂う、所謂夜の町の女だった。

 

「?」

その女は、何かの気配を感じ足を速める。

 

タッタっ、タッタ、たった……

 

時折後ろを振り帰っては再度、足を速める。

 

「はぁー、はぁー……」

女は街路樹の影に隠れ、さっきまで自身の走ってきた方を眺める。

そこには誰も居なく、いつも通りの平穏が有った。

 

「気のせい――むぐぅ!?」

女が気を抜いた瞬間、2本の野太い腕が女を後ろから抱きしめる。

片方は口を覆い、もう片方は欲望のままに女の胸に手を這わす。

 

「むぅー!!むぅー!!」

女は必死に暴れるが、男は離しはしない。

捕まえた獲物を逃がすまいと、劣情に魅せられた心と体を蠢かす。

 

 

 

「うわら、ぁ!?」

男の断末魔は、意味のある言葉ではなかった。

真っ赤な怪物は、男にのしかかると布が物を包む様に、男を覆った。

 

そして――

 

「!? ぐぁあああ!!!!!」

 

ゴリッ!バギッ!ゴリュ!

 

布がうごめき、何かが砕ける音がした。

 

「ひ、いや、いやぁ……」

女は尚も恐怖のあまり動けない。

さっきの非日常よりも更に異様な光景に、合理的な動きが出来ていないのだ。

 

ボト、ボトとッ……!

 

やがてその怪物は、男()()()肉塊を吐き出した。

まるでこれは()()()()()()ではないとばかりに。

 

謎の影はその様子を見て、今度は無言で女を指さした。

女はその影の意図を理解して悲鳴を上げる。

 

「いや、いやぁぁあああ、いやぁああああああ!!!」

腰砕けになった女に、赤い怪物はすぐさま追いつき、その女に巻き付いた。

 

「いやぁあああああ――――ぐりょべ!!!」

夜の闇に鈍い音がして女の声が書き消えた。

 

コっ、コっ、こっ……

 

夜の闇の中、赤い服を着た女が歩いていく。

何か良い事でもあったのか、その表情は酷く晴れやかだ。

彼女のすぐ背後に、バラバラになった男の死体が有るのに気にも留めていない様だ。

 

「今日は、良い夜ね」

女はそう言って家路を急いだ。

 

 

 

「…………」

黒い影は、去っていく女を見ながら右手の中にあるカードキーを弄んだ。

僅かに、ほんの僅かにその影が笑みを浮かべた気がした。




今回は、少し短いです。

楽しみにしていた皆さん、すいません。
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