仮面ライダージェイル   作:ホワイト・ラム

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さて、いよいよ始まる最終章です。
新たな敵の出番です。


ネクスト・キー

「ふ――ざけるな!!ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな!!

あぁあああ、あああああ!!!!」

一人の男が、ドアを蹴飛ばし扉の前にあったトレイをひっくり返す。

そこには簡単な食事と、千円札が一枚、ポテチの袋とコーラが一本あった。

男の怒りの理由は酷く単純。

 

パソコンで、いつもの様に社会に対する不満や憤りを書き込んでいたら突然ネットがつながらなくなった。

彼自身はあずかり知らぬ事だが、これは彼の両親が彼の為を思ってしたことだった。

年齢はもはや32になる。

中学、高校と順当に進んでいた彼の人生は大学において大きな躓きをした。

最初は小さな事、友人が出来なかったとか、酒癖が悪かったとか。

だが、その小さな齟齬は社会に出て一気に大きくなった。

 

『自分で考えろ、何でも聞くな』『まだ学生気分が抜けないのか?』『周りはもっと優秀にやっているぞ』

 

男は与えられた課題をこなすのは非常にうまかった。

だが、何かを考えて自分からするという事が非常に苦手だった。

所謂『指示待ち人間』自分から進んで何かをする事が無い男にとって、これは非常に苦痛だった。

なまじ成績が優秀だった事も、認められない事へのコンプレックスになったのかもしれない。

彼は家に引きこもった。両親はいつか治ると信じて彼を自由にさせた。

そして、その()()()は何年たっても訪れなかった。

そして、遂に両親は彼から唯一の外とのつながりのネットを取り上げた。

 

「ふっざけやがって!!あぁああ!!あぁああ!!」

まるで癇癪を起した赤ん坊の様に、部屋の中を暴れる。

その時――

 

「あーあ、情っさけな~い!

気に入らない事があって、泣いてばっかりでオジサンでっかい赤ちゃんみたいだね?」

窓が開かれ、そこに立っていたのは派手な服装の少女。

所謂ゴスロリとでも言うフリルのついた服に、中学に入るか入らないか程度の体を包んでいる。

 

「んだぁと?テメェ!!俺はな!!お前みたいなガキの知らない苦労を散々やって来たんだよ!!

お前よりも、ずっと優秀なんだよ!!」

平日の昼間に、こんな場所に、こんな格好をした少女が居ること自体異常なのだが頭に血の回った男はその異常性に気が付かなかった。

 

「幼稚、稚拙、児戯……有るのは不満。無いのはそれを面と向かって言う勇気。

うん、小さくて、矮小で、その癖、臆病でその割に能力だけはある。

う~ん……合格かな?」

少女が笑みを浮かべ立ち上がる。

そして、ポケットから一枚のカードキーを取り出す。

一瞬だけ、そのカードキーに光が反射して数字が見えた気がした。

そして――

 

「あはっ!新しいプレイズナーの誕生だよ!」

楽しそうにその少女は、カードキーを投げた。

 

 

 

 

 

きり、きりきりきり……

 

トン!

 

「あ、すまねぇ」

街中で一人の若者が肩をぶつける。

人込みではもはや珍しくもない、()()

だが、次の瞬間日常は、日常ではなくなった。

 

「ふっざけるんじゃねーよ!!」

肩をぶつけられた男が、怒りに任せてその男を殴り飛ばした!!

 

「あ、あひぃ?」

殴られた事を一瞬理解できず、遅れて感じ始めた痛みで初めて自身が殴られた事に気が付いた様だった。

 

「こいつぅ!!むかつく面しやがって!!」

だが男の不幸は終わらない。

殴られ、倒れた男にさっきの男が馬乗りになって、顔面に拳を叩き込んだ!

それも軽くではない。あらんかぎりの力を籠め、強く強く、そして何度も拳を叩き込む。

 

周囲はその異様な様子を見て、騒ぎ出す。

多くの者は逃げ出し、ある物は面白半分で動画を取り始め、一部の良識のある人間が警察に電話をする。

 

 

 

 

 

「なにぃ?喧嘩だ?また?」

岩さんが電話口で嫌そうに話す。

今回あったのは喧嘩。

無論、酒の席で酔っ払いが~などという通報は割と珍しくはない。

だが今日だけで、もう4件の喧嘩の通報があった。

誰もが皆、小さな諍いで喧嘩を始め、一部は殺し合い寸前にまで発展している。

とある兄弟の喧嘩が最もひどく、お互いの前歯が全部折れても、拳の骨が砕けても喧嘩をやめなかったらしい。

その原因は外食の行先の意見がまとまらなかったというモノ。

原因に対して導き出される被害があまりにも大きすぎる。

 

「まさか……な」

岩さんが思い出すのは怪物のプレイズナー。

プレイズナーは人の心の隙間に入り込み、善悪のタガを外し外道の道へと引きずりこむ。

心を犯し、消して許されぬ道へと引きずりこむ悪夢の道具だ。

 

「違う。そうだ、間違いであってくれ……」

岩さんが受話器を壊れる寸前の力で握りしめた。

 

「岩さん?誰からだ?」

 

「うっせぇ!警察の無線を勝手にきくたぁ、ふてぇ野郎だ!

逮捕するぞ!!」

 

「うっわ、ちっさ!器ちっさ!あーやだやだ」

岩さんの言葉に、玲久がおどけたようにその場から逃げていく。

 

「…………いったか」

岩さんが椅子に座り、FAXで送られてきた情報に目を通す。

学生、花屋、新聞配達、老人、職業も年齢もバラバラな一切の統一性の見えないメンバー。

岩さんは、それでも警察の勘を頼りに何らかの共通点が無いか調べる。

 

「なにか、あるはずだ。何か――ん?コイツは……」

岩さんはとある人間に目が留まった。

それは以前起きた事件の被害者としてだ。

 

「小さな……ボヤ騒ぎ……そうだ。あの時の!!」

岩さんが思いつくのは以前のマッチプレイズナーの時の被害者だ。

あの時のプレイズナーは炎のプレイズナー。

マッチ棒に着火した人間を魅了し、まさに見る麻薬とでもいう能力だった。

その被害者の中にいた人間が再度、リストアップされていたのだ。

 

「まさか……な」

不安に思いながらも岩さんは、例の事件の被害者または加害者、そして家族を調査する。

偶然だ。間違いで合ってくれと、密かに願う。

しかし――

 

「やっぱりだ……殆どが、例の事件の関係者だ……まだ、まだ終わってないって事か?

いや、なら、なら俺がやらねぇと……!」

結果は恐ろしいほどに一致していた。

 

 

 

 

 

「あれ、岩さんどっか出かけるのか?」

 

「ちょっとしたパトロールだ。大人しくしてろよ」

出かける準備をしている岩さんに玲久が尋ねる。

 

「ふぅーん?岩さんって働いてた――――そんな顔すんなよ!!」

無言で銃を抜いた岩さんに対して玲久が手を上げる。

 

「んじゃ、俺は行ってくるからな?」

 

「あーい、行ってら!」

玲久に見送られ、岩さんは出かけていった。

 

 

 

 

 

「ここも……か」

事件の起こった現場を歩いていく。

何かおかしなものはないか、なにか記録されている物は無いか。

 

近くにあった店の防犯カメラの映像を見せてもらうが、どれもこれも唐突に喧嘩が始めり、死ぬ直前まで収まる気配はない。

まるで、何かにとりつかれた様にも見える。

 

「ここだ――ここで、アイツらが……」

嘗てマッチプレイズナーを倒した公園までやってくる。

夕方も近く、更には最近起きる喧嘩騒ぎのせいか、人も全くいない。

 

「ふぅー……寂しいもんだな」

無人の公園は、寂しさを感じずにはいられない。

そのむなしい感情から逃げる為か、岩さんはたばこを取り出した。

 

シュボッ

 

しずかに火を灯し、口に咥えようとする。

隣に禁煙と書かれた看板があるが、誰も居ないのだ。問題はないだろう。

 

「あー、いけないんだー、ここ禁煙なのにー」

 

「うえ、アッツ!?」

突然の声に驚き、岩さんがたばこを落とす。

そのたばこは指先に転がり、地面に落ちる。

 

「こんばんは。おじさん」

その少女は真っ黒な姿をしていた。

黒いドレスに見える服に、黒いレース、ヘッドドレス。

足元のシューズだけが血の様に真っ赤だった。

 

「あー、嬢ちゃん?そろそろ遅いから家に帰んな?」

 

「私、帰るお家無いよ」

あっけらかんと、少女が話す。

岩さんの横に座り、体をこすりつける様にもたれ掛かる。

 

「家出か?あー、ご両親が心配してるから――――」

 

()()()()()が破壊されちゃったから……」

 

「!?」

少女の口から決して聞かないハズの単語が飛び出し、岩さんがそこから飛びのく。

 

「仮面ライダーのぉ……ともだちだよね?

わざわざ、前の犠牲者にターゲットを絞って、おびき出したつもりなのに。

一人しか掛からなかったね」

夜の闇がゆっくりと公園を染めていく。

その中で、少女の声はやけにゆっくりと聞き取れた。

 

「テメェ……!」

岩さんの中に二つの動揺があった。

まずはやはり、プレイズナーが滅びていなかった事。

そして、こんな幼い子までが、プレイズナーに関与していたという事。

 

「おじさんの考え方は正解だよ。

私は、前の事件の関係者を狙ったんだよ。

けど、一人で来たのはミスだね」

 

『ジじじ、ジジじ!!』

公園の地面を突き破り、コードの塊が姿を見せる。

黒や赤や、青や白。様々なコードが絡み合い、強大な植物の様にも見える。

その頂点にはミラーボールの様な物が輝いている。

ミラーボールに一面一面が、ノイズが走り、映像などを映す事から、それらが画面が固まって球体になった存在だと分かる。

 

「うあ……」

 

「殺す……」

 

「あ、ああ……」

少女が指を鳴らすと、公園の隅々から出口を閉じる様に、数人の男が現れ始める。

皆、服がボロボロで、顔や拳が血だらけだ。

 

「こいつらまさか……!!」

どう見ても、例の事件の被害者だ。

さっきまで公園に居た人間だろうか?

 

『じじじ……ジジ、じ……ジ!』

コードの怪物が、束ねたコードのあちこちから、放電をしながら岩さんをムチの様に打ち据える!!

 

「ぐぅあ!?」

電流と打撃のダメージを受け、岩さんが地面を転がる。

 

「ころ、す」

 

「おまえ、も……」

 

「あ、ああ……」

その周囲を、眼に力の宿らない男たちが、石や木の棒を構えて囲む。

武器を振り上げた瞬間――!!

 

「だらぁ!!」

玲久が走って来て、男を突き飛ばす。

 

「指名手配犯!!」

 

「岩さんってウソ下手だよな。あんな態度で出かけて「思いつめてます」って言ってるようなもんだろ?

なんで、こんな無茶をしたんだよ!!」

玲久の語気が荒くなった。

 

「もう、終わったはずなんだ。もう、もう戦う必要は――」

 

「あるさ。まだ俺たちは止まる訳にはいかない。

俺は、仮面ライダーだ。

プレイズナーと戦う使命がある。

岩さんが岩さんなりに俺の事を考えてくれたんだよな?

けどさ、やっぱりライダーなんだよ。まだ、敵がいるなら俺は戦うぞ?

そんでさ、また全部終わったら今度こそ、回らない寿司とか連れてってくれよ」

玲久が岩さんに笑いかける。

 

 

 

「あーん、もう邪魔しちゃダメぇ~」

 

「!?」

 

「女の、こ?」

突然聞こえた声に玲久が驚く。

そうだ、こんな場所にこんな子供がいるなんて思ってもみなかった。

玲久の注目は、コードの塊の怪物と血だらけの男のみだったからだ。

 

「け・れ・ど!実は予想してたり~」

少女が、自身の服の胸元の紐をほどく。

一枚のカードを取り出す。

 

「なんだそれ?」

玲久が疑問符を上げる。

 

「何処かのカード、キー?」

玲久が何かに気が付く。

そのカードキーの表面に、光の反射で現れる63数字。

その存在は両者にとあるアイテムの名を思い浮かべさせた。

 

「まさか、カード()()

 

「あはっ!せ~かい!」

少女が胸の中に、そのカードキーを押し込んだ。

その瞬間、紫のスモークが少女の体から放たれ一瞬で形が変わった。

 

『はぁ~……きもち、イイ……』

恍惚とした声を上げながら、その怪物が降り立った。

 

『エヴォ……リューション!アンドラス……』

 

素直な話、さっきまでとあまり姿は変わった様には見えない。

確かに人間の質感をありありと残しているが、キチンと怪人となっている。

病的な白い肌に、毛細血管のように見える羽。

だが、ゴスロリを思わせる恰好は先ほどの変身者の姿を強く残している。

 

「なんで……!?」

 

「プレイズナーの生きのこりか?」

二人が困惑する。

そう、プレイズナーの本流たるジェネラルは破壊したハズだ。

こんな怪物が、ましてや新しい変身方法を持つプレイズナーが存在するはずは無いのだ。

 

「お前は、何者だ!?」

 

「詳しく、事情を聴こうか?」

玲久がジェイルにへ素早く変身する。

まさか、こんなにも早く再度この姿になるとは思っても居なかった。

 

『あはっ!私はアンドラスの適合者……名前は、「ルノア」とでも呼んでくれないかな?』

アンドラスの変身した少女は、自らの名を言った。




ルノアはクレルを継存在です。
何気に名前が、しりとりに成っているのはそのイメージです。

血縁などまありませんが……
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